適切な睡眠を取るための指針の改定を議論する厚生労働省の検討会は21日、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を取りまとめました。小学生は9~12時間、中高生は8~10時間、成人は6時間以上を目安に睡眠時間を確保するよう推奨。高齢者には、長時間睡眠は健康リスクだとして、寝床で過ごす「床上時間」が8時間以上にならないよう注意喚起しました。
適切な睡眠時間は個人差があるものの、睡眠不足が慢性化すると、肥満や高血圧、心疾患などの発症リスクが上昇し、死亡率にも影響します。2019年の国民健康・栄養調査によると、1日の平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は男性37・5%、女性40・6%。
経済協力開発機構(OECD)の調査でも、日本人の睡眠時間は、世界のほかの国と比べても少ないという調査結果が出ています。2021年の調査によりますと、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、各国平均の8時間28分より1時間以上短く、33カ国の中で最も短いという結果になりました。
ガイドは、睡眠で休養が取れている感覚「睡眠休養感」を高めることも大切だと説明。寝室にスマートフォンやタブレットを持ち込まずにできるだけ暗くして寝る、就寝直前の夜食や眠るための飲酒は控える、といった要点を挙げました。
この中で世代を成人と子供、高齢者の3つに分け、このうち成人については推奨する睡眠時間を6時間以上を目安とするとしました。
また、子供については、小学生は9時間から12時間、中学生・高校生は8時間から10時間確保することを推奨しています。
一方、高齢者については、寝床にいる時間が8時間以上にならないことを目安に必要な睡眠時間を確保してほしいとしました。
さらに、今回は睡眠について近年の研究で科学的に明らかになった内容も盛り込まれました。
この中で、成人と高齢者は、目覚めた時に体が休まったと感じる「睡眠休養感」が重要で、アメリカで行われた調査では、40歳から64歳の働き盛りの世代について、睡眠時間が5時間半未満で「睡眠休養感」が低いほど死亡リスクが高まったという結果が紹介されています。
そして、「睡眠休養感」を高める対策としては、就寝間際に夕食をとったり、朝食を抜いたりといった習慣の改善を挙げています。
一方、子供については、研究の結果、睡眠時間が不足すると肥満のリスクが高くなったり、学業成績が低下したりしたという報告があり、対策として生活習慣に注意し、小学生から高校生までは1日に1時間以上体を動かし、ゲームやスマートフォンの利用時間を2時間以下にすることを推奨しています。
今回取りまとめた「睡眠ガイド」は早ければ来月(1月)にも厚労省のホームページで公開し、どう活用していくかについて有識者会議を立ち上げ議論していくとしています。
睡眠の問題に詳しく、厚労省の検討会の座長も務める久留米大学の内村直尚学長は、日本人の睡眠時間の短さについて、「日本人は睡眠に対して無頓着なところがあり、眠ることを犠牲にして働くことが頑張っている証拠だとして、戦後、睡眠を削って働いたり勉強したりすることによって経済成長と教育のレベルを高めてきたと思う。それが日本人の健康寿命を短くしたり幸福度を低くしたりといった1つの要因になっている」と指摘しています。
2023年12月25日(月)
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