デング熱などを媒介するネッタイシマカが「腹八分目」で血を吸う行動をやめるメカニズムを解明したと、理化学研究所と東京慈恵会医科大のチームが発表しました。針を刺すことで血液中に生じる物質が、蚊に満腹感をもたらしているといいます。蚊の被害を防ぐ薬の開発に役立つ可能性があり、論文が21日、アメリカの科学誌「セル・リポーツ」(電子版)に掲載されます。
ネッタイシマカは東南アジアや南アメリカなどに生息するヤブ蚊の一種で、デング熱やジカ熱などのウイルスを媒介します。
人や動物の血液に含まれるATPという物質が蚊の「食欲」を促していることはわかっていたものの、腹部が吸った血で満たされる前に逃げることが多く、何を切っ掛けに「食事」をやめるのかはわかっていませんでした。
理研の佐久間知佐子・上級研究員らは、ネッタイシマカが好むATPの溶液に、血液から赤血球などを取り除いた上澄みだけを加えると、あまり吸わなくなることを発見。上澄みの中に、蚊に満腹感をもたらす物質があると推定して成分を絞り込んだ結果、「フィブリノペプチドA」という物質がかかわっていることを突き止めました。
この物質は、血液の凝固に欠かせないフィブリノーゲンというタンパク質から作られます。蚊が血管に針を刺した刺激で血液の凝固反応が進んでこの物質が増え、蚊の体内にある程度蓄積すると血を吸う行動を終えることがわかりました。
ネッタイシマカと同じヤブ蚊の仲間で、国内に多いヒトスジシマカなども、同じ仕組みを持っているとみられ、佐久間上級研究員は「蚊の体内でどのような反応が起きて満腹と感じているかがわかれば、吸血を抑える薬を作れるかもしれない」と話しています。
蚊の感染症対策に詳しい愛媛大の渡辺幸三教授(熱帯疫学)は、「独創的な研究成果だ。血を吸うのはメスの蚊で、卵が成熟する栄養となる。蚊の吸血行動を抑えることは個体数を減らすことにもつながるだろう」としています。
2024年6月21日(金)
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