国内の新興企業が開発を進める新技術を使った新型コロナウイルスワクチンについて、動物実験で感染を防ぐ中和抗体の量が1年間維持されたと医薬基盤・健康・栄養研究所(大阪府茨木市)などの研究チームが発表しました。実用化すればワクチンの接種間隔を延ばせる可能性があります。論文が19日、国際科学誌(電子版)に掲載されました。
このワクチンは、アメリカのファイザーやアメリカのモデルナが実用化したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに改良を加えた「レプリコン(自己増殖型)」と呼ばれるタイプです。
新興企業VLPセラピューティクス・ジャパン(東京都港区)が現在、実用化に向けて治験を実施しています。新型コロナの変異型に加え、未知の感染症への対応も視野に入れています。
レプリコンワクチンは有効成分が体内で自己増殖するため、接種量は既存のワクチンの100分の1から10分の1ほどですみ、免疫が長く続くとされます。
研究チームは、人間と体の構造が似ているカニクイザルにこのワクチンを打ち、中和抗体の量が1年間、十分に保たれていることを確認しました。既存のワクチンでは数カ月から半年程度で低下します。
研究チームの山本拓也・同研究所難病・免疫ゲノム研究センター長は、「年1回接種で効果があるようなワクチンにしたい」と話しています。
杉浦亙(わたる)・国立国際医療研究センター臨床研究センター長(ウイルス学)は、「中和抗体の量が長期間持続することをデータで示せた意義は大きい。安全性を丁寧に確かめ、未知の感染症に対応できるワクチン開発の基盤技術として育てることが重要だ」と話しています。
2023年5月29日(月)
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