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2022/08/21

💅爪甲白斑症

爪の甲が点状、横帯状、あるいは全体に白くなる疾患

爪甲白斑(そうこうはくはん)症とは、爪(つめ)の甲が白くなる疾患。白くなる様子は、点状のもの、横帯状のもの、爪の甲の全体が白くなるものなどさまざまです。

点状になるものが最も多く、次いで多いのは横帯状になるもので、爪全体が白くなるものは極めてまれです。

点状になる爪甲白斑症では、爪半月の近くに小さな点状白斑が現れ、その後、爪の先端に移動し遊離縁に向かう途中で消えていきます。爪母で作られる爪は皮膚の表面のケラチンからなる角層が変化したものですが、爪甲の不全角化という爪の成長異常によって、主に生じます。また、爪の甲の透き間に空気が入ることでも生じます。健康な若い人や子供に多くみられ、俗に「幸運の星」などと呼ばれています。

横帯状になる爪甲白斑症では、爪の甲に幅1〜2ミリの白い帯状の変化が1〜数本現れ、その白い帯状が波打つように重なり合ってみられます。遺伝によって起きる先天性のものもありますが、多くは後天性で、低蛋白(たんぱく)血症(低アルブミン血症)や砒素(ひそ)中毒、腎(じん)臓障害が生じた際に、それらの症状の一つとして現れます。また、マニキュアなどが原因となることもあり、やめることで回復するということもあります。

爪の甲の全体が白くなる爪甲白斑症では、爪の甲全体が不透明な白、ないし乳白色になります。多くは遺伝によって起きる先天性のものであり、生まれた時または乳児期から始まります。発症する根本的なメカニズムは、いまだ判明していません。

爪甲白班症の検査と診断と治療

点状になる爪甲白斑症は、特に治療の必要はありません。自然に完治するのを待ちます。

横帯状になる爪甲白斑症は、原因となり得る疾患などを確認し、それを除去ないし治療します。例えば、砒素、鉛などの中毒、麻疹(ましん)、肺炎などの感染症、乾癬(かんせん)、円形脱毛症などの皮膚疾患、そのほかの心筋梗塞(こうそく)、腎不全などの疾患、あるいは月経、手術、マニキュア使用などが、原因となり得ます。

爪の甲の全体が白くなる爪甲白斑症も、特に治療の必要はありません。自然に完治するのを待ちます。ただし、爪の水虫や爪半月の拡大、あるいは肝硬変、慢性腎不全、糖尿病などの全身疾患でも爪は白くなり、よく似た外観をみせますので、注意して鑑別しなければいけません。

💅爪甲剥離症

爪の甲が爪床から離れて、浮いてくる状態

爪甲剥離(そうこうはくり)症とは、爪(つめ)の甲が爪床からはがれる状態。爪の半分くらいまでははがれてくることがありますが、爪が抜け落ちることはありません。

爪は本来、先端部以外は爪の下の皮膚とよく付着しているものですが、爪甲剥離症では爪が下の皮膚である爪床から遊離します。爪が爪床から離れて、浮いてくる状態は爪の先端から始まり、根元に向かって徐々に進行して、剥離した爪は白色ないし黄色に変化します。

また、指と爪の透き間にゴミが入り、しばしば部分的に汚い褐色調を呈することもあります。こういう状態の時、爪の下をつまようじなどで掃除するのはよくありません。皮膚を痛めて、ますます悪化することになります。

爪甲剥離症の原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性の爪甲剥離症もありますが、多くは後天性で、外因、感染症、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患などに伴って生じます。最も多いのは、原因のはっきりしない特発性のもので、この場合、症状は軽くあまり進行するということもありません。

外因によるものとしては、爪と爪床の間にトゲや鉛筆の芯(しん)などが入るなどのけが、あるいは、指先の細かい操作を必要とする職業によるものがあります。職業は、料理人、理髪師、美容師、庭師、パソコンのオペレーターなど。また、マニキュアや洗剤、さらには有機溶剤やガソリンなども原因になります。極めて軽い湿疹(しっしん)やかぶれが起こった場合、手の皮膚ではわずかに皮がむけるだけで治っていきますので、気付かずにすむことが多いのですが、爪の下ではほんのわずかに皮がむけた状態でも、爪ははがれて浮いた状態となります。

感染症によるものは、カンジダという真菌、一種のカビの爪床部への感染によるものがほとんどです。この場合は、爪の下の皮膚がガサガサした感じになります。

薬によるものとしては、内服するだけで爪甲剥離症を起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

皮膚疾患に伴うものは、乾癬(かんせん)、接触皮膚炎、掌蹠(しょうせき)多汗症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、尋常性天疱瘡(てんぽうそう)、薬疹などがあります。

全身疾患に伴うものとしては、甲状腺(せん)機能高進症(バセドウ病)に伴う爪甲剥離症(プランマーズ・ネイル)が最も有名です。この場合、爪は平らになることが多く、時に反り返ったようになることもあります。最初1本の指から始まり、次第に他の指にも進行していきます。甲状腺機能高進症以外にも甲状腺機能低下症、ペラグラ、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、梅毒などの感染症でみられます。

爪甲剥離症の検査と診断と治療

念のために、皮膚科で診察を受けます。特に、1カ所または数カ所の爪だけが剥離を起こす通常の爪甲剥離症と異なって、手足すべての爪に変化がある場合は、甲状腺機能高進症を始めとする全身的な疾患が原因かもしれませんので、早めに受診するようにしましょう。

よい治療方法はないのですが、カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。一般的には、角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。爪の治療には、非常に時間がかかります。甲状腺機能高進症に伴うものは、その治療を行えばよくなります。

日常では、保湿剤などのスキンケア、ネイルケアにより予防することが、重要となります。爪も皮膚の一部であり、角質を構成するケラチンという蛋白(たんぱく)質が変化したものですから、マニキュア、除光液、洗剤などを使いすぎるとダメージを受けるので、その使用を控えます。進行中は、水仕事を避けたほうが安全のようです。

🇮🇳増殖性咽頭扁桃肥大症

咽頭扁桃ともいわれるアデノイドが極端に大きい状態

増殖性咽頭扁桃(いんとうへんとう)肥大症とは、鼻と咽頭の間にあるリンパ組織で、咽頭扁桃ともいわれるアデノイドが極端に大きい状態。単にアデノイドとも、アデノイド増殖症、アデノイド肥大症、咽頭扁桃炎などとも呼ばれます。

アデノイドは誰にでもある組織で、外界から細菌やウイルスが体に侵入しようとするのを防御する役割を果たしていますが、特に幼児期に生理的に大きくなります。アデノイドの大きくなるピークは5歳ころで、その年齢を過ぎると大抵の場合は委縮して、大人ではほとんど表面から見てもわからないくらいになります。

アデノイドが極端に大きいと、いろいろな症状がみられるようになります。まず、鼻からの吸気の流れが遮断されます。これにより、鼻呼吸ができなくなり、口で息をするようになります。夜にはイビキをかいたり、呼吸が止まることもあります。一言でいえば気道閉塞(へいそく)ということになりますが、長く続くと漏斗胸といって胸が変形したり、アデノイド顔貌といって、いつも口を開けている締まりのない顔になったり、歯並びが悪くなったりします。

そのほかには、合併症として急性中耳炎や滲出(しんしゅつ)性中耳炎を起こしやすくなったり、難聴になったりします。これは、アデノイドが直接、中耳と咽頭をつなぐ耳管開口部をふさいでしまうことと、アデノイドに起こった炎症の耳管に波及することが原因と考えられます。

また、アデノイドが大きいと、高率に副鼻腔(ふくびくう)炎も合併します。これは、アデノイドにより鼻から咽頭への空気の行き来が遮断されるため、あるいはアデノイドからの細菌感染が原因と考えられます。

逆にいえば、3〜6歳ぐらいの子供で、急性中耳炎、滲出性中耳炎、副鼻腔炎を繰り返していて、よく口で息をしている場合は、増殖性咽頭扁桃肥大症が高い確率で疑われるということになります。鼻呼吸がしにくいために、注意力が散漫になって、学業に身が入らなくなったりすることもあります。

症状が多様であるため、原因が増殖性咽頭扁桃肥大症と気付かないことも少なくありません。疑わしい症状があれば、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診するようにします。

増殖性咽頭扁桃肥大症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、内視鏡やレントゲン検査でアデノイド(咽頭扁桃)の大きさを確認します。まれですが、腫瘍(しゅよう)が疑われる場合には、組織を一部とって検査をすることもあります。

イビキがひどかったり、寝起きが悪い、寝ている間に呼吸が止まるなどの症状があれば、寝ている間の呼吸の状態をモニターして、後日コンピュータで解析する検査をします。携帯型の装置で行う場合は、自宅で可能です。

検査の結果、アデノイドが極端に大きい場合や、睡眠時の低酸素血症などが認められる場合には、手術が必要になることもあります。全身麻酔をかけた上、口の中から機械を入れてアデノイドを切り取る手術ですので、入院も1週間前後必要ですが、多くの場合は目に見えて効果があります。

アデノイドの大きさがそれほど極端でなく、睡眠時の低酸素血症などがなければ、アデノイドが年齢とともに徐々に小さくなることに期待して、中耳炎や副鼻腔炎などの合併症を治療しながら、様子をみることになります。

💅爪真菌症

カビの仲間である真菌の感染によって、爪に炎症が生じる疾患

爪(そう)真菌症とは、カビの仲間である真菌の感染によって、爪(つめ)に炎症が生じる疾患。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。主な真菌は、カンジダ、アスベルギルス、クリプトコックス、ムコールなど。

これらの真菌が、爪の甲や、爪の基底部である爪床に感染して、爪真菌症を引き起こします。

爪真菌症のうち最も多くみられる疾患は、皮膚糸状菌、特にトリコフィトンールブルムなどの白癬(はくせん)菌と呼ばれる一群の真菌の感染により生じる爪白癬で、爪真菌症の60〜80パーセントを占めるといわれています。

残りの爪真菌症の多くは、皮膚糸状菌に属さないアスペルギルス、スコプラリオプシス、フサリウムなどの真菌で生じます。免疫の低下している人や慢性皮膚粘膜カンジダ症を発症している人では、カンジダ性の爪真菌症であるカンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダを生じることがあります。

爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもの。爪の甲が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。

白癬は、皮膚糸状菌が皮膚に感染して起こる疾患。皮膚糸状菌の多くは一群の真菌である白癬菌で、高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)質を栄養源とするため、足の裏、足指の間などが最も住みやすい場所になり、足白癬を始めとして手白癬、頭部白癬、体部白癬などを生じます。

この足白癬や手白癬を放置していると、白癬菌が爪の中に感染して、爪白癬になります。爪は表皮が変化して硬くなった皮膚の一部であり、白癬菌の栄養源となるケラチンでできていますから、爪もまた水虫にかかるというわけです。

爪白癬は足指に多いのですが、手指の爪に生じることもあります。最近の統計によると、足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。日本国内に500万~1000万人の発症者がいるという統計も報告され、60歳以上の人の4割が発症しているとも推計されていますが、治療されずに放置されたままのケースがほとんどです。

爪の症状の現れ方には、いくつかあります。最も多いのは、爪の甲の先端部が白色から黄色に濁って、爪の甲の下の角質部分が厚くもろくなり、全体として爪が厚くなるものです。爪の甲の先端部が楔(くさび)状に濁って、角質部分が厚くもろく全体として爪が厚くなるものも、よくみられます。そのほかに、爪の甲の表面が点状ないし斑(まだら)状に白濁するのみのものもあります。まれに、爪の甲の付け根が濁ることもあります。

かゆみ、痛みなどの自覚症状は、ありません。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、爪の爪囲炎の合併はまれです。

カンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダは、もともと人間が持っている常在菌で、腸管や膣(ちつ)内、口腔(こうこう)、皮膚などに存在している真菌の一つのカンジダが感染して生じます。

健康であれば、体には何の影響も与えないカンジダですが、抵抗力や免疫力の低下、抗生物質の投与などによって増殖すると、さまざまな部位に炎症を引き起こし、爪や爪の周辺にも炎症を引き起こします。

爪の回りに炎症が起きるカンジダ性爪囲炎の場合、症状が軽く、痛みも出ないことが多いものの、爪の生え際が赤みを帯びだり、はれたりします。この爪囲炎を繰り返していると、カンジダ性爪炎に移行し、爪が変色し、表面に凹凸ができる、横にすじができる、赤くなってはれ、痛むといった症状がみられます。

カンジダ性爪囲炎とカンジダ性爪炎は、爪の表面だけがカンジダに感染している状態ですが、カンジダが爪の内部にまで寄生すると、爪カンジダになります。爪の先が皮膚から離れて浮き上がったような状態になり、爪が変形します。また、爪が厚くなることもあれば、逆にボロボロになって先端が欠けたりすることもあります。

カンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダは、糖尿病患者、免疫機能が低下している人、または健康に問題はなくても手を頻繁にぬらしたり洗ったりする人によくみられます。

爪真菌症のうち、成人の爪白癬の発症率は、かなり高いとされています。爪の肥厚や変形が高齢者の起立、歩行障害、転倒事故の原因になることも、指摘されています。重症になるとますます治療が難しくなるため、なるべく早く皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療を受けます。

爪真菌症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、通常、爪の外観に基づいて判断します。診断の確定には、爪の破片を顕微鏡で調べ、培養してどんな真菌による感染かを判断します。爪では皮膚と違って真菌を見付けにくく、真菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、爪真菌症は完治が難しいため、症状の重症度と本人が感じる不快さの程度に基づいて行われます。

治療が望まれる場合は、内服薬のイトラコナゾールやグリセオフルビンなどを処方します。このような薬は、約3〜6カ月服用します。硬く厚くなった爪の外側から外用薬を塗っても、奥深く潜んでいる真菌まで薬の有効成分が行き渡りませんが、内服薬ならば血流に乗って直接真菌にダメージを与え、体の内側から治すことができるわけです。

従来の内服薬は、1年以上服用しなければなりませんでした。近年開発された薬は、内服をやめた後も有効成分が爪の中にとどまって効果が持続しますので、従来に比べ治療期間が大幅に短縮されました。しかし、肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

マニキュア型製剤に含まれる抗真菌薬であるシクロピロクスは、単独で使った場合はあまり効果がありませんが、特に抵抗性の感染症の場合、内服薬に加えて使った場合は治癒率が高まることがあります。シクロピロクスは、ほかの健康上の理由により内服薬を服用できない人に役立つこともあります。

再発の可能性を下げるためには、爪は常に短く切り、入浴後は足を乾いた状態に保ち、吸収性のよい靴下を履き、抗真菌薬の足用パウダーを使用するとよいでしょう。古い靴には真菌の胞子が多数いることがあるため、できれば履かないないようにします。

🇮🇳造精機能障害

精巣で精子を作る機能に障害がある状態で、男性不妊症の原因の一つ

造精機能障害とは、男性の精巣(睾丸〔こうがん〕)で精子を作る機能に障害がある状態。男性不妊症の原因の一つになっています。

男性不妊症は、避妊をせずに性交の機会を持ち続けているにもかかわらず、1年以上子供ができない不妊の原因が男性側にある状態です。その原因の9割を造精機能障害が占めています。

造精機能障害では、精巣で精子を作る機能に障害があるために、射精される精液中の精子の数、運動率、形態などに問題があり、無精子症、乏精子症、精子無力症、精子不動症、精子奇形症、精子死滅症に分けられます。

無精子症

無精子症は、男性の精液の中に、卵子と結合して個体を生成する精子が認められない状態。

男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。

運動能力を持つ男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。

男性の100人に1人は、無精子症といわれています。この無精子症は、閉塞(へいそく)性無精子症と非閉塞性無精子症の2つの型に分類されます。

閉塞性無精子症は、精巣の中で精子が作られているものの、精巣から体外へ出ていく精路のどこかが閉塞しているために、精子が精液と合流して体外へ出ていくことができず、精液中に精子が認められない状態を指しています。無精子症の15〜20パーセントを占めているといわれています。

原因となる疾患は、両側精巣上体炎、小児期の両側鼠径(そけい)ヘルニア術後、精管切断(パイプカット)術後、原因不明の精路閉塞症、先天性両側精管欠損症などです。

一方、非閉塞性無精子症は、精子が精巣から体外へ出ていく精路があるにもかかわらず、精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていない状態、もしくは射精された精液中に精子が認められない状態を指しています。無精子症の80~85パーセントを占めているといわれています。

原因となる疾患としては、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置していない停留精巣、精巣の上の精索部の静脈が拡張しこぶができた精索静脈瘤(りゅう)などです。

乏精子症

乏精子症は、男性の精液の中に含まれる精子の数が正常よりも極端に少ない状態。ただし、国際保健機関(WHO)の基準により、精子の数だけでなく精子濃度、精子運動率、奇形率などを総合的にみて、乏精子症と見なすこともあります。

乏精子症は男性不妊症の原因となり、夫婦生活による自然妊娠を難しくすると考えられます。その程度により、軽度乏精子症、中等度乏精子症、重症度乏精子症に分けられます。

精子の数の正常値は1ml当たり6000~8000万以上であり、約5000万の場合は軽度乏精子症、1000万以下の場合は中等度乏精子症、100万以下の場合は重症度乏精子症に相当します。自然妊娠には精子の数が4000万以上あることが望ましいとされるものの、数100万で自然妊娠することも、ごくまれにあります。

精子無力症

精子無力症は、男性の精液内の精子の運動率が低下した状態。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率の低下、とりわけ真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

この精子無力症は、軽度精子無力症、中等度精子無力症、重症度精子無力症に分けられます。運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

精子無力症の原因は、先天的なものが大半を占めますが、前立腺炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤などが原因になっているケースもあります。なお、長期間の禁欲も精子の運動率を低下させます。

精子不動症

精子不動症は、男性の精液中に精子を認めるものの、ほとんどの精子の動きがない状態。重度の精子無力症であり、精子の運動率が低下した状態にあります。

精子不動症の多くでは、精子の少なくとも何パーセントかは動いています。中には、すべての精子が全く動いていないというケースもあります。

例えば、常染色体の劣勢遺伝でカルタゲナー症候群を発症した人では、慢性副鼻腔(びくう)炎、右胸心、気管支拡張症を合併していて、精子の鞭毛のみならず全身の線毛の機能障害が特徴的で、精子も完全に不動化しています。

精子不動症で動いていない精子には、生きている精子と死んでいる精子の2通りがあります。

精子が不動化する原因は、尾部の鞭毛を構成している中心部分の2本、および周囲の9本の軸糸の配列が壊れていて、運動のエネルギー源となる中片部のミトコンドリア鞘(しょう)の発育が不十分なためです。

精子不動症になってしまう原因は、精子無力症と同じで先天的なものが大半を占めます。

精子奇形症

精子奇形症は、精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。奇形精子症とも呼ばれます。

男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、精子奇形症に相当します。

精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。

2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。

精子死滅症

精子死滅症は、男性の精液中に精子を認めるものの、その精子が全く動いておらず、しかもほとんどが死んでいる状態。死滅精子症とも呼ばれます。

精液検査における精子濃度には問題はないものの、精子のほとんどが死滅してしまっているという状態です。精子不動症とともに重度の精子無力症であり、精子不動症では精子の運動率が数パーセントに低下した状態にあるのに対して、精子死滅症では運動率が0パーセントに低下した状態に陥っています。

運動能力を持つ男性の精子は、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精巣上体において成熟しますので、この精子を作る造精機能や造精過程に何らかの障害があると、ほとんどの精子が死んでしまうことになります。

精巣の中で精子となる細胞自体にもともと何らかの原因があるケースと、精巣上体の分泌液に異常があって精子が死んでしまうケースなどがあります。それがどの過程で起こり、なぜ起こるのかについては、不明な点が多く残っています。

精子死滅症になる原因は、精子無力症や精子不動症と同じで先天的なものが大半を占めます。

造精機能障害の検査と診断と治療

無精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、精液検査の結果、射出精液中に精子が存在しない場合に無精子症と判断します。

精巣の大きさに問題がなく、ホルモン検査では脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の値が正常値で、精管に閉塞部位が認められれば、ほぼ閉塞性無精子症と判断できます。ただし、性腺刺激ホルモンの値が正常値でも、まれにY染色体の特定部位の微小欠失により、精巣内での精子の成熟が途中で停止しているケースでは、非閉塞性無精子症と判断します。

また、精液検査の結果、精液中に精子が一つも存在しないという場合でも、数少ない精子が精巣内で作られていることがあり、それを調べるために精巣組織検査を行うことがあります。

泌尿器科の医師による閉塞性無精子症の治療では、精子が精巣から体外へ出ていく精路を再開させる精路再建手術を行います。閉塞部位が短く手術でつなぎ合わせることができれば、精液に精子が出るようになり、自然妊娠も期待できます。

先天性の精管欠損症などで閉塞部位が長い場合は、手術では治療できません。この場合は、閉塞性無精子症の人では精巣で精子が作られているため、精巣精子採取法によって、精巣の精細管や精巣上体、精管から精子を直接取り出し、排卵誘発によって採卵した卵子とともに体外受精という方法を用いて妊娠を期待します。

泌尿器科の医師による非閉塞性無精子症の治療では、精巣組織検査で数少ない精子が精巣内で作られていることが確認された場合に限り、顕微鏡下精巣精子採取法によって精巣の中を隅々まで観察し、精子がいる可能性の高い精細管を採取して精子を探し出し、排卵誘発によって採卵した卵子とともに顕微受精という方法を用いて妊娠を期待します。精子が一つでも探し出せれば、妊娠する確率はゼロではありません。

何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。

乏精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液中に存在する精子の数が常に正常値を下回る場合に乏精子症と判断します。

精索静脈瘤に対しては、視診と触診を行い、精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。

泌尿器科の医師による治療では、明確な原因の判明しない乏精子症のケースでは効果的な治療が難しいため、軽度乏精子症の場合には人工授精、中等度乏精子症の場合には体外受精、重症度乏精子症の場合や受精しにくい場合には顕微授精を用いて、妊娠を期待するのが一般的です。

精索静脈瘤の場合は、精液所見が悪い成人男性でいずれ子供が欲しいと考えているケースや、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感があるケースで、外科手術を行います。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっているケースには、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。

外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)を行います。手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。

何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。

精子無力症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に正常値を下回る場合に精子無力症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、軽度精子無力症の場合には、飲み薬や漢方薬を処方しながら、定期的に精液検査を行い、運動率が改善しているかどうか様子をみる場合もあります。精子を作るのに要する期間が74日間、その精子が運動能力を獲得するのに要する期間が14日間ですので、少なくとも3カ月以上は薬の処方を継続します。

薬の処方で精子の運動率に変化がみられないケースはもちろん、運動率が改善しても自然妊娠に至らないケースでは、人工授精などを用いる不妊治療を併用し、妊娠を期待します。

中等度精子無力症と重症度精子無力症の場合には、精子の運動率を改善する効果はあまり期待できないため、中等度精子無力症では人工授精か体外受精、高度精子無力症では体外受精か顕微授精を用いて、妊娠を期待します。

精子不動症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に数パーセント以下の場合に精子不動症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の授精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOS(ホス)テストを行い、浸透圧の異なる培養液に精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

それでも生きている精子を見付けられなった場合は、精子不動症の人の精子での妊娠は難しくなり、女性側に特に大きな不妊原因がない場合などは、非配偶者間人工授精という方法もあります。とても特殊な治療法となりますので、パートナー間でよく話し合ってから決めることです。

精子奇形症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。

クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。

泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。

パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である精子奇形症では自然妊娠が見込めないためです。

通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。

射出精子中には奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。

精子死滅症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に0パーセントの場合に精子死滅症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが受精、妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の受精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOSテストを行い、浸透圧の異なる培養液に採取した精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。精子死滅症の場合は3回程度精液を採取し、その中に1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

🛏早朝覚醒

朝早くに目が覚め、そのまま眠れなくなるタイプの不眠症

早朝覚醒(かくせい)とは、朝早くに目が覚めてしまって、そのまま眠れなくなるタイプの不眠症。不眠症と判断される目安となるのは、この症状が週に2回以上、かつ1カ月以上続いており、本人が苦痛を感じている場合です。

朝早く、4時くらいに目が覚めた後、もう一度眠ろうとしてもなかなか眠れませんし、眠れたとしても、うつらうつらするだけで熟睡できないため、かえって疲れてしまうこともあります。早くに目が覚めてしまうので、そのぶん、早く寝なければと早寝の習慣が付いてしまい、さらに早朝に目が覚めるという症状が進んでしまう場合もあります。

重要な試験や会議の前など特に緊張している場合、朝早く目が覚めてしまったり、なかなか眠れないということはありますが、長期間続くようだと昼間の生活にも支障が出てしまいます。早朝覚醒になると、活動中に集中力が落ちたり、何事も面倒に感じたり、気分が落ち込みがちになったり、昼間に我慢できない眠気に襲われることもあります。

この早朝覚醒には2つのパターンがあり、1つは老人性早朝覚醒です。人間は年を取ると、生活リズムが変化して朝方の生活になる傾向があります。朝が苦手だった人でも、年を取ると早起きになったという話もよく聞きます。眠り方というのは、年齢とともに変化するのが自然なのです。

若い人の場合、1回の睡眠中に深い眠りのレム睡眠が2~3回繰り返されます。しかし、年を取るとともにレム睡眠に達する回数は少なくなり、浅い睡眠状態になります。また、眠るための物質であるメラトニンの分泌量が少なくなり、眠る能力が低下してきます。そのため、朝早くに目が覚める早朝覚醒や、夜中に目が覚める中途覚醒が起こりやすいのです。

不眠症の中で最も罹患(りかん)率の低いタイプが早朝覚醒ですが、高齢者の不眠症では最も多いタイプに相当します。ほかの不眠症と違い、ある程度の年齢で熟睡感があり、生活に支障がなければ問題はありません。早く目が覚めてしまえば、無理に再び眠ろうとせず、そのまま一日を始めてもいいのです。

疲労がたまったり、昼間の活動中に眠気を感じる場合には、改善を行うのがお勧めです。朝日が差し込まないように遮光カーテンを引いたり、雨戸を閉めて、早い時間に覚醒しないようにするのも一案。

早朝覚醒のもう1つのパターンには注意が必要です。それは、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、躁病などの精神疾患の症状として現れます。

ストレスや不規則な生活が続くと、知らず知らずのうちに軽度のうつ病になっていることがあります。うつ病と不眠症は関係が深く、うつ病の症状の一つに不眠が挙げられます。うつ病として軽い段階だと、本人も病気だという自覚症状がないままで、どんどん睡眠状況が変化するため、睡眠不足と気分の上下動で混乱してしまいます。

うつ病の場合は、起きる時間が早くなっていく以外にも、中途覚醒、入眠障害など睡眠そのものが不規則になるため、日常のパターンが崩れやすくなり、生活に支障を来すことが多いものです。

精神疾患の症状としての早朝覚醒は、日中に体を動かしたり、日の光をきちんと浴びたり、精神的なストレスを軽減したり、睡眠の環境を整えたりといった方法で、改善する場合もあります。しかし、断続的に不規則な眠りに悩まされる場合、気分の変調、落ち込みなどの問題がある場合は、できるだけ早く心療内科や精神科を受診して、専門医に相談することがお勧めです。

精神疾患の治療の一環で、睡眠薬を出してくれる医療機関も数多くあります。医師と相談の上、睡眠薬などの服用が必要である場合もあります。

🇮🇳早朝高血圧

早朝高血圧とは、早朝に血圧が高くなる病態を意味します。医療機関の診察室で医師が測ると正常血圧なのに、ふだんは高血圧である仮面高血圧の中でも、よくみられるタイプで、就寝時は正常なのに、起床してから急激に血圧が上昇します。

このタイプの人は、もともと高血圧体質である上に、自律神経の働きが重なって、危険なほど異常に血圧が上がってしまうのです。

朝、急いで電車やバスに飛び乗る人や、急激な気温の変化に体をさらす人も、血圧が激しく上昇する可能性があります。その結果、急性心筋梗塞(こうそく)や、脳梗塞の発作の原因になることが知られています。

急性心筋梗塞は、朝の6時から10時の間に起こることが多く、早朝高血圧とのかかわりは無視できないとされています。

🇵🇰早発月経

一般的な年齢より早く、10歳未満で初めての月経を迎える状態

早発月経とは、初めての月経である初潮を10歳未満で迎える状態。

女児が初潮を迎える時期にはそれぞれ個人差があり、一般的には、12歳が初潮を迎える年齢の平均とされています。

個人の生活環境、遺伝、栄養状態などによって、月経が始まる時期が早まることがあります。ほかにも、性機能をつかさどる中枢である間脳の視床下部が早期に脳下垂体刺激ホルモンを分泌するようになり、そのため卵巣機能が早期に促進されることによって、月経が始まる時期が早まることあります。しかし、視床下部が早期に性中枢としての機能を発揮するようになる原因は、解明されていません。

そのほかに、脳腫瘍(しゅよう)や脳下垂体の腫瘍、脳の外傷によって、卵巣刺激ホルモンが分泌されるようになる場合や、卵巣自体や副腎(ふくじん)の腫瘍の場合などに、月経様出血が現れることもあります。

早発月経で、月経だけが早発することは少なく、多くの場合、出現時期の差はあれ、乳房発育、恥毛や腋毛(えきもう)の発毛など、ほかの二次性徴もみられる早発思春期(思春期早発症)を伴っています。

ただし、原因によっては恥毛の発毛がみられないこともあります。また、原因によっては、皮膚のカフェオレ様といわれる特徴的な斑点(はんてん)、卵巣腫瘍による腹部の膨隆、陰核の肥大がみられることもあります。

出血は起こったり止まったりすることが多く、出血が一度だけでほかの二次性徴がみられないような場合は、早発月経ではなく外傷も考えられます。

10歳未満での出血に気付いたら、外傷などによる一度きりのものでないか、乳房、腋毛、恥毛の発育状態はどうかを確認して、早発思春期の可能性があると考えられれば、婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

早発月経の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、問診、視診、基礎体温の測定、血液検査(ホルモン検査)、X線(レントゲン)検査(骨年齢の測定)などを行います。

場合によっては、超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査 、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などによる卵巣腫瘍や副腎腫瘍、脳腫瘍の検査も行います。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、早発月経が遺伝や体質的なものから生じている場合、特に治療の必要はありません。

ホルモン分泌異常による場合、初潮から間もないころは身長が急速に伸びるものの、成長期に入ると成長が止まってしまい、低身長のままとなることもあるため、症状によっては、同時に起こる骨の成熟を遅らせ、最終身長を伸ばすことを目標として、脳下垂体機能を抑制して女性ホルモンを下げるGnRHアナログ(LHーRHアナログ)という薬剤による治療を行います。月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。

ただし、すでに骨の成熟が完了していると考えられる場合は、治療の対象になりません。

卵巣腫瘍、副腎腫瘍、脳腫瘍などが原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出した後に、ホルモン剤を投与して症状を緩和します。腫瘍の摘出が不可能な場合には、化学療法や放射線療法も行います。

🇵🇰早発乳房

乳幼児期の女児の乳房が大きくなるもの

早発乳房とは、乳幼児期の女児の乳房がはれたり、乳房にしこりができるもの。乳房早期発育症、思春期前乳房隆起とも呼ばれます。

発生頻度は人口10万人当たり40人程度で、珍しいものではありません。2歳以下の発症が、60〜85パーセントを占めます。

乳腺(にゅうせん)と乳房が軽度に大きくなり、異常に大きくなることはありません。両側性のものがほとんどですが、片側だけの場合もあります。

通常、症状は進行せず、多くの場合2年から3年で自然に縮小し、消失します。中には、軽度のはれやしこりが5年以上持続するものがあるものの、病的な意味はなく、特別な治療も必要ありません。

早発乳房の原因は明らかでありませんが、下垂体ホルモンや卵巣ホルモンの分泌の一過性の高進や、これらのホルモンに対する乳腺の感受性の一過性の高進などが原因の一つと考えられています。

乳房の大きさが増したり、恥毛や腋毛(わきげ)が生えてきたり、初潮の発来が早すぎたり、身長の伸び方が急激すぎたりする場合は、早発乳房以外の疾患の可能性を疑う必要があります。

疑われるのは、思春期早発症などのホルモン分泌異常による性早熟や、副腎(ふくじん)などの内分泌疾患で、このような場合は経過をみて小児科、小児内分泌科を受診し、検査を受けて区別する必要があります。

早発乳房の検査と診断と治療

小児科、小児内分泌科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査で、乳腺の存在を確認します。血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。

小児科、小児内分泌科の医師による治療では、特定の原因がない場合は、経過を観察します。一般に、特に治療を行わなくても、数カ月から3年以内に自然に縮小し、消失します。

思春期早発症、内分泌疾患によると考えられるものについては、そちらの治療を行います。

🇵🇰早発閉経

平均的な閉経年齢に至る前の20歳代、30歳代で閉経を迎える状態

早発閉経とは、20歳代、30歳代といった若い時期に、女性の定期的子宮出血である月経がなくなり、閉経を迎える状態。早期閉経、早発卵巣不全とも呼ばれます。

閉経は、卵巣年齢が実年齢以上に衰えて卵巣機能が完全に停止している状態を指します。医学的には、1年間以上月経がないと閉経と定義されています。

個人差はありますが、多くの場合、一般的には45~56歳くらい、平均的には50歳で閉経するといわれ、通常は次第に月経の間隔が長くなり、やがて終了します。

病名としての早発閉経は、40歳未満の自然閉経と定義されています。日本産科婦人科学会の定義では、閉経が43歳未満までに起こることとされています。

早発閉経の起こる割合は、20歳代の女性で1000人に1人、30歳代の女性で100人に1人です。早発閉経は、特に妊娠を希望している女性にとっては大きな問題となります。

早発閉経の症状としては、徐々に月経の回数が減り、やがてなくなります。早発閉経を迎えると、女性ホルモンの分泌がなくなるので自律神経の働きが乱れ、気分の浮き沈みが激しい、うつっぽくなる、火照りやのぼせが出る、疲れやすい、息切れがする、動悸(どうき)がする、耳鳴りがするなど、更年期障害のような多岐にわたる症状がみられるようになります。

また、早発閉経が起きると、実年齢は若くても体の中は10歳ほど老いているということになるために、骨粗鬆(こつそしょう)症や脳梗塞(こうそく)、脳動脈瘤(りゅう)などを発症する可能性が高くなるともいわれています。

早発閉経の原因が特定できるのは、10パーセントほどで、残りの90パーセントは、原因不明といわれています。

原因が特定できるのは、染色体異常などの遺伝性疾患、甲状腺(せん)機能低下症などの自己免疫性疾患、卵巣の手術や化学療法、放射線療法の影響があります。

早発閉経の最も典型的な症例としては、初めての月経である初潮を迎えた当初から月経(生理)周期が不順で、高校生を終えるころには、年間を通じて1~3回程度しか月経がなく、20歳代前半もしくは中盤くらいからは、全く月経がなくなるといったようなケースです。このケースは、家族内に同じような傾向の女性がいる場合が多いため、遺伝的な側面が関与している可能性はあるとされています。

甲状腺機能低下症、甲状腺炎などの自己免疫性疾患により、抗卵巣自己抗体と呼ばれる異常な抗体が体内に産生され、卵巣を含む体内の組織を攻撃するために、早発閉経が起きることもあります。

過去に卵巣の手術をしている女性、片方の卵巣を摘出している女性は、早発閉経が起きやすくなります。例えば、卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、卵巣の一部にはれが生じる卵巣嚢腫(のうしゅ)の摘出手術を受けている女性の場合、早発閉経となる確率が有意に高くなっているとされています。また、卵巣の手術を受けていない場合でも、抗がん剤治療や放射線治療などの経歴があると、早発閉経が起きやすくなります。

生活習慣という面では、喫煙やダイエットによる過剰な栄養バランスの崩れ、過剰なストレス、野菜しか食べない菜食主義が、原因になることがあります。

今まであった月経が3カ月以上停止した状態を無月経といいますが、卵巣機能が休止しているだけで、これから回復することがあるという状態です。無月経には原因がいくつかあり、その原因を取り除くことで月経を起こすことができます。

一方、早発閉経は、卵巣機能が完全に停止していて排卵していない状態なので、妊娠することはできません。ただ、一言で早発閉経といっても、卵子を包む卵胞がなくなった状態と、卵胞が存在する状態の2種類があります。卵胞がなくなると妊娠の可能性はほとんどなくなってしまいますが、卵巣内に卵胞が存在する場合は、体外受精での妊娠に成功する可能性もあります。

早めの発見と治療が大切なので、月経が3カ月以上ない時は婦人科、産婦人科を受診することが勧められます。

早発閉経の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、まず下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピン、すなわち黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の値を調べる検査を行います。この黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンは、卵巣の機能が低下している際に、それ下支えするために放出されるホルモンです。これらが分泌されることで、低下した卵巣を活発にして卵子の排出を促しているわけです。

この検査で陽性となった場合には、腹腔(ふくくう)鏡を用いた検査を行い、卵巣に委縮が始まっているかどうかを確認します。この際に、卵巣組織を一部切除して生体検査を行い、原始卵胞という卵子の元となる細胞があるかどうかを確認します。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、検査により早発閉経と判明した場合、一般的にホルモン補充療法を行います。ホルモン補充療法では、閉経により減少する女性ホルモンの一つであるエストロゲンを補充します。エストロゲンだけを補充すると副作用を伴うこともあるため、別のプロゲステロンといったホルモンを状態に合わせて併用していくのが一般的で、併せてゴナドトロピン製剤(HMG製剤)を大量に投与します。

ホルモンバランスを正常化させることで、更年期障害のようなのぼせ、息切れ、動悸などの症状の改善が期待できます。また、早発閉経によりリスクの上がる骨粗鬆症の発症を予防する効果もあります。

これとは別に、抗卵巣自己抗体と呼ばれる抗体が陽性反応を示す場合には、副腎(ふくじん) 皮質ホルモン(ステロイド剤)を用いた治療を行います。

早発閉経と診断された女性が妊娠を希望する場合、ホルモン補充療法の不妊治療を行って排卵を促すか、卵子があるうちに採卵して体外受精することで妊娠の可能性を探ります。

また、卵胞がなくなってしまうと妊娠の可能性はほとんどなくなってしまいますが、卵巣内の卵胞に原始卵胞という卵子の元となる細胞が存在する場合は、卵巣を摘出して残っていた原始卵胞のいくつかを目覚めさせて排卵を促すことができ、体外受精での妊娠、出産に成功する可能性もあります。

💅爪肥厚症

爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態

爪(そう)肥厚症とは、爪(つめ)の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態。巨爪症、オニキクシス、ハイパートロフィーとも呼ばれます。

爪の甲は先端に向かって押し進むように長く伸びますが、何らかの原因で圧迫されて伸びが妨害されると、成長する部分が厚くなったりします。厚くなった部分は、後から伸びてくる爪の甲の成長を阻害し、さらに盛り上がってくるという悪循環になります。

爪肥厚症の原因は、遺伝、物理的圧迫、けが、糖尿病、内臓の疾患、細菌感染、血行不良、栄養不足などさまざまです。

中でも、長期間にわたって爪に何らかの物理的圧迫が加わって、爪肥厚症になることが多く、手の爪よりも足の爪でしばしばみられます。原因となる物理的圧迫としては、足の形に合っていない靴が挙げられます。特に、先端が細くなったハイヒールを履き続けた時、足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧力がかかることになり、爪の甲がはがれてしまうことがあります。これを何回も繰り返した場合に、爪肥厚症が起こることがあります。

同様の理由で、足の形に合っていないシューズで長距離ランニングした場合に、爪肥厚症や、爪の両端が指の肉に食い込む陥入爪が起こることがあります。陥入爪、深爪が原因で、正常な爪の成長が妨げられ、爪肥厚症が起こることもあります。

爪肥厚症があると、爪が割れやすくなったり、はがれやすくなったりします。そのため、割れた爪が衣服や布団に引っ掛かり、はがれた部分から細菌が入って化膿(かのう)などのトラブルを起こすことがあります。

この場合、盛り上がった部分に触ると、激しい痛みがあり、ほかの爪にも移ります。靴を履くのが困難になるのはもちろんのこと、布団がこすれても痛みを感じます。また、爪肥厚症の症状として、爪の変色も挙げられます。

この爪肥厚症はたまに、爪白癬(そうはくせん、つめはくせん)と間違えられることがあります。白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)が感染して起こる爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもので、爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。症状が似ていても違う疾患ですので、水虫用の治療を独自で行うと、爪肥厚症が完治するまでに時間がかかるなど、さらに厄介なことになる可能性があります。

爪肥厚症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪肥厚症の原因がかなり多岐にわたっているため、その原因を見極めることがポイントになります。

症状が似ている爪白癬と鑑別するためには、皮膚真菌検査を行うのが一般的。ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察します。時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、爪肥厚症の症状が軽い場合、保湿してマッサージすることで少しずつ改善します。また、爪やすりで厚い部分を滑らかに磨いたり、磨き粉で仕上げ磨きしたりして、爪の成長を阻害する盛り上がっている部分を平らにすれば、正常な爪の甲が再生してきます。

原因となる菌が同定されれば、その増殖を止めたり、死滅させる抗生物質(抗生剤)を用います。

栄養不足が原因で爪肥厚症を生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

内臓などの疾患が原因で爪肥厚症を生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、むやみに爪肥厚症になった患部を触らないようにします。刺激を与えないことはもちろん、ほかの隣接する指と接しないように気を付けます。

爪肥厚症にならないためには、いつも清潔を心掛け、正しい爪の切り方をしていることが大切で、自分の足に適した履きやすい靴を選ぶことも予防となります。どうしてもハイヒールを履く必要がある時は、なるべく長く歩かないようにします。

2022/08/17

💅爪部悪性黒色腫

メラニンを作り出す爪部のメラニン細胞から発生するがん

爪部(そうぶ)悪性黒色腫(しゅ)とは、メラニンを作り出す爪部のメラニン細胞(メラノサイト、皮膚細胞)から発生するがん。爪下悪性黒色腫、爪(つめ)メラノーマとも呼ばれます。

メラニン細胞は、色素を作り、皮膚の色を決める色素細胞です。日光(紫外線)がメラニン細胞を刺激すると、メラニンという皮膚の色を濃くする色素がたくさん作られて、悪性黒色腫(メラノーマ)を発生するリスクが高まります。

悪性黒色腫は最初、正常な皮膚に新しくできた小さな濃い色の皮膚の増殖性変化として現れます。多くの場合、日光にさらされる皮膚にできますが、もともとあったほくろに発生する場合もあります。体のほかの部位に非常に転移しやすく、転移した部位でも増殖を続けて組織を破壊します。また、悪性黒色腫は遺伝することがあります。

日本での悪性黒色腫の発症数は、人口10万人当たり1・5~2人くらいといわれ、年間1500~2000人くらい発症しています。白色人種の多い欧米では人口10万人当たり10数人以上で、オーストラリアは20数人以上の発症と世界一です。日本でも外国でも年々、発症数の増加傾向が認められています。

日本での悪性黒色腫による死亡者は、年間約450人。40歳以上になると発症が多くなり、60~70歳代が最も多くなっています。男女差はありません。

悪性黒色腫の外観は、さまざまです。平らで不規則な形の茶色の皮疹(ひしん)の中に黒い小さな点がある場合もあれば、盛り上がった茶色の皮疹の中に赤、白、黒、青などさまざまな色の点があるものもあります。黒か灰色の硬い塊ができることもあります。

その外観や色などによって、いくつかのタイプに分類されています。悪性黒子型は高齢者の顔などの露出部に色素斑が発生するタイプ、表在拡大型はやや盛り上がった不整型の色素斑が発生するタイプ、結節型は盛り上がるタイプ、末端黒子型は手や足から発生するタイプ、粘膜型は口腔(こうくう)や陰部などの粘膜に発生するタイプ、またメラニン欠乏性は色素を持たないので発見されにくいタイプです。

末端黒子型の一つに、爪部悪性黒色腫のほとんどは含まれます。爪部悪性黒色腫のほとんどは、手足の爪の主に爪母部(爪の基部)上皮のメラニン細胞のがん化によって、爪甲色素線条、すなわち黒褐色で縦の線状の染みとしてみられます。

時には、爪床上皮や爪郭(そうかく)部表皮のメラニン細胞ががん化することもあり、表在拡大型や結節型に含まれます。

爪甲色素線条がみられる爪部悪性黒色腫は、全悪性黒色腫の10パーセント近くを占め、手の親指の爪、足の親指の爪、手の人差し指の爪、手の中指の爪に好発します。しかし、爪部悪性黒色腫によく似た良性腫瘍(しゅよう)が、はるかに多く存在しています。

悪性か良性かを一応判別する目安として、染みの横幅が6センチ以上、黒褐色の色調に不規則な濃淡がみられるか真黒色、20歳以後、特に中高齢者になって発生した色素線条、色素線条が爪の表面を越えて皮膚の部分にまで及んでいる状態であれば、爪部悪性黒色腫かもしれません。

がん化したメラニン細胞が増えるにつれて、黒褐色の線状の染みが増えるだけでなく太くなっていき、長さも伸びていきます。やがて、爪全体が黒くなります。進行すると、爪が変形したり破壊されてしまいます。

爪部悪性黒色腫は、がんの中でも繁殖しやすいタイプです。そのため、爪から全身に転移していくというデメリットもあります。短期間で転移してしまうため、爪の症状の変化に気付いたら、すぐに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪部悪性黒色腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診、視診、触診を行い、続いてダーモスコピー検査を行います。ダーモスコピー検査は、病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニンや毛細血管の状態を調べ、デジタルカメラで記録するだけの簡単なもので、痛みは全くありません。

そして、爪部悪性黒色腫(メラノーマ)が疑われる場合に生検を行います。通常は色の濃い増殖部分全体を切除し、顕微鏡で病理学的に調べます。もし爪部悪性黒色腫だった場合、がんが完全に切除されたかどうかを確認します。

一方、悪性黒色腫の周囲組織を切り取ると、がん細胞が刺激されて転移を起こすことが考えられるため、生検をせずに視診と触診などで診断する医師もいます。

確定診断に至ったら、他の部位への転移の有無を調べるためのCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、などの画像検査や、心機能、肺機能、腎機能などを調べる検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は原則的に、爪部悪性黒色腫(メラノーマ)の部位を外科手術によって円形に切除します。手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまで爪部悪性黒色腫が侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅い爪部悪性黒色腫であれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。

皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入している爪部悪性黒色腫の場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移した悪性黒色腫は致死的なものになることがしばしばあり、抗がん剤による化学療法を行いますが、治療の効果はあまりなく余命が9カ月を切る場合もあります。

とはいえ、このがんの進行の仕方には幅がありますし、発症者の体の免疫防御能によっても差がありますので、化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療を行い、たとえ爪部悪性黒色腫が転移しても健康を保って何年も生存する人もいます。

一度、爪部悪性黒色腫を発症した人は、再発するリスクが高くなります。そのため、発症者は毎年皮膚科、皮膚泌尿器科で検査を受けるべきです。

🇲🇻早漏

パートナーが満足しないうちに、男性が短い時間で射精する状態

早漏とは、性交の際に陰茎を膣(ちつ)内に挿入した男性が、女性が性的に満足しない短い時間で射精する状態。対義語は遅漏です。

男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起(ぼっき)は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。

これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。勃起は完成しているのに、射精に至るまでの時間が短い状態が、この早漏です。

「自分が早漏ではないか」と思う男性にとって、その定義が気になるところですが、明確に定まっているものではなく、基準がいろいろとあります。

例えば、膣内に挿入後1~2分以内の射精、または挿入前の射精。性交時のピストン運動が10回以内である射精。パートナーの女性が性的満足に達する前の射精。時間や回数は関係なく、射精をコントロールできない状態。

基準はあっても、射精までの時間は人によって異なり、何分で起こるのが正常であるかは決められません。短い時間であっても、パートナー側に特に不満がないのであれば、何も気にすることはありません。

元来、動物の雄は早漏です。外敵から身を守りながらの行為ですから、それも当然です。人間だけが早漏で悩むのは、種の保存行為が快楽の一つでもあるため、相手が十分な満足感を感じないと問題になるからです。

ほとんどの場合、男性の身体機能には問題はありません。性交の際に女性のほうが性的満足を得るのが遅いため、男性側が自然に任せて射精した場合は早漏となります。また、性行為に不慣れな男性は、自分の性欲をうまくコントロールできないため早漏になりやすいもの。これらが原因であれば、特に心身には問題はありません。

ただし、包茎による皮膚や粘膜の刺激への過敏、神経伝導疲労による大脳の射精抑制機能低下、加齢などによる勃起神経の衰えで射精をコントロールする射精管閉鎖筋の筋力弱化、慢性尿道炎や前立腺(せん)などの疾患といった身体機能に問題があることもあります。あるいは、精神的、心理的なストレスやプレッシャー、焦りなどが原因のことも多々あります。

これら以外にも原因が考えられ、互いに複合的に作用して早漏となる場合も少なからずあります。

早漏の検査と診断と治療

精神的、心理的な原因で射精をコントロールできず、それが長い期間続くような場合は、精神科か泌尿器科の専門医を受診します。包茎によって、陰茎の皮膚や粘膜が刺激に対して過敏になっている場合は、泌尿器科か整形外科の専門医を受診します。

早漏の治療方法で、完全なものは存在しません。原因がさまざまですから、包茎など早漏を引き起こしている原因を解消すれば、改善する場合もあります。しかし、原因が精神的、心理的なものである場合は、専門の医師のカウンセリングを根気よく受けることが改善への道といえます。

包茎の人が早漏になった場合、包茎手術によって早漏も改善する例が多数あります。また、亀頭にダーマライブなどの薬剤を注入する治療法も、亀頭への刺激に対するクッションになるので、早漏防止に効果を発揮します。

陰茎の手術には、陰茎背部神経遮断術もあります。感覚神経過敏による早漏で、他の精神的要因がなく、薬物治療では効果がない場合には有効です。局部麻酔で30分ほどで終わり、術後すぐ日常生活に戻れるほど簡単です。

薬物治療では、うつ病やパニック障害の治療薬である抗うつ剤(SSRI)に射精抑制効果があることがわかってきたため、応用して使用されています。抗うつ剤のうちでは、フルオキセチン、セルトラリンなどが最も有効とされています。しかし、副作用である勃起障害や射精抑制効果による射精障害にならないように、使用は制限されています。

近年、特異的な抗うつ剤(SSRI)で、短時間作用型選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるダポキセチンも、新薬として使用されています。ほかに、射精を遅らせる効果のある薬剤としては、オピオイド、コカイン、ジフェンヒドラミンがあります。

泌尿器科では、射精抑制の訓練を受けることもできます。早漏を改善するのに、性交前に精神安定剤や酒を用いる方法や、リラックスを心掛ける方法もあります。

🇳🇿足関節滑液包炎

足首の関節の前方にある滑液包に炎症が起こり、はれや痛みを生じる疾患

足関節滑液包炎とは、足首の関節の前方にある滑液包に炎症が起こり、はれや痛みを生じる疾患。

滑液包は、皮膚、筋肉、腱(けん)、靭帯(じんたい)などと骨がこすれる部分にある袋状の潤滑装置で、内側には通常でも少量の滑液が入っています。関節が動く際に、皮膚や腱などと骨がこすれるのを和らげます。

この滑液包に何らかの原因で過剰な摩擦や圧迫が繰り返し加わると、炎症が起こって痛みが生じ、滑液の分泌量が多くなり、滑液包の中に過剰な滑液がたまります。また、炎症が続くと滑液包自体が肥厚してきます。

足関節滑液包は足首の関節の前方にあるため、正座や足首の前の部分をこする動作を続けることで、足関節滑液包炎が起こって足首の前に痛みが起こることがあります。炎症が強く滑液がたくさんたまると、こぶのようにはれることもあります。

慢性化すると、はれが持続します。大抵の場合、はれの内部には血液の混じった滲出(しんしゅつ)液がたまっています。

何かけがをしたなどという原因がなく、ふと気が付くと痛くなり、はれているという感じで起こります。

正座の多い人や、ひざをつく給仕の仕事などに就いて足首の前の部分をこする動作を日常的に行う人で、足首の前に痛みとはれがある場合には、足関節滑液包炎の可能性もありますので、整形外科の受診が勧められます。

足関節滑液包炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、視診と触診にて、足首の関節の前方のはれや痛みの部位などを確認します。通常、X線検査では異常がありません。超音波(エコー)検査を行うと、こぶのようにはれた部位に滲出液がたまっているのを確認できることがあります。

整形外科の医師による治療では、まずは、正座や足首の前の部分をこする動作を避けます。滑液包の中に過剰な滑液がたまり、はれと痛みを生じている場合には、注射器で滑液を抜きます。

炎症が強い場合には、抗炎症薬である副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の注射を行います。必要に応じて、サポーターや包帯を用いて局所を圧迫します。

このような治療を行っても症状が改善しない場合には、滑液包を切除する手術を行う場合もあります。

長年にわたって正座をする習慣がある人が、症状を繰り返さないようにするためには、座布団などをひいて、はれた部分に直接圧力がかからないようにすることが有効です。

🇳🇿足根管症候群

足首にある足根管で神経が圧迫されて、足の裏に痛みとしびれが起こる疾患

足根管(そくこんかん)症候群とは、足首内のトンネルである足根管の中を走る後脛骨(こうけいこつ)神経が圧迫されて、足の裏に痛みとしびれが生じる疾患群。後脛骨神経炎とも呼ばれます。

足根管は内踝(うちくるぶし)の下にあり、足指を曲げる腱(けん)と後脛骨神経が一緒に通っています。この足根管の入り口の部位では、後脛骨神経は骨の上を通るために外からの圧迫に弱く、損傷を受けやすくなっています。

足根管症候群の原因としては、事故やスポーツによる足首の強い圧迫、深い切創(せっそう)、骨折、足首の変形やゆがみ、静脈瘤(りゅう)、ガングリオン(結節腫〔しゅ〕)、腱鞘(けんしょう)炎などが挙げられます。

発症すると、足底(足の裏)に痛みとしびれが生じます。しかし、両方の足底に同時に痛みとしびれが生じることはありませんし、足背(足の甲)と踵(かかと)に痛みとしびれが生じることもありません。足首を動かすと痛んだり、内踝の下を押すと痛い部位があり、足の裏から足先に痛みが響きます。

休んでいると痛みは基本的に治まってきますが、安静にしていても痛みが続くこともあります。ピリピリと焼き付くような痛みが出る場合もあり、特に夜間や就眠時に症状が悪化する傾向があり、つま先にまで痛みの範囲が広がっていきます。

特定の靴を履いた場合に、痛みを感じることもあります。

足根管の後脛骨神経を圧迫するような原因に心当たりがある場合は、これを取り除いて様子をみます。心当たりがなければ、整形外科、神経内科の医師を受診することが勧められます。足の裏が痛み、しびれる疾患はたくさんありますので、自己診断は簡単ではありません。

足根管症候群の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。足根管症候群では、足の裏から足先に痛みが広がります。

確定診断には、電気生理検査を行います。 また、神経伝導速度を測定し、後脛骨神経の伝導速度に遅れが認められると、足根管症候群と確定されます。

整形外科、神経内科の医師による治療は、まず神経ブロック注射により患部の炎症を抑えます。靴の中に特殊な矯正用具を入れておくと、後脛骨神経の圧迫が軽減されることもあります。効果がみられない場合は、足根管を広げて後脛骨神経の圧迫を取り除く手術が必要となってきます。

2022/08/14

👣足趾多趾症

足の指の数が6本以上となる先天性疾患

足趾多趾(そくしたし)症とは、足趾、つまり足の指の数が6本以上となる先天性疾患。完全に先天性のもので、後天的な発生はありません。

第5趾(小指)の外側に過剰な足指が発生することが多く、第1趾(親指)の外側などほかの足指にみられることもあります。ほぼ完全な形の過剰な足指が存在する場合から、痕跡(こんせき)的なものや、紐(ひも)状の皮膚でつながった浮遊状のものもあります。隣接した足指と皮膚性に癒合して合趾(合指)を伴うことも、多くみられます。

多くの場合は、特定の原因は不明ですが、足の発生にかかわる遺伝子の変異が関係する可能性があり、染色体異常が原因のことがあります。妊娠中の喫煙などの環境因子との複合作用も、原因として考えられています。

胎児期に足指が分離形成される段階で、1本の足指が2本以上に分かれて過剰な足指が形成されますが、染色体異常に伴う足趾多趾症や、さまざまな身体的異常を引き起こす先天異常症候群に伴う足趾多趾症は、体のほかの部分の先天異常を合併する場合があります。

生後すぐ、あるいは胎児期の超音波検査で、足指の数の過剰は認められます。足の先天性疾患としては比較的多く、2000人に1人の頻度でみられます。

左右の足に、足指の数の過剰が同時に発生する場合、片方の足だけに、足指の数の過剰が発生する場合とさまざまで、 左右差がある場合もあります。

症状の程度も、軽い場合と重い場合があります。過剰な足指の基部が末節骨に存在し、かつ骨成分を含まないものでは、関節や骨の変形が少なく、機能障害はほとんど存在しません。過剰な足指の基部が基節骨や中節骨に存在し、かつ骨や関節がほかの指と共有されているものでは、機能障害が生じ、足指の正常な屈曲、伸展に支障を来します。

生後すぐ、足趾多趾症は産科で気付かれることが多いため、足指以外に内臓疾患の合併がないか、小児科でも診てもらうことが勧められます。また、整形外科などでも診てもらい、美容的、機能的な観点から手術を行うべきかどうか相談することが勧められます。

足趾多趾症の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、視診で容易に判断できます。骨の状態をみるためには、X線(レントゲン)検査を行います。

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、浮遊状の過剰な足指である場合、糸で結紮(けっさつ)して壊死(えし)に陥らせて切除します。

それができない場合、過剰な足指を外科的に切除します。一般的に、過剰な足指の基部が末節骨に存在し、関節や骨の変形が少なく機能障害の少ない場合は、生後6カ月以降が手術時期の目安となり、過剰な足指の基部が基節骨や中節骨に存在し、機能障害の改善が重要な意味を持つ場合は、1歳以降が手術時期の目安となります。

過剰な足指が小さく、機能障害の少ない場合の手術では、切除を行うのみで十分です。機能障害の改善が重要な場合の手術では、過剰な足指を切除した後、残した足指の向きを金属ピンや靭帯(じんたい)縫合などを用いて矯正したり、関節形成を行います。骨の変形を矯正するため、骨切り術を行うこともあります。

合趾を伴う場合は、隣接した足指との分離を同時に行います。分離する際には、足指の側面の皮膚が欠損するために、足の内くるぶし付近の皮膚を採取し植皮を行います。

手術後は治療内容により前後しますが、約4週間のギプス固定を行います。その後も、テーピングなどを行う場合もあります。機能的な問題があれば、リハビリテーションを行います。

靭帯縫合や関節形成を行った場合、成長とともに変形が出現する場合があるため、外来にて手術後も定期的にチェックを行います。出現した変形を矯正するために、再度手術を行う場合もあります。

👣足趾短縮症

足の甲の部分に5本存在する中足骨が先天的に短縮する疾患

足趾(そくし)短縮症とは、先天性足部疾患の一つで、足の甲の部分に5本存在する中足骨(ちゅうそくこつ)が先天的に短縮する原因不明の疾患。先天性足趾短縮症、足趾骨短縮症、中足骨短縮症などとも呼ばれます。

比較的まれな疾患で、女児に多く認められます。先天的に短縮する骨は足の甲の部分の中にあって外観ではわからない中足骨ですが、実際には足指(足趾)が短縮して、引っ込んでいるように見えます。

成長するに従って、中足骨に生じる成長障害が顕著となるために、ほとんどは小学校高学年や中学生のころに自覚します。

両側性にみられることが多く、特に足指の第4指に多くみられます。第4指以外の足指に生じることもあり、また1つの足指のみならず複数の足指に生じることもあります。

一般に、短縮が軽度であれば、機能的な障害はほとんどなく、歩行自体が障害されることも、スポーツ活動に支障を来すことも、痛みが生じることもありません。

短縮が顕著であれば、隣接する足指の外反変形や内反変形を引き起こし、隣接する足指が短くなった足指の透き間に倒れ込むような現象がみられます。時には、隣接する足指の中足骨骨頭に一致して、足裏に有痛性のたこができることもあります。

足趾短縮症は、美容上の問題で発症者を悩ませる深刻な疾患といえます。特に、思春期を過ぎた多感な時期の男女において、水泳授業や海水浴などで素足になることの多い季節になると、ついつい人目が気になり行動が消極的になってしまい、有意義な日常生活を送ることに支障を来すという場合は、整形外科、ないし足の外科を受診することが勧められます。

足趾短縮症の検査と診断と治療

整形外科、ないし足の外科の医師による診断では、視診により足指の短縮が明らかで、時に隣接する足指の変形が認められるため、容易に判断できます。

X線(レントゲン)検査を行うと、短縮した足指に相当する中足骨が短縮していること、それによって足指の付け根に位置する中足趾節関節(MTP関節、母趾球)がほかの足指に比べて近位に位置していることを認め、時に隣接する足指が軽度に変形していることを認めます。

整形外科、ないし足の外科の医師による治療では、発症者や家族の希望、学業や仕事の都合を参考にして手術時期を決定し、中足骨を延長する手術を行うことが第1選択となります。

実際に手術している年齢は、5歳前後から30歳前後とかなりの幅があります。

早い時期に手術を行った場合、まだ足が小さいため高度な手術操作が要求される一方、骨の再生のスピードが速いという利点があります。逆に、骨の成長が終了した成人で手術を行った場合、足が大きく手術は比較的容易である一方、骨の再生のスピードがやや緩慢で治療期間が長くなりがちという問題が生じます。

中足骨を延長する手術には、骨移植法(一期的延長法)と骨延長法(仮骨延長法)の2つがあります。

骨移植法は、短縮した中足骨を骨切りし、一期的に骨切り部を延長した後に開いた透き間に、腰の部分などから取った骨を移植する方法です。一期的に延長するため、神経血管障害が生じる恐れがあるので、延長可能な距離が10ミリまでと制限されます。

骨延長法は、5〜6センチ程度の長さの創外固定器というものを用いて、短縮した中足骨をゆっくりと延長させてゆく方法です。骨本来の再生機能を利用して、骨切り部をゆっくりと延長させてゆくことによって、延長された透き間に少しずつ新たな骨(仮骨)が形成されてゆきます。骨移植法と比較すると、創外固定器の装着期間がやや長い面はありますが、別の部分から骨を取る必要がないという長所のため、近年では広く選択されるようになっています。

🇵🇷足舟状骨骨折

足部の内側縦アーチの頂点に位置する舟状骨に生じる骨折

足舟状骨(そくしゅうじょうこつ)骨折とは、足部の内側縦アーチ(土踏まず)の頂点に位置する舟状骨に生じる骨折。

足部の舟状骨は、船底のような湾曲をしているため、船のような格好の骨ということで舟状骨といいます。足部の内側縦アーチの頂点に位置し、また距骨(きょこつ)との間で距舟関節、距骨と踵骨(しょうこつ)との間で距踵舟関節、内側楔状骨(きつじょうこつ)と中間楔状骨と外側楔状骨との間で楔舟関節を形成しており、体重を支えたり、足のけり出しの際などに重要な骨です。

足舟状骨骨折は、受傷した部位により骨体部骨折、背側近位関節縁骨折、結節部骨折の3種類に分けられます。

骨体部骨折は、直接もしくは間接的に舟状骨に外力が加わって生じる骨折です。発生頻度としては非常にまれですが、発症した時は重症であり、ほかの2つの骨折より痛みが残存しやすいという特徴があります。

背側近位関節縁骨折は、足の裏を内反させた形で受傷しやすく、舟状骨を距舟靭帯(じんたい)に引っ張られて生じる剥離(はくり)骨折です。足舟状骨骨折の中では、最も多く生じています。

背側近位関節縁骨折と結節部骨折はともに、足関節を捻挫(ねんざ)した時に合併しやすいという特徴があります。

足舟状骨骨折を起こすと、舟状骨部の圧痛があり、明らかなはれがみられます。背側近位関節縁骨折では、足関節の内反により痛みが生じるため、歩行によって痛みが生じる場合もあります。結節部骨折では、足関節の内側、内くるぶしの後方から下方を通っている後脛骨筋の収縮、伸張により痛みが発生します。

舟状骨は内側縦アーチを形成する重要な骨であるため、受傷後の治癒が遅れると内側縦アーチの低下がみられる場合があるため、速やかに整形外科などを受診することが勧められます。

足舟状骨骨折の検査と診断と治療

>整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による診断では、問診で骨折の受傷状況を聞き、舟状骨背側に圧痛が局在していれば背側近位関節縁骨折、舟状骨内側に圧痛があれば結節部骨折を疑います。

足関節の捻挫に合併している場合は、捻挫損傷部だけにとらわれて、足舟状骨骨折を見逃さないよう注意します。また、X線(レントゲン)検査を行い、足舟状骨を3方向から撮影します。場合により、CT(コンピュータ断層撮影)検査も利用します。

整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による治療では、3種類の骨折にかかわらず、一般的には保存療法を行います。8週間程度の安静と、足関節のギプス固定によって、骨癒合を図ります。

骨体部骨折で、骨の位置が強くずれる転位があるものや、関節部ではないのに関節のように動くようになる偽関節があるものでは、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を行います。

固定による安静期間の間に、筋力の低下や骨委縮が起こるので、徐々にリハビリを開始します。

骨癒合が得られた後は、内側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になってる足底板は、内側縦アーチにかかる負荷を小さくすることができます。

👣足底筋膜炎

足の裏のアーチを支えている足底筋膜に炎症が起こる疾患

足底筋膜炎とは、足の裏のアーチを支えている足底筋膜に炎症が起こる疾患。足底筋膜は足底腱(けん)膜とも呼ばれるため、足底腱(けん)膜炎とも呼ばれます。

朝、起き掛けにかかとの内側の辺りが痛んで歩きにくいという症状がある場合は、この足底筋膜炎のことがあります。 40、50歳代の男性に多く、5人に1人は一生に1度は経験するといわれます。加齢に伴って足底筋膜の柔軟性が失われ、組織が弱くなるために起こりやすくなります。

若い世代では、ジョギングやジャンプなどによる足の使い過ぎや、外傷によって起こることがあります。ランニング動作やジャンプ動作などで体重刺激が足部にかかる場合、足底筋膜は繰り返しの牽引(けんいん)刺激によって、微小断裂や炎症が発生しやすくなり、 スポーツ障害としての足底筋膜炎を発症します。

加齢に伴う場合の多くは、かかとの骨の内側の前方が痛みます。それも朝、起きて歩き始めた時に痛むのが特徴的で、日中はあまり痛みを感じません。

こうした症状を自覚した時は、まず3週間ほど様子をみるといいでしょう。その後も痛みが続いたり、強くなったりして日常生活に支障を来す場合は、整形外科を受診します。

医師による診断では、痛みの性質と部位、年齢で見当は付きますが、念のためレントゲン写真を撮ります。レントゲン写真を撮ると、かかとの骨の前の部分にとげ状の骨が見られることが多いので、踵骨棘(しょうこつきょく)とも呼ばれます。

治療は通常、痛みを和らげる湿布が基本。日常の歩行時に痛むようなケースでは、ヒールカップというクッション材を靴のかかとの部分に敷いて、痛みを和らげます。

さらに痛みがひどい場合は、消炎鎮痛内服薬を処方し、時に局所にステロイド剤と麻酔剤を注射しますが、この注射は数週間置きに数回にとどめます。踵骨棘による痛みが強い場合は、骨切除術を行う場合もあります。

こうした治療とともに、日常生活では足底筋膜を伸ばすストレッチを行うと効果的。ストレッチは、足指を曲げ、足首を反らして足の裏を5〜10秒、十分に伸ばすようにします。左右交互に行い、少なくとも1日各30回、できれば100回行うと理想的で、日常、習慣化するとよいでしょう。

👣足底腱膜炎

加齢や使いすぎにより、足の裏の縦アーチを支えている足底腱膜に炎症が起こる疾患

足底腱膜(そくていけんまく)炎とは、足の裏の縦アーチを支えている足底腱膜に炎症が起こる疾患。足底筋膜炎とも呼ばれます。

足の土踏まずの部分は、縦のアーチと横のアーチによって作られており、その2つのアーチがクッション役となって、体重を支えたり歩いたりしています。縦のアーチを支える重要な役割を果たしているのが足底腱膜で、足の5本の指の付け根から踵(かかと)まで、足の裏に膜のように張っている腱組織です。

足底腱膜炎を発症すると、その足底腱膜に炎症が起き、小さな断裂を起こして痛みを生じます。X線(レントゲン)写真を撮ると、踵の骨の前の部分に、踵骨棘(しょうこつきょく)という棘(とげ)状の骨が見られることが多く、ひどくなると踵骨付着部での剥離(はくり)骨折を起こすこともあります。

初期は朝の起床時、歩き始めの数歩で、踵の骨の内側前方が痛んでうまく歩けないものの、少しすると痛みは軽くなって普通に歩けるようになります。日中はあまり痛みを感じません。

立ったり歩いたりしている時には足のアーチはいつも緊張していますが、眠っている間は足のアーチの負担がなくなり、その間に足底腱膜の断裂した部分が、少し修復されていきます。しかし、朝起きて立ち上がると、再び負担がかかって足底腱膜に小さな断裂が起こり、痛みを発するのです。

進行すると、1時間ぐらい座った後の歩き始めなどでも痛くなり、重症になると踵の痛みのため、歩行困難になります。

40~50歳代の男性に多く、5人に1人は一生に1度は経験するといわれます。加齢に伴って、足底腱膜の柔軟性が失われ、組織が弱くなるために、足底腱膜に負担がかかり、引き伸ばされて、炎症、断裂を起こしやすくなります。足のアーチを支えるのに役立っている、ふくらはぎの筋肉などが弱まることも、足底腱膜への負担を増し、炎症を起こしやすくします。

若い世代では、ランニングや歩きすぎ、立ち仕事などによる足の使いすぎや、外傷によって起こることがあります。体重の増加によって足にかかる負担が大きくなり、起こることもあります。

3週間以上も痛みが続いたり、強くなったりして日常生活に支障を来す場合は、整形外科を受診することが勧められます。

足底腱膜炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、足底腱膜に沿った痛み、特に踵の下に圧痛があれば見当は付きますが、念のためX線(レントゲン)検査を行います。X線写真で、踵の骨の下に踵骨棘が認められることもあります。

整形外科の医師による治療は、通常、痛みを和らげる湿布が基本となります。日常の歩行時に痛むようなケースでは、ヒールカップというクッション材や、アーチサポート、足底板を靴の踵や土踏まずの部分に敷いて、痛みを和らげます。ヒールカップは市販されていますが、アーチサポート、足底板は医師の処方により義肢装具士が足に合わせて作製する装具です。

さらに痛みがひどい場合は、局所にステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)と麻酔剤を注射しますが、この注射は数週間おきに数回にとどめます。炎症が取れれば、痛みはなくなります。痛みが消えても、一度できた踵骨棘はなくならず、その後の大きさにも変化はありません。

こうした治療とともに、日常生活では足底腱膜を伸ばすストレッチを行うと効果的。ストレッチは、立った姿勢で踵を少し上げ、足先にゆっくり体重をかけていきます。この時、足の指を曲げて足首を反らし、足の裏を5~10秒、十分に伸ばすようにします。左右交互に行い、少なくとも1日各30回、できれば100回行うと理想的です。

まれに、内視鏡下で足底腱膜を切り離す手術を行うこともあります。この手術は、保存的な治療を受けてから数年経過しても、歩行に比例して痛みがひどくなり、日常生活に支障を来す場合に行われます。

また、近年では一部の医療機関で、尿管結石を破砕するために広く使われている体外衝撃波結石破砕装置を、足底腱膜炎の治療に応用しています。主な対象は、保存的な治療を6カ月以上受けても効果を示さない難治性の足底腱膜炎で、低出力の衝撃波を患部に集中的に照射することで痛みを取り去ります。

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