患者の健康にとってほとんど、または全くメリットのない「低価値(ローバリュー)な医療」に、日本では年間に最大で3000億円以上費やされているとする試算を、筑波大学やアメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校などのチームがまとめた。
研究結果は、専門家による査読を受ける前の論文(プレプリント)として公表した。
うち456億円を、長期的な腰の痛みなどに対する湿布薬などの「外用薬」の処方が占めた。長期の痛みにこれらの薬は効果が乏しいとされ、増え続ける医療費を抑えるための議論にも影響を与えそうだ。
低価値な医療にはさまざまなケースがあり、典型的なのが「風邪に対する抗菌薬の処方」。ウイルス感染が原因となる一般的な風邪には、細菌をやっつける抗菌薬を使っても効果がなく、薬が効きにくい耐性菌を生むなど、弊害のほうが大きい。
こうした低価値な医療のうち、どんな医療行為がどれくらい、無駄ともいえる医療費の支出につながっているのか。チームは医療費の請求に用いられる「診療報酬明細書」(レセプト)のデータベースを用いて調べた。
これまでの研究などをもとに、価値が低い、または全くないと判断できる薬の処方や検査、手術など52種類の医療行為を選定。2022年4月~2023年3月に、国内のさまざまな世代約190万人に提供された医療行為のうち、低価値な医療に該当する件数やかかった医療費を算出した。
何を低価値な医療行為とするか、判断する基準には幅もあるため、件数や医療費はより厳しめの定義(狭義)とやや広めの定義(広義)にわけて導き出した。
2025年11月2日(日)
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