福島医大会津医療センターは20日、会津大と共同で早期大腸がんの治療方針を決定する「人工知能による自動内視鏡診断システム」を、開発したと発表しました。これまで開発が報告されているシステムより臨床に近い診断精度が検証されており、今後の実用化が期待されるとしています。
研究は同センター小腸・大腸・肛門科学講座が主管。九州から北海道にまで至る全国の基幹病院10施設から提供を受けた早期大腸がん患者1513人の内視鏡画像5108枚を使用し、会津大の研究チームが人工知能(AI)で分析するなどして開発しました。
早期大腸がんの治療方針は、大腸壁へのがん浸潤の深さ(がん深達度)によって決定されます。がん深達度の判断は従来、画像強調内視鏡画像や拡大内視鏡画像などの特殊な画像により行われてきました。
開発した「人工知能による自動内視鏡診断システム」は、通常内視鏡画像(白色光)のみを用いて、がん深達度を正確に診断できることが実証されたといいます。その診断精度はレベルの高い熟練医と同等であり、若手の内視鏡医よりも優れていました。
これまでにも、通常内視鏡画像のみを用いて、早期大腸がんの治療方針を決定する「人工知能による自動内視鏡診断システム」を開発した報告はありますが、診断精度を判断する試験対象の中に、明らかな進行がんや良性腺腫が含まれていたため、診断精度を疑問視する考えもありました。
今回の研究では、試験対象を早期がんに限定した、実臨床に近い状態で診断精度が検証されており、高い評価を受けています。開発した自動内視鏡診断システムは動画上でも機能することが実証されており、今後の実用化が期待されます。
同センターと会津大は2016年から、医学と工学を合わせた「医工連携」の取り組みを続けています。同センターの根本大樹医師、中島勇貴医師、冨樫一智医師と会津大の朱欣上級准教授の研究チームが携わりました。研究論文は2月、アメリカ消化器内視鏡専門誌で発表されました。
冨樫医師は、「大腸がんは死因の上位に位置するがん。(開発によって)どこでも同じ治療を受けられる可能性がある」としています。
2023年3月22日(水)
0 件のコメント:
コメントを投稿