国連環境計画(UNEP)は9日に公表した報告書で、破壊が最も顕著だった南極上空のオゾン層が、2066年ごろには面積、厚さともに回復するとの見通しを示しました。北極圏では2045年ごろ、その他の地域では2040年ごろに完全に回復する見込みとしています。
UNEPが世界気象機関(WMO)やヨーロッパやアメリカの政府機関と共同でまとめた報告書によると、オゾン層を破壊する化学物質の使用禁止を巡り約200カ国が合意した1987年の「モントリオール議定書」が、期待通りの効果を発揮しています。
科学者約200人が参加する「オゾン層破壊に関する科学的評価」の共同議長を務めるイギリスのケンブリッジ大学のジョン・パイル教授は、「オゾン層は回復している。これは朗報だ」と語りました。
オゾンは地球全体を覆い、生物に有害な太陽の紫外線の大半を遮っています。しかし、1980年代に南極を中心に上空のオゾンの濃度が極端に少なくなる「オゾンホール」が観測され始めました。冷蔵庫の冷媒やスプレーの噴射剤など幅広く使われた人工物質のフロンガスがオゾン層の破壊を引き起こすことがわかり、1989年発効の「モントリオール議定書」で、影響が特に大きい特定フロンなどの生産が禁じられました。
UNEPやWMOなどは共同で、オゾン層の状況について4年に1度、報告書をまとめており、今回で10回目となる報告書では、使用が禁止されたオゾン層破壊物質の約99%が削減されたといいます。
また、今回の報告書では、人口の多い熱帯・中緯度地方の成層圏下部のオゾン層が予想外に減少していることも指摘されました。
UNEPは化学物質の使用規制により、今世紀末までに温暖化を0・3~0・5度抑えられるとの評価も明らかにしました。
2023年1月10日(火)
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