厚生労働省は、市区町村が行う検診のデジタル化を進め、検査結果などを匿名化してデータベースに集約する事業に乗り出す。ビッグデータは大学や専門機関での医療研究に活用したい考えだ。住民側もスマートフォンで検診結果などを確認できるメリットがあり、受診率の向上も期待される。
来年3月にも東京都千代田区や大阪府吹田市、宮崎県都城市など8市区町で、がんや歯周病など一部の検診を対象に実証事業を開始する。情報連携システムを構築し、自治体、医療機関、受診者の情報連携の検証を行い、2029年度には全国での実施を目指す。
検診情報については、氏名などの個人情報がわからないように匿名化の処理をした上で、データベース化を進める。役所が持つ難病など公費負担医療の受診記録や予防接種の履歴などの情報と集約するほか、診療報酬明細書(レセプト)や特定健診などの情報を集めた別のデータベースとひもづけることも想定している。
こうした医療情報を一元化することで、膨大なデータの分析が可能となる。大学や研究機関にデータを提供することで、病気の予防方法の発見などに結び付けたり、医療政策の立案に生かしたりする狙いがある。
自治体の検診は、健康増進法に基づいて行われ、住民は低価格や無料で受けられる。現在は郵送などで受診券が届き、紙の問診票に記入する仕組みだ。
デジタル化により、マイナンバーカードでの受診や、スマートフォンでの問診票入力が可能となる。マイナカードの専用サイト「マイナポータル」で検診結果を確認することもでき、住民側の利便性が高まることで、受診率の向上につながりそうだ。役所や医療機関は紙の資料送付といった作業の省力化を図ることができる。
厚労省は2026年度予算の概算要求に24億円の関連費用を計上している。
2025年11月10日(月)
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