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2022/08/04

🇧🇧スキンタッグ

首や胸、わきの下などにできる細かい、いぼ状の良性腫瘍

スキンタッグとは、首や胸、わきの下などにできる細かい、いぼ状の良性の腫瘍(しゅよう)。アクロコルドンとも呼ばれます。

感染性はなく、皮膚の老化や体質でできるもので、中年以降に多く発生し加齢とともに増えてきますが、早ければ思春期のころから見られます。特に更年期を過ぎた女性や、肥満者に好発します。

首、胸、わきの下、鼠径(そけい)部、しりなどの摩擦を受ける個所で、皮膚の角質が増殖して少し飛び出すために、直径1~3ミリの軟らかい腫瘍ができます。中には5ミリを超える大きい腫瘍ができることもあります。

一つだけできる場合も、数え切れないくらいたくさんできる場合もありますます。色は、肌色から褐色調、黒色調のものがあります。

首やわきの下など多発するものをスキンタッグないしアクロコルドンスキン、体幹に単発するものや直径約1センチの大きなものを軟性線維腫(しゅ)ないし線維性軟疣(なんゆう)、これがさらに巨大になり皮膚面から垂れ下がるようになったものを懸垂性線維腫と呼んで、厳密に区別することもあります。

スキンタッグなどの腫瘍は線維や脂肪からできていて、皮膚が盛り上がったり垂れ下がったりするものの、痛みやかゆみはありません。かゆみがある場合も軽度です。

がん化するなど特に心配な疾患ではありませんが、衣類やアクセサリーでこすれて炎症を起こすことがあります。年齢とともに徐々に増大するため、年を取ると目立ってきます。

目立って外見が悪い、衣服の脱着時に引っ掛かって出血するという場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師を受診することが勧められます。

スキンタッグの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、特に検査は行いません。

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療では、塗り薬や食生活の改善で完治させるのは難しいため、一般的には、小さいものならば、麻酔シートを張ってから電気メスで焼灼(しょうしゃく)します。中程度の大きさのものは、まず-200℃近い超低温の液体窒素で冷凍凝固して小さくした後、電気メスで焼灼します。大きいものは、メスで除去します。

腫瘍の数が多い場合は、液体窒素療法を何度か繰り返します。1~2週間後に、かさぶたになります。かさぶたはかなり色が濃く、治療後はかなり目立つこともありますが、自然に脱落し、半年くらいすると赤みもひいて、きれいになります。

日常生活でできるスキンタッグを作らない心掛けとしては、首にも一年中日焼け止めを塗る、首も顔同様のスキンケアをする、首に密着するネックレスは極力つけない、首回りに刺激を与える服は避けるなどが挙げられます。

🇬🇫すじ爪

爪の甲の表面に縦方向、または横方向の線や溝が入っている状態

すじ爪(つめ)とは、爪の甲の表面に縦方向、または横方向の線や溝が入っている状態。

縦方向の線や溝が入っている状態は、爪甲縦条(そうこうじゅうじょう)ともいいます。横方向の線や溝が入っている状態は、爪甲横溝(そうこうおうこう)ともいいます。

手指や足指の爪の甲の表面に縦方向の線や溝が入る爪甲縦条は、誰にでも認められるもので、10歳代、20歳代ではほとんど目立ちません。老化現象の一つとして、加齢とともに滑らかだった爪の甲の表面に線や溝が目立つようになり、40歳以上ではすべての爪の甲に100パーセント現れ、50歳代くらいからは増加します。年齢によって、縦方向の線や溝の数も隆起の程度も異なります。

加齢とともに縦方向の線や溝が増える原因は、胃腸の働きが衰え始めるとともに、爪に十分に栄養素がゆき届かなくなるためです。特に亜鉛不足の場合は、線や溝が現れやすくなります。

>若い人でも、食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素不足になった場合は、爪に線や溝が現れます。妊娠を切っ掛けに、線や溝が現れることもあります。

また、冬の季節に空気が乾燥すると、爪も肌と同じように乾燥し、線や溝が現れやすくなります。また、季節を問わず乾燥肌の人は、爪にも線や溝が現れやすくなります。

さらに、若い人でも、血液循環が悪い場合は、爪に線や溝が現れやすくなります。

高熱が出た時に爪に線や溝が現れることもあり、精神的ストレス、不規則な生活習慣が原因で、爪に線や溝が現れることもあります。

すじ爪になって、爪の甲の表面に縦方向の線や溝が入っている爪甲縦条になっても、老化現象の一つであったり、疾患のサインではなく健康上の問題はない場合がほとんどですので、心配することはありません。

一方、手指や足指の爪の甲の表面に横方向の線や溝が入る爪甲横溝は、爪甲縦条と違って、何らかの体の異常のサインであり健康上に問題がある場合もあるので、注意が必要です。

爪の甲に横に走る水平の線や溝、波打った線や溝ができるのは、爪の発育を抑えるような障害が爪を作り出す爪母に作用するためで、その障害の強さや期間によって深さや幅が変わってきます。非常に障害が強く加わると深くなり、期間が長くなると幅が広くなります。

初めに、爪半月(つめはんげつ)の外側の辺りに横方向の線や溝が現れ、爪の発育とともに先端に移動してゆきます。この線や溝は爪母に障害が加わってできるものですから、現れるのは障害が加わってから数週間後です。現在できている横溝の位置から、いつごろ障害が起こったのか推測することは簡単です。

爪は1カ月で3~4ミリのスピードで伸びていくため、爪の根元から3ミリくらいのところに線や溝が入っているとしたら、1カ月ほど前に何らかの体調の変化が現れたということになります。また、1本の爪に線や溝が2~3本同時に見られる場合は、正常な期間をおいて繰り返し障害が加わったと考えらます。

もしも、爪の線や溝ができる原因が全身性疾患によるのものであるなら、すべての爪の同じ場所に変化が見られます。一部の爪の変化の時は、爪母近くの皮膚の病変の影響が考えられます。 また、爪の根元にけがをしたり、マニキュアや薬剤によって爪母を傷付けた時に変化が見られることもあり、この時は爪の甲が凸凹になる場合もあります。

爪の線や溝が生じる原因となる全身性疾患としては、急性熱性疾患のほか、尿毒症、糖尿病、ビタミンA欠乏症、低カルシウム血症、亜鉛欠乏症などの慢性疾患が挙げられます。皮膚の疾患としては、湿疹(しっしん)、皮膚炎、円形脱毛症、乾癬(かんせん)などが挙げられます。

さまざま原因がある中で、最も多いのは高熱で発病して、1~2週間で治るチフス、猩紅(しょうこう)熱などの感染症や、中毒の場合です。慢性疾患では代謝異常による疾患が多く、疾患が一時的に悪化した後に現れ、線や溝は浅く幅が広いのを特徴とします。

皮膚の疾患で最も多いのは、手の湿疹。手の湿疹の大部分は水仕事の多い主婦によくみられて、治りにくい慢性的な湿疹であり、爪の周辺の病変が急激に悪化して爪母にまで広がった場合に、線や溝が生じます。これと同様な症状で、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)やカンジタ菌による爪囲炎の時にも生じ、いずれも爪周辺の疾患が治れば自然に消えて行きます。円形脱毛症や乾癬の時には、点状のへこみと同時に線や溝も現れることがあります。

また、レイノー症状に伴って、線や溝が現れることもあります。手が冷たい水や風に触れた時に、指が白くなる現象がレイノー症状であり、若い女性に多くみられて、指の小さな動脈が一時的に狭くなって血液が流れにくくなるために起こります。指先に血液がゆかなくなると、爪の発育の障害になり、それが強く起こると線や溝が現れます。何度も繰り返してレイノー症状が起こると、一枚の爪に何本もの線や溝ができることもあります。

爪の甲の表面に横方向の線や溝が入る爪甲横溝は、体に異常が出ているシグナルかもしれません。すべての爪の同じ場所に変化が見られたり、1本の爪に線や溝が2~3本同時に見られる場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

すじ爪の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪甲横溝を起こし得る外的物質や薬剤、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、原因に応じて行います。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合があります。

爪を作り出している爪母の損傷が原因で爪甲横溝を来している場合は、現在の医療では手当できないとされています。

栄養素不足が原因の場合は、まずは蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類など、爪に必要な栄養をしっかり摂取します。

マニキュア、薬剤、あるいは水仕事などが原因であれば、極力それらの使用を中止したり、使う機会を減らします。爪への負担が減るため、多くのケースでは自然に治ります。仕事などでどうしても薬剤、水、洗剤などを使わなくてはいけない場合は、手を保護するものを着用したり、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行います。

爪の末梢循環不全が原因であれば、ステロイド剤を配合した塗り薬をこまめに塗ったり、末梢血管の収縮を防ぐビタミンEの飲み薬を内服します。医師による治療と並行して、血液循環をよくするために日ごろから、手足のマッサージ、爪もみを心掛けます。

一部の爪に爪甲横溝がみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。すべての爪に爪甲横溝がみられる全身性疾患があれば、その治療を行います。

🇬🇫すそ腋臭

陰毛部分から腋臭と同じような特有の臭いが発生する状態

すそ腋臭(わきが)とは、腋(わき)の下から発生する腋臭と同じような不快な臭(にお)いが、陰部から発生する状態を指す症状。陰部臭汗症、外陰部臭症、下(しも)腋臭、トベラと呼ばれることもあります。

腋の下、陰部、臍(へそ)の周囲、乳輪などには、アポクリン汗腺(かんせん)がたくさん分布しています。また、瞼(まぶた)、鼻、外耳道、肛門(こうもん)周囲などにも、分布しています。

このアポクリン汗腺は、性ホルモンの影響を受けているため、思春期ごろから発汗が盛んになります。アポクリン汗腺から分泌された直後の汗には臭いはありませんが、汗をかいたままほうっておくと、汗に含まれる脂肪や尿素、アンモニアなどの成分が皮脂腺から分泌される脂肪酸と混じり合い、皮膚の表面についている細菌によって分解されることにより、刺激のある特有な臭いを発するようになります。

ちなみに、人が一生を通じて出す汗のほとんどは、アポクリン汗腺以外のもう一つの汗腺であるエクリン汗腺から出る水分を主成分とする分泌物で、アポクリン汗腺からの分泌物とは異なります。このエクリン汗腺からの分泌物そのものには、ほとんど臭いはありません。しかし、エクリン汗腺も、アポクリン汗腺の臭いの発散にかかわっています。

部位に限らず、腋臭は疾患ではなく優性遺伝で起こることが多い体質的なものです。両親ともに腋臭だと、子供が腋臭になる確率は75パーセント以上、片方の親が腋臭でも50パーセント以上の確率で遺伝するといわれています。それは、臭いの原因となるアポクリン汗腺の数も遺伝するためです。

アポクリン汗腺は全身の至る部位に分布しているため、腋の下なら腋の下、陰部なら陰部と、どれか一部位で腋臭の臭いが強くなることもありますが、合併して起こることも多い傾向にあります。そのため、腋の下から発生する腋臭(腋臭〔えきしゅう〕症)で悩んでいる人は、陰部から発生するすそ腋臭も併発していることが多い傾向にあります。

性別の特徴としては、男性よりも女性に多くすそ腋臭がみられる傾向にあります。女性の場合、特に生理中にすそ腋臭が強くなることがあります。

また、性行為の際にも強くなることがあります。性的な興奮によって、アポクリン汗腺が刺激されるためで、特に性行為の後、すそ腋臭の臭いがきつくなることが多いようです。

世界的に腋臭体質者の割合を見ると、日本人では10人に1人、中国人では30人に1人、白人では10人に8人、黒人では10人すべてとされています。

このように日本人では腋臭体質者が少数派という事情と、日本人が清潔好きという理由があいまって、自分の腋臭の症状が気になって仕事や勉強に集中できない、恋人がつくれない、人に近付くのが怖いなどの悩みを持つ女性も、少なからずいるとされています。

すそ腋臭に気付いたら、陰部を清潔に保つことが大切です。汗をかいた後はシャワーや入浴で汗をよく洗い流し、清潔な下着にこまめに取り替えます。衣服や下着の上から使えるパウダースプレーや全身に使えるローションなどのデオドラント製品の外用も、ある程度効果があります。また、陰毛があると汗が付着して細菌が繁殖しやすくなるので、陰毛を切ったり脱毛すると、臭いを減らす効果があります。

ニンニクや唐辛子などの香辛料やアルコールなども、発汗を促すことで臭いの原因になります。肉類や卵、乳製品といった動物性蛋白(たんぱく)質と同様、摂取を控えることで臭いの軽減につながります。

セルフケアを行っても、すそ腋臭の臭いが改善されない場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科を受診して相談することを考えてみてもよいのではないかと思われます。

すそ腋臭の治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療としては、ビューホット治療、電気凝固法、ボトックス治療、手術療法などがあります。

ビューホット治療は、局所麻酔や無痛麻酔を行った後、陰部に細い針から出る高周波を当てて、アポクリン汗腺、エクリン汗腺を破壊することで、すそ腋臭の臭いを抑えるものです。通常の範囲であれば、20~30分程度で終わります。範囲が広い場合は、60分くらいかかることもあります。手術後は皮膚が少し赤くなる程度で、手術部の固定をする必要がないため、日常生活に制限がありません。1回ですそ腋臭が治るというメリットがあり、手術の翌日からシャワーを浴びることもできます。

電気凝固法は、局所麻酔の後、陰毛の毛根に沿って、針を挿入し、針に電気を流すことで、毛根周囲のアポクリン汗腺を破壊するものです。治療時間は20~30分程度で、通常3カ月おきに2回程度受けることで、効果が現れます。手術と比べ痛みはほとんどなく、治療後の日常生活にも支障はほとんどありません。ただし、治療によって陰毛は薄くなります。メリットは、効果が半永久的な点です。

ボトックス治療は、ボトックスという薬剤を注射して、神経伝達物質のアセチルコリンをブロックします。これにより、陰部の汗を抑えることが可能になります。1回の治療ですぐに効果が現れますが、5~6カ月ほどで効き目はなくなるため、すそ腋臭が完全に治るわけではありません。また、比較的軽度のすそ腋臭には効果が出やすいですが、かなり臭いがきつい場合は抑えられないこともあります。

臭いを抑える効果を強力にするため、ボトックス治療と一緒に、陰部のV(ビキニ)ライン、I(陰部の両側)ラインの脱毛を行うこともあります。陰毛の根元に細菌が増殖して臭いが発生するので、陰毛を少なくして細菌が増殖する環境をなくすことで、臭いのもとを絶つものです。

手術療法には、皮下組織削除法と超音波吸引法があります。

皮下組織削除法は、皮膚を切開して、臭いの根本であるアポクリン汗腺を切除する方法です。皮膚を数センチ切開した後、専用のローラーを皮膚表面に転がして、皮膚の裏側に粒状に並んでいるアポクリン汗腺をカミソリのような器具で切除します。手術後は、1週間ほど患部を固定します。効果が高いだけでなく、傷口が小さくすむのもメリットとされていますが、抜糸が終わるまでの数週間ほど入浴はできません。

超音波吸引法は、陰毛が生えている一番上の左右に、5ミリほど切り込みを入れ、そこから超音波メスを挿入して動かしていきます。超音波により発生した熱でアポクリン汗腺を破壊し、吸引します。

せっかく手術をしてもアポクリン汗腺が取り切れなかったり、皮膚にダメージを与えてしまうことがあることから、手術を勧めなかったり、行わない医師も多いようです。

🇬🇾スタルガルト病

20歳以前に発症し、視力障害を起こしたり、失明したりする遺伝性の疾患

スタルガルト病とは、眼球内部の網膜にある黄斑(おうはん)が変性を起こして、視力障害を起こしたり、失明したりする遺伝性の疾患。スターガルト病、シュタルガルト病、黄色斑眼底、斑状網膜症候群などとも呼ばれます。

ドイツの眼科医、カール・スタルガルトが1901年に初めて報告したことから、この疾患名が付けられました。しかし、現時点でも治療法は見付かっていません。

若年性の黄斑変性では最も多いか最も一般的な疾患であり、通常、常染色体劣性の遺伝形式で受け継がれ、20歳以前に発症します。学童期から10歳代に矯正視力の低下を切っ掛けに発見されることが多く、眼鏡でもコンタクトレンズでも補正できない視野の中央の暗点は最も早い症状です。症状が進むにつれて、黄斑が変性、委縮して、さらに視力が低下します。

その黄斑とは、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。この黄斑に異常が発生すると、視力が低下し、また、黄斑の中心部にある中心窩(か)という部分に異常が発生すると、視力の低下が深刻になります。

スタルガルト病では、黄斑部の網膜色素上皮または網膜深層に、円形または類円形のリポフスチンといわれる黄白色の不規則な斑点が蓄積される結果として、黄斑が変性し、さらに委縮性の病変となります。

両方の目の視野の中央に進行性の欠損が起きて暗点ができますが、周辺視野にはほとんど影響が出ません。夜間や暗い場所での視力が著しく衰え、色を感知する機能が衰えることもあります。

進行性の疾患ですが、個人によって進行速度は異なり、視力が著しく低下して失明に至るケースがある一方で、30歳代になっても良好な視力を維持しているケースもあります。

スタルガルト病の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、両眼対称性であること、進行性であること、家族にかかった人がいること、薬物や感染症など外因がないことなどが重要な手掛かりになります。フルオレセイン蛍光眼底検査、網膜電図などの電気生理学的検査も、診断を確実にするには必須です。黄斑部の網膜色素上皮に異常を起こすABCR遺伝子が突き止められているので、この遺伝子の検索も決め手になります。

スタルガルト病には有効な治療法は見いだされていませんので、視力の大幅な低下を避けることはできません。発症者の網膜に漏出点があればレーザー光凝固の処置が行われますが、それは欠けた視野を戻すのではなく、さらなる悪化を避けるだけです。

症状に応じて、遮光眼鏡、弱視眼鏡、拡大読書器、望遠鏡などの補助具を使用することが有用で、周辺視野と残った中心視を活用できます。その他のリハビリテーションも重要です。

いつの日か、先端的医療の進歩が根本的な治療法を可能にすることが期待されていますが、弱視学級や盲学校での勉学、職業訓練など、将来を見通して現実的に対応することが有益でしょう。

2022/08/02

🇸🇪頭痛

頭痛には、慢性的にズキズキ痛んだり、突発的に激しい痛みに襲われたりと、いろいろあります。また、原因がはっきりせず、あまり心配がいらないものもあれば、脳の異常が原因で命にかかわるものまであります。

この頭痛は、ストレスなどが関係していて原因不明の慢性頭痛(機能性頭痛)と、頭部などに何らかの原因が明らかにある症候性頭痛の二つに大別されます。

慢性頭痛の代表的なものは、頭や首周りの筋肉の凝りや緊張から起こる緊張型頭痛、頭の血管の拡張によって神経が刺激されて起こる片頭痛、および群発頭痛です。

発生頻度が高く、慢性的に痛みが起こる人が非常に多い慢性頭痛では、時折寝込んでしまうほど辛(つら)い症状の人もいれば、日常生活に支障がほとんどない人もいて、痛みの程度はさまざまです。

症候性頭痛のほうは、頭部の外傷による頭痛、くも膜下出血・髄膜炎などの脳血管・髄膜の障害による頭痛、脳腫瘍(しゅよう)などの脳の疾患による頭痛、一酸化炭素中毒・二日酔いなどの何らかの原因物質が関係する頭痛、風邪などの感染症による頭痛、目や耳・鼻などの病気による頭痛に区別されます。

脳に原因のある危険な頭痛の痛み方や痛みの経過は、慢性頭痛とは違います。くも膜下出血や髄膜炎、脳腫瘍など、命にかかわる病気が原因で起こる頭痛は、いずれも非常に激しい頭痛を伴います。

ふだん慢性頭痛を持っている人の場合、いつもの頭痛だと考えて受診が遅れる可能性があるので注意が必要です。危険な頭痛の特徴は、今までに経験したことのない痛み方、突然痛みが始まる、強烈な痛み方、後頭部に痛みを感じる、手足のしびれやまひ、意識の低下などを伴うです。痛み以外の症状があるかどうかも、判別のポイントとしては重要です。

もし、少しでもいつもと様子が違うようであれば、神経内科や脳外科、脳神経内科を受診するようにしましょう。医療機関では、CTスキャン(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴診断)などによる断層画像や髄液の検査などで、診断します。

🇵🇦スティーブンス・ジョンソン症候群

主に医薬品の服用が原因となって、全身の皮膚や粘膜に症状が現れる重篤な疾患

スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS:Stevens-Johnson syndrome)とは、皮膚や粘膜の過敏症である多型紅斑(こうはん)の一種で、最悪の場合は死に至ることもある重篤な疾患。皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれています。

医薬品の副作用が主な原因と考えられていますが、一部は単純疱疹(ほうしん)ウイルス、肺炎マイコプラズマ、細菌、真菌などの種々のウイルスや細菌による感染症、悪性腫瘍(しゅよう)が原因となって発症します。原因不明な場合も、少なくありません。

発症メカニズムについては、医薬品などにより生じた免疫・アレルギー反応によるものと考えられていますが、さまざまな説が唱えられており、いまだ統一された見解は得られていません。

原因と推定される医薬品は、抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、抗てんかん薬、痛風治療薬、サルファ剤、消化性潰瘍(かいよう)薬、催眠鎮静薬、抗不安薬、精神神経用薬、緑内障治療薬、筋弛緩(しかん)薬、高血圧治療薬など広範囲に渡り、その他の医薬品によっても発生することが報告されています。また、総合感冒薬(風邪薬)のような市販の医薬品が原因となることもあります。

症状は、紅斑、水疱(すいほう)、びらんが皮膚や粘膜の大部分の部位に広く現れることに加え、高熱や悪心を伴います。目の粘膜の変化は、皮膚などの粘膜の変化とほぼ同時に、あるいは皮膚の変化より半日もしくは1日程度、先に現れ、両目に急性結膜炎を生じて、充血、目やに、涙、かゆみ、はれなどが起こります。唇や陰部のびらん、のどの痛み、排尿排便時の痛みも起こります。

発症すると予後不良となる場合があり、皮膚の症状が軽快した後も目や呼吸器、肝臓などに障害を残すこともあります。

原因と考えられる医薬品の服用後2週間以内に発症することが多く、数日以内あるいは1カ月以上たってから起こることもあります。

スティーブンス・ジョンソン症候群の発生頻度は、人口100 万人当たり年間1〜6人とされています。死亡する確率は、患部が体表の10パーセント未満の場合なら致死率5パーセントといわれています。

その症状が持続したり、急激に悪くなったりした場合、何らかの医薬品を服用している人は放置せずに、すぐに医師、薬剤師に連絡してください。

スティーブンス・ジョンソン症候群の診断と治療は、皮膚科の入院施設のある病院で行うことが望ましいとされています。入院に至った際は、 皮膚科と眼科、呼吸器科などとのチーム医療が行われることになります。

医師による診断では、皮膚生検で確定診断を早急に行い、血液検査、呼吸機能検査なども行います。また、原因と推定される医薬品や、ウイルスの感染などを検索します。

医薬品の服用後に高熱を伴う皮膚、粘膜、目の症状を認めたケースでは、原因と推定される医薬品の服用を直ちに中止することが最も重要で、最良の治療法となります。しかし、服用を中止しても重症化する場合があるので、注意が必要です。

一般に、スティーブンス・ジョンソン症候群を発症した場合、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の全身投与、あるいは血漿(けっしょう)交換療法、ビタミン類の投与、さらに二次感染予防の目的で抗生物質の投与が行われ、皮膚の症状に対しては外用抗生物質、外用副腎皮質ホルモン剤が用いられます。粘膜の症状に対しては、うがい、洗眼など開口部の処置が行われます。

🇫🇮ストレートネック

首の骨である頸椎が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれが起こる障害

ストレートネックとは、首の骨である頸椎(けいつい)が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれなどが起きる障害。

通常、頸椎は前に向かって軟らかに湾曲している前湾構造をしており、これにより頭の重さを分散させ、体全体のバランスを取っています。しかし、パソコンや携帯電話、スマートフォンを使うなどで前かがみになって、うつむく姿勢を続けていると、頸椎が頭の重さを支えられなくなるために、生理的に正常な前湾構造が失われてゆがみ、真っすぐな状態に近くなるストレートネックとなります。

生理的に正常な頸椎の前湾角度は30~40度であるのに対して、ストレートネックになった頸椎の前湾角度は30度以下を示します。

ストレートネックになると、歩行などの緩やかな動作を行う際にも、分散しない頭の重さが常時、首回りの筋肉に加わることになります。この負担が長期間にわたって継続すると、首回りの筋肉や神経を徐々に圧迫し、血流も悪くなって、肩凝りや手のしびれが起きることがあります。

パソコンや携帯電話、スマートフォンの普及と比例して発症するケースが多くなっている点も、ストレートネックの大きな特徴であり、仕事中に限らず休憩中や移動中も画面を見詰める20~40歳代の働き盛りに多く、特に女性は男性の2倍ほど多いといわれています。女性は首が細いため、筋肉の疲労が蓄積しやすいのが原因と見なされます。

ストレートネックの症状としては、肩凝り、手のしびれ、頭痛、めまいのほか、首の痛み、首の傾き、首の動かしにくさ、上方の向きにくさ、寝違い、枕の不一致、吐き気、自律神経失調症などがあります。

また、ストレートネックが引き金となって、頸椎の椎間板の一部が後方へずれて神経を圧迫する頸椎椎間板ヘルニアや、頸椎の椎間板と椎骨の変性によって脊髄や神経根が圧迫される頸椎症が起きることもあります。

ただし、一時的に症状が改善したように感じられるケースや、症状が度々治まるケースもあることから、症状が慢性化しない限りストレートネックを見極めることが難しい面もあります。

ストレートネックの検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、頸椎の形状を確認します。頸椎の前湾の角度が少なく、生理的に正常な前湾の角度の欠如が確認された場合は、ストレートネックと確定されます。

確定された場合は、さらにMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、症状の進行状況を確認します。また、ストレートネックが要因となって頸椎に負担がかかり、合併する可能性を持つ頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症などの有無も確認します。

整形外科の医師による治療では、前かがみになって、うつむくという不適当な姿勢を長時間継続することが大きな要素を占める障害のため、姿勢を改め、スマートフォンの画面を見詰め続けたりする悪い習慣を避けることが根本となります。根本を解決しない限り、どのような治療を行っても再発の危険性がぬぐえないためで、実際、ストレートネックを発症した人の半数以上が再発を経験しています。

具体的には、パソコンを使って長時間のデスクワークをする人の場合は、画面を視線の高さに合わせるようにし、負担のかかる前かがみの姿勢が続かないようにしていきます。また、一定時間おきにストレッチを行い、頸部周囲の筋肉の緊張を和らげるようにしていきます。重症ではない限り、姿勢に気を付けストレッチを行うことで十分改善できます。

継続的な負担から頸部に炎症を起こし、痛みが強い場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤や筋弛緩(きんしかん)剤を用いて治療します。局所の安静のために、頸椎固定用のカラー(えり巻き式補装具)を首に装着することもあります。

ストレートネック対策の矯正枕(まくら)もあり、睡眠時を利用して、首に当たる部位の枕の高さを調節することによって、首に正常な湾曲を強要させて矯正していきます。背筋を強制的に伸ばす働きを持つ姿勢矯正ベルトもあります。

そのほかの理学療法としては、外部から温めることによって血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するホットパックなどの温熱療法、首の牽引(けんいん)と休止を繰り返すことによって首の痛みや手のしびれを緩和する頸椎牽引療法、低周波治療、レーザー治療などがあります。

🇵🇦ストレス性高体温症

体は健康であるのに、精神的ストレスで発熱し、37℃以上の高体温となる状態

ストレス性高体温症とは、精神的ストレスで熱が出て、37℃以上の高体温となる状態。心因性発熱とも呼ばれます。

精神的ストレスで高い熱が出るケースもありますが、37℃を少し超える程度の軽い熱がずっと続くケースが多くがみられます。

高い熱が出るケースは、仕事をする、人に会う、授業に出る、極度に緊張する、他人と激しい口論を交わすなどの精神活動に伴って、高熱が出ます。大学入試や資格試験など大切な試験当日の朝、急に39℃の高熱が出たけれど、試験が終わったらすぐ下がったというようなことがあります。

これは小児によくみられるタイプで、すぐ解熱するものの、ストレスの原因を解決しないと何度でも繰り返すことがあります。

微熱が続くケースは、仕事で残業が続く、介護で疲れ果てている、授業と部活の両立が難しいなど、慢性的なストレスが続いて気が抜けない状況や、いくつかのストレスが重なった状況で、37℃台の微熱程度の高体温が続くものです。微熱はしばしば、頭痛、倦怠(けんたい)感などの身体症状を伴います。

これは働き盛りの成人によくみられるタイプで、ストレスの原因が解決した後もしばらく続くことがあります。

この精神的ストレスがある時の発熱は、風邪を引いた時の発熱とメカニズムが異なります。

風邪を引いた時の発熱は、ウイルスやマイコプラズマ、細菌などへの感染によって生じた炎症が信号となり、脳が交感神経と筋肉に指令して体温を上げ、ウイルスなどをやっつけようとする正常の反応です。この時の信号として働くのが、炎症性サイトカインとプロスタグランジンE2(PGE2)と呼ばれる物質。風邪を引いた時に服用する漢方薬の葛根湯(かっこんとう)はサイトカインの産生を抑えることで、また解熱薬はプロスタグランジンE2の産生を抑えることで解熱作用を発揮します。

一方、精神的なストレスがある状況では、ストレスに対処するために交感神経の働きが活発になり、体温が上がります。体温が上がるという点では風邪を引いた時と同じですが、ストレス性の高体温の場合、サイトカインとプロスタグランジンE2は働かないため、医療機関で血液検査をしても炎症反応は認められず、風邪薬や解熱薬など炎症を抑える薬を飲んでも、熱は下がりません。

ストレス性高体温症の症状は、風邪とよく似たもので、頭がくらくらして歩く時にふらついたり、体が熱っぽく感じたり、集中力の低下で仕事や勉強の能率が下がったりするようになります。ストレス性高体温症を風邪と勘違いして解熱剤を服用すると、解熱剤の効果で一時的に体温は下がります。しかし、薬の効果が切れたところですぐに体温が上昇してくるのが、ストレス性高体温症の特徴です。

精神的ストレスは体にも心にも多くの影響を与えますので、ストレスで体調を壊す時、一つの疾患だけでなく、複数の身体疾患、精神疾患が同時に起こることがあります。ストレス性高体温症では、小児では起立性調節障害、成人では緊張型頭痛、うつ病、双極性障害(躁〈そう〉うつ病)、不安障害、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を合併していることがあります。

開業医などの医療機関を受診して各種の検査を受けてもなかなか疾患名がはっきりしないというのも、ストレス性高体温症の特徴です。風邪でもないのに微熱が3週間以上続いている場合には、ストレス性高体温症が疑われることになりますが、自己判断は禁物で、実は感染症、自己免疫疾患、悪性腫瘍(しゅよう)など発熱を伴う器質的な疾患が隠れているかもしれません。

まず、子供の場合は小児科、大人の場合は内科で、しっかり発熱の原因を調べてもらうことが勧められます。器質的な疾患が否定的でストレス性高体温症が疑われる場合は、検査を受けた医療機関から心療内科、ないし精神科を紹介してもらってください。

ストレス性高体温症の治療と生活上の注意

心療内科、ないし精神科の医師による治療は、薬物療法、心理療法、自律訓練法などのリラクセーショントレーニング、合併している身体疾患、精神疾患の治療、生活指導を組み合わせて行います。

薬物療法では、不安障害には、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が使われ、不安を即効的に鎮めます。抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も使われ、長期的な効果が得られています。

うつ病、双極性障害(躁〈そう〉うつ病)などの治療には、抗うつ薬SSRI、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が第一に選ばれる薬となります。不安が合併する時には、抗不安薬を併用します。

十分な睡眠がとれていない人には、睡眠薬が有効です。風邪薬や解熱薬はほとんど効きませんが、緊張型頭痛に対しては有効です。

薬による治療に併せて、過労、緊張状態、対人関係など精神的ストレスの原因を探って、それを改善する心理療法も行います。交感神経の過剰な興奮を鎮め、自律神経を鍛えてバランスを整え、免疫力を回復する自律訓練法を併用すると、さらに効果的です。

日常生活では、仕事や学業、家事などのペースダウンを試みて、精神的ストレスをためないように気分転換を図る、3食きちんとバランスのよい食事を心掛ける、早寝早起きで睡眠を十分にとる、酒やたばこ、コーヒーを控える、軽い運動を定期的に続ける、入浴で心身ともにリラックスするなどが大切です。

🍓ストロベリーマーク

出生時や生後間もなくに出現する、イチゴ状の赤く軟らかい小腫瘤

ストロベリーマークとは、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)。イチゴ状血管腫とも呼ばれます。

出生時にはわずかに赤いか無症状で、生後1週から数週より、平らで小さい赤あざが出現し、次第に増大、隆起し、生後6〜8カ月ごろピークに達します。表面はイチゴの実のように顆粒(かりゅう)状で、軟らかく、鮮紅色を示す場合が多いのですが、色調に変化がないこともあります。また、表面が腫瘤状に隆起するものは3割程度で、6割近くは軽度に隆起するだけです。

ストロベリーマークができる部位は、顔や首が一番多いものの、頭、背中、肩、手足など、どこにでもできます。まぶたや唇、鼻孔部や肛門(こうもん)部、外陰部などに生じたものでは、視力や呼吸に障害を与えたり、腸閉塞(へいそく)などを来す危険性もあります。

大きさは数ミリから数センチとさまざまで、鶏卵大以上の大きな腫瘤になることもあるものの、年月とともに自然に小さくなっていき、早ければ1~2歳で、遅くとも5~7歳ごろまでに自然消退しますが、完全ではなく、表面にしわや変形が残ることも少なくありません。

このストロベリーマークは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するために、皮膚の表面が盛り上がって出現します。胎児期の発達段階にある血管を構成する細胞が何らかの原因で残り、出生後、母親から受けていた増殖抑制因子が欠乏して、増殖するのではないかとも考えられています。

通常、大部分のものは自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団が皮下にあるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

ストロベリーマークの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師は通常、見た目と経過からストロベリーマークを診断します。

自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは、無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたや唇、鼻孔部や肛門部、外陰部などに生じたものでは障害の危険性もありますので、早急に治療を施します。

即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

自然消退した後に表面にしわや変形が残ったケースでは、後日、形成外科的に手術します。また、乳幼児期からレーザーによる早期治療を行い、色調を自然経過よりも淡くしたり、自然消退を促して変形を抑制することもできます。表面の赤あざには、パルス色素レーザーを照射して色調を淡くします。皮下血管腫には、内部にヤグレーザーを照射して血管腫が腫瘤になるのを未然に防いだり、すでに盛り上がった腫瘤を縮小したりします。

なお、ストロベリーマークなどの赤あざに限らず、すべてのあざは日光の紫外線を受けると、症状が悪化したり、医療レーザーの効果が小さくなる可能性があります。症状の悪化や治療効果を妨げないように、過度の日焼けを避けるサン・スクリーン対策をすることが勧められます。

🇷🇺スピッツ母斑

一般に子供の顔面に多く発現し、急速に大きくなる良性の腫瘍

スピッツ母斑とは、特に顔面に、また小児に多く発現する腫瘍(しゅよう)のこと。この最初の報告者の名前に基づいた疾患名のほか、若年性黒色腫、若年性良性黒色腫、紡錘細胞性母斑という別名もあります。

良性の腫瘍であり、ほくろのがんと呼ばれることもある悪性黒色腫(メラノーマ)とは違います。青壮年にできることもありますが、主に3~13歳の幼児や小児にでき、突如として顔面に現れると、急速に1センチ程度まで大きくなるという特徴があります。

一見すると、ほくろのように思えることもありますが、色がやや淡い淡紅色から淡紅褐色のことが多いことや、円形や楕円(だえん)形に盛り上がった部位の表面が滑らかで、光沢があるという特徴を持っています。また、病変の周囲が赤みを帯びることもあります。傷付いたり、出血しやすく、黒褐色の色素沈着を伴うこともあります。

顔面だけではなく、ほかの部位にできることもありますし、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素性母斑の病変内に、スピッツ母斑ができることもあります。

原因は、色素性母斑と同じとされていて、メラニンを作る機能を持っているメラノサイトが病変に集中してしまうことが挙げられています。

スピッツ母斑で悪性化することはありませんが、悪性黒色腫との区別が難しいともいわれているので、見極めが重要になってきます。ただし、この見極めは素人には困難だとされているので、皮膚科や皮膚泌尿器科、形成外科で検査してもらい、慎重な対応をしていくことがポイントになります。

スピッツ母斑の検査と診断と治療

医師によるスピッツ母斑の診断では、見た目だけでは迷うことが多く、最終的には切除した組織の病理検査で確定診断します。組織学的には、著しく色素沈着した真皮表皮接合部に、深部へと広がる多核巨大細胞、類上皮細胞様細胞、紡錘状細胞など混在する細胞が認められます。

鑑別すべき他の疾患として、悪性黒色腫のほか、化膿(かのう)性肉芽腫、偽リンパ腫があります。

医師による治療では、外科的切除が一般的です。切除した組織の病理検査が必要になるケースが多いため、ほとんどの組織が焼き消えてしまうレーザー治療は通常、行われません。

💅スプーンネイル

つめの甲の先端、あるいは全体の表面がへこんでいる状態

スプーンネイルとは、つめの甲の先端、あるいは全体がスプーン状にへこむ状態。匙状(さじじょう)づめとも呼ばれます。

全指のつめがスプーン状に表面がへこんでいる場合、成人では鉄欠乏性貧血の症状のことがあります。同時に、口角炎、口唇炎、赤い舌がある場合は、さらにその可能性が強いので、内科を受診する必要があります。

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することにより、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の産生が不十分になって、発症する貧血です。ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしていますので、ヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になって貧血を起こし、めまいや、立ちくらみ、スプーンネイルの症状が現れたりします。体内には、鉄分がため込まれているため、すぐに鉄分がなくなってしまうということはありませんが、ため込まれている鉄分がなくなった時に症状が現れます。

また、数本のつめだけに、スプーン状に表面がへこんでいる変化がみられる場合は、局所的な原因のことが多く、クリーニング業など、酸やアルカリ、有機溶剤などに長期間、接している人に生じることがあります。

また、スプーンネイルは、手先に圧迫のかかるような職業の人にも多くみられます。

スプーンネイルの検査と診断と治療

内科や皮膚科の医師によるスプーンネイルの治療では、鉄剤を内服します。この鉄剤には、徐放性鉄剤と非徐放性鉄剤があります。徐放性鉄剤は、胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出して、少しずつ吸収されるため、胃粘膜への刺激は少なく、空腹時に飲むことができます。ただ、この製剤は胃酸がないと効果がないため、胃の切除を受けた人には使えません。非徐放性鉄剤は、胃を切除した人や胃酸の分泌が低下している高齢者、低酸症の人に吸収可能な薬剤です。

徐放性、非徐放性ともに主な副作用として、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹痛、下痢、便秘などの胃腸障害を起こすことがあります。鉄剤を服用すると便が黒くなることがありますが、心配はいりません。貧血が改善されたからといって、医師の指示なしに服用をやめてはいけません。赤血球中のヘモグロビンの量が正常になっても、その後2〜3カ月は服用を継続する必要があります。

スプーンネイルは、生活習慣の改善によって予防することができます。まず、無理なダイエットや偏食、不規則な食事、夜更かしを改め、鉄分の多い食品を積極的に摂取します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっても、鉄分を意識的に摂取することはお勧め。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

成人男性は鉄分を1日約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの摂取を心掛けたいもの。女性は月経や妊娠、授乳のため鉄分が失われやすいので、男性より多くを必要とします。鉄分を多く含む食品は、大豆、大豆製品、レバー、ひじき、もずく、のり、あさり、かき、ほうれん草、小松菜、切干大根、いわし丸干し、牛もも肉、まぐろ赤身など。

蛋白(たんぱく)質を摂取することも、大切です。ヘモグロビンは鉄と蛋白質でできているので、肉や魚、豆腐、卵などを適量食べます。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進させる働きがあるので、野菜や果物なども食べるようにします。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンを鉄分と一緒に摂取すると、鉄分の吸収が悪くなりますので、食事とは時間をずらして飲むとよいでしょう。

💅スプリットネイル

爪の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態

スプリットネイルとは、爪(つめ)の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態。オニコレクシス、爪甲(そうこう)縦裂症とも呼ばれます。

爪の甲に縦線が入るのは老化現象として一般的にみられるものですが、スプリットネイルでは縦の割れ目が入るまでに至り、しかも、その割れ目は深く、爪が2つに分かれていることがはっきり確認できるほどになります。

1本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合のほか、数本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合、すべての爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合もあります。炎症や痛みを伴う場合もあります。

スプリットネイルの原因は、爪母の損傷、栄養素不足、マニキュアや薬剤、水仕事、爪根部の末梢(まっしょう)循環障害、皮膚疾患、全身性疾患などいくつかあります。

爪の付け根の皮下にあり、爪を作り出している爪母を強打したり、傷付けたりして、爪母が損傷した場合は、新しく生えてくる爪にはすでに縦の割れ目が入っていたり、中央で裂けていたりします。この縦の割れ目は爪母に損傷が加わってできるものですから、現れるのは損傷が加わってから数週間後。

食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素不足になった場合も、爪がもろくなっているために、圧迫などによって簡単に縦の割れ目が入ることがあります。偏った食生活や過度なダイエットによって鉄欠乏性貧血になり、これが原因でスプリットネイルになることもあります。

手の爪に施すマニキュア、足の爪に施すペディキュア、マニキュアなどを落とす除光液(エナメルリムーバー)を使用する機会の多い女性や、仕事で有機溶剤や殺菌・消毒用のアルコールの一つであるエタノール(エチルアルコール)を使用している人の場合、揮発性の高い溶剤が爪から水分と脂分を奪い、爪表面を乾燥させるために、縦の割れ目が入りやすくなります。マニキュアなどを落とす除光液に含まれるアセトンなどが外的刺激になって、スプリットネイルを誘発することになります。

水仕事の多い人や、湿気の多い環境にいる人も、水分過多によって爪がもろくなったり、お湯の使用によって爪の脂分が奪われるために、縦の割れ目が入りやすくなることもあります。蛋白質を分解する成分が入っている洗剤などが、蛋白質の一種のケラチンを主成分とする爪への外的刺激になって、スプリットネイルを誘発することもあります。

自律神経失調症や糖尿病などが原因で末梢循環不全という疾患を発症し、手足などの末梢まで血液循環が行き届かず爪に必要な栄養素が不足した場合も、爪に縦の割れ目が入ったり、爪が伸びなかったりすることがあります。

乾癬(かんせん)、湿疹(しっしん)、皮膚炎、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)、カンジタ菌による爪囲炎などの皮膚疾患がある場合も、爪がもろくなって爪の甲の先端や中央部に縦の割れ目が入ることがあります。

卵巣機能障害、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、慢性肝障害、貧血、低体温、糖尿病、高尿酸血症、神経疾患などの全身性疾患がある場合も、それが原因でスプリットネイルを合併して発症することもあります。

爪に縦の割れ目が入るのは、体に異常が出ているシグナルかもしれません。爪に何カ所も割れ目が入り、炎症や痛みがある場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

スプリットネイルの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲に縦の割れ目を起こし得る外的物質や薬剤、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、原因に応じて行います。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合があります。

爪を作り出している爪母の損傷が原因でスプリットネイルを来している場合は、現在の医療では手当できないとされています。

栄養素不足が原因の場合は、まずは蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類など、爪に必要な栄養をしっかり摂取します。

マニキュア、除光液、有機溶剤、あるいは水仕事などが原因であれば、極力それらの使用や機会を中止したり、減らします。爪への負担が減るため、多くのケースでは自然に治ります。仕事などでどうしても薬剤、水、洗剤などを使わなくてはいけない場合は、手を保護するものを着用したり、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行います。

爪の末梢循環不全が原因であれば、ステロイド剤を配合した塗り薬をこまめに塗ったり、末梢血管の収縮を防ぐビタミンEの飲み薬を内服します。医師による治療と並行して、血液循環をよくするために日ごろから、手足のマッサージ、爪もみを心掛けます。

一部の爪にスプリットネイルがみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。すべての爪にスプリットネイルがみられる全身性疾患があれば、その治療を行います。

🏃‍♀スポーツ心臓

長期にわたり、激しい肉体運動を続けるスポーツ選手などにみられる心臓の状態

スポーツ心臓とは、長期にわたって激しい肉体運動を続けるマラソン、水泳、ボート、自転車などの持久力を要するスポーツ選手にみられる、心臓が肥大する症状。アスリート心臓、スポーツ心臓症候群とも呼ばれます。

1899年、スウェーデンのヘンシェン医師がクロスカントリースキー選手の診察をして、心臓疾患がないのに心臓が大きくなっていることに気付いて、この特異な症状をスポーツ心臓と名付けました。

高血圧や心臓弁膜症などの疾患でも心臓が大きくなりますが、このような病的な心臓とスポーツ心臓との最も重要な相違は、病的な心臓では心機能が低下しているのに対して,スポーツ心臓では心機能が優れている点です。一般的に、スポーツを中止すると平常のサイズの心臓に戻ります。

スポーツ心臓の特徴は、心臓自体が球状に大きくなっていくのとともに、不整脈や徐脈など脈拍に変動がみられることが挙げられます。

一般的な人の場合、安静時の心拍数は1分間に60~80回が正常とされ、安静時の心拍数が50回以下になると、脈拍が遅くなる徐脈性の不整脈である疑いが指摘されます。しかし、スポーツ心臓が出現するようなトップ選手では、安静時の心拍数が40回を下回ることが少なくなく、中には30回以下という例もあります。一般の人では異常とされる所見も、スポーツ心臓の場合には激しい肉体運動によって心臓に構造的、機能的な変化が生じたもので、生理的な適応現象だと考えられています。

なお、脈拍は徐脈の傾向を示しますが、血圧に関しては、一般の人の血圧とスポーツ心臓の人の血圧とには、数値にそれほど大きな違いはみられないとされています。

スポーツ心臓は、いずれの競技種目の選手にもみられるものではなく、種目によって出現しやすさが変わります。比較的多くみられるのは、マラソン、水泳、ボート、自転車、クロスカントリースキー、重量挙げ、柔道などの持久力や耐久力が必要とされる競技種目の選手です。

スポーツ心臓の特徴を示すに至るには、スポーツ歴が長く、しかもかなりハードなトレーニングを長い期間にわたって続けることが必要になります。ある調査で、1日に10キロほどのジョギングの習慣があり、フルマラソンやトライアスロンのレースにも出場するような市民ランナーを対象に心臓の所見を調べたところ、スポーツ心臓の場合と同様に徐脈の傾向はみられたものの、スポーツ心臓との所見がみられた例はなかったといいます。

このことからも、スポーツ心臓自体はかなりハードで高度なトレーニングを何年にもわたって続けてきたトップ選手にのみ出現するものだと考えられています。トップ選手がスポーツ心臓になる確率は、女性が22・5%、男性が7・5%と女性のほうが高くなっています。

スポーツ心臓は競技種目の特性やトレーニングの強度などにより、心肥大型、心拡張型、複合型に分類されます。

心肥大型は、瞬発力を要するような競技種目の選手に多くみられる型です。代表的な競技種目に、重量挙げや柔道、レスリングなどがあります。筋力トレーニングのように、筋肉を急激に縮めるような運動を行うことで心臓にはその圧力の負荷がかかるため、次第に心臓の壁が厚くなっていきます。特に、左心室の壁に筋肉が増えることによる肥厚が顕著となります。また、それに伴って心臓の重さも増します。

心拡張型は、持久力を要するような競技種目の選手に多くみられる型です。代表的な種目としては、マラソンなどの長距離走や水泳があります。持久性トレーニングのような運動により、運動をしている時には血圧が上昇し、心拍数も増加します。また、1回に心臓から送り出される血液量も増加するため、一度に送り出す血液の容量を増やすという負荷が心臓に加わります。その結果、次第に心臓は容積を増やすように拡張して大きくなります。とりわけ、左心室の内腔に容積の拡大が顕著にみられるという特徴があります。

複合型は、心肥大型と心拡張型との両方が起こった状態です。代表的な競技種目に、自転車やクロスカントリースキーがあります。競技時間が長く有酸素的な酸素供給量が必要なことと、筋肉が1回当たり出力している時間が他の競技と比べ長いために、心室の壁が厚くなり、かつ心室の容積が増えるタイプの心臓となります。

心電図にしばしば異常が認められ、不整脈や徐脈など脈拍に変動がみられる場合でも、スポーツ心臓と診断される場合には病的なものとはされません。しかし、例えばスポーツ中に突然死する原因の一つとされる肥大型心筋症のように、スポーツ心臓と類似した所見を示す疾患が、スポーツ心臓と誤診される可能性がないわけではありません。

定期的に検診やメディカルチェックを受けるようにして、必要な場合にはきちんと治療を受けておくようにすることが大切です。

スポーツ心臓の検査と診断と治療

循環器科、内科循環器科、内科などの医師による診断では、スポーツ歴、病歴を問診した上、聴診、心電図検査、胸部X線検査を行います。スポーツ心臓の特徴である聴診時の心雑音、安静時の心拍数が1分間に40~50回未満の徐脈、胸全体の大きさに対して心臓が占める割合である心胸郭比50%超を認める場合は、スポーツ心臓である可能性が高いと判断します。

過去に心筋症や不整脈がなかったことを確認できない場合は、特発性拡張型心筋症、肥大型心筋症などがスポーツ選手にとっての突然死の原因となり得るため、心エコー検査、ホルター心電図検査、運動負荷心電図検査などを追加して精密検査を行い、重篤な心疾患との鑑別を行います。

循環器科、内科循環器科、内科などの医師による治療では、一般に経過が良好なため、処置を行いません。スポーツ心臓における変化は可逆的なのが特徴で、トレーニングを中止するとスポーツ心臓にみられる特徴の多くはみられなくなります。

2022/07/17

🇦🇷スポロトリコーシス

スポロトリックス・シェンキーという真菌の一種の感染によって、皮膚と皮下組織に潰瘍性の病変を生じる疾患

スポロトリコーシスとは、スポロトリックス・シェンキーという真菌の一種が皮膚に感染して、皮膚と皮下組織に潰瘍(かいよう)性の病変を生じる疾患。スポロトリクム症とも呼ばれます。

原因菌となるスポロトリックス・シェンキーは、枯木や土中など自然環境中に存在する二形性の真菌、いわゆるかびの一種で、特に熱帯や温帯地方に広く分布しています。

日本では、晩秋から冬期に主に東北以南で、土と接触する機会の多い農業従事者、園芸業従事者や、土をいじって遊ぶ小児に発生します。関東、近畿、四国、九州地方に多くみられましたが、都市化が進んだ1980年前半を境に減少し、発生数は年間数十例以下と少数です。

スポロトリックス・シェンキーが切り傷や擦り傷、刺し傷などの軽微な外傷を介して、皮膚内に侵入して発症するので、露出しやすい顔面、手、前腕などに好発します。下肢に発症する場合は、下肢を露出する春から夏にみられます。

数週間から数カ月の潜伏期を経て、スポロトリックス・シェンキーの接種部分に一致して、紅色の小さなあせも(汗疹)様の赤いぶつぶつ(丘疹〔きゅうしん〕〉)や、小さなうみ(膿疱〔のうほう〕)を形成し、次第に増大して、皮下組織に硬い浸潤を触れる皮下結節(しこり)となります。この結節は自潰しやすく、病変中央部で慢性の潰瘍を形成します。

軽度の痛みを伴う場合がありますが、そのほかの自覚症状はありません。

皮疹が単発して徐々に増大する限局型、リンパ管に沿って上行性に多発するリンパ管型、原発巣から血行性に全身汎発(はんぱつ)性の皮下結節がみられる播種(はしゅ)型のほか、骨・関節や肺など皮膚以外の臓器に発生する型に分類されます。

限局型は、小児の顔面や上肢などの外傷部位に多く発生し、リンパ管を介しての転移は認められず、肉芽腫(にくげしゅ)性結節を示します。

リンパ管型は、成人の手や指、前腕などの外傷部位に多く発生し、腫瘍(しゅよう)状、あるいは肉芽腫状に盛り上がって潰瘍を伴う結節が原発巣として生じ、その後、飛び石状にリンパ管を介して、上行性に連続して結節状の転移巣を示します。

日本における深在性皮膚真菌症としては、スポロトリコーシスが最も発生率が高くなっていますが、人から人への感染は原則としてありません。放置すると数年にわたって悪化し、普通は自然治癒に至りません。

スポロトリコーシスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、真菌検査、病理組織検査を行い、補助的に皮膚反応を行います。真菌検査には、直接鏡検と培養検査があり、直接鏡検では、局所麻酔をして病変の一部をメスなどで採取して顕微鏡で調べるものの、菌要素を検出しにくい疾患です。培養検査では、条件により菌糸形と酵母形の二形性の集落が形成されます。

病理組織検査では、一部の組織を培養検査に回すこともでき、最も確実な診断方法です。病変の一部を採取し、特徴的な菌要素の検出や、炎症を伴う慢性肉芽腫像などで確定できます。

皮膚反応は、スポロトリキン皮内反応といい、菌の培養液で作った抗原液を皮内注射し、結核のツベルクリン反応と同じように皮内反応させて48時間後の硬結の程度をみるもので、直径10ミリ以上を陽性とします。まれに偽陰性もあるので、注意を必要とします。

近年は、組織や分離菌からのDNA診断が、迅速で正確な菌同定法として利用されてきています。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ヨウ化カリウムの内服と、使い捨てカイロを当てるなどの局所温熱療法を第一選択として行います。ヨウ化カリウムの内服が著効し、通常1~3カ月で治癒しますが、胃腸障害を生じやすいのが難点です。

ヨウ化カリウムの内服が難しい場合は、イトラコナゾール(イトリゾール)やテルビナフィン(ラミシール)などの抗真菌剤の内服と、局所温熱療法を併用します。

外科的に病変を切除することもあります。

🟧アメリカの病院でブタ腎臓移植の男性死亡 手術から2カ月、退院して療養中 

 アメリカで、脳死状態の患者以外では世界で初めて、遺伝子操作を行ったブタの腎臓の移植を受けた60歳代の患者が死亡しました。移植を行った病院は、患者の死亡について移植が原因ではないとみています。  これはアメリカ・ボストンにあるマサチューセッツ総合病院が11日、発表しました。  ...