新型コロナウイルスのオミクロン型は変異の過程で、高温になると増殖しにくく、重症化を招きにくいように変化した可能性があるとの成果を、東京大学医科学研究所の河岡義裕特任教授らの研究チームがまとめました。
新型コロナウイルスは、人への感染が確認された2019年末からの3年間で、複数の変異型が出現しました。現在は、オミクロン型が主流で、派生したBA・5系統やBQ・1・1系統が確認されています。オミクロン型やその派生型は、流行当初の型や2021年夏に流行したデルタ型より重症化しにくいことが知られているものの、その理由はわかっていません。
そこで研究チームの野田岳志・京都大学教授らは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から、肺胞表面の細胞を作製し、この細胞にデルタ型とBA・5、BQ・1・1の3種を感染させ、温度による増殖具合を調べました。
その結果、平熱時の肺の温度と同じ37度では、すべてのウイルスが効率よく増殖しました。
一方、発熱時の肺の温度に当たる40度では、デルタ型のみが効率よく増殖しました。BA・5は37度の時に比べ1000分の1ほどしか増えず、BQ・1・1はほとんど増殖しませんでした。
肺胞は、体内に酸素を取り入れ、不必要な二酸化炭素を排出する役割を担います。ウイルスが効率よく増殖して細胞が壊れると呼吸が難しくなり、人工呼吸器などが必要になると考えられます。
河岡特任教授は「ウイルスが人の環境に適応していく過程で、温度の低い上気道では増えるものの、肺では増えにくくなると考えられる。ただし、実際に重症患者が減っているのは、ワクチンや治療薬の普及による効果も大きい」と話しました。
成果は、イギリスの医学誌「ランセット」姉妹誌に掲載されました。
2023年4月27日(木)
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