2023/12/07

🟧孤独で縮む寿命、アリの研究で改善に手掛かり ストレスで活性酸素増加

 群れで暮らす社会性昆虫のアリを1匹だけで孤立させると寿命が短くなる理由の一端を明らかにしたと、産業技術総合研究所などのチームが7日までに発表しました。ストレスに反応して体内でつくられる活性酸素が、肝臓に相当する器官で増えていました。活性酸素から体を守る抗酸化剤を投与すると、生存期間が改善しました。

 孤立した環境が健康に悪影響を与えるというデータは、人間でも得られています。ただ、他の動物を含めて、何が寿命を縮めているのか詳しくはわかっていません。

 アリは生殖機能を持つ女王アリや雄アリと、生殖機能を持たない働きアリがそれぞれの役割を果たしながら集団生活する社会性生物で、働きアリは孤立すると寿命が縮むことが知られています。そこで、オオアリに2次元バーコードを取り付けて、働きアリを1匹で飼育する孤立アリと、10匹で飼育するグループアリに分け、それぞれの行動量を比較しました。

 その結果、孤立アリは1日目から飼育箱の壁際にいる時間が長くなり、身を隠すための巣の中で過ごす時間が短くなりました。また、グループアリに比べて長い距離をより速い速度で移動することがわかりました。そこで、さらに行動観察を24時間続けた後、孤立アリとグループアリの遺伝子がどのように働いているかを解析しました。

 その結果、孤立アリでは407個の遺伝子がより多くのタンパク質を作るなど活性化する一方、487個の遺伝子の活性が低下していました。特に、過剰になると細胞を傷付ける酸化還元酵素活性を持つタンパク質を作る遺伝子群の働きが大きく変化することや、壁際にいる時間が長いほど酸化ストレスにかかわる遺伝子の活性が高まることなどが明らかになりました。

 そこで酸化ストレスを和らげる薬剤「メラトニン」を投与したところ、孤立アリでは寿命短縮が緩和された一方、グループアリでは寿命に変化はありませんでした。メラトニンと同様の抗酸化作用を持つ他の薬剤を使用しても、同様の結果が得られました。

 この結果から、チームは「酸化ストレスを和らげることで孤立したアリの行動の異常や寿命の短縮を緩和させることを初めて実証した」と結論付けました。

 さらに、同じ社会的生物である人についても、今回の成果が社会的環境ストレスの緩和や寿命の延伸につながる手掛かりになると期待しています。

 チームの古藤日子(ことう あきこ)・産業技術総合研究所主任研究員(行動生態学)は、「孤立死の仕組みがアリと人間で全く同じだとはいえないが、活性酸素は多くの生物が持っている物質なので、アリを通じて人間で使える薬の候補を探せる可能性がある」と話しています。

 2023年12月7日(木)

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