2022/08/01

🇳🇨腋臭症

わきの下から特有のにおいが出る症状

腋臭(えきしゅう)症とは、わきの下の汗が原因で体臭が気になる疾患。わきがとも呼ばれます。

思春期になると、わきの下からの汗が刺激のある独特なにおいを発するようになります。においが強い場合が、腋臭症に相当します。

わきの下には、アポクリン腺(せん)があります。アポクリン腺は乳暈(にゅううん)、外陰部などにもあり、性ホルモンの影響を受けているので、思春期になると分泌が活発になります。 アポクリン腺から分泌された直後の汗にはにおいはありませんが、汗には脂肪酸が含まれているため、皮膚の表面についている細菌により分解されることにより、においを発するようになります。また、アポクリン腺以外のもう一つの汗腺であるエクリン腺も、そのにおいの発散にかかわっています。

汗をかいたままほうっておくと、においは強くなります。衣服のわきの下の部分が、黄色く変色します。

汗のにおいが気になるという人と、においより汗の量が多く、服に染みができて困るという人がいます。狭義では、前者を腋臭症、ないしわきがと呼び、後者は多汗症といって区別します。

腋臭症に気付いたら、わきの下を清潔に保つことが大切です。汗をかいた後はシャワーや入浴で汗をよく洗い流し、清潔な下着にこまめに取り替えます。腋毛があると汗が付着して細菌が繁殖しやすくなるので、わきの下の毛を切ったり脱毛すると、においを減らす効果があります。

このアポクリン汗腺の汗がにおう体質は、遺伝します。世界的に腋臭症体質者の割合を見ると、日本人では10人に1人、中国人では30人に1人、白人では10人に8人、黒人では10人すべてとされています。

このように日本人では腋臭症を持つ者が少数派という事情と、日本人が清潔好きという理由があいまって、自分の腋臭症の症状が気になり、仕事や勉強に集中できない、においを嗅(か)がれるのが怖くて他人と交流できないなど、悩みを持つ人の中には、専門の医師による手術を希望するケースも多々あるようです。

しかし、腋臭症は生命を左右するような疾患ではないため、たとえわきの下の汗が多くてにおいが強いからといって、必ず手術しなければいけないものでもありません。本人が気にしなければ、においが強くても治療の対象にはならないということです。

腋臭症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、わきの下の汗をガーゼなどでぬぐい、においを嗅ぐことにより確定できます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療としては、外用治療、ボトックス注入、スマートリポ、医療レーザー脱毛、手術療法などがあります。

外用治療では、何より清潔にすることが大切で、殺菌作用のあるせっけんでよく洗い、制汗剤をつけます。制汗剤としては、塩化ベンザルコニウム液や塩化アルミニウム液が用いられます。汗をかいた時は、汗ふきシートのようなものを塗ります。

ボトックスは顔のしわの治療で知られますが、わきの下に注入することで、汗腺の活動を抑制し、汗の分泌を抑えます。注入後3~7日間で効果が現れ、約3、4カ月~半年の間は、汗の量を抑えることが可能です。

スマートリポでは、腋臭症の原因となるわきの下のアポクリン腺とエクリン腺に、スマートリポレーザーを照射し、汗腺を燃焼させます。メスを使用せず、直径1mmの針状のレーザーを毛根部に差し込んで、汗腺を直接照射するので、傷跡が残る心配もありません。治療時間が約30分と短く、治療後すぐに帰宅が可能です。

医療レーザー脱毛では、高い出力レベルに設定したレーザーで、毛穴に沿って存在しているアポクリン腺を毛穴ごと破壊してしまうことで、においを軽減します。ただし、この治療法で腋臭症を治療する場合、3 回程度の照射を必要とするなど、症状の適応に限界があります。1回の治療は5分ほどで、日常生活に制限はありません。腋毛の脱毛も、同時に可能です。

手術療法には、剪除(せんじょ)法(皮弁法)、吸引法、皮下組織削除法 、切除法がありますが、現在、保険適応で行われているのはほとんどが剪除法(皮弁法)です。わきの下の皮膚のしわに合わせ、3センチから4センチほどの切開を1本ないし2本入れ、指で皮膚を裏返し、目で確認しながらハサミでアポクリン腺を切り取っていきます。後は、切開した部分を縫い合わせるだけです。

🇯🇵エキノコックス症(包虫症)

条虫の一種であるエキノコックスによって引き起こされる寄生虫病

エキノコックス症とは、条虫の一種であるエキノコックス(包虫)によって、引き起こされる寄生虫病。エキノコッカス症、包虫症とも呼ばれます。

このエキノコックス症には、単包条虫による単包性エキノコックス症と、多包条虫による多包性エキノコックス症の2つがあります。単包性エキノコックス症はシベリア、南米、地中海地域、中東、中央アジア、アフリカ、アメリカ、およびカナダに発生し、日本では輸入感染症とされています。一方、多包性エキノコックス症は20世紀以降に北海道に定着したと考えられ、現在、北海道全域で流行しています。

北海道ではキタキツネが最も重要な感染源で、約60パーセントのキタキツネが感染していると報告されています。北海道で飼育されているイヌでも、1パーセント以上が感染していると報告されています。最近、本州でも多包性エキノコックス症が報告されていますが、その感染ルートは不明です。

エキノコックスの成虫は体長1センチ以下と小さく、キタキツネやイヌの小腸に寄生しています。虫卵はそれらの動物の糞便(ふんべん)と一緒に排出され、虫卵が混じった水や食物を人が摂取したり、成虫が寄生しているイヌとの接触によって虫卵を経口摂取すると、感染が成立します。虫卵から放出された幼虫は腸壁に侵入し、血流あるいはリンパ流に運ばれて主に肝臓に寄生し、そこで成虫になって増殖します。

エキノコックスの増殖は遅く、感染してから小児では5年以上、成人では10年以上の長期に渡って無症状ですが、エキノコックスが増殖してスポンジ状の大きな病巣を形成するようになります。肝臓に寄生している場合、肝臓がはれて上腹部に痛みを感じるようになり、黄疸(おうだん)の症状が出て、皮膚の激しいかゆみ、腹水をもたらすことがあります。

また、エキノコックスは脳や肺などの臓器や骨に転移することがあり、脳転移では神経症状が現れます。症状が現れてから治療せずにいると、5年後で70パーセント、10年後で90パーセント以上のの発症者が死亡します。

エキノコックス症の検査と診断と治療

エキノコックス症を放置した場合の生存率は低いため、発症前の診断と治療開始が重要です。医師による診断は、血清検査と画像検査を併用して行われます。

治療においては、外科的な手術で病巣を切り取るのが有効です。しかし、自覚症状が出現した時点では、もはや切り取れないことが多く、病巣の位置と発症者の状態から切り取るのが困難な場合もあります。手術が困難な場合には、アルベンダゾールなどを駆虫剤として投与します。

感染初期には無症状なので、予防が最も大切です。北海道の各市町村の保健所では、住民のエキノコックス(包虫)血清検査を無料で実施していますので、キタキツネや感染犬と接触のある人は血清検査を受けます。

北海道への旅行者は、キタキツネと接触しないことが大切です。キタキツネのすんでいる地域では、土や草木などに触れたら手を十分に洗ったり、沢水や井戸水を生で飲まないなど、虫卵が口に入らないように気を付けます。エキノコックスは熱には弱く、60度10分間の加熱で死滅するため、現地で採った山菜などはよく洗うか火を通して食べるなどの予防法もあります。

🇯🇵疫痢

日本人の小児にみられた細菌性赤痢の重症型

疫痢とは、2歳から5歳ぐらいの小児にみられた細菌性赤痢の重症型。小児赤痢、小児劇症赤痢とも呼ばれます。

赤痢菌が腸に感染することが原因で起こる小児の特殊な感染症で、1914年伊東祐彦により独立疾患とされ,1922年に旧伝染病予防法により法定伝染病として取り扱われるようになりました。

赤痢菌が混入した食べ物や飲み物を食べたり飲んだりして感染し、1〜3日の潜伏期間の後、水のような下痢、激しい腹痛、嘔吐(おうと)といった通常の細菌性赤痢でもみられる典型的な胃腸炎症状で始まります。下痢は血便になることもあり、しばしば38度以上の高熱を伴います。

疫痢は胃腸にとどまらず、急激に進行し、心臓・脳・神経などにもダメージを与え、血圧低下、手足の冷え、顔面蒼白(そうはく)、けいれん、意識障害、昏睡(こんすい)、自家中毒症状などが現れ、やがて多臓器不全を起こします。早急に治療しなければ、多くは短時日で死亡していました。 経過が急で死亡率が高いことから、疾風(はやて)とも呼ばれました。

どうして小児が赤痢菌に感染すると疫痢の症状を示すのかという本態については、ヒスタミン中毒説、体質説、副腎(ふくじん)皮質機能不全説、低カルシウム血症説などの諸説が出されました。しかし、これについては未解決のまま推移しているうちに、細菌性赤痢の発生減少に伴って、疫痢そのものが1964年以降発生がみられなくなりました。

🗽エコノミークラス症候群

エコノミークラス症候群とは、飛行機内などで長時間、同じ姿勢を取り続けて発症する一連の症候群としてよく知られており、旅行者血栓症やロングフライト血栓症、静脈血栓塞栓(そくせん)症、深部静脈血栓症とも呼ばれます。

飛行機のエコノミークラス以外の座席、飛行機以外の交通機関や施設の座席でも、発生が報告されています。

長時間、座ったままの同じ姿勢でいると、血液の流れが徐々に悪くなり、脚や腕などの静脈に、血の固まりである血栓が生じやすくなります。この血栓が血流に乗って肺へ流れ、肺動脈が詰まると、肺塞栓(そくせん)症となります。

肺動脈が詰まると、その先の肺胞には血液が流れずガス交換ができなくなる結果、換気血流に不均衡が生じ、動脈血中の酸素分圧が急激に低下、呼吸困難を起こします。また、肺の血管抵抗が上昇して、全身の血液循環に支障を起こします。

軽度であれば胸焼けや発熱程度で治まりますが、最悪の場合は死亡します。

飛行機内などでは、血液が固まりにくいように水分を補給したり、長時間にわたって同じ姿勢を取らないようにし、着席中に足を少しでも動かして血液循環をよくすることで、エコノミークラス症候群は予防できます。

💅エッグシェルネイル

爪の甲が薄く白くなり、爪の先端が内側に湾曲する状態

エッグシェルネイルとは、爪(つめ)の甲が薄く白くなり、爪の先端が内側に湾曲する状態。卵殻爪(らんかくそう)とも呼ばれます。

卵の殻のような形になって、しばらくほうっておけば元の爪の甲の形に戻るというわけではありません。薄くなった爪の甲は、健康な爪の甲よりもずっともろくなるため、ちょっとしたことで割れやすくなります。

爪が割れやすい状態は、ほかの爪の疾患を引き起こします。エッグシェルネイルがもとで、爪の甲が両側縁に向かって深く湾曲する巻き爪や陥入爪になるケースも珍しくありません。

エッグシェルネイルの発生には、過剰なダイエットによる栄養不足が大きく関係しています。爪は健康のバロメータであり、栄養状態が現れやすい部位ですから、男性よりもダイエットに取り組んでいるケースが多い女性がかかりやすいといえるでしょう。また、内臓の疾患、神経障害、薬物が原因で、エッグシェルネイルが発生することもあります。

エッグシェルネイルは命にかかわる疾患ではないので、あまり気にしない人も多いようですが、正常な状態とはほど遠く、悪化して巻き爪や陥入爪になれば、治療もより困難になります。エッグシェルネイルになったら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。爪が割れやすくなりますから、自己治療は危険です。

エッグシェルネイルの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、エッグシェルネイルを起こし得る外的物質や薬物、あるいは皮膚疾患、内臓の疾患、細菌感染、栄養不足などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、一般的には、爪の甲の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。

栄養不足が原因でエッグシェルネイルを生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

内臓などの疾患が原因でエッグシェルネイルを生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、圧力がかかって爪が割れる原因になるマニキュア、ネイルアート、小さい靴を履くなどを避けることです。

🗽エドワーズ症候群

染色体の異常により引き起こされる重度の先天性障害

エドワーズ症候群とは、18番目の常染色体が1本多い、3本あることが原因で引き起こされる重度の先天性障害。エドワード症候群、18トリソミー症候群、18トリソミーとも呼ばれます。

人間の体は、父親と母親からもらった遺伝子情報に基づいて作られます。遺伝子情報は、染色体という生体物質が担っています。一般の細胞の核には、1番から22番までの一対の常染色体が44本、それにXまたはYの性染色体の2本が加わって、合計46本の染色体がセットになって存在します。半数の23本ずつを父親と母親から継承しています。

合計46本の染色体のうち、ある染色体が過剰に存在し、3本ある状態がトリソミーです。卵子や精子が作られる過程で染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことがトリソミーを引き起こします。

18番目の常染色体が3本あるトリソミーがエドワーズ症候群で、イギリスのジョン・エドワーズらのグループにより1960年に初めて報告されました。

日本では現在、新生児約5000人から8000人に1人の頻度でエドワーズ症候群が発生するといわれ、男児は流産する場合が多いため、女児に多くみられます。母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、エドワーズ症候群の新生児を産む確率が高くなります。しかし、過剰な染色体が生じる原因は、父親にあることもあります。

エドワーズ症候群のうち、約80パーセントが染色体が3本独立している標準型トリソミー、約10パーセントが正常細胞とトリソミーの細胞が混在しているモザイク型、約5パーセントが多い1本が他の染色体についている転座型、約5パーセントが詳細不明と見なされています。一部の転座型を除き、そのほとんどは細胞分裂時に起こる突然変異だと考えられており、遺伝的な背景は否定されています。

早産ではなくて満期産、過熟産で生まれることが多いものの、出生時の体重は2200グラム以下と低体重であり、死産になることも多くなっています。また、明らかな全身の発育不全で生まれ、精神発達遅滞のほか、後頭部の突出、両眼開離、口唇裂、口蓋(こうがい)裂、小顎(しょうがく)、耳介の低位、指の屈曲、多指、先天性心疾患、腹直筋ヘルニアなどの消化管の奇形、揺り椅子(いす)状の足といった多くの異常がみられます。

先天性心疾患はほぼ必発で、心室中隔欠損症、心内膜床欠損症などのほか、単心室、総肺静脈還流異常症、ファロー症候群など、極めて重篤なことも少なくありません。

誕生後の予後は一般的に悪く、生後2カ月以内に約半数、1年以内に90パーセント以上が死亡します。先天性心疾患の重症度が、特に生命予後に重要な影響を及ぼします。

モザイク型では、正常細胞とトリソミーの細胞の混在する割合や症状により、生命予後、成長発達に恵まれる場合もあり、中学生になるまで成長したケースも報告されています。

エドワーズ症候群の検査と診断と治療

産婦人科の医師による出生前の診断では、超音波検査異常または母体血清スクリーニングの異常所見から、エドワーズ症候群と確定します。

小児科の医師による出生後の診断では、特徴的な外見から疑われ、染色体検査で確定します。

小児科の医師による治療では、根本的な治療法がなく予後の改善は見込めないため、さまざまな症状に対する対症療法を行います。症状が安定している場合は、口唇裂、多指、腹直筋ヘルニアなどの手術に踏み切ることもあります。

🇼🇸エプスタイン・バーウイルス感染症

主にエプスタイン・バーウイルスの感染で起こり、青年期に多くみられる疾患

エプスタイン・バーウイルス感染症とは、主にエプスタイン・バーウイルスの感染で起こり、15~30歳くらいの青年期に多くみられる良性の疾患。EBウイルス感染症、伝染性単核球症とも呼ばれ、アメリカではキス病とも呼ばれています。

ヘルペスウイルスの仲間であるエプスタイン・バーウイルスはBリンパ球に感染しますが、感染Bリンパ球を排除するためにTリンパ球が増加します。サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、またHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した場合でも、同様の症状がみられることがあります。

エプスタイン・バーウイルスに感染する時期によって、症状の現れ方が異なります。日本人の70パーセントは2〜3歳までに初感染しますが、乳幼児期では病原菌に感染しても症状が現れない不顕性感染が多く、症状が現れても軽度です。

思春期以降に感染すると、約50パーセントが発症します。ただし、感染してもほとんどが4~6週間で、症状は自然になくなるといわれています。20歳代では90パーセント以上が抗体を持っているといわれていますが、成人になってから初感染した場合、症状が重くなります。6カ月以上症状が続く場合は、重症化している可能性があります。

エプスタイン・バーウイルスは一度感染すると、その後は潜伏感染状態となり、終生に渡って共存します。そのため、急性感染症以外にもいろいろな疾患を引き起こすことがわかってきました。再感染はしないものの、免疫力が低下した場合に発症することもあります。

キスや飲み物の回し飲みなどによる、既感染者の唾液を介した経口感染が、主要な感染経路です。まれに、輸血により伝播(でんぱ)されます。感染してから発症するまでの潜伏期間は、4~6週間といわれています。

主な症状は、発熱、頸部(けいぶ)リンパ節の腫脹(しゅちょう)、咽頭(いんとう)痛。 まず、頭痛、熱感、悪寒、発汗、食欲不振、倦怠(けんたい)感などの前駆症状が数日間続き、その後38℃以上の高熱が1~2週間続きます。発熱のないこともありますが、通常は発症から4~8日が最も高熱で、以後徐々に下がってきます。

頸部リンパ節の腫脹は、発症2週目ころから現れ、時に全身性のリンパ節腫脹もみられます。上咽頭のリンパ節腫大による鼻閉も、よく起こります。口蓋扁桃(こうがいへんとう)は発赤、腫脹し、口蓋に出血性の粘膜疹(しん)が出て咽頭痛が生じます。発疹は、抗生物質、特にペニシリン系を投与された後に現れることがしばしばあります。

肝臓や脾臓(ひぞう)が腫大することもあり、急激な腫脹のためにまれに脾臓の破裂を招くことがあります。

発熱が1週間続く場合は、内科あるいは耳鼻咽喉(いんこう)科の医師を受診し、精密検査を受けることが勧められます。症状が進行して、劇症肝炎や血球貪食(どんしょく)症候群などを併発すれば、生命の危険があります。リンパ節腫大が長引き、悪性リンパ腫と誤診されることがあるので、要注意です。ほとんどの大人は既感染者なので、他人への伝播を気にする必要はありません。

エプスタイン・バーウイルス感染症の検査と診断と治療

内科、耳鼻咽喉科の医師による診断では、血液検査を行い、白血球の増加、特に末梢(まっしょう)血中の単核球(リンパ球)の増加と、正常なリンパ球と異なった形の異型リンパ球の出現がみられることを確認します。ほとんどのケースで肝機能異常を認め、エプスタイン・バーウイルス血清中抗体価が陽性となることなどで、総合判断します。

このエプスタイン・バーウイルス感染症に特異的にみられるポール・バンネル反応を調べる血清試験があり、これが陽性ならば診断が決められます。しかし、日本人では検査が陽性にならないものが多く、頼りになりません。

ほかのウイルス感染や悪性リンパ腫、リンパ性白血病などとの区別が、必要になります。

内科、耳鼻咽喉科の医師による治療では、抗エプスタイン・バーウイルス薬はないため、安静と対症療法が中心です。咽頭痛がひどい場合は、アセトアミノフェンなどの消炎鎮痛薬を用います。血小板減少や肝機能障害の程度が強く、症状が長引く場合は、ステロイドホルモン剤を用いることもあります。肝機能障害には、肝庇護(ひご)剤を用いることもあります。 発疹が現れることがあるため、抗生物質、特にペニシリン系抗生物質の投与は避けます。

安静にしていれば経過は比較的良好で、1〜2週間で解熱し、リンパ節のはれも数週から数カ月で自然に消えます。

重症の場合は、血漿(けっしょう)交換療法や抗がん剤が用いられます。アシクロビル(ゾビラックス)などの抗ウイルス薬の有効性は、証明されていません。

異型リンパ球は、少数ながら数カ月残存しているケースもあります。肝臓や脾臓のはれも1カ月ほどで回復しますが、まれに脾臓破裂を起こすことがあるので、治った後も2カ月ほどは腹に圧力や衝撃がかかる運動などは避けるようにします。

また、疾患が治ったと思っても、数週間たってから肝機能障害などが悪化することがあるので、リンパ節のはれがなくなっても数週間は経過に注意し、医師の指示を受けることが大切です。

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