国連の世界気象機関(WMO)は17日、エルニーニョ現象の発生により、今年から5年間の世界の気温が記録的に高まる可能性があると発表しました。産業革命前と比べた地球の平均気温の上昇幅が一時的に1・5度を上回る確率を98%と予測。人々の健康や食糧安全保障、水資源の管理、環境分野などに広範な影響を及ぼす可能性があると警告しています。
エルニーニョは、南米ペルー沖から太平洋中部の赤道域で、海面水温が平年よりも高くなる現象。世界の気温を押し上げるほか、各地に異常気象を引き起こす可能性があるとされます。各国の気象機関は、今年の夏ごろまでにエルニーニョが高確率で発生するとみています。
WMOは17日のリポートで、2023~2027年に、世界の単年の平均気温が少なくとも1回は観測史上最高となる確率と、5年間の世界の平均気温が過去最高を更新する確率を、いずれも98%と予測しました。世界の単年の平均気温が観測史上最も高かったのは2016年で、この年は、産業革命前と比べて1・2度高くなりました。
各国は、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」に基づいて、世界の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べて1・5度に抑える目標を掲げています。
WMOのペッテリ・ターラス事務局長は、エルニーニョと人為的な要因の気候変動の組み合わせが「地球の気温を未知の領域に押し上げるだろう」と指摘。「パリ協定が掲げる1・5度を恒久的に超えることを意味するものではないが、一時的に1・5度を上回る状況はより頻繁に起きるだろう」としました。
ターラス事務局長は、今回の予想は「我々が温暖化を抑制できておらず、いまだに誤った方向に向かっていることを示している」とし、こうした傾向に歯止めがかかり、悪化する状況を止められるのは2060年代になる可能性があるとしました。
また、温室効果ガスの大気中濃度は史上最高となっており、「通常の水準に戻るまでには数千年かかる恐れがある」とし、「前世紀のような気候に戻ることはない。それは間違いない」としました。
2023年5月22日(月)
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