東京医科歯科大学や東北大学の研究チームは、妊娠時に胎児と母体をつなぐ胎盤の構造の一部を再現した「オルガノイド(ミニ臓器)」の作製に成功したと発表しました。胎盤を通過しにくい薬を見付けやすくなり、妊婦が服用しても胎児に影響しにくい医薬品の開発につながるとみています。研究成果をまとめた論文が8日、イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。
母体と胎児をつなぐ胎盤には、妊婦の体内に存在する薬やウイルスが胎児に移動するのを防ぐバリアーとしての機能があります。ただ一部の薬は胎盤を通過して胎児に影響を与えてしまうため。妊婦には使えません。薬が胎盤を通過するか効率的に調べる方法が求められています。
研究チームは胎盤の基になる「胎盤幹細胞」を培養し、バリアー機能を担う「じゅう毛」という構造を再現したミニ臓器を作りました。これまでに別の研究チームもミニ胎盤の作製に成功していたものの、実際のじゅう毛の構造とは違っていました。今回、培地の成分を変えるなどして実際の構造に近付けました。
じゅう毛を構成する細胞をシート状に培養することにも成功し、胎盤を通過しないタンパク質などを使って検証して、実際の胎盤と同様の性質を持つことを確認しました。このシートを大量に培養すれば、多数の薬について胎盤の通過しやすさを効率よく検証できるとみています。
今後、高品質のシートを作れるように培養条件などを改良して、実用化を目指します。東京医科歯科大の堀武志助教(医工学)は、「妊婦特有の病気である妊娠高血圧症候群の治療薬を始め、妊婦が安心して使える薬の開発に役立てたい」と話しています。
従来は人の胎盤などを使って薬の性質を調べていました。ただ、人の胎盤の供給は限られ、人と動物では胎盤の構造が異なるため動物実験だけでは不十分です。
ミニ臓器は臓器を構成する細胞を立体的に培養したもので、これまでに腎臓や腸などさまざまな臓器で作製例があります。臓器の性質を再現でき、有望な薬の候補を見付けるのに活用されます。
2024年2月13日(火)
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