脱水症状の際に失われた水分や塩分を速やかに補う経口補水液を巡り、消費者庁が注意を呼び掛けています。同庁が定める成分基準を満たしていない製品があるほか、日常の水分補給として水やお茶のようにがぶ飲みすると塩分や糖分を取りすぎたりするためです。このため、今年5月から「経口補水液」という表示に許可制を導入し、適切な製品を適切に摂取するよう促しています。
「飲む点滴」とも呼ばれる経口補水液は、ナトリウムなどのミネラルとブドウ糖を一定の割合で水に配合した飲料。体内での吸収速度を高めるため、体液とほぼ同じ浸透圧に調製されています。市販品のほか、家庭でも水1リットルに砂糖40グラムと塩3グラムを溶かして作ることができます。
一方で、消費者庁は経口補水液を製品として販売する場合、個別に臨床試験データの提出を受け、ナトリウムやカリウム、ブドウ糖の含有量などが審査に合格したものを「特別用途食品」と認定してきました。ただ、今年8月現在で認定を得ているのは、大塚製薬工場の「オーエスワン(ОS-1)」など3社の製品のみ。清涼飲料水に該当しながら「経口補水液」と表示されている製品と、店舗で並べて販売されるケースもありました。
このため今年5月、特別用途食品としての表示に許可制を導入し、特別用途食品制度の個別評価型病者用食品としての許可を得ていない製品は「経口補水液」の表示ができないようになりました。事業者は猶予期限の2025年5月末までに表示を変更する必要がありますが、購入者の混同を避けるため、店舗で区別して陳列することも求めました。
ただ許可を受けた製品であっても、経口補水液はスポーツドリンクより塩分が多く、脱水状態ではない時に大量に飲むと、ナトリウムの過剰摂取を招きかねません。特に高血圧や慢性腎臓病の人は1日の食塩摂取量を6グラム未満とすることが推奨されており、オーエスワン1本(500ミリリットル)中にはその4分の1近い食塩換算で1・46グラム分のナトリウムが含まれています。このため大塚製薬工場は脱水時に医師の指示に従って飲むよう製品に表示しています。
消費者庁は「がぶ飲みによる健康被害を招いたり、逆に効果がなかったりする恐れがある。表示をよく読んで適切に判断してほしい」としています。
2023年8月17日(木)
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