小児がんの治療成績は近年大きく向上し、8割以上の患者が長期生存できるようになった。一方、抗がん剤投与や放射線照射の長期にわたる影響で心臓などに障害が発生する恐れがあることが知られている。
聖路加国際病院と順天堂大浦安病院は、小児がん経験者の7人に1人に当たる14%で、心臓が血液を送り出す機能に問題があったとの共同研究結果を発表した。
研究では、聖路加国際病院で検査を受けた18歳以上の小児がん経験者108人で、心臓の超音波検査の結果を解析して心機能を詳しく調べた。対象者は、いずれも小児がんの診断から10年以上、治療を終えてから5年以上(平均16年)経過し、検査時の年齢は中央値で25歳だった。
解析により、108人中15人は、左心室の血液がどのぐらい押し出されたかを表す「駆出率」が53%以下に低下し「がん治療関連心機能障害」と診断された。
この15人では、駆出率の低下に先駆けて変化することが知られている左心室の「縦方向の伸縮の程度」が低下し、しかも、特定の部位にその低下が目立つことも明らかになった。研究チームは、これを調べられれば機能障害の早期発見につながる可能性があり、発見時の有効な治療法についても検証する。
こうした心機能障害はアントラサイクリン系と総称される抗がん剤を投与された場合に発症リスクが上がる。今回の研究では、総投与量が体表面1平方メートル当たり150ミリグラム以上でリスクとなることも判明した。
小児がん経験者は、がん治療の内容や使った薬剤の種類、量を記録した「治療サマリー」を治療終了後も長期に保管し、自分で把握しておくことが大切だとしている。
2025年10月29日(水)
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