2022/08/01

🇵🇹顔面多汗症

体のほかの部分はそうでもないのに、顔だけに異常なほど汗をかく症状

顔面多汗症とは、顔から出る汗が異常に多く分泌し、日常生活にも影響が及んでいる症状。顔汗とも呼ばれます。

体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に多く分泌する症状を多汗症といい、全身性多汗症と、手のひら、足の裏、わきの下、頭、鼻の頭などにみられる局所性多汗症がありますが、特に顔にその症状が多く現れる顔面多汗症は、局所性多汗症の一種です。

暑い時、激しい運動をした時、緊張した時、興奮した時、熱い物・辛い物を食べた時などに、顔から汗がたくさん出るのは、誰(だれ)にでも起こる生理現象です。こうした機会とは関係なく、体温を下げる必要がない時、リラックスしている時にも常に汗が出てしまい、日常生活に支障が出るほどの症状を指して多汗症とされています。

体のほかの部分はそうでもないのに、顔から噴き出る汗ですぐに化粧崩れを起こしてしまう、常に汗で顔が湿っている、緊張するとポタポタと滴り落ちるほど顔の汗が出るといった場合は、顔面多汗症の可能性が高くなります。

顔面多汗症を含め、体の特定の部分に異常なほどたくさん汗が出る局所性多汗症は、その原因がはっきりとは解明されていません。ただし、発汗を促すのは自律神経の1つである交感神経なので、何らかの理由で交感神経の働きが過敏になっていると考えられています。

体が健康な状態であれば、汗は全身から出るのが普通です。顔にばかり汗をかいてしまうという場合、その原因としてまず、運動不足の可能性が考えられます。

発汗の最も重要な役割は、体温の調節です。体温が上昇しすぎると脳細胞がダメージを受けるため、体は汗を出すことで熱を逃がしているのです。体温調節のための汗を分泌しているのはエクリン汗腺(かんせん)で、ほぼ全身に分布して、汗腺の数は平均で350万個、少ない人で200万個、多い人で500万個あるといわれています。分布密度は1平方センチメートル当たり130~600個とされていて、肉眼では見えないほど小さな汗腺です。

しかし、すべてのエクリン汗腺が汗を分泌しているのではなく、実際に活動している能動汗腺は全体の半分程度といわれています。また、運動不足などで体温の上昇が極端に少ない生活をしていると、汗を分泌する機会が少なくなることから、心臓から離れていて冷えやすい下半身や腕などの汗腺は休眠状態に入ってしまいます。そのために、体温の調節をする際は、動きの多い顔などに集中して汗腺から出る汗が増えるのです。

顔の汗が気になる理由の一つに、蒸発しにくいベタベタの汗で気持ちが悪いという面があると思われます。

本来、エクリン汗腺から出る汗は、熱を逃がして体温を下げる働きがあり、皮膚表面から蒸発する際に気化熱を奪うため、サラサラしていて、すぐに蒸発するという特徴があります。体温が上昇すると、汗腺はオーバーヒートを防ぐために、血液から赤血球、白血球、血小板を除いた血漿(けっしょう)という液体を汗としてくみ出します。しかし、血漿には体に必要なミネラルも含まれているため、そのまま汗として出してしまうと体のミネラルが不足してしまいます。そこで、汗腺はくみ出した血漿から、体に必要なミネラルを再吸収して血液に戻し、水分とわずかな塩分だけを汗として分泌するのです。こうして、きちんと再吸収が行われた汗は、水のようなサラサラした汗になります。

しかし、汗をかく機会が少なく、汗腺の機能が衰えていると、再吸収がうまくできなくなります。その結果、ミネラルが汗に混じって分泌され、蒸発しくいベタベタの汗になってしまうのです。顔にばかり汗をかく人が顔の汗を気にするのには、このような理由もあると考えられます。

また、汗には体温調節のための温熱性発汗とは別に、緊張した時や動揺した時、ストレスを感じた時などに発汗を促す交感神経が刺激されることで出る精神性発汗、いわゆる冷や汗もあります。この場合も、突発的に出ることからミネラルの再吸収が間に合わず、ベタベタした汗になります。

精神性発汗も誰にでも起こる生理現象ですが、顔面多汗症の人は汗を気にしやすいため、早く汗を止めようと焦ったりしがちな結果、交感神経がさらに刺激され、余計に汗を増やしてしまうという悪循環に陥ることがあります。

また、顔にばかり汗をかいてしまうという場合、生まれ付きの体質や遺伝によって起こるケースもあるとされています。

次に、顔だけに限らず、全身に大量の汗をかいてしまう場合、甲状腺機能高進症、自律神経失調症、更年期障害、糖尿病神経障害などの疾患が潜んでいる可能性も考えられます。

甲状腺機能高進症は、新陳代謝を活性化させる甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患で、代表的なものにバセドー病があります。全身の代謝が高まるため汗をかきやすくなるだけでなく、動悸(どうき)や息切れ、イライラ、食欲が盛んでよく食べるのに体重が減少するなど、さまざまな症状が現れます。

自律神経失調症は、呼吸や体温、血液の流れ、内臓の働きなどを自動的に調節して体の恒常性を維持している自律神経のバランスが乱れることで、体にさまざまな不調が現れる疾患で、発汗も自律神経の1つである交感神経がコントロールしているため、自律神経失調症になると汗が異常にたくさん出ることがあります。

更年期障害は、女性の月経閉止時期に当たる45~55歳ころに現れる不定愁訴で、加齢に伴う卵巣機能の低下によって女性ホルモンの分泌が低下すると、自律神経のバランスが乱れてしまいます。すると、血管の拡張や収縮をうまくコントロールできなくなり、汗が出たり、顔が火照ったり、のぼせたりするホットフラッシュという症状が起こることがあります。

糖尿病神経障害は、糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、末梢(まっしょう)神経が障害されてなることがある疾患で、自律神経も末梢神経の1つなので、その働きが低下すると発汗異常や立ちくらみ、便秘、下痢、尿意を感じないなど、体にさまざまな症状が現れます。

さらに、汗が出るのが顔の片側だけの場合は、大動脈瘤(りゅう)や、縦隔腫瘍(しゅよう)の可能性があります。大動脈瘤は、心臓から送り出されたすべての血液を運ぶ大動脈にコブができること。縦隔腫瘍は、胸腔(きょうくう)を左右に区切る縦隔の中に発生した腫瘍のこと。どちらのケースも、その部分の交感神経が刺激されることで顔の発汗が異常に起こってしまうことがあります。

多量の汗には、ただ単に汗っかきなだけの場合と、多汗症などの疾患が潜んでいるケースがあります。日常生活に支障が出るほど顔の汗が多い、リラックスしている時でも顔の汗が気になるなど、何かしらの異常を感じる場合は、そのほかの疾患が潜んでいる可能性もあるので、まずは皮膚科、ないし皮膚泌尿器を受診してみるといいでしょう。

顔面多汗症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診、視診、触診で症状を確認します。また、客観的に発汗量を検査するためにヨード紙法、換気カプセル法も行います。

ヨード紙法は、ヨード(ヨウ素)を吸収させた紙を発汗部位に触れさせ、汗の量を見る検査法です。発汗部位に触れると汗を吸収して黒色に変色するのですが、重症の場合はヨード紙が全体的にベッタリと変色し、中等度の場合は汗腺と同じ位置に点状に変色するだけというように、視覚的にわかりやすいのが特徴です。

換気カプセル法は、発汗部分の皮膚に密閉できる小型カプセルを装着し、そこに乾燥ガスを入れて汗を蒸発させ、出てきたガスの湿度から発汗量を調べる方法です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、薬物療法を行うこともあります。有効とされる治療薬は特定されていませんが、手のひら、足の裏、わきの下の局所性多汗症と同じように、ボツリヌス注射や神経遮断薬、漢方薬、精神安定剤なら効果があるとされています。

ボツリヌス注射は、食中毒の原因菌でもあるボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素が作るタンパク質を有効成分とした注射です。汗は、交感神経の末端から放出されるアセチルコリンという神経伝達物質が、汗腺に発汗を促すことで分泌されます。ボツリヌス注射は、このアセチルコリンの放出を抑制し、汗を減らす注射で、1回の注射で半年ほど効果が持続します。顔の場合は、額に注射をして、額の汗を減らすために使います。ただし、副作用などのリスクもあります。

神経遮断薬は、アセチルコリンの放出を阻害して発汗を抑制する飲み薬で、多汗症の治療薬としては「プロパンテリン(商品名プロバンサリン)」が、唯一の認可薬となっています。全身に作用するので、顔に限らず全身の汗を止めるのに有効ですが、口の渇き、目のかすみ、眠気、胃腸障害、便秘などの副作用が出る場合があります。

漢方薬は、西洋医学の薬のように症状に直接作用するわけではないので、即効性がありません。しかし、体全体のバランスを本来の状態に戻して自己治癒力を高める効果が期待できるため、西洋医学では原因が解明できず、対処し切れないような疾患にも効果を発揮することがあります。同じ症状でも、患者によって処方される漢方薬は異なりますが、顔の汗が多い場合は柴胡桂枝乾姜(さいこけいしかんきょうとう)がよく用いられます。

精神安定剤は、精神的な緊張が強くて汗をかく精神性発汗の場合に内服することで、気持ちが落ち着き、症状が緩和されることもあります。

顔の汗が異常に出て仕事やプライベートに支障を来している場合、皮膚科の紹介により、外科、胸部外科、麻酔科などで手術を行うこともあります。ただし、多汗症の手術は副作用を伴うこともあるので、手術を受けるかどうかには慎重な検討が必要です。

手術は、主に胸腔鏡下交感神経節遮断術(ETS)が行われます。これは、発汗の指令を伝達している交感神経を切断する内視鏡手術です。交感神経は背骨の左右を上下方向に走っていますが、これを胸の辺りの高さで切断すると、汗が減少します。手のひらの汗を止めるための手術ですが、顔やわきの下などの汗も減少することから、顔面多汗症の改善にも用いられます。

具体的な手術方法としては、わきの下の皮膚を2~4ミリほど切って、小さなカメラを胸腔に入れ、モニター画面で胸の中を見ながら、胸の辺りにある汗の分泌を調節する交感神経を見付けて切断します。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。

手術のメリットは成功率が高く効果に永続性があるということ、デメリットは交感神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、顔から汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。

🇵🇱顔面播種状粟粒性狼瘡(酒さ様皮膚炎)

副腎皮質ホルモン外用剤の副作用で、赤ら顔になる皮膚病

顔面播種状粟粒性狼瘡(がんめんはしゅじょうぞくりゅうせいろうそう)とは、鼻を中心として両ほおが赤くなる酒さに似た症状が現れる疾患。

現在欧米では、顔面播種状粟粒性狼瘡という疾患名は使われず、酒さ様皮膚炎と考えられています。また、出現部位により、口の周囲にのみ症状が現れる場合は口囲皮膚炎、目の周囲にのみ症状が現れる場合は眼囲皮膚炎などと呼ばれています。

顔面に生じる酒さ様皮膚炎で、組織的に肉芽腫(にくげしゅ)があるため、以前は結核菌への遅延型反応と考えられましたが、現在では否定されています。

比較的長期間にわたって、顔に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を使用したことによる副作用が主な原因で、20歳ぐらいから中年にかけての女性の顔面に多くみられます。

毛細血管が拡張して赤ら顔になるほか、にきびのような小さく赤い吹き出物や、膿胞(のうほう)ができます。火照りやぴりぴり感を伴い、中にはかゆみを感じる人もいます。副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤の使用をやめると、一時的にさらに症状が悪化するために、中止することができないと、ますます悪化していきます。

この顔面播種状粟粒性狼瘡、すなわち酒さ様皮膚炎は、顔以外の皮膚ではあまりみられません。強力な副腎皮質ホルモン剤、特に構造式でフッ素を含有する副腎皮質ホルモン軟こうを外用した時に起こるとされますが、それ以外の副腎皮質ホルモン軟こうでも起こることがあります。化粧品を始め、シャンプーやリンスでかぶれた際に、市販の副腎皮質ホルモン剤が入ったかぶれ止めの薬を顔に長期間、連用するなどは、注意したほうがよいでしょう。

アトピー性皮膚炎の発症者で、顔の湿疹(しっしん)に連用して起こる場合もあります。副腎皮質ホルモン軟こうには、血管収縮作用があるために、外用時は赤みが除かれ肌が一時的に白くきれいに見えますが、長い間使用していると、顔面播種状粟粒性狼瘡、すなわち酒さ様皮膚炎になりかねません。女性が化粧品の下地クリームとして長期間、連用して起こる場合もあります。

症状を自覚した時は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎を治療するために、副腎皮質ホルモン軟こうを用いて発症した場合は、掛かっている医師に相談します。

顔面播種状粟粒性狼瘡(酒さ様皮膚炎)の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、乾酪壊死(かんらくえし)という乾酪(チーズ)に似た黄白色で乾燥性の壊死を伴う肉芽腫性の変化がみられます。区別すべき疾患としては、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、尋常性ざ瘡があります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、基本的には副腎皮質ホルモン軟こうの外用を中止すればよいのですが、実際には難しさがあります。外用を中止すると、数日後から顔面の赤み、はれがますます強くなり、火照り感が強く、我慢できなくなるほどに悪化します。この状態がひどい時は、3週間から2カ月くらい続くこともあり、その後は次第に症状が消えていきます。

問題はこの悪化する時期をどう治療するかで、外出もできないと訴える発症者もいます。精神的苦痛や不安を伴うので、入院するのも選択肢に入ります。徐々に効果の弱い副腎皮質ホルモン軟こうに変えていくとか、全身的に副腎皮質ホルモンの内服を行って炎症を抑え、徐々にその量を減らす方法もありますが、この方法では軽快するまでに、かなり長期間を要することがあります。

軽いケースでは、テトラサイクリンなどの抗生物質とビタミンB2の内服で、症状が改善されます。アトピー性皮膚炎がある場合は、副腎皮質ホルモン軟こうの代わりに、タクロリムスという免疫抑制剤の軟こうを用いたりします。

顔面播種状粟粒性狼瘡、すなわち酒さ様皮膚炎を予防するためには、顔にはなるべく副腎皮質ホルモン含有軟こうを使用しないことです。かぶれやアトピー性皮膚炎で炎症症状が強く、どうしても顔にこの軟こうを使わなければならない時は、できるだけ短期間に抑え、症状が軽快すれば、早めに副腎皮質ホルモンを含まない軟こうに変えます。そのためには、外用剤でも必ず皮膚科専門医の指示に従って、使用する必要があります。

日常生活では、皮膚内の毛細血管を広げる働きのある食品は、避けなくてはなりません。具体的には、香辛料の効いた食品、アルコール飲料、コーヒーなどのカフェイン入り飲料などです。化粧をする人は、腕に試してみるパッチテストをしてから使うように心掛けます。

🇱🇮顔面ミオキミア

眼輪筋の一部に異常な興奮が発生し、まぶたがけいれんする疾患

顔面ミオキミアとは、顔面神経が支配する眼輪筋の一部に異常な興奮が発生し、まぶたがピクピクとけいれんする疾患。眼輪筋は、まぶたを開閉する筋肉です。

けいれんは下まぶたに多く生じ、一部の皮膚表面からさざ波が周囲に波紋状に伝わるような動きがみられます。自覚的にはピクピクとした感じで、小さく不規則に長い時間、持続します。顔の運動神経に異常な電気活動が生じて、眼輪筋の一部が異常に興奮することによって起こると見なされています。

健康な人でもパソコンの長時間操作などによる眼精疲労や、寝不足の時に起こったり、外傷などによる顔面神経まひの後遺症として起こったりします。そのほかに、脳幹部にできた炎症や腫瘍(しゅよう)、多発性硬化症などの疾患による場合もあります。

眼精疲労や寝不足などによる一過性のものではなく、けいれんが継続する場合には眼科の専門医を受診する必要があります。

眼科の医師による診断では、眼輪筋を針筋電図で検査します。特徴的な筋放電パターンが観察された場合に、この顔面ミオキミアであると特定されます。普通、基礎疾患の有無を調べるために、神経内科などで頭部MRI検査なども行います。

明らかな病変がなければ、そのままで経過観察したり、対症療法として抗けいれん薬などを内服したりします。けいれんは時間の経過とともに消えていくため、顔面ミオキミアにはボツリヌス毒素療法は認められていません。ボツリヌス毒素は筋肉の収縮を抑制する神経毒であり、薄めたボツリヌス毒素を眼輪筋、顔面筋に注射することによって、一時的に注射部位のけいれんを消失させます。

なお、眼科で経過を見ながらほかの症状が出てくるようなら、神経内科、脳外科とも連携しながら治療を進めていく必要があります。

🇷🇺乾酪性上顎洞炎

副鼻腔の一つである上顎洞に真菌が入り込んで、チーズのような形状をした膿がたまる疾患

乾酪性上顎洞炎(かんらくせいじょうがくどうえん)とは、カビの仲間である真菌が副鼻腔(ふくびくう)の一つである上顎洞に入り込むことが原因で、乾酪、すなわちチーズのような形状をした膿(うみ)がたまる疾患。真菌性副鼻腔炎の一種で、真菌性上顎洞炎と重複する部分が多い疾患です。

鼻の穴である鼻腔の周囲には、骨で囲まれた空洞部分である副鼻腔が左右それぞれ4つずつ、合計8つあり、自然孔という小さな穴で鼻腔とつながっています。4つの副鼻腔は、鼻の両横に位置する上顎洞のほか、鼻の上の額にある前頭(ぜんとう)洞、目と目の間にある篩骨(しこつ)洞、その奥にある蝶形骨(ちょうけいこつ)洞です。

4つの副鼻腔は、強い力が顔面にかかった時に衝撃を和らげたり、声をきれいに響かせたりする働きがあるとされますが、その役割ははっきりとはわかっていません。鼻腔や副鼻腔の中は、粘膜で覆われており、粘膜の表面には線毛と呼ばれる細い毛が生えています。線毛は、外から入ってきたホコリや細菌、ウイルスなどの異物を粘液と一緒に副鼻腔の外へ送り出す働きを持っています。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称で、菌類に含まれており、健康な人の体内に常にいるものや、空気中のあらゆる所に浮いている胞子が体内に入ってくるものなど、さまざまな種類があります。

健康である限り真菌に感染することはありませんが、体の抵抗力が落ちている人や高齢者、抗生物質を飲んでいる人、あるいは免疫の疾患などで副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を飲んでいる人、免疫抑制剤を飲んでいる人など、免疫力が低下している人、糖尿病や悪性腫瘍(しゅよう)などの基礎疾患がある人が、真菌の胞子に接触すると日和見感染し、真菌性副鼻腔炎や、その一つである乾酪性上顎洞炎を起こすことがあります。

上顎洞に入り込んだ真菌が増殖し、多くの場合は塊を形成するので、強い炎症が起こります。真菌の中でも、呼吸器を侵すアスペルギルスが最も多い原因となっています。それ以外には、肺や鼻や脳を侵すムコール、口や肺などを侵すカンジダなどが原因になっています。

症状としては、左右どちらか片側の鼻腔から、非常に粘り気が強くて黄色く、悪臭が漂うチーズ様の鼻水が出るようになります。粘り気が強いため、鼻をかんでもなかなか取り去ることができず、鼻詰まりの原因にもなり、鼻からの呼吸がしにくくなることもあります。

これらの症状のほかにも、頬(ほお)が重たく感じたり、頬の部分に熱感を感じるようになったり、押さえると痛みを感じるようにもなったりします。

また、片頭痛がする、いつも何となく頭が重たく感じる、目の痛みが生じるといったこともあります。時には、炎症を起こしているほうの歯で物をかむと、痛みを感じることもあります。

大半は上顎洞に限られた炎症にとどまることが多いものの、糖尿病が非常に悪化したり、免疫機能が低下したりして全身状態が悪くなると、目や脳の中に炎症が進み、上顎洞の骨を破壊して周囲に広がることがあります。この場合には、高熱、激しい頭痛、頬部腫脹、眼球突出、視力障害などを起こします。

糖尿病や悪性腫瘍などの基礎疾患があり、虫歯がないのに左右どちらかの鼻腔から悪臭を伴ったチーズ様の鼻水が出てきて、反対側は全く症状がない場合は、要注意です。早めに耳鼻咽喉(いんこう)科、耳鼻科を受診することが勧められます。

乾酪性上顎洞炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による診断では、真菌性副鼻腔炎の場合と同様に、X線(レントゲン)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。 X線(レントゲン)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞にびまん性陰影が認められます。CT(コンピュータ断層撮影)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞に骨壁の肥厚、石灰化陰影、内側壁の破壊などが認められることもあります。

鑑別を必要とする疾患には、悪性腫瘍、急性副鼻腔炎、歯性上顎洞炎があります。

耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による治療では、上顎洞内を複数回洗浄します。洗浄のために上顎洞内に針を刺したり、細い管を挿入するので、痛みを伴います。真菌に対する抗真菌剤の投与は、一般に行われません。

洗浄で改善しなければ、手術を行います。内視鏡下に行う鼻内副鼻腔手術で、上顎洞と鼻をつなぐ自然孔を広げた上で、上顎洞の真菌の塊を完全に摘出し、粘膜を洗浄します。手術後は、広げた自然孔から上顎洞洗浄を定期的に行います。ほとんどの場合は、手術後2~3カ月で上顎洞の粘膜は正常になります。

まれに悪化し、上顎洞の骨が破壊された場合は、真菌に対する抗真菌剤を全身投与し、鼻の外側から切開して感染した病変を完全に取り除く必要が生じます。目や脳の中に炎症が進んだ場合は、病変を完全に取り除くことが困難であることが多く、手術は不可能となります。

🇱🇾乾酪性副鼻腔炎

副鼻腔に真菌が入り込んで、チーズのような形状をした膿がたまる疾患

乾酪性副鼻腔炎 (かんらくせいふくびくうえん)とは、カビの仲間である真菌が副鼻腔(ふくびくう)に入り込むことが原因で、乾酪、すなわちチーズのような形状をした膿(うみ)がたまる疾患。真菌性副鼻腔炎の一種です。

鼻の穴である鼻腔の周囲には、骨で囲まれた空洞部分である副鼻腔が左右それぞれ4つずつ、合計8つあり、自然孔という小さな穴で鼻腔とつながっています。4つの副鼻腔は、鼻の両横に位置する上顎(じょうがく)洞のほか、鼻の上の額にある前頭(ぜんとう)洞、目と目の間にある篩骨(しこつ)洞、その奥にある蝶形骨(ちょうけいこつ)洞です。

4つの副鼻腔は、強い力が顔面にかかった時に衝撃を和らげたり、声をきれいに響かせたりする働きがあるとされますが、その役割ははっきりとはわかっていません。鼻腔や副鼻腔の中は、粘膜で覆われており、粘膜の表面には線毛と呼ばれる細い毛が生えています。線毛は、外から入ってきたホコリや細菌、ウイルスなどの異物を粘液と一緒に副鼻腔の外へ送り出す働きを持っています。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称で、菌類に含まれており、健康な人の体内に常にいるものや、空気中のあらゆる所に浮いている胞子が体内に入ってくるものなど、さまざまな種類があります。

健康である限り真菌に感染することはありませんが、体の抵抗力が落ちている人や高齢者、抗生物質を飲んでいる人、あるいは免疫の疾患などで副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を飲んでいる人、免疫抑制剤を飲んでいる人など、免疫力が低下している人、糖尿病や悪性腫瘍(しゅよう)などの基礎疾患がある人が、真菌の胞子に接触すると日和見感染し、真菌性副鼻腔炎や、その一つである乾酪性副鼻腔炎を起こすことがあります。

副鼻腔に入り込んだ真菌が増殖し、多くの場合は塊を形成するので、強い炎症が起こります。真菌の中でも、呼吸器を侵すアスペルギルスが最も多い原因となっています。それ以外には、肺や鼻や脳を侵すムコール、口や肺などを侵すカンジダ、口や扁桃腺(へんとうせん)などを侵すアクチノミセスなどが原因になっています。

真菌が入り込む副鼻腔は、上顎洞80パーセント、篩骨洞30パーセント、前頭洞5パーセント、蝶形骨洞数パーセント、それに鼻腔10パーセントの分布率です。大多数は上顎洞であり、それに篩骨洞と鼻腔とに合併して入り込む形式をとります。

好発年齢は40~50歳、男女比は1対1・5見当と見なされます。

症状としては、左右どちらか片側の鼻腔から、非常に粘り気が強くて黄色く、悪臭が漂うチーズ様の鼻水が出るようになります。粘り気が強いため、鼻をかんでもなかなか取り去ることができず、鼻詰まりの原因にもなり、鼻からの呼吸がしにくくなることもあります。

これらの症状のほかにも、鼻血が出たり、頬(ほお)が重たく感じたり、頬の部分に熱感を感じるようになったり、押さえると痛みを感じるようにもなったりします。

また、片頭痛がする、いつも何となく頭が重たく感じる、目の痛みが生じるといったこともあります。時には、炎症を起こしているほうの歯で物をかむと、痛みを感じることもあります。

大半は上顎洞に限られた炎症にとどまることが多いものの、糖尿病が非常に悪化したり、免疫機能が低下したりして全身状態が悪くなると、目や脳の中に炎症が進み、上顎洞の骨を破壊して周囲に広がることがあります。この場合には、高熱、激しい頭痛、頬部腫脹(きょうぶしゅちょう)、眼筋まひ、眼球突出、視力障害などを起こします。

糖尿病や悪性腫瘍などの基礎疾患があり、虫歯がないのに左右どちらかの鼻腔から悪臭を伴ったチーズ様の鼻水が出てきて、反対側は全く症状がない場合は、要注意です。早めに耳鼻咽喉(いんこう)科、耳鼻科を受診することが勧められます。

乾酪性副鼻腔炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による診断では、真菌性副鼻腔炎の場合と同様に、X線(レントゲン)検査とCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。

X線(レントゲン)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞を主にして、びまん性陰影が認められます。CT(コンピュータ断層撮影)検査の画像には、左右どちらか片側の上顎洞に骨壁の肥厚、石灰化陰影、内側壁の破壊などが認められることもあります。

鑑別を必要とする疾患には、悪性腫瘍、急性副鼻腔炎、歯性上顎洞炎があります。

耳鼻咽喉科、耳鼻科の医師による治療では、上顎洞内を主にして複数回洗浄します。洗浄のために上顎洞内に針を刺したり、細い管を挿入するので、痛みを伴います。真菌に対する抗真菌剤の投与は、一般に行われません。

洗浄で改善しなければ、手術を行います。内視鏡下に行う鼻内副鼻腔手術で、上顎洞と鼻をつなぐ自然孔を広げた上で、上顎洞の真菌の塊を完全に摘出し、粘膜を洗浄します。手術後は、広げた自然孔から上顎洞洗浄を定期的に行います。ほとんどの場合は、手術後2~3カ月で上顎洞の粘膜は正常になります。

まれに悪化し、上顎洞の骨が破壊された場合は、真菌に対する抗真菌剤を全身投与し、鼻の外側から切開して感染した病変を完全に取り除く必要が生じます。目や脳の中に炎症が進んだ場合は、病変を完全に取り除くことが困難であることが多く、手術は不可能となります。

🇱🇻横隔膜ヘルニア

横隔膜に穴が開き、腹部の内臓が胸腔内に入り込んだ状態

横隔膜ヘルニアとは、横隔膜に穴が開き、腹部の内臓が胸腔(きょうくう)内に入り込んだ状態。

横隔膜とは、肺の下に位置して、胸部と腹部を区切る膜です。この筋肉層の丈夫なドーム状の膜が上下することによって呼吸ができますが、完全に区切られているわけではなく、大動脈裂孔、大静脈裂孔、食道裂孔という3つの穴が開いていて、そこがヘルニアを起こしやすい部分となっています。

横隔膜ヘルニアには、外傷によるものと非外傷のものがあり、非外傷のものには、さらに先天性と後天性のものがあります。

外傷性の横隔膜ヘルニアでは、胸部や腹部への外傷で横隔膜が破れ、その裂け目から腹部の臓器が胸腔内に流れ込み、生命を脅かす危険も高くなります。事故などで胸に強い打撲を受けるのが原因となることが多いのですが、強いせきなど、ちょっとしたタイミングで横隔膜が破れることもあります。

症状としては、呼吸困難、ショック症状、吐き気、嘔吐(おうと)などがよくみられます。まれに、外傷を受けてから2〜3年後に発症する場合があります。

非外傷性の横隔膜ヘルニアには、ほぼ先天性でしかみられないボックダレック孔ヘルニア、傍胸骨孔ヘルニアの2種と、後からでもなる可能性が高い食道裂孔ヘルニアがあります。

ボックダレック孔ヘルニアは、ほぼ先天性でしか発見されません。しかし時々、生まれた時は何ともなかったのに成長してから強いせきをしたり、胸に打撲を受けたりすると発症することもあります。これを遅発性といいます。

このボックダレック孔ヘルニアは、新生児がすぐに呼吸困難などの症状を呈してしまうと、半数は予後不良を起こすという怖いヘルニアで、新生児2000〜3000人に1人の割合で認められます。遅発性であれば、速やかに手当てを受ければほぼ助かります。

胎児が母胎にいる時、次第に横隔膜が形成されてきて、やがてしっかりと横隔膜が胸部と腹部を区切るのですが、何らかの原因で横隔膜がきっちりと閉じ切らないことがあります。こうなるとヘルニアを起こしてしまい、横隔膜が閉じようとしても脱出した臓器がじゃまをして閉じられなくなってしまうのが、ボックダレック孔ヘルニアの原因です。

最大の症状は、呼吸困難が挙げられます。胎児の場合はへその緒から酸素をもらっているので平気なのですが、出産後は自分で呼吸しなければならないため、生まれてすぐに呼吸困難を起こすことが多くなります。また、腹部にうまく空気が回らないので、へこんでいるのも特徴。脱出した臓器によって肺が圧迫されているため、肺の生育不良や疾患を伴っていることもあります。

傍胸骨孔ヘルニアは、本来しっかりと胸骨にくっついているはずの横隔膜のつながりが弱く、ちょっとした弾みでくっつきが外れて、そこに臓器が侵入してくることによって起こるヘルニアです。自覚症状も少なく、発症者本人も気付かないことがあります。ただし自然に治るようなことはなく、まれに呼吸困難などの深刻な症状に発展することがあります。

食道裂孔ヘルニアは、横隔膜ヘルニアの中で最も多く、横隔膜を貫く食道裂孔の一部分に異常が生じ、胃が胸腔内に入り込むヘルニアです。本来、食道と胃の接合する位置は、横隔膜の下になっています。食道裂孔ヘルニアの場合は、食道と胃の接合部を含めて胃の上部が一緒に胸腔へ脱出する滑脱型と、食道と胃の接合部は横隔膜の下にあって胃の一部だけが脱出する傍食道型、および両者が混じった形で脱出する混合型があります。

大部分は滑脱型であり、あまり大きな症状が出ることは少ないのですが、この状態では胃の中のものが食道へと逆流するのを防ぎようがありません。そのため、食道炎を併発することになります。全体の1割程度と数は少ない傍食道型は、胃の一部が食道のわきを通った状態で横隔膜に挟まれるため出血したり、逆に血が巡らなくなったりするなど、滑脱型より重い症状を起こしやすくなります。混合型は、まれにしかみられません。

先天性のものもありますが、大部分は老化、脊椎(せきつい)変形、肥満、便秘、多産などが、食道裂孔ヘルニアの誘因となります。特に、コルセットをしている変形性脊椎症の高齢者に、よく起こります。いずれも、腹腔内の圧である腹圧が上昇し、横隔膜の筋力が低下するのが原因となっています。どちらかというと女性に多く、特に老化によるものであればさらに女性の割合が増えます。

胸焼け、胸骨下の痛み、みぞおちの痛み、吐き気、食べ物のつかえ、貧血などの症状が、数カ月から数年に渡って、よくなったり悪くなったりする状態が続きます。

これらの症状の多くは、同時に併発しやすい逆流性食道炎や、ヘルニア内に生じるびらん性胃炎、胃潰瘍(かいよう)によるもの。そのほか合併しやすい疾患には、瘢痕(はんこん)性食道狭窄(きょうさく)、出血性貧血などがあります。

食道裂孔ヘルニアがあっても、自分では気付かず、胃の検査で偶然発見されることも少なくありません。

横隔膜ヘルニアの検査と診断と治療

横隔膜ヘルニアでは基本的に内科を受診しますが、外傷性の横隔膜ヘルニアでは外科を受診する必要があります。ただし、病院ごとに異なることがあり、特に複数の診療科目を持っている総合病院では、違いが出ると思われます。なお、ヘルニアによる合併症などを治療するため、複数の科目を受診する必要があるケースもあります。

外傷性の横隔膜ヘルニアは、緊急性が高く、すぐにでも適切な治療と手術が必要とされます。手術によって治療できた後で、リハビリテーションや投薬治療が行われます。

先天性でボックダレック孔ヘルニアを持って生まれてくる場合、大抵は胎児が母胎の中にいるうちに医師がこのヘルニアに気付き、早期に帝王切開で出産することになります。成長すればするほど脱出した臓器が胎児の肺を押しつぶし、危険な状態になっていくからで、出生直後から人工呼吸管理を行った上、できるだけ早期に、手術に耐えられるようになった時点で速やかに、生育時に閉じ切れなかった横隔膜を閉じる手術が行われます。しかし、最高の環境で早期に手術が行われても、生存率は芳しくないのが実情です。

傍胸骨孔ヘルニアは、自然に治るようなことはなく、まれに呼吸困難などの深刻な症状に発展することがあるので、見付けた場合は手術が行われます。手術の成功率は高く、比較的治しやすいヘルニアといえるでしょう。

食道裂孔ヘルニアは、軽ければ特に薬による治療の必要はありません。腹部を圧迫しないように帯、ベルトを緩くし、便秘や肥満を治し、脂肪食を制限すれば十分です。逆流性食道炎があれば、H2受容体拮抗(きっこう)薬やプロトンポンプ阻害薬を服用します。

内科的治療でよくならない食道炎や、炎症の跡が引きつれたようになって食道の内腔が狭まる瘢痕性食道狭窄などは、手術が必要となります。

傍食道型食道裂孔ヘルニアの場合も、形態的変化であるため、原則的に手術を行う必要があります。傍食道型では横隔膜が胃を締め付けてしまうため、締め付けられた胃が出血したり、逆に血の巡りが悪くなったりして、滑脱型より危険度が高く、自然治癒が難しい点や合併症を未然に防ぐなどの理由で、手術で治すケースが多くみられます。

脱出している胃を腹腔内に引き戻し、開大している食道裂孔を縫縮し、逆流防止手術を追加します。手術後の治癒率は、良好です。

🇪🇪横隔膜まひ

横隔膜を支配している神経のまひにより、呼吸困難が発生

横隔膜まひとは、横隔膜神経のまひにより横隔膜機能が弱まったり、消えた状態。横隔膜の疾患のうち、最も多くみられる疾患です。

横隔膜は、肺の下に位置していて胸腔(きょうくう)と腹腔を区切る膜で、上のほうは胸膜、下のほうは腹膜で覆われています。この筋肉層の丈夫なドーム状の膜である横隔膜の上下運動と、肋間(ろっかん)の呼吸筋の上下運動が協調して行われることによって、呼吸ができます。

左右一対の横隔膜神経は、頸部(けいぶ)、胸腔内と長い道筋を経て、横隔膜へと達しています。その経路が心臓手術などで切断されたり、多発神経炎、頸髄(けいずい)疾患、甲状腺(せん)や肺の腫瘍(しゅよう)による圧迫や浸潤によって遮断されたりすることで、横隔膜神経が圧迫を受け、まひします。

まひが起こるのは大抵、ドーム状になっている横隔膜が2カ所に隆起した部分を作っているうちの、どちらか1カ所です。まひの起こった横隔膜は、動かなくなり、緊張度を失って緩みます。この片側性の横隔膜まひがほとんどで、肺がんなどの腫瘍による横隔膜神経への浸潤が原因です。まれに、頸髄疾患によって両側性の横隔膜まひを起こすこともあります。

通常みられる片側だけのまひでは、呼吸困難も軽くてすみます。しかし、まひが左側の横隔膜の場合は、胃がねじれるため、消化不良が起こります。

両側まひでは、肺の換気容積が少なくなって著しい呼吸困難が発生します。特に、呼吸困難の症状は仰向けで強くなります。また、正常では吸気時に腹部は膨らむのと反対に、吸気時に腹部が陥没する奇異性呼吸がみられます。

横隔膜まひの検査と診断と治療

片側性の横隔膜まひは症状が軽いので、自分では気付きません。仰向けで強くなる呼吸困難を感じたら、両側性の横隔膜まひの可能性があるので、内科の専門医を受診します。

医師は胸部X線検査を行い、まひ側の横隔膜が持ち上がり、呼吸を行ってもほとんど動かないことによって診断します。

横隔膜まひは一時的なものと、永続的なものがあり、多発神経炎、頸髄疾患、肺がんなどの原因に応じて適切な治療が行われます。

両側性の横隔膜まひでは、人工呼吸が必要になります。近年では、鼻マスクによる非侵襲的陽圧呼吸療法も行われています。この呼吸療法がが気管内挿管に比べて優れているのは、話せること、飲み下しができること、 そして気管内挿管に伴うすべての合併症を回避できることです。

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