体を動かす機能が徐々に失われていく神経の難病「多系統委縮症」について、患者に体内の「活性酸素」を抑える働きなどがある物質を投与したところ、症状の進行を遅らせる効果が示されたと、東京大学などの研究チームが14日発表しました。
「多系統委縮症」は、体を動かす機能が徐々に失われ、手足がこわばったり会話がしづらくなったりする神経の難病で、原因が十分わかっておらず、症状の進行を抑える治療法も確立されていません。多くは50歳代後半で発症し、国内の推計患者数は約1万2000人。
東京大学の辻省次名誉教授らの研究チームは、この病気の患者の体内では、細胞を傷付ける「活性酸素」を抑える働きなどがある「ユビキノール」という物質が少なくなっていることに着目し、この物質を投与することで、症状の進行が抑えられるどうかを調べる中間段階の治験を行いました。
国内の129人の患者を、「ユビキノール」を投与するグループと、偽の薬を投与するグループに分けて、約1年後の体を動かす機能の変化を比較したところ、「ユビキノール」を投与したグループは、機能の低下が約24%抑えられていたということです。
研究チームでは、「症状の進行を遅らせる効果が示された」として、治療薬としての承認を目指すことにしています。
辻名誉教授は、「ユビキノールの減少は複数ある発症原因の1つだと思うが、神経難病の治療の新たなアプローチになる可能性がある」と話していました。
この研究は、イギリスの国際的な医学誌で発表されました。
2023年4月19日(水)
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