京都大医学部付属病院は4日、世界で初めて、生体の肺と肝臓を1人の患者に同時に移植する手術を実施し、成功したと発表しました。先天性の疾患がある関東在住の10歳未満の男児に、両親の肺、祖父の肝臓のそれぞれ一部を移植しました。手術は2023年11月15日に行われ、男児は3月1日に退院しました。
同病院によると、海外では脳死患者から提供された肺と肝臓の同時移植は少数ながら行われています。日本は海外と比べて脳死による臓器提供が少ない現状があり、脳死でも実施事例がありませんでした。生きている健康な人が提供者となる同時移植は世界初で、同病院は「新しい治療の可能性を広げた意義は大きい」としています。
男児は、染色体の異常が原因で、全身の臓器などに影響が出る「先天性角化(かくか)不全症」の患者。根治療法はなく、国内の重症患者数は約200人とされます。
男児は2歳で血液細胞が減少する再生不良性貧血になったため、4歳の時に妹から骨髄移植を受けました。しかし、その後に肺や肝臓の疾患も発症し、移植が必要になりました。
手術は、父親(40歳代)の右肺の一部、母親(40歳代)の左肺の一部、祖父(60歳代)の肝臓の一部をそれぞれ移植。4つの手術室を使い、医師ら約30人が参加して、約18時間かかりました。両親と祖父は、すでに社会復帰しているといいます。
男児の両親は病院を通じ、「当初はもう打つ手はないものと絶望的な気持ちで、(移植手術は)唯一の希望でした。今回の移植を機に、これまで移植をあきらめるしかなく、何もできないもどかしさや絶望感を抱えている患者さんや親族の方の一筋の光になればうれしいと考えております」とコメントしました。
2024年3月4日(月)
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