細胞を加工して患者に投与する再生医療について、公的医療保険の対象外となる自由診療では、意図せぬ副作用などの有害事象報告数が投与10万回中10例以下と非常に少なかったと、国立がん研究センターなどの研究チームが明らかにしました。チームは「有害事象が発生しても、一部の医療機関からは報告されていない可能性がある」と指摘しています。
自由診療による再生医療は、がん患者に対する免疫療法や、ひざ関節の修復、美容目的のしわ取りなどで行われています。実施には、再生医療安全性確保法に基づく国への届け出が必要で、感染症や後遺症などの有害事象が発生した場合は、外部の有識者を含む認定委員会に報告する義務があります。
研究チームによると、2020年度に自由診療による細胞投与は約10万件あったものの、認定委員会への有害事象報告数は10件にとどまりました。医師が研究目的で患者に投与する臨床研究でも、投与約4000件に対し有害事象は25件でした。
一方、医薬品医療機器法に基づき国に承認された再生医療等製品3品目では、2020年度の投与339回に対して有害事象の報告数は129件と、3件中1件の割合に上りました。
この調査結果は、国際的な科学雑誌の「ステム・セル・リポーツ」で発表しました。
チームの一家綱邦・同センター生命倫理部長は、「正しく報告されないと患者が治療について判断できなくなってしまう。医師の性善説を信じてきたが、患者が有害事象を国などに直接訴える新たな仕組みも検討すべきだ」と指摘しています。
八代嘉美・藤田医科大特任教授(幹細胞生物学)は、「懸念されてきた問題点が明らかになった。再生医療全体の信用が低下しないよう、現場の医師の意識を向上させる取り組みが求められる」とコメントしています。
2023年12月10日(日)
0 件のコメント:
コメントを投稿