2023/05/12

🟧名古屋大、ワクチン成分のmRNAを純度99%で製造 発熱などの副作用抑制も

 名古屋大学などは11日、新型コロナウイルスワクチンなどの成分になる「メッセンジャーRNA(mRNA)」を99%以上の高純度で製造する技術を開発したと発表しました。純度が高まることで発熱などの副作用の抑制も期待できるといいます。設立したスタートアップを通じて、国産のmRNA製造技術として実用化を目指します。

 名古屋大の阿部洋教授と東京医科歯科大学の内田智士教授らの成果で、イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。

 mRNAワクチンはウイルスの目印となるタンパク質の設計図が入ったmRNAを投与し、体内で目印のタンパク質が合成されて、ウイルスへの免疫をつけます。

 ワクチンとして機能させるために鎖状のmRNA分子の端に、タンパク質の合成に必要で炎症反応を抑える役割がある「キャップ」と呼ばれる構造を作る必要があります。しかし、既存技術ではキャップ付きのmRNAを製造しようとしても純度が60〜90%程度にとどまっていました。

 研究チームはキャップ付きのmRNAを精製する工夫で、純度を最大で99%以上に高めました。キャップの構造を一部変えて、タンパク質の合成量を約5倍に増やすことにも成功しました。純度の高い少量のmRNAから多くのタンパク質が作れれば、ワクチンとして接種する量も少なくてすみます。より多くの人に供給しやすくなるだけでなく、副反応の要因の一つともされる副生成物がほとんどないため、発熱などの副作用を減らせる可能性もあるといいます。また、このmRNAは壊れにくく脂質の膜に包む必要がないため、できたワクチンは常温で保存できるといいます。

 mRNAワクチンはコロナワクチンで初めて実用化し、今後は他の感染症やがんのワクチン、遺伝病の治療薬などでも応用が期待されています。

 阿部教授らは国産のmRNA製造技術の実用化に向け、スタートアップを設立。政府の支援も受け、2026年度に国産技術で製造したコロナワクチンの臨床試験(治験)を始める計画です。

 2023年5月12日(金)

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