わきの下から特有のにおいが出る症状
腋臭(えきしゅう)症とは、わきの下の汗が原因で体臭が気になる疾患。わきがとも呼ばれます。
思春期になると、わきの下からの汗が刺激のある独特なにおいを発するようになります。においが強い場合が、腋臭症に相当します。
わきの下には、アポクリン腺(せん)があります。アポクリン腺は乳暈(にゅううん)、外陰部などにもあり、性ホルモンの影響を受けているので、思春期になると分泌が活発になります。 アポクリン腺から分泌された直後の汗にはにおいはありませんが、汗には脂肪酸が含まれているため、皮膚の表面についている細菌により分解されることにより、においを発するようになります。また、アポクリン腺以外のもう一つの汗腺であるエクリン腺も、そのにおいの発散にかかわっています。
汗をかいたままほうっておくと、においは強くなります。衣服のわきの下の部分が、黄色く変色します。
汗のにおいが気になるという人と、においより汗の量が多く、服に染みができて困るという人がいます。狭義では、前者を腋臭症、ないしわきがと呼び、後者は多汗症といって区別します。
腋臭症に気付いたら、わきの下を清潔に保つことが大切です。汗をかいた後はシャワーや入浴で汗をよく洗い流し、清潔な下着にこまめに取り替えます。腋毛があると汗が付着して細菌が繁殖しやすくなるので、わきの下の毛を切ったり脱毛すると、においを減らす効果があります。
このアポクリン汗腺の汗がにおう体質は、遺伝します。世界的に腋臭症体質者の割合を見ると、日本人では10人に1人、中国人では30人に1人、白人では10人に8人、黒人では10人すべてとされています。
このように日本人では腋臭症を持つ者が少数派という事情と、日本人が清潔好きという理由があいまって、自分の腋臭症の症状が気になり、仕事や勉強に集中できない、においを嗅(か)がれるのが怖くて他人と交流できないなど、悩みを持つ人の中には、専門の医師による手術を希望するケースも多々あるようです。
しかし、腋臭症は生命を左右するような疾患ではないため、たとえわきの下の汗が多くてにおいが強いからといって、必ず手術しなければいけないものでもありません。本人が気にしなければ、においが強くても治療の対象にはならないということです。
腋臭症の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、わきの下の汗をガーゼなどでぬぐい、においを嗅ぐことにより確定できます。
皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による治療としては、外用治療、ボトックス注入、スマートリポ、医療レーザー脱毛、手術療法などがあります。
外用治療では、何より清潔にすることが大切で、殺菌作用のあるせっけんでよく洗い、制汗剤をつけます。制汗剤としては、塩化ベンザルコニウム液や塩化アルミニウム液が用いられます。汗をかいた時は、汗ふきシートのようなものを塗ります。
ボトックスは顔のしわの治療で知られますが、わきの下に注入することで、汗腺の活動を抑制し、汗の分泌を抑えます。注入後3~7日間で効果が現れ、約3、4カ月~半年の間は、汗の量を抑えることが可能です。
スマートリポでは、腋臭症の原因となるわきの下のアポクリン腺とエクリン腺に、スマートリポレーザーを照射し、汗腺を燃焼させます。メスを使用せず、直径1mmの針状のレーザーを毛根部に差し込んで、汗腺を直接照射するので、傷跡が残る心配もありません。治療時間が約30分と短く、治療後すぐに帰宅が可能です。
医療レーザー脱毛では、高い出力レベルに設定したレーザーで、毛穴に沿って存在しているアポクリン腺を毛穴ごと破壊してしまうことで、においを軽減します。ただし、この治療法で腋臭症を治療する場合、3 回程度の照射を必要とするなど、症状の適応に限界があります。1回の治療は5分ほどで、日常生活に制限はありません。腋毛の脱毛も、同時に可能です。
手術療法には、剪除(せんじょ)法(皮弁法)、吸引法、皮下組織削除法 、切除法がありますが、現在、保険適応で行われているのはほとんどが剪除法(皮弁法)です。わきの下の皮膚のしわに合わせ、3センチから4センチほどの切開を1本ないし2本入れ、指で皮膚を裏返し、目で確認しながらハサミでアポクリン腺を切り取っていきます。後は、切開した部分を縫い合わせるだけです。
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