長崎大は28日、キリンホールディングスが研究開発する「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」について、新型コロナウイルス感染症患者に対する嗅覚・味覚障害の改善やウイルスの早期減少などの効果を特定臨床研究で確認したと明らかにしました。30日、東京都内で開かれる日本呼吸器学会で発表します。
研究を担当した山本和子長崎大客員教授(琉球大大学院医学研究科教授)によると、プラズマ乳酸菌はウイルス感染防御を担う免疫系の司令塔「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」を活性化する乳酸菌で、キリンが2010年に発見。インフルエンザなど呼吸器ウイルス感染症で症状緩和効果などが報告されてきました。
研究チームは2022年1~3月、長崎県内の宿泊療養施設で過ごした20~65歳の新型コロナの軽症患者50人に、4000億個のプラズマ乳酸菌を含むカプセルを毎日服用してもらいました。その上で、2週間後までの鼻咽頭(びいんとう)内のウイルス量やpDCの状態、症状の改善状況などを調べ、偽薬(プラセボ)を使った46人と比較しました。
その結果、プラズマ乳酸菌を服用した人では、血液中のpDCの量がほとんど変わらなかったほか、ウイルス量は感染直後に比べ4日後に30%、8日後には80%それぞれ減っていました。これに対し、プラセボの人ではpDCが通常の3分の2程度に減り、4日後のウイルス量は10%減にとどまりました。8日後になって80%減となりました。
せきや体のだるさなどの症状で両者の改善状況に差はなかったものの、「味がしない」「においを感じない」といった感覚障害については、プラズマ乳酸菌の服用者では大半が感染から9日以降にほぼ正常に戻りました。一方のプラセボの人では観察期間の14日後でも約15%の人で症状が残っていたといいます。
山本客員教授は「早期にウイルスを減らし、症状をやわらげる効果が期待できる。新型コロナが5類に移行し、軽症患者に、より手軽な治療や補助療法が必要となる。研究成果が課題解決への一助となる可能性がある」と語りました。
2023年4月29日(土)
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