国際電気通信基礎技術研究所(本社・京都府)などが開発した、脳の活動を解析して医師のうつ病診断を助ける人工知能(AI)が厚生労働省から薬事承認を受けた。血流の変化を捉える機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)の撮影画像を用いて脳活動のパターンを数値化し、臨床現場で客観的な診断を助ける。
うつ病は抑うつ気分のほか不眠、気力の減退などの多様な症状が出る症候群。血液中の物質など診断基準となる指標が見付かっていないため、ほかの疾患との判別が難しく、診断がばらつくことが課題だった。
開発チームは、健康な人とうつ病のある人の平常時の脳活動を記録したfMRI画像約1200人分を収集。うつ病に特徴的な脳活動のパターンをAIに学習させた。画像からうつ病の程度を算出した結果、どの施設の画像でも、うつ病かどうかを約70%の精度で判別できたという。
医療用のソフトウエア(プログラム医療機器)としての承認を今年3月に取得。現在進行中の臨床試験の結果を踏まえ、来春にはうつ病の確率を導き出す2段階目の承認に向けた申請を予定する。将来的に保険適用を目指すとしている。
開発チームは統合失調症や双極性障害、自閉スペクトラム症の診断を補助する手法も開発中だ。特に双極性障害はうつ病との判別が難しく、AIが有用な可能性があるという。うつ病治療薬の効きやすさを調べるプログラムも実用化を目指す。
国際電気通信基礎技術研究所脳情報通信総合研究所の川人光男所長(計算論的神経科学)は、「患者は検査をしてもらえなかったり、診断名が数年で変わったりすることにストレスを感じている。客観的な診断で診断名が揺るがなくなれば福音だ」と話した。
2025年10月5日(日)
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