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2022/08/01

🇵🇦太田母斑様色素斑

顔面に青みがかった茶褐色の色素斑がいくつかまとまって出現する皮膚疾患

太田母斑様色素斑(おおたぼはんようしきそはん)とは、顔面に青みがかった茶褐色の色素斑がいくつかまとまって出現する皮膚疾患。両側性遅発性太田母斑様色素斑、後天性真皮メラノサイトーシス、ADM(Acquired Dermal Melanocytosis)とも呼ばれます。

従来は、両側性太田母斑の亜型とされていましたが、現在は、独立疾患として扱うのが標準的になってきています。

幼少期よりできるそばかす(雀卵〔じゃくらん〕斑)と似ていることもありますが、顔に発生する後天性皮膚疾患の一つで、20〜30歳代から中年の女性に多く見られ、特に日本人や中国人に多いといわれています。

通常は表皮にあって、メラニン(メラニン色素)という皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)が、表皮に出ていけずに顔の皮膚の深い位置にある真皮にとどまって増殖しているために、色素斑が出現します。

遺伝性も高いとされるものの、加齢、日焼け、ホルモンバランスの崩れなどの影響が考えられています。

額の両端、頬骨(ほおぼね)部、鼻翼部などに、直径1〜3ミリのおよそ茶褐色の色素斑が、いくつかまとまって出現します。顔面の両側に左右対称に多発することもよくあります。

小さな点の集合であるために染みのようにも見えますが、実際はあざの一種として分類されます。

真皮に存在するメラノサイトの深さの程度により、茶褐色から灰色、さらに青色へと進行変化するため、色素斑の色はさまざまです。

太田母斑様色素斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。患部に、染みの一種である肝斑(かんぱん)や、老人性色素斑(日光性黒子)、そばかすなどが混在していると判別が難しいものの、多くは左右対称に出現することなどから判断します。色素斑をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮層に色素含有メラノサイトが認められます。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。

Qスイッチレーザー治療は、レーザー光線を皮膚に当てるもので、皮膚の表面にはダメージを与えず、その下の真皮層にあるメラノサイトを選択的に焼灼(しょうしゃく)することができます。ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザー、フラクショナルレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。

いずれのQスイッチレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行い、2〜3カ月の間隔で、少なくとも3~5回の照射を行います。まれに軽い色素沈着を残したり、白色に変化する色素脱出を来すこともありますが、外用剤を使用すると、1・5〜3カ月程度でレーザーの跡が薄くなります。

色素斑の消失率はほぼ70パーセントとされ、消えた色素斑は再発しません。

液体窒素で色素斑の凍結、融解を繰り返す凍結治療や、外科的に切除し他の部位から皮膚を移植する方法もあります。

💅オーバーカーブドネイル

爪の甲が高度に弓なりに曲がり、両側縁に食い込んだ状態

オーバーカーブドネイルとは、爪(つめ)の甲の先端が両側縁に向かって深く湾曲して、側爪廓(そくそうかく)に巻き込み、爪の甲の周りを囲んでいる爪廓部を損傷する状態。巻き爪、過湾曲爪、ピンサーネイルとも呼ばれます。

側爪廓に食い込んでいるものは陥入爪、またはイングローンネイルといい、側爪廓に巻き込んでいて爪の両端が丸まっているオーバーカーブドネイルは、陥入爪の変形です。オーバーカーブドネイルと陥入爪は、合併して起きることもあります。

オーバーカーブドネイルは足の爪に起こることがほとんどで、まれには手の爪にもみられます。統計的に欧米人に多く、また3対1の割合で男性に多いとされていましたが、近年では、日本人の間にも老若男女を問わず急速に増加し、ことに若い女性での発生が目立ちます。

主な原因は、先天的な爪の異常、爪の外傷、爪の下がうむ疾患であるひょうそ後の変形です。これに、窮屈な先の細い靴による爪の圧迫、不適当な爪切り、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の血流障害、あるいは、爪の水虫による爪の甲の変形などが加わって、悪化します。

爪の甲の端が爪廓部に巻き込むと、圧迫によって痛みを生じます。また、巻き込んだ爪の甲が爪廓部の皮膚を突き刺すようになると、指の回りがはれたり、その部分を傷めて痛みが増強します。

爪の甲の端が変形して起こるため、肉眼で確認しづらい状態で進行していくことが多く、気付いた時には皮膚に深く巻き込んでしまっていることもあります。場合によっては、出血を起こすほどに爪が深く突き刺さってしまうこともあります。

この傷に、ばい菌が入ると、より赤くはれ上がってくるとともに、赤い出来物を生じるようになります。これを化膿性肉芽腫(かのうせいにくげしゅ)と呼びます。

ひょうそなどの感染は、オーバーカーブドネイルや陥入爪を誘発したり、悪化させたりするため、早期に適切な治療を必要とします。オーバーカーブドネイルや陥入爪の再発を繰り返す場合や、側爪廓の盛り上りが強すぎて歩行に支障を来すような場合には、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の専門医による外科的治療を行わないと完治しません。

オーバーカーブドネイルの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療の基本となるのは、爪の端を皮膚に刺さらないように浮かせて伸ばし、とげ状の部分をカットする方法と、手術で爪の端を取り除く方法です。爪の変形が強くなるため、原則的に抜爪は行われません。

オーバーカーブドネイルの矯正にはさまざまな方法があり、プラスチック製のチューブを爪の端に装着するガター法も行われています。爪を切開して、爪の端をチューブで包むことで指の組織を保護するのが目的で、傷口が化膿している場合などに、ガーター法は行われます。

形状記憶合金のワイヤーやプレートを使用する方法もあります。ワイヤー法は、爪の先端に2カ所穴を開け、太さ0・5ミリ程度の特殊なワイヤーを通して矯正する方法です。早ければワイヤーを装着した直後に痛みが治まり、ほとんどが数日中には痛みなどの症状が軽くなります。2~3カ月に1度、ワイヤーを入れ替えて爪を平らな状態に近付けていきます。ワイヤーの装着後も通常、運動の制限や入浴の制限などはありません。

プレート法は、主にオーバーカーブドネイルと陥入爪を併発して症状がひどく、痛みもひどい場合や、ワイヤーの穴を開ける余裕がない場合などに行われます。爪の表面に、形状記憶合金製のプレートを医療用の接着剤を使用して接着します。後は自宅で、ドライヤーなどの熱を利用して1日に2〜3回、オーバーカーブドネイルの部分に熱を加えてプレートを伸ばすだけです。

また、深爪した爪、巻き込んでいる爪の先端にアクリル樹脂の人工爪を装着して、人工的に爪が伸びた状態を作り、周囲の皮膚への巻き込みを緩和し、オーバーカーブドネイルを矯正する人工爪法もあります。

矯正や人工爪による治療は時間がかかりますが、手術と違ってメスを使わないので痛みもほとんどなく、見た目も正常にになるという利点があります。

オーバーカーブドネイルを治療するためではなく、化膿した組織を治すためには、硝酸銀が使われます。硝酸銀をオーバーカーブドネイルでできた傷口に滴下し、傷口を溶かし正常な組織への再生を促します。硝酸銀が滴下された皮膚は、しばらくの間、黒く染色されます。

オーバーカーブドネイルがひどい場合、激しい痛みがある場合には、爪の元となる組織である爪母を除去する外科手術を行って、改善を図ることがあります。爪母を外科手術で除去する鬼塚法と、薬品で爪母を焼き取るフェノール法がありますが、どちらも再発する可能性があるというデメリットがあります。近年では、レーザーメスを使って爪母を切除する方法も開発されています。いずれにしろ、外科手術は最後の手段となる場合がほとんどです。

生活上の注意としては、まず足指を清潔に保つことが大切なので、多少ジクジクしていても入浴し、シャワーでばい菌を洗い流します。ばんそうこうなどで傷口を覆うと、かえって蒸れてばい菌が増殖します。消毒した後、できれば傷を覆わないか、風通しのよい薄いガーゼ1枚で覆います。

窮屈な靴、特にハイヒールや先のとがった革靴などは、爪を過度に圧迫するので避けます。爪切りの際には、かえってオーバーカーブドネイルを増強させる深爪にしないように気を付けます。

🐇大原病

野ウサギなどとの接触で引き起こされる感染病

大原病とは、グラム陰性菌の野兎(やと)病菌によって引き起こされる感染症。野兎病、ツラレミアとも呼ばれます。

日本では野ウサギとの接触で感染することが多く、福島市の開業医であった大原八郎が1925年、地域的に流行していた感染症の原因を解明する過程で、感染源と思われる野ウサギから野兎病菌を分離しました。

世界的には北アメリカ、北ヨーロッパ、北アジアに広くみられ、日本では北海道、東北、関東地方で多くみられ、野兎病菌に感染した野ウサギ、モグラ、リス、ネズミ、ハムスターなどの齧歯(げっし)類に触ることで、主に感染が起こります。

冬場の感染症はほとんどが野ウサギとの接触によって起こり、特にその皮をはぐ時に起こります。夏場は、野兎病菌を持ったカやアブ、ダニに刺されて起こります。

まれに、火が十分に通っていない齧歯類の肉を食べたり、野兎病菌に汚染された水を飲んだり、野兎病菌に汚染された干し草を扱ったり、齧歯類の食肉解体中や芝刈り機で動物をひいて空気中に舞い上がった菌を吸い込んだりすることでも起こります。この野兎病菌は、傷のない皮膚からも侵入することができるのが特徴。

猟師、食肉処理業者、農業従事者、毛皮製造業者、検査技師に多くみられ、散発的に起こりますが、時に流行を示すことがあります。過去、スウェーデン、フィンランド、アメリカでは、カの媒介による流行がありました。

野兎病菌は10〜50個の菌だけでも感染、発症する可能性があり、重症の疾患を起こし死者も出すことがあることから、生物兵器として使われる可能性が心配されています。人から人への感染例は、報告されていません。

日本では、第二次世界大戦前は年平均13.8件の発生がありましたが、戦後は食糧難のために野ウサギを捕獲、解体する機会が増加し1955年まで年間50~80例と急増しました。その後減少傾向を示し、1999年、2008年の千葉県での各1例の発生以降、感染例の報告はありません。

大原病には、4種類の型があります。最もよくみられるのが潰瘍(かいよう)リンパ節型で、手や指に潰瘍ができ、感染部位と同じ側のリンパ節がはれます。2番目の眼リンパ節型では、目に充血やはれが生じ、リンパ節もはれます。この型は、感染した指や細菌のついた指で目に触れたり、感染部位の体液が目に入ることで起こると考えられます。

3番目は扁桃(へんとう)リンパ節型で、リンパ節がはれるだけで潰瘍はできないことから、食物を通して体内に入った細菌が原因と思われます。4番目はチフス型で、高熱、腹痛、激しい消耗がみられ、リンパ節のはれはみられません。

野兎病を引き起こす細菌を吸い込んだ場合には、肺炎を起こすこともあります。

菌と接触してから1〜10日後、通常は2〜4日後に突然症状が現れます。まず、頭痛、悪寒、吐き気、嘔吐(おうと)、約40度に達する熱、激しい疲労感が起こり、続いて、極度の脱力感、悪寒の繰り返し、大量の発汗が起こります。

扁桃リンパ節型とチフス型の大原病を除き、24〜48時間以内に指、腕、目、口蓋(こうがい)などの感染部に炎症性の水疱(すいほう)が現れます。水疱にはすぐに膿(うみ)がたまり、破れて潰瘍になります。腕や脚には単独でできますが、目や口の中にはいくつもできます。

潰瘍周囲のリンパ節ははれて膿を持ち、膿はやがて排出されます。発疹(はっしん)は疾患の経過中、いつでも現れることがあります。

肺炎が起こることもあるものの、空せきや胸の中心部に焼けるような痛みが起こるだけで、あまり重い症状は現れません。ただし、中にはせん妄を起こすケースもあります。

大原病の検査と診断と治療

カやアブ、ダニに刺されたり、ウサギやリスなどの野生動物と少しでも接触したりした後で、急な発熱、リンパ節のはれ、特徴的な潰瘍がみられた場合に、大原病と診断されます。

検査技師が感染した場合は、リンパ節や肺のみに限った感染のことが多いので、診断するのは難しく、野兎病菌は特別の培地で培養することになります。

大原病の治療では、抗生物質のストレプトマイシンを7〜14日間注射します。潰瘍には湿性包帯を当て、頻繁に取り替えます。包帯をすることによって、感染の広がりを防ぐことができます。まれに、大きな膿のかたまりである膿瘍ができて、切開して膿を吸い出さなくてはならなくなります。

症状が出た目には温湿布を当て、サングラスをかけるといくらか楽になります。激しい頭痛がある場合は、コデインのようなオピオイド系鎮痛薬を使います。

放置すると約3人に1人は死亡しますが、治療すればほぼ全員が助かります。死亡するのは感染が手に負えないほど広がった場合や、肺炎、髄膜炎、腹膜炎などを起こした場合です。再発はまれなものの、治療が不適切だと起こります。大原病にかかると免疫ができます。

野兎病菌は、水や土、齧歯類の死体や皮の中で何週間も生存可能です。ただし、熱には弱く、55度で10分の加熱で不活化します。野兎病菌で飲用水の水源地が汚染されても、塩素殺菌などの通常の処理で、飲用水による感染は防げると考えられています。

一般の場で野兎病菌で汚染されたものの表面の消毒の一つの方法としては、まず、0.5パーセントの次亜塩素酸ナトリウム溶液をスプレーします。10分後に今度は70パーセントのアルコールを使用します。アルコールはよく燃えますので、火気に注意する必要があります。次亜塩素酸ナトリウム溶液についても塩素ガスを発生したり、脱色作用があったりします。薬品の使用に当たっては、注意が必要です。

🇻🇦オカルト黄斑ジストロフィー

眼球内部の網膜にある黄斑が障害され、両眼の視力が低下する遺伝性疾患

オカルト黄斑(おうはん)ジストロフィーとは、網膜の中心部の黄斑の機能が徐々に傷害され、両眼の視力が徐々に低下していく遺伝性の疾患。先天性黄斑変性症とも呼ばれる黄斑ジストロフィーの一種です。

オカルトは「目に見えない」という意味で、ジストロフィーは遺伝子の異常により組織や臓器が徐々に変性することを指します。

眼球内部にある黄斑は、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。

この黄斑に変性がみられると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに変性がみられると、視力の低下がさらに深刻になります。

オカルト黄斑ジストロフィーは1989年、名古屋大学の三宅養三教授により発見されました。

眼科の医師による一般診察では、オカルト黄斑ジストロフィーの診断が不可能で、通常の眼底検査では黄斑が全く正常に見えて異常が見付かりません。診断には、限られた施設にのみ備えられている多局所網膜電図という特殊な装置を必要とするため、弱視、視神経症、緑内障、白内障など異なる疾患と誤診され、誤った治療を受ける例が非常に多くみられます。

発症の多くには遺伝が関与しており、2010年に東京医療センター感覚器センターと東京大学医学部神経内科との共同研究チームによって、優性遺伝タイプの原因遺伝子がRP1L1であることが解明されました。しかし、オカルト黄斑ジストロフィーの半数以上は劣性遺伝、もしくは家族の中には全く発症者がみられないのに、突発的に発症者が現れる散発例(孤発例)の可能性があること、RP1L1遺伝子の生理的機能が不明であることなどがあり、疾患原因は完全には解明されていませんし、根本的な治療法はありません。

オカルト黄斑ジストロフィーの発症年齢は、10歳から60歳までとさまざまです。発症者は5000人と推定されてますが、ほとんどの症例は異なる疾患、あるいは原因不明と診断されているため、実数は不明。

黄斑に分布して、主に中心の視力や色覚などに関係している錐体(すいたい)細胞が機能不全を起こすことにより、両眼の視力が徐々に低下していきます。普通の光がまぶしく、目が痛み、涙が出る羞明(しゅうめい)を生じることもあります。

進行性の疾患ですが、その進行速度は緩やかで、個人差もあります。最終的には矯正視力が0・1〜0・2程度となり、特に視力に最も重要な中心窩の機能が傷害されるため、中心視野の欠損を生じ、著しく書字困難、識字困難になるなど社会生活に大きな支障を来します。しかし、一定の年月がたつと進行が止まり、失明には至りません。黄斑以外の機能は障害されないため、周辺視野は晩期まで保たれます。

オカルト黄斑ジストロフィーの検査と診断と治療

眼科の医師による一般診察では診断が不可能で、多局所網膜電図による電気生理学的検査でのみ異常が検出されるため、限られた眼科施設でのみ診断が可能です。OCT(光学的干渉断層計)を使用した光干渉断層像で中心部網膜が薄くなることが、補助診断となります。

両眼対称性であること、進行性であること、家族にかかった人がいることなどが、重要な手掛かりになります。異常を起こす原因遺伝子が突き止められている優性遺伝タイプのオカルト黄斑ジストロフィーでは、RP1L1遺伝子の検索も決め手になります。

残念ながら、オカルト黄斑ジストロフィーでは疾患原因が不明であり、根本的な治療法は見いだされていませんので、視力の大幅な低下を避けることはできません。羞明に対して、サングラスの装用を勧めるなどの指導を行うことになります。

症状に応じて遮光眼鏡、弱視眼鏡、拡大読書器、望遠鏡などの補助具を使用することが有用で、周辺視野と残った中心視を活用できます。その他のリハビリテーションも重要です。

いつの日か、先端的医療の進歩が根本的な治療法を可能にすることも期待されていますが、弱視学級や盲学校での勉学、職業訓練など、将来を見通して現実的に対応することが有益でしょう。

🇻🇦小口病

先天性の夜盲のみが症状で、明るいところでは視力、視野、色覚とも正常な眼疾

小口(おぐち)病とは、先天性の夜盲のみが症状で、明るい場所では視力、視野、色覚とも正常な、先天性夜盲の一疾患。小口氏病とも呼ばれ、1905年(明治38年)に、日本の眼科医である小口忠太が初めて報告しました。

夜盲とは、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる疾患。夜盲症とも呼ばれ、俗に鳥目と呼ばれます。この夜盲には、先天性夜盲と後天性夜盲があります。

先天性夜盲は遺伝性で、小口病のほか、狭義先天停止性夜盲症、先天性夜盲性眼底白点症、白点状網膜炎、網膜色素変性症などがあります。これらの先天性夜盲にはさらに、幼児期より徐々に発症して病状が進行する進行性夜盲と、発症しても生涯進行しない停止性夜盲とがあります。

一方、後天性夜盲は、ビタミンAの欠乏によって発症します。網膜にあって、夜間の視覚を担当するロドプシンという物質が、ビタミンAと補体から形成されているため、ビタミンA不足は夜間視力の低下につながるのです。

後天性夜盲の場合は夜間や暗い場所で見づらくなることで気付きますが、先天性夜盲の場合は物心がつくころに気付くことが多く、生まれ付き視力障害が強い場合は、家族が気付いて眼科を受診することが多いようです。

先天性夜盲の一疾患であり、先天性停止性夜盲の一疾患でもある小口病は、生まれ付きの夜盲のみが症状で、夜盲の程度は生涯進行しないとされており、明るい場所では視力、視野、色覚は通常正常といわれています。遺伝形式は常染色体劣性遺伝をとります。比較的まれな疾患ですが、日本では比較的多くみられ、夜間でも十分な明かりのある現代社会では、気付かずに生活していることもしばしばあります。

ただし、停止性と考えられていますが、50歳代以降で、ドーナツ状に見えない部分が生じる輪状暗点という視野障害を来す場合もみられます。

特徴は、はげかかった金箔(きんぱく)様と表現される特徴的な眼底の色調。眼科の医師が検眼鏡で調べると、眼底は汚い金箔様の色調を帯び、血管は赤黒く細く周辺部まで見えます。しかし、暗所に3〜4時間いると眼底の色調はすっかり消え、正常な色調に戻り、光覚もかなりよくなりますが、再び外に出ると、すぐに元通りになります。

小口病の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、視力検査、視野検査、暗順応検査(暗い場所で、どれだけ対応できるかを調べる検査)、網膜電位検査、眼底検査などを行います。特異的な眼底所見、正常な視力、視野、色覚、網膜電位検査で正常な錐体(すいた)細胞の反応と杆体(かんたい)細胞の反応低下を認めることで、小口病と確定します。

現在のところ、小口病の有効な治療法はなく、暗順応を改善させる薬を内服したり、光刺激を防ぐ遮光眼鏡を使用したりといった程度にとどまります。しかし、視力低下、視野障害、色覚障害などは通常みられないため、予後は良好です。

🇵🇰オクロノーシス

軟骨組織、線維組織に黒色の色素が沈着する病態

オクロノーシスとは、黒尿(こくにょう)症とも呼ばれるアルカプトン尿症の発病者にみられる病態で、軟骨組織、線維組織に黒色の色素が沈着する症状。組織黒変症とも呼ばれます。

黒尿症とも呼ばれるアルカプトン尿症は、生まれ立ての新生児の汗や尿中にホモゲンチジン酸(アルカプトン)が排出され、放置すると酸素と反応して黒変する疾患で、先天性アミノ酸代謝異常症の一つです。

ホモゲンチジン酸酸化酵素(ホモゲンチジン酸ジオキシゲナーゼ)の欠損によるまれな疾患で、常染色体劣性遺伝の形を取ります。発症頻度は、新生児300万人~500万人に1人。

ホモゲンチジン酸酸化酵素は、必須(ひっす)アミノ酸の一つであるフェニルアラニンや、非必須アミノ酸の一つであるチロシンの中間代謝物であるホモゲンチジン酸を分解して、アセト酢酸やフマル酸を生じます。この肝臓や腎(じん)臓などの臓器にある触媒酵素が欠損すると、ホモゲンチジン酸の重合体がそのまま汗や尿中に排出されます。

放置すると自然酸化によって汗や尿が黒色を示すのが特徴で、新生児のおむつが黒色に変化していることで、アルカプトン尿症に気付くこともあります。

また、ホモゲンチジン酸が軟骨組織やその他の結合組織に長期にわたって沈着することで、成人以降にオクロノーシスや関節症を起こします。

オクロノーシスは組織黒変症とも呼ばれ、30歳以降に現れ始めて、30歳代後半から40歳代に多くみられます。ホモゲンチジン酸の重合体が結合組織に沈着した場合に現れ、初めは目や耳に灰色がかった青い色素の沈着が認められ、年齢が進むと全身の軟骨組織、線維組織に黒色の色素の沈着が及びます。

関節症は、20歳代から現れます。ホモゲンチジン酸の重合体が関節軟骨組織の構成成分である膠原(こうげん)線維に黒く沈着すると、軟骨は正常の弾力を失い、もろい細片となって、関節の退行変性が進行します。関節の滑膜に、この色素を含む軟骨片が沈着して腫瘤(しゅりゅう)を作ることもあります。

30歳代には、脊椎(せきつい)関節の運動制限、時に痛みが現れます。次いで、膝(ひざ)、肩、股関節(こかんせつ)など全身の大きな関節が侵されます。重篤で病期が長い場合には、脊椎が強直化して、寝たきりの生活を余儀なくされる場合もあります。

その他の症状として、大動脈弁や僧帽弁の石灰化や閉鎖不全、大動脈拡張、腎臓結石、前立腺(ぜんりつせん)結石が生じることもあります。

オクロノーシスは、中年期以後に関節症あるいは脊椎症を呈して病院を受診し、偶然に発見されることが多くなっています.

オクロノーシスの検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、尿検査を行い、尿中のホモゲンチジン酸(アルカプトン)が高値であることから、アルカプトン尿症と確定します。発病者のホモゲンチジン酸の1日排出量は、通常1~8グラムとなります。

整形外科の医師による成人以降に起こるオクロノーシスや関節症の診断では、X線(レントゲン)検査を行い、関節軟骨の黒色化、脊椎や腰椎、膝関節などの石灰化が認められれば確定できます。肝臓や腎臓の一部を切り取って、顕微鏡で組織検査をする生検を行い、ホモゲンチジン酸酸化酵素の欠損を証明することもあります。

循環器科、外科、泌尿器科などの医師による心臓の合併症、泌尿器の合併症の診断では、X線(レントゲン)検査、心エコー検査、超音波検査、CT検査、MRI検査などを行い、大動脈弁や僧帽弁の石灰化や閉鎖不全、大動脈拡張、腎臓結石、前立腺結石が認められば確定できます。

小児科の医師による治療は、残念ながらアルカプトン尿症の有効な治療法が見付かっていないため、色素の沈着を抑えると考えられているビタミンCを投与します。フェニルアラニン制限食、低チロシン食を摂取する治療法もありますが、長期間厳格に実施することはむしろ危険とされます。

整形外科の医師によるオクロノーシスや関節症の治療では、アルカプトン尿症の若年患者に対して関節症の重症化を避けるため、脊椎や大きな関節に負担となる重労働や衝撃の大きいスポーツなどを回避することを勧めます。関節症による運動制限に対して、外科的な切除術、人工関節置換術を行うこともあります。

循環器科、外科、泌尿器科などの医師による治療では、外科的処置が行われることもあります。

常染色体劣性遺伝の形を取るアルカプトン尿症の唯一の予防策は、血族結婚を避けることです。

🇵🇰オスグッド病

成長期の子供にみられ、膝の下の骨がはれ、痛みを起こす疾患

オスグッド病とは、膝(ひざ)の皿に当たる膝蓋骨(しつがいこつ)の1~2cm下がコブのようにはれ、痛みを起こす疾患。発育が旺盛な時期の子供、特に10〜15歳の男子に多く発生します。

足を頻繁に使うスポーツなどで症状が誘発されることもあるため、スポーツ障害の一つとしても考えられています。また、成長期の子供の軟骨に障害が起き、痛みを伴う骨端(こったん)症の一つにも数えられています。

発症する骨は脛骨粗面(けいこつそめん)といわれ、その骨端軟骨に隆起や分離、一部がはがれる遊離が生じるために、はれ、痛みが起こります。ひどい時には、通常の歩行時にも痛みが起こることもあります。

原因にはいろいろな説がありますが、現在ではスポーツなどによる使いすぎ症候群の一つされ、非常に広い意味での疲労骨折と考えてもよいとされています。

膝を伸ばす筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は、膝蓋骨と膝蓋靱帯(じんたい)を介し脛骨粗面に付着しています。従って、ランニングやジャンプの動作などにより、太ももの筋肉である大腿四頭筋が収縮すると、膝蓋靱帯を通して脛骨粗面に牽引(けんいん)力が繰り返しかかることになり、骨端軟骨に隆起や分離、遊離が起きます。

成長とともに治る場合も多いのですが、できれば整形外科を受診し、症状によってはスポーツを中断して回復を待ったほうがよいこともあります。

整形外科の医師による診断は、痛みの部位とレントゲン写真により容易にできます。治療は、痛みの程度やスポーツ時の障害の程度によって異なります。非常に痛みが強い場合には一時的にスポーツを休止する必要がありますが、基本的には活動を続けながら治療します。

軽症例では、消炎鎮痛剤入りの外用薬などで軽快します。痛みが強ければ、ギプスなどで膝関節を固定して安静を図ることもあります。

多くの場合はスポーツを控え、安静を図る程度で痛みは治まりますが、スポーツを続けた場合で活動時の痛みが続く時には、脛骨粗面にかかるストレスを軽減する特殊なサポーターを装着する方法もあります。スポーツ前後の大腿四頭筋のストレッチング、特に活動後のストレッチングと氷などでの患部の冷却は効果的で、ふだんのストレッチなどのケアをしっかりし、痛みかひどくならないように活動量をコントロールすれば、スポーツを続けながら治療できます。

オスグッド病による膝の痛みは、男子の場合で15歳から16歳で骨の成長が完了するに伴って軽減し、将来障害が残ってスポーツに支障を来すことはほとんどありません。ただし、骨の隆起は残ります。

🇭🇹オスラー病

全身の各種臓器に生じた異常血管からの出血をみる疾患

オスラー病とは、全身の各種臓器に異常血管が生じる結果、異常血管からの出血をみる疾患。遺伝性出血性末梢(まっしょう)血管拡張症、遺伝性出血性毛細血管拡張症、ランデュ・オスラー・ウェバー病とも呼ばれ、難病指定を受けている遺伝性疾患です。

フランスの内科医H・ランデュ、アメリカの内科医W・オスラー、イギリスの内科医F・ウェバーの3人が 、1901年に初めて報告しました。

オスラー病で認める出血は鼻血程度のこともありますが、肺や脳、消化管、肝臓などの臓器に生じる重篤な出血であることもあります。オスラー病の症状は軽微なものから重篤なものまで幅広く、特に鼻血は一般の健康な人にもよく見られる症状であるため、オスラー病の頻度を正確に決定することは必ずしも容易ではありません。日本における発症頻度は5000人から1万人に1人と推定されており、国内に1万人から1万5000人ほどの発症者がいるのではないかと報告されています。

オスラー病には代表的な3つの遺伝子異常が関与していることが知られており、具体的にはACVRL1(ALK1)、ENG(Endoglin)、SMAD4と呼ばれる遺伝子です。オスラー病はいくつかのタイプに分類されますが、異常血管が生じやすい部位や発症様式はこれら遺伝子異常の出方の違いにより説明される部分もあります。

これらの遺伝子は、正常な血管を構築するのに重要な遺伝子であると考えられています。そのため、ACVRL1(ALK1)、ENG(Endoglin)、SMAD4といった遺伝子に異常が生じると、正常な血管の構築がなされなくなり、異常血管が各種臓器に生じることになります。なお、ここで挙げた3つの遺伝子異常以外の関与も疑われています。

正常な血管は、動脈、毛細血管、静脈の順につながっています。動脈には高い圧力がかかりますが、毛細血管を血液が流れる間に血圧は徐々に低下し、静脈の圧力は動脈に比べて非常に低くなります。しかし、オスラー病では毛細血管の構築が不十分なこともあり、動脈の高い圧力がダイレクトに静脈に伝わるようになります。その結果、皮膚の静脈が拡張したり、肺や脳、消化管、肝臓などに存在する静脈から出血を来したりするようになります。

オスラー病は、常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取ります。この遺伝形式は、両親いずれかが疾患を発症していると、その子供も病気を発症する確率は理論上50%です。常染色体優性遺伝をする疾患では最も高頻度であるといわれており、オスラー病の別名である遺伝性出血性末梢血管拡張症は、以上のような特徴を包括したものです。

オスラー病で最も多い症状は鼻出血であり、80~90%の発症者で認めるといわれています。軽い外傷でも出血し、多くのオスラー病は思春期の鼻出血として始まります。

静脈に高い圧力がかかるとそのぶん血管が拡張するため、拡張した血管が顔面、耳たぶ、口唇、手指背などの皮膚や舌、口腔(こうくう)粘膜、鼻腔粘膜などに認めることもあります。肺や脳、脊髄(せきずい)、消化管、肝臓などにも、異常血管を認めることがあります。

異常血管は容易に出血を来すことがあり、各種臓器からの出血が生じます。出血量が多い場合には、鉄欠乏性貧血が進行します。肺の出血では喀血(かっけつ)や呼吸不全、脳の出血では頭痛やけいれん、まひなどの症状が出現します。

オスラー病では毛細血管がうまく構築されておらず、静脈と動脈が直接つながる動静脈瘻(ろう)と呼ばれる血管奇形を伴います。動静脈瘻が存在すると、心臓に対しての負担が大きくなり、心不全を生じることもあります。特に肝臓に大きな動静脈瘻がある場合は、心不全を生じるリスクが高まります。また、肺に動静脈瘻があると、体内に入り込んだ細菌が肺でろ過されることなく全身の各種臓器に広がってしまうリスクが高まります。その結果、脳膿瘍(のうよう)といった重篤な感染症を引き起こすこともあります。 

オスラー病の検査と診断と治療

内科、耳鼻咽喉(いんこう)科、呼吸器内科、呼吸器外科、脳神経外科、脳血管内治療科などの医師による診断では、全身の各種臓器で形成されている異常血管を確認します。

肺や肝臓であれば、CT(コンピュータ断層撮影)検査や超音波(エコー)検査を行います。また、脳や脊髄に存在する異常血管を確認するためには、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行います。そのほか、消化管に形成された異常血管は、内視鏡を用いて確認することになります。

これら異常血管の確認に加えて、鼻血を繰り返す、皮膚や口腔内に拡張血管を見る、家族に同様の疾患を持つ人がいるなどの項目を基にしながら、最終的な診断を行います。

内科、耳鼻咽喉科、呼吸器内科、呼吸器外科、脳神経外科、脳血管内治療科などの医師による治療では、各種臓器に生じている異常血管に対しての処置を行います。

鼻出血に対しては、出血が生じるたびに血管収縮薬、止血薬を含ませたガーゼによる圧迫止血や軟こう治療などを行うことがあります。これらで不十分な場合においては、凝固療法、レーザー治療、粘膜置換法、鼻腔閉鎖術などを行います。

各臓器における異常血管に対しては、肺の場合は大きさに応じて血管塞栓(そくせん)術が第一に選択されます。肺の動静脈瘻では、脳膿瘍などの感染症を合併するリスクが伴うため、歯科治療など細菌が体内に入り込みやすい穿刺(せんし)、切開を受ける際には、予防的な抗生物質の内服が推奨されます。

脳の異常血管については、外科的治療、血管内治療、放射線を組み合わせた治療方法が検討されます。脳の異常血管に伴いてんかんを発症することもあるため、抗てんかん剤が使用されることもあります。

消化管の異常血管に対しては、内視鏡的にレーザーなどを用いた治療を行います。異常血管からの出血が強く鉄欠乏性貧血を生じるような場合は、鉄剤の投与や輸血も検討されます。

血管塞栓術やレーザー治療などにより、オスラー病の多くの血管病変が治療可能になってきています。重症な血管破裂、脳膿瘍、敗血症などの合併症が併発しなければ、予後は比較的良好であり、普通の人と同じ生活が送ることができます。

🇭🇹おたふく風邪

おたふく風邪とは、ムンプスウイルスによる急性ウイルス感染症で、耳の前から下にかけての腫(は)れを特徴とします。しっかり腫れると、おたふくのお面のように、下膨れします。流行性耳下腺(じかせん)炎、ウイルスの名前をとってムンプスとも呼ばれます。

感染者の唾液(だえき)から、飛沫(ひまつ)感染します。流行に周期性はなく、季節性も明確ではありませんが、春先から夏にかけて比較的多く発生します。かかりやすい年齢は1~9歳、とりわけ3~4歳。感染しても発病しない不顕性感染が、30~40パーセントの乳幼児、学童にみられます。

耳の下の唾液腺の一種である耳下腺が腫れることで知られますが、ムンプスウイルスは、体中を回って、ほかのいくつかの臓器にも症状を起こします。

突然、37~38℃の発熱が1~2日続いた後に、耳の下に痛みを訴え、片側の耳下腺が腫れてきます。子供は口を開けたり、触ったりすると痛がります。発熱せず、最初から耳下腺が腫れてくるケースもあります。

一般的に、1~3日して、もう片方の耳下腺が腫れてきますが、4人に1人は片方の耳下腺しか腫れません。腫れは3日めぐらいがもっともひどく、その後、徐々にひいて、5~7日で消えていきます。

発熱がある間は、水分を十分に与え、静かに過ごさせましょう。耳下腺の腫れたところは、冷湿布などで冷やして痛みを和らげます。食事は流動食、ないし軟らかい物とし、刺激物は避けましょう。特に酸っぱい物や香辛料は、耳下腺からの唾液の分泌を増加させ、痛みが強くなります。

一度下がった熱が再発し、腹痛、嘔吐(おうと)、頭痛、精巣の腫れなどを生じた場合、無菌性髄膜炎、膵(すい)炎、精巣炎などの合併症が起きた可能性がありますので、医療機関を受診しましょう。

ムンプスウイルスに効く薬はありませんが、精巣炎を起こしていれば副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬を使ったり、頭痛や耳下腺の痛みに対し鎮痛薬を使うことがあります。

おたふく風邪は合併症の多い感染症ですから、全身状態がよくても安静、保温、栄養など、乳幼児、学童に対する基本的な看護が大切です。

💅オニカトロフィア

爪の甲がもろくなって、輝きを失い、委縮したり、欠落したりする状態

オニカトロフィアとは、爪(つめ)の甲がもろくなって、輝きを失い、委縮して小さくなる状態。アトロフィ、爪甲(そうこう)委縮症とも呼ばれます。

爪がきちんと育っていない状態であり、爪の甲の形が崩れ、通常の半分程度の大きさにしかならず、表面がでこぼこになります。悪化すると、ボロボロと爪の甲がはがれ落ちる症状が現れ、欠落することもあります。爪の甲が欠落すると、痛みを感じるなど不便なことが多く起こってきます。

オニカトロフィアの原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性のオニカトロフィアもありますが、多くは後天性で、栄養不足、外傷、内臓の疾患に伴って生じます。

爪も皮膚の一部であり、主に蛋白(たんぱく)質の一種のケラチンで構成されているため、食事での栄養バランスの偏りや過度のダイエットなどで、爪に必要な蛋白質が不足することで、オニカトロフィアを生じることがあります。

爪の付け根の皮下にあり、爪を作り出している爪母を強打したり、傷付けたりして、爪母が損傷することで、オニカトロフィアを生じることもあります。この場合、爪母に損傷が加わってから数週間後に、爪の発育不全の状態が現れます。

胃腸などの疾患があるために、体内で栄養の吸収が悪くなり、極度の栄養不足になることで、オニカトロフィアを生じることもあります。

オニカトロフィアの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の委縮、欠落を起こし得る食事摂取の状況、外傷の有無を聞いたり、胃腸などの疾患を検査したりします。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、栄養不足が原因でオニカトロフィアを生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

爪を作り出している爪母の損傷が原因でオニカトロフィアを生じている場合、現在の医療では手当できないとされています。爪が委縮、欠落して直接さらされた爪床部分の皮膚からばい菌が侵入して、感染症を起こしやすくなるのを防ぐ補助医療目的で、人工爪(付け爪)をつけることもあります。

胃腸などの疾患が原因でオニカトロフィアを生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

日常では、爪を保護するためにも、水仕事をする際は柔らかいゴム手袋を着けるようにし、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行うこと、指先に過度の力を入れないこと、指先を圧迫したり強い刺激を与えないことが予防となります。

💅オニキア

指の爪の根元が赤くはれて、爪がでこぼこになる皮膚疾患

オニキアとは、指の爪(つめ)の根元が赤くはれて、爪がでこぼこになる皮膚疾患。爪郭炎(そうかくえん)とも呼ばれます。

爪の甲の表面と、爪の甲を根元で固定している皮膚である後爪郭の間に透き間ができて、そこに、かびの一種である真菌のカンジダなどや、そのほかの細菌が入り込んで、増殖することで炎症が起き、オニキアを生じます。

ほとんどが手の指の爪に起こり、中指、薬指の爪に多くみられます。最初は爪の根元が白く濁り、周囲の皮膚が赤くはれ上がり、押すと圧痛があります。悪化すると、爪と皮膚の間が化膿(かのう)して、うみが出たり、痛みが生じます。

非常に治りにくく、爪の根元の後爪郭に炎症が起きるために、新しく生えた爪が変形して、爪の表面がでこぼこになり、横に筋(横溝)がみられたり、爪が褐色や灰色に変色することがあります。

オニキアは、指先が湿る水仕事の機会の多い中年女性や料理人に起こりやすいものです。マニキュアを不適切に行ったり、不衛生な器具を使って行った後にも、しばしば起こります。

感染している指で食品を触ると、カンジダなどの真菌や、そのほかの細菌が移り、調理後食べるまでの時間が長い場合には、食中毒の原因となる可能性もあります。

オニキアの症状に気付いたら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

オニキアの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、病変部の皮膚の表面をピンセットで軽く引っかき、採取した角質を顕微鏡で見る直接鏡検法KOH(苛性〔かせい〕カリ)法で真菌や細菌を検出することで、確定します。真菌や細菌の種類を特定するために、培養検査を行うこともあります。

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、カンジダなどの真菌が原因となっているオニキアの場合、1日1回、外用抗真菌剤を後爪郭から爪甲表面に塗布し、内用抗真菌剤の内服を行います。

黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌などの細菌が原因となっているオニキアで軽い場合は、外用抗生物質を後爪郭から爪甲表面に塗布します。治りが悪い場合には、内用抗生物質の内服と、局所の安静が必要となります。

それと同時に、患部を濡らさないように水から避けて、手を乾燥した状態に保つことが大切です。指先の炎症が治まっても、爪が正常の状態に戻るにはさらに数カ月かかります。

また、化膿が強い場合は、切開排膿が必要となります。メスで皮膚を切開して、たまっているうみを排出すると、痛みは弱まります。

予防法としては、オニキアは水仕事の機会の多い中年女性や料理人などがかかりやすく、特にささくれ、小さい傷がある時に真菌や細菌が入りやすくなりますので、指先に小さい傷がある時には、まめに消毒を行い、水などに指先をつける時には、手袋をして直接、触らないように注意する必要があります。

💅オニキクシス

爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態

オニキクシスとは、爪(つめ)の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態。ハイパートロフィー、爪(そう)肥厚症、巨爪症とも呼ばれます。

爪の甲は先端に向かって押し進むように長く伸びますが、何らかの原因で圧迫されて伸びが妨害されると、成長する部分が厚くなったりします。厚くなった部分は、後から伸びてくる爪の甲の成長を阻害し、さらに盛り上がってくるという悪循環になります。

オニキクシスの原因は、遺伝、物理的圧迫、けが、糖尿病、内臓の疾患、細菌感染、血行不良、栄養不足などさまざまです。

中でも、長期間にわたって爪に何らかの物理的圧迫が加わって、オニキクシスになることが多く、手の爪よりも足の爪でしばしばみられます。原因となる物理的圧迫としては、足の形に合っていない靴が挙げられます。特に、先端が細くなったハイヒールを履き続けた時、足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧力がかかることになり、爪の甲がはがれてしまうことがあります。これを何回も繰り返した場合に、オニキクシスが起こることがあります。

同様の理由で、足の形に合っていないシューズで長距離ランニングした場合に、オニキクシスや、爪の両端が指の肉に食い込むオニコクリプトーシス(陥入爪)が起こることがあります。オニコクリプトーシス、深爪が原因で、正常な爪の成長が妨げられ、オニキクシスが起こることもあります。

オニキクシスがあると、爪が割れやすくなったり、はがれやすくなったりします。そのため、割れた爪が衣服や布団に引っ掛かり、はがれた部分から細菌が入って化膿(かのう)などのトラブルを起こすことがあります。

この場合、盛り上がった部分に触ると、激しい痛みがあり、ほかの爪にも移ります。靴を履くのが困難になるのはもちろんのこと、布団がこすれても痛みを感じます。また、オニキクシスの症状として、爪の変色も挙げられます。

このオニキクシスはたまに、爪白癬(そうはくせん、つめはくせん)と間違えられることがあります。白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)が感染して起こる爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもので、爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。症状が似ていても違う疾患ですので、水虫用の治療を独自で行うと、オニキクシスが完治するまでに時間がかかるなど、さらに厄介なことになる可能性があります。

オニキクシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、オニキクシスの原因がかなり多岐にわたっているため、その原因を見極めることがポイントになります。

症状が似ている爪白癬と鑑別するためには、皮膚真菌検査を行うのが一般的。ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察します。時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、オニキクシスの症状が軽い場合、保湿してマッサージすることで少しずつ改善します。また、爪やすりで厚い部分を滑らかに磨いたり、磨き粉で仕上げ磨きしたりして、爪の成長を阻害する盛り上がっている部分を平らにすれば、正常な爪の甲が再生してきます。

原因となる菌が同定されれば、その増殖を止めたり、死滅させる抗生物質(抗生剤)を用います。

栄養不足が原因でオニキクシスを生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

内臓などの疾患が原因でオニキクシスを生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、むやみにオニキクシスになった患部を触らないようにします。刺激を与えないことはもちろん、ほかの隣接する指と接しないように気を付けます。

オニキクシスにならないためには、いつも清潔を心掛け、正しい爪の切り方をしていることが大切で、自分の足に適した履きやすい靴を選ぶことも予防となります。どうしてもハイヒールを履く必要がある時は、なるべく長く歩かないようにします。

💅オニコクリプトーシス

爪の甲が弓なりに曲がり両側縁に食い込んだ状態

オニコクリプトーシスとは、爪(つめ)の甲が両側縁に向かって深く湾曲して、側爪廓(そくそうかく)に食い込み、爪廓部を損傷する状態。陥入爪(そう)とも呼ばれます。

オニコクリプトーシスが高度に湾曲したものを、ピンサーネイル、巻き爪と呼んでいます。

足の爪に起こることがほとんどで、まれには手の爪にもみられます。統計的に欧米人に多く、また3対1の割合で男性に多いとされていましたが、近年では、日本人の間にも急速に増加し、ことに若い女性での発生が目立ちます。

主な原因は、先天的な爪の異常、爪の外傷、爪の下がうむ疾患である化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそ)後の変形です。これに、窮屈な先の細い靴による爪の圧迫、不適当な爪切り、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の血流障害、あるいは、爪の水虫による爪の甲の変形などが加わって、悪化します。

爪の甲の端が爪廓に食い込むと、圧迫によって痛みを生じます。また、陥入した爪の甲が爪廓の皮膚を突き刺すようになると、指の回りがはれたり、その部分を傷めて痛みが増強します。

爪の甲の端が変形して起こるため、肉眼で確認しづらい状態で進行していくことが多く、気付いた時には皮膚に深く食い込んでしまっていることもあります。場合によっては、出血を起こすほどに爪が深く突き刺さってしまうこともあります。

この傷に、ばい菌が入ると、より赤くはれ上がってくるとともに、赤い出来物を生じるようになります。これを化膿性肉芽腫(にくげしゅ)と呼びます。

化膿性爪囲炎などの感染は、オニコクリプトーシスを誘発したり、悪化させたりするため、早期に適切な治療を必要とします。オニコクリプトーシスの再発を繰り返す場合や、側爪廓の盛り上りが強すぎて歩行に支障を来すような場合には、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の専門医による外科的治療を行わないと完治しません。

オニコクリプトーシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特別な検査は行わずに、見た目と症状の経過からオニコクリプトーシス(陥入爪)と確定します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療の基本となるのは、爪の端を皮膚に刺さらないように浮かせて伸ばし、とげ状の部分をカットする方法と、手術で爪の端を取り除く方法です。爪の変形が強くなるため、原則的に抜爪は行われません。

樹脂製のチューブを爪の端に装着するガター法も、行われています。爪を切開して、爪の端をチューブで包むことで指の組織を保護するのが目的で、傷口が化膿している場合などに、ガーター法は行われます。同時に、ワイヤー矯正術も行われ、爪の湾曲を修正します。

オニコクリプトーシスを治療するためではなく、化膿した組織を治すためには、硝酸銀が使われます。硝酸銀をオニコクリプトーシスでできた傷口に滴下し、傷口を溶かし正常な組織への再生を促します。硝酸銀が滴下された皮膚は、しばらくの間、黒く染色されます。

オニコクリプトーシスがひどい場合には、爪の元となる組織である爪母を除去する外科手術を行って、改善を図ります。爪母を外科手術で除去する鬼塚法と、薬品で爪母を焼き取るフェノール法がありますが、どちらも再発する可能性があるというデメリットがあります。近年では、レーザーメスを使って爪母を切除する方法も開発されています。いずれにしろ、外科手術は最後の手段となる場合がほとんどです。

生活上の注意としては、まず足指を清潔に保つことが大切なので、多少ジクジクしていても入浴し、シャワーでばい菌を洗い流します。ばんそうこうなどで傷口を覆うと、かえって蒸れてばい菌が増殖します。消毒した後、できれば傷を覆わないか、風通しのよい薄いガーゼ1枚で覆います。

窮屈な靴、特にハイヒールや先のとがった革靴などは、爪を過度に圧迫するので避けます。爪切りの際には、かえってオニコクリプトーシスを増強させる深爪にしないように気を付けます。

💅オニコファジー

爪の甲のかみすぎにより、形が変形する状態

オニコファジーとは、爪(つめ)の甲のかみすぎにより、形が変形する状態。咬爪(こうそう)症、爪かみ、かみ爪、爪かみ癖、ネイルバインディングとも呼ばれます。

オニコファジーの原因はいうまでもなく、自分の爪をかむ行為です。爪をかむ行為は、実は子供にとっては特殊なことではありません。4、5歳から10歳くらいの子供がほとんど無意識に爪をかむ癖を持っているのは、珍しいことではありません。

一般的には、長ずるにつれて自然になくなる癖ですが、時には習慣化して、大人になっても爪をかむ行為が続く場合もあります。一般に精神的緊張の置き換えと考えられ、無理にやめさせると、さらに緊張を高めて他の行動へ置き換わるだけになることもあります。

オニコファジーの子供は、爪を切る必要がないくらい深爪で、爪の先端がギザギザになっていたり、爪の甲の表面がデコボコしていたり、指先や爪郭部が荒れて傷ができていたり、爪の根元部分の甘皮がささくれたりしています。

深爪になったばかりのころは直接皮膚がさらされているので、痛みを伴い、出血がみられたりします。また、皮膚がさらされているので細菌感染が生じ、爪の甲が完全に失われることもあります。中には、足の爪までかんでしまう子供もいます。

爪をかむ行為で、歯並びや歯のかみ合わせが悪くなることはありませんが、チック、指しゃぶり、歯ぎしり、夜驚などを併せ持っていることもあります。

一般に子供の欲求不満、過度の緊張、不安や不満、退屈など精神的緊張の置き換えと考えられ、子供は精神的な緊張を和らげる手段として爪をかみます。

オニコファジーの子供の性格は、神経質、緊張しやすい、敏感、活動的、攻撃的、動作が落ち着かないなどの特徴を持ち、情緒や社会性の未熟さがみられることが多いようです。

子供が緊張する背景としては、親の過干渉、放任、緊張状態が持続する厳格なしつけなど、親子関係に情緒的な安定が保たれていないことが多いようです。

オニコファジーの治療

子供の軽度のオニコファジーの場合は、保護者による指導の必要はなく、子供が緊張する心理的な背景を配慮するようにします。

小学校に入るころになると、オニコファジーは習慣化して、子供自身が治そうとしないとなかなかやめられません。やめさせるために家庭でできることとしては、汚れた爪をかむのは不潔なため清潔のしつけとしてやめさせる、深爪の危険を説明する、爪を保護する透明なマニキュアを塗り爪の大切さを教える、不安やストレスの要因を見付けて除去していく、やめた時のご褒美を子供と約束してカレンダーにシールを張るなどが考えられます。

ひどい場合には、精神科、心療内科を受診させます。

大人になってもオニコファジーがひどい場合も、精神的要因が絡んでいるなら、精神科、心療内科を受診します。オニコファジーは自傷行為であり、心が鳴らす警笛でもありますから、胸の中にある傷みや不安など精神的緊張と向き合い解決することは、オニコファジーの改善、解決につながることもあります。

爪、皮膚の症状に対しては、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診するか、ネイルサロンで相談してみるのもよいでしょう。

自分で爪の甲にマニキュアやクリームを塗ったり、爪ヤスリなどでなるべく自然の丸みを帯びた形に爪を整え、グッズで爪磨きすることで、きれいな爪を保ちたいと思い、爪をかむことを自然と避けるようになる実例は多くあるようです。爪をかむことによって変形がひどい場合は、十分に伸びて変形が治るようになるまで、付け爪(人工爪)をつけるようにし、自分自身の爪を隠して保護することが効果的な実例も多くあるようです。

また、ネイルサロンできれいにマニュキアを塗ってもらい、きれいに爪を整えてもらうことで、オニコファジーが治ることもあります。ネイルサロンの中には、ネイルアートだけでなく、深爪矯正に力を入れ、自爪の強化や、自爪の回復ができるネイルケアを行っている所もあります。

ひどい深爪状態になってしまった爪は、治そうとして爪を伸ばしても、白い部分が伸びるだけで、皮膚から浮いた状態になってしまいますが、ネイルサロンの深爪矯正を受けることで、きれいな自爪を取り戻すことが可能です。自爪がよみがえるまでの間の人工爪も、自然に見えるものを作成してくれるため、男性でも抵抗なく付け爪をすることが可能です。

💅オニコプトーシス

爪の甲の一部、もしくは全体が脱落する状態

オニコプトーシスとは、爪(つめ)の甲の一部、もしくは全体が爪床(そうしょう)から離れて浮き上がり、やがては脱落する状態。オニコマデシス、爪甲脱落症とも呼ばれます。

手や足の爪の1本だけに起こることもあり、多くの爪に起こることもあります。また、爪の色が変わって、白色もしくは黄色になることもあります。

オニコプトーシスの原因は、かなり広範囲に及んでいます。先天性、遺伝性、後天性とさまざまであり、外傷や高熱、皮膚の疾患、全身の疾患、梅毒、薬、体調不良、ストレスと数え切れないほどの原因があります。

打撲などの外傷で内出血を起こして、脱落することがあります。風邪などで非常に高熱が出た時などに、脱落することもあります。

皮膚の疾患では、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)や、カンジタ菌という真菌による爪囲炎、乾癬(かんせん)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、紅皮症(剥脱〔はくだつ〕性皮膚炎)、爪甲横溝などで、脱落することがあります。

全身の疾患では、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症(バセドウ病)、甲状腺機能低下症、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症)、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、手足口病、ヘルパンギーナなどで、脱落することがあります。

性病である梅毒に感染している場合や、治療中、治療後に、脱落することもあります。

薬によるものとしては、内服するだけでオニコプトーシスを起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

また、体調が悪かったり、強いストレスを感じている際に、爪に出る症状の1つとして脱落することもあります。

爪が健康なピンク色のまま爪床から脱落するのは軽症といえますが、爪の変色が伴うようであれば何らかの疾患のサインかもしれません。疾患が疑われる場合や、症状がひどい場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

オニコプトーシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の剥離、脱落を起こし得る外傷や外的物質、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、すべての爪に変化がみられる全身疾患があれば、その治療を行います。一部の爪の変化がみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。

カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。ビオチンやビタミンEを含んだ飲み薬の内服、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射、抗生剤(抗生物質)の内服などが行われることもあります。

打撲などの外傷で軽度の出血である場合、爪の生え替わりを待つだけでかまいません。爪が作られる爪母の機能が正常であれば、新しい爪は生えてきますが、部位により半年から1年の期間はかかります。

ストレスが原因であれば、心療内科での治療が必要になってきます。皮膚科に通っているのに、一向によくならず、周期的に脱落するのであれば、原因の再確認が勧められます。

💅オニコマイコーシス

カビの仲間である真菌の感染によって、爪に炎症が生じる疾患

オニコマイコーシスとは、カビの仲間である真菌の感染によって、爪(つめ)に炎症が生じる疾患。爪(そう)真菌症とも呼ばれます。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。主な真菌は、カンジダ、アスベルギルス、クリプトコックス、ムコールなど。

これらの真菌が、爪の甲や、爪の基底部である爪床に感染して、オニコマイコーシスを引き起こします。

オニコマイコーシスのうち最も多くみられる疾患は、皮膚糸状菌、特にトリコフィトンールブルムなどの白癬(はくせん)菌と呼ばれる一群の真菌の感染により生じる爪白癬で、オニコマイコーシスの60〜80パーセントを占めるといわれています。

残りのオニコマイコーシスの多くは、皮膚糸状菌に属さないアスペルギルス、スコプラリオプシス、フサリウムなどの真菌で生じます。免疫の低下している人や慢性皮膚粘膜カンジダ症を発症している人では、カンジダ性のオニコマイコーシスであるカンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダを生じることがあります。

爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもの。爪の甲が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。

白癬は、皮膚糸状菌が皮膚に感染して起こる疾患。皮膚糸状菌の多くは一群の真菌である白癬菌で、高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)質を栄養源とするため、足の裏、足指の間などが最も住みやすい場所になり、足白癬を始めとして手白癬、頭部白癬、体部白癬などを生じます。

この足白癬や手白癬を放置していると、白癬菌が爪の中に感染して、爪白癬になります。爪は表皮が変化して硬くなった皮膚の一部であり、白癬菌の栄養源となるケラチンでできていますから、爪もまた水虫にかかるというわけです。

爪白癬は足指に多いのですが、手指の爪に生じることもあります。最近の統計によると、足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。日本国内に500万~1000万人の発症者がいるという統計も報告され、60歳以上の人の4割が発症しているとも推計されていますが、治療されずに放置されたままのケースがほとんどです。

爪の症状の現れ方には、いくつかあります。最も多いのは、爪の甲の先端部が白色から黄色に濁って、爪の甲の下の角質部分が厚くもろくなり、全体として爪が厚くなるものです。爪の甲の先端部が楔(くさび)状に濁って、角質部分が厚くもろく全体として爪が厚くなるものも、よくみられます。そのほかに、爪の甲の表面が点状ないし斑(まだら)状に白濁するのみのものもあります。まれに、爪の甲の付け根が濁ることもあります。

かゆみ、痛みなどの自覚症状は、ありません。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、爪の爪囲炎の合併はまれです。

カンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダは、もともと人間が持っている常在菌で、腸管や膣(ちつ)内、口腔(こうこう)、皮膚などに存在している真菌の一つのカンジダが感染して生じます。

健康であれば、体には何の影響も与えないカンジダですが、抵抗力や免疫力の低下、抗生物質の投与などによって増殖すると、さまざまな部位に炎症を引き起こし、爪や爪の周辺にも炎症を引き起こします。

爪の回りに炎症が起きるカンジダ性爪囲炎の場合、症状が軽く、痛みも出ないことが多いものの、爪の生え際が赤みを帯びだり、はれたりします。この爪囲炎を繰り返していると、カンジダ性爪炎に移行し、爪が変色し、表面に凹凸ができる、横にすじができる、赤くなってはれ、痛むといった症状がみられます。

カンジダ性爪囲炎とカンジダ性爪炎は、爪の表面だけがカンジダに感染している状態ですが、カンジダが爪の内部にまで寄生すると、爪カンジダになります。爪の先が皮膚から離れて浮き上がったような状態になり、爪が変形します。また、爪が厚くなることもあれば、逆にボロボロになって先端が欠けたりすることもあります。

カンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダは、糖尿病患者、免疫機能が低下している人、または健康に問題はなくても手を頻繁にぬらしたり洗ったりする人によくみられます。

オニコマイコーシスのうち、成人の爪白癬の発症率は、かなり高いとされています。爪の肥厚や変形が高齢者の起立障害、歩行障害、転倒事故の原因になることも、指摘されています。重症になるとますます治療が難しくなるため、なるべく早く皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療を受けます。

オニコマイコーシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、通常、爪の外観に基づいて判断します。診断の確定には、爪の破片を顕微鏡で調べ、培養してどんな真菌による感染かを判断します。爪では皮膚と違って真菌を見付けにくく、真菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、オニコマイコーシスは完治が難しいため、症状の重症度と本人が感じる不快さの程度に基づいて行われます。

治療が望まれる場合は、内服薬のイトラコナゾールやグリセオフルビンなどを処方します。このような薬は、約3〜6カ月服用します。硬く厚くなった爪の外側から外用薬を塗っても、奥深く潜んでいる真菌まで薬の有効成分が行き渡りませんが、内服薬ならば血流に乗って直接真菌にダメージを与え、体の内側から治すことができるわけです。

従来の内服薬は、1年以上服用しなければなりませんでした。近年開発された薬は、内服をやめた後も有効成分が爪の中にとどまって効果が持続しますので、従来に比べ治療期間が大幅に短縮されました。しかし、肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

マニキュア型製剤に含まれる抗真菌薬であるシクロピロクスは、単独で使った場合はあまり効果がありませんが、特に抵抗性の感染症の場合、内服薬に加えて使った場合は治癒率が高まることがあります。シクロピロクスは、ほかの健康上の理由により内服薬を服用できない人に役立つこともあります。

再発の可能性を下げるためには、爪は常に短く切り、入浴後は足を乾いた状態に保ち、吸収性のよい靴下を履き、抗真菌薬の足用パウダーを使用するとよいでしょう。古い靴には真菌の胞子が多数いることがあるため、できれば履かないないようにします。

💅オニコマレーシア

ケラチン不足のために、爪が異常に軟らかい状態

オニコマレーシアとは、成人の爪(つめ)の甲が異常に軟らかい状態。爪甲(そうこう)軟化症とも呼ばれます。

爪は皮膚の付属器で、皮膚の最も表面にあって軟ケラチンからなる角層が変化したもので、硬ケラチンで主に形成されています。ケラチンとは20種類のアミノ酸が結合してできた蛋白(たんぱく)質で、水分をよく含んで弾力性に富み、紫外線や衝撃など外部刺激から指先を守るバリア効果やクッション効果があります。

その爪の硬さは、人によってかなり違います。赤ん坊の爪は大変軟らかく、年齢を増すごとにだんだんと硬い、弾力のある爪となってくるものです。そして、さらに年を重ねると弾力のない、硬い爪に変わっていきます。爪は指先の保護の役割と細かい作業をするために必要で、もしも成人で赤ん坊の爪のように軟らかい爪をしていると、細かい指先の仕事は難しくなってしまいます。

成人のオニコマレーシアでは、爪を構成している成分の一つであるケラチンが不足することから、徐々に爪の甲が薄く、軟らかくなります。色は青白く、曲がりやすくなります。よくカルシウム不足だと爪が軟らかくなどといわれますが、カルシウムの不足とは関係ないようです。

オニコマレーシアは手や足に汗を多くかく人に起こりやすく、多汗のために、爪の甲の中の水分が多くなってしまうためと考えられています。若い女性に比較的多くみられます。

また、クリーニング業の人などで、アルカリ性の薬品が長く爪に作用した場合、爪の甲がへこむ匙状(さじじょう)爪と一緒に生じることもあります。そのほか、手の爪に施すマニキュアを多用する人、足の爪に施すペディキュアを多用する人、爪をかむ癖のある人、リウマチのある人にも多く見受けられます。

全身的な栄養状態とは、無関係です。ほとんどの場合、内臓の疾患とは関係ないようです。

オニコマレーシアの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、オニコマレーシアを起こし得る外的物質や薬品、あるいは皮膚疾患、多汗症などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、クリーニング業の人などに生じるオニコマレーシアの治療では、鉄剤を内服します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっては、食事で鉄分を意識的に摂取することがお勧めです。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

リウマチが原因でオニコマレーシアを生じている場合、リウマチを治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、オニコマレーシアの原因になるマニキュア、ペディキュアの使用を避け、爪専用の栄養クリームなどを塗ることです。

爪をかむ癖のある人は、重篤な感染症などを引き起こす可能性もはらんでいますので、できる限り克服したいものです。疾患としてとらえるならば、心療内科で相談してみるのがよいでしょう。

💅オニコライシス

爪の甲が爪床から離れて、浮いてくる状態

オニコライシスとは、爪(つめ)の甲が爪床(そうしょう)からはがれる状態。爪甲剥離(はくり)症とも呼ばれます。

爪の先端から半分くらいまでははがれてくることがありますが、爪が全部抜け落ちることはありません。

爪は本来、先端部以外は爪の下の皮膚とよく付着しているものですが、オニコライシスでは爪が下の皮膚である爪床から遊離します。爪が爪床から離れて、浮いてくる状態は爪の先端から始まり、根元に向かって徐々に進行して、剥離した爪は白色ないし黄色に変化します。

また、指と爪の透き間にゴミが入り、しばしば部分的に汚い褐色調を呈することもあります。こういう状態の時、爪の下をつまようじなどで掃除するのはよくありません。皮膚を痛めて、ますます悪化することになります。

オニコライシスの原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性のオニコライシスもありますが、多くは後天性で、外因、感染症、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患などに伴って生じます。最も多いのは、原因のはっきりしない特発性のもので、この場合、症状は軽くあまり進行するということもありません。

外因によるものとしては、爪と爪床の間にトゲや鉛筆の芯(しん)などが入るなどのけが、あるいは、指先の細かい操作を必要とする職業によるものがあります。職業は、料理人、理髪師、美容師、庭師、パソコンのオペレーター、ギタリスト、ピアニストなど。また、マニキュアや洗剤、さらには有機溶剤やガソリンなども原因になります。

極めて軽い湿疹(しっしん)やかぶれが起こった場合、手の皮膚ではわずかに皮がむけるだけで治っていきますので、気付かずにすむことが多いのですが、爪の下ではほんのわずかに皮がむけた状態でも、爪ははがれて浮いた状態となります。

感染症によるものは、カンジダという真菌、一種のカビの爪床部への感染によるものがほとんどです。この場合は、爪の下の皮膚がガサガサした感じになります。

薬によるものとしては、内服するだけでオニコライシスを起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

皮膚疾患に伴うものは、乾癬(かんせん)、接触皮膚炎、掌蹠(しょうせき)多汗症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、尋常性天疱瘡(てんぽうそう)、薬疹などがあります。

全身疾患に伴うものとしては、甲状腺(せん)機能高進症(バセドウ病)に伴うオニコライシス(プランマーズ・ネイル)が最も有名です。この場合、爪は平らになることが多く、時に反り返ったようになることもあります。最初1本の指から始まり、次第に他の指にも進行していきます。

甲状腺機能高進症以外にも甲状腺機能低下症、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症、ナイアシン欠乏症)、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、梅毒などの感染症でみられます。

念のために、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科で診察を受けます。特に、1カ所または数カ所の爪だけが剥離を起こす通常のオニコライシスと異なって、手足すべての爪に変化がある場合は、甲状腺機能高進症を始めとする全身的な疾患が原因かもしれませんので、早めに受診するようにしましょう。

オニコライシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の剥離を起こし得る外傷や外的物質、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。一般的には、角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。爪の治療には、非常に時間がかかります。

甲状腺機能高進症などの全身疾患に伴うものは、その治療を行えばよくなります。

日常では、保湿剤などのスキンケア、ネイルケアにより予防することが、重要となります。爪も皮膚の一部であり、角質を構成するケラチンという蛋白(たんぱく)質が変化したものですから、マニキュア、除光液、洗剤などを使いすぎるとダメージを受けるので、その使用を控えます。進行中は、水仕事の際にはゴム手袋の着用を心掛けます。

💅オニコレクシス

爪の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態

オニコレクシスとは、爪(つめ)の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態。スプリットネイル、爪甲(そうこう)縦裂症とも呼ばれます。

爪の甲に縦線が入るのは老化現象として一般的にみられるものですが、オニコレクシスでは縦の割れ目が入るまでに至り、しかも、その割れ目は深く、爪が2つに分かれていることがはっきり確認できるほどになります。

1本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合のほか、数本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合、すべての爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合もあります。炎症や痛みを伴う場合もあります。

オニコレクシスの原因は、爪母の損傷、栄養素不足、マニキュアや薬剤、水仕事、爪根部の末梢(まっしょう)循環障害、皮膚疾患、全身性疾患などいくつかあります。

爪の付け根の皮下にあり、爪を作り出している爪母を強打したり、傷付けたりして、爪母が損傷した場合は、新しく生えてくる爪にはすでに縦の割れ目が入っていたり、中央で裂けていたりします。この縦の割れ目は爪母に損傷が加わってできるものですから、現れるのは損傷が加わってから数週間後です。

食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素不足になった場合も、爪がもろくなっているために、圧迫などによって簡単に縦の割れ目が入ることがあります。偏った食生活や過度なダイエットによって鉄欠乏性貧血になり、これが原因でオニコレクシスになることもあります。

手の爪に施すマニキュア、足の爪に施すペディキュア、マニキュアなどを落とす除光液(エナメルリムーバー)を使用する機会の多い女性や、仕事で有機溶剤や殺菌・消毒用のアルコールの一つであるエタノール(エチルアルコール)を使用している人の場合、揮発性の高い溶剤が爪から水分と脂分を奪い、爪表面を乾燥させるために、縦の割れ目が入りやすくなります。マニキュアなどを落とす除光液に含まれるアセトンなどが外的刺激になって、オニコレクシスを誘発することになります。

水仕事の多い人や、湿気の多い環境にいる人も、水分過多によって爪がもろくなったり、お湯の使用によって爪の脂分が奪われるために、縦の割れ目が入りやすくなることもあります。蛋白質を分解する成分が入っている洗剤などが、蛋白質の一種のケラチンを主成分とする爪への外的刺激になって、オニコレクシスを誘発することもあります。

自律神経失調症や糖尿病などが原因で末梢循環不全という疾患を発症し、手足などの末梢まで血液循環が行き届かず爪に必要な栄養素不足になった場合も、爪に縦の割れ目が入ったり、爪が伸びなかったりすることがあります。

乾癬(かんせん)、湿疹(しっしん)、皮膚炎、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)、カンジタ菌による爪囲炎などの皮膚疾患がある場合も、爪がもろくなって爪の甲の先端や中央部に縦の割れ目が入ることがあります。

卵巣機能障害、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、慢性肝障害、貧血、低体温、糖尿病、高尿酸血症、神経疾患などの全身性疾患がある場合も、それが原因でオニコレクシスを合併発症することもあります。

爪に縦の割れ目が入るのは、体に異常が出ているシグナルかもしれません。爪に何カ所も割れ目が入る、炎症や痛みがあるなどの場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

オニコレクシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲に縦の割れ目を起こし得る外的物質や薬剤、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、原因に応じて行います。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合があります。

爪を作り出している爪母の損傷が原因でオニコレクシスを来している場合は、現在の医療では手当できないとされています。

栄養素不足が原因の場合は、まずは蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類など、爪に必要な栄養をしっかり摂取します。

マニキュア、除光液、有機溶剤、あるいは水仕事などが原因であれば、極力それらの使用や機会を中止したり、減らします。爪への負担が減るため、多くのケースでは自然に治ります。仕事などでどうしても薬剤、水、洗剤などを使わなくてはいけない場合は、手を保護するものを着用したり、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行います。

爪の末梢循環不全が原因であれば、ステロイド剤を配合した塗り薬をこまめに塗ったり、末梢血管の収縮を防ぐビタミンEの飲み薬を内服します。医師による治療と並行して、血液循環をよくするために日ごろから、手足のマッサージ、爪もみを心掛けます。

一部の爪にオニコレクシスがみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。すべての爪にオニコレクシスがみられる全身性疾患があれば、その治療を行います。

🇳🇴音響外傷

極めて大きな音により急性に引き起こされる音響性聴力障害

 音響外傷とは、極めて大きな音を急に聞くことで引き起こされる聴力障害。急性音響性難聴と呼ばれることもあります。
 音量の大きな音楽を演奏するロックバンドのライブコンサートやショー、イベントなどの数時間の観覧、ヘッドホンやイヤホンを介した大音量での長時間の音楽鑑賞が原因となって、若い人に症状が起こることもあり、ロック難聴やヘッドホン難聴と呼ばれることもあります。
 また、祝賀用の爆竹の破裂音、花火の破裂音、ピストルの発砲音を繰り返し聞く、大音量の爆発音を何度も聞く、工場の機械の瞬間的に生じた大きな作動音を聞くことでも、音響外傷の症状が起こります。 
 音は空気の振動によって、外耳道から鼓膜を介して中耳へと伝わります。中耳にある骨が振動すると内耳へと情報が伝わり、内耳の中の蝸牛(かぎゅう)にあるリンパ液が振動を受けます。この振動を有毛細胞と呼ばれる感覚細胞が感知することで、脳へと音の情報が伝わります。
 音響外傷は、一定レベルを超える大音量にさらされることにより、音を感知する有毛細胞が障害を受けることで発症します。
 症状は、音が聞こえにくくなる難聴、耳鳴り、耳が詰まったり、こもったりする感じが生じる耳閉感、耳の痛みです。めまいや吐き気を伴うこともあります。
 音が聞こえにくくなる難聴の場合、音全般が聞こえにくくなったり、低音だけ聞こえが悪くなったりなど症状はさまざまです。
 症状は一時的に起こり、自然に回復する場合もあります。また、音の発生源に近いほうの耳だけに、症状が起こることもあります。
 軽度のものであれば音から離れることで症状が改善しますが、重篤な場合には難聴や耳鳴りが永続化してしまうこともあります。
 大音量にさらされた後、難聴、耳鳴りなどの症状が続く場合は、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診してください。

音響外傷の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、大きな音にさらされたという情報が有益になります。

 検査としては、まずは耳の中をのぞくことができる耳鏡を使って、鼓膜に穴が開く鼓膜穿孔(せんこう)がないかを確かめます。次に、耳の聞こえが低下していることを確認するために、純音聴力検査を行います。さまざまな振動数の音がどれくらい聞こえているかを調べる検査で、左右それぞれの耳で行います。状況によっては、めまいに関する検査をすることもあります。
 耳鼻咽喉科の医師による治療では、耳の神経の修復を助けるホルモン剤、ビタミン剤、循環改善剤などを用いることがあります。状況によっては、ステロイド剤を使うこともあります。
 難聴が軽く、早期に治療を始めた場合には、回復する可能性があります。
 難聴の症状が固定すると、症状を完全に回復させることが難しい場合もあるため、音を聞く際には適度に休憩をとるなど予防策を講じることが大切です。
 イヤホンで音楽を聞く際には、音量を大きくしすぎず、長時間にわたって聞かないようにします。また、ライブコンサートなどの観覧に際しては、会場の音が強いと感じるようであればその場から離れたり、耳栓を使用したりするなど耳を保護する対策を講じることが重要です。
耳の神経は疲れやストレスの影響を受けるため、心身の安静を保つことも必要です。規則正しい生活を送り、ストレスをため込まないことが大切。

🟧1人暮らしの高齢者6万8000人死亡 自宅で年間、警察庁推計

 警察庁は、自宅で亡くなる1人暮らしの高齢者が今年は推計でおよそ6万8000人に上る可能性があることを明らかにしました。  1人暮らしの高齢者が増加する中、政府は、みとられることなく病気などで死亡する「孤独死」や「孤立死」も増えることが懸念されるとしています。  13日の衆議院...