2022/08/01

🇭🇺乾皮症

全身の皮膚が乾燥してカサカサし、細かくはがれ落ちてくる疾患

乾皮(かんぴ)症とは、全身の皮膚が乾燥してカサカサして、表面が細かくはがれ落ちてくる疾患。

冬の寒い時期にできることが多く、中高年者に多くみられます。女性のほうが男性よりやや早い40〜50歳代から起こってきますが、強く出るのは60歳以降の男性です。

初期の症状としては、手足、特に下肢の皮膚がカサカサして脂気がなくなり、表面にウロコ状の鱗屑(りんせつ)が付着し、はがれ落ちてきます。かゆみもわずかにあるため、何となくかかずにはいられなくなり、そのために症状が悪化するという状態になり、二次的に湿疹(しっしん)の症状がみられることも多くなります。

進行すると、 亀(かめ)の甲羅のように皮膚がひび割れて、赤みが生じ、かゆみはかなり強くなります。さらに進行すると、乾燥性湿疹になり、夜中に目覚めるほどのかゆみが出ます。

種々の環境因子が、乾皮症を悪化させます。第一の因子が、日本の冬の低温、低湿という気象条件。そもそも、高齢者の皮膚は皮脂腺(せん)と汗腺の働きの低下のために、皮膚の表面の脂肪分が少なくなり、水分を保つことも困難になって乾燥を防止できず、カサカサしています。これが冬にはさらにひどくなるわけで、皮膚が非常に敏感になり、非常に弱い刺激でもかゆみの原因となってしまうのです。

乾皮症は、大気が乾燥する秋から冬に始まり、真冬になると症状はひどく、多くは春先まで続きます。しかし、高温、高湿で汗をかきやすい夏は、症状が軽くなり、自然に治ったりもします。

第二の悪化因子が、入浴です。高齢者は一般的に入浴が好きで、1日2回入ったり、長湯をする人が多いようです。入浴そのものはかまわないのですが、脂肪分の少ない皮膚は入浴により、さらに皮膚の表面の脂肪分が流れ落ちてしまうのです。

第三の悪化因子は、エアコンや電気毛布、電気シーツ、ホットカーペット。これらの電熱のために皮膚の水分が蒸発し、皮膚の乾燥化が進み、加温のために皮膚の表面の血行が促進されて、かゆみが増加します。

第四の因子が、下着です。高齢者は保温のためにラクダの下着を使用している人が多いようですが、直接、下着の繊維が皮膚に触ると、その刺激でかゆみを感じることがあります。

その他の悪化因子として、精神的な不安、イライラもかゆみに影響します。

乾皮症の検査と診断と治療

かゆみの原因が皮膚のカサカサにあるため、皮膚の表面に脂肪と水分を補って、人工の保護膜を作る必要がありますので、市販の保湿剤を使います。

保湿剤として、昔はワセリンとか硼酸(ほうさん)亜鉛華軟こうなどというベタベタした軟こうを塗ったのですが、最近は尿素軟こうを使うことが多くなっています。尿素は水分と結合する力が非常に強いので、尿素を含有した軟こうを皮膚の表面に塗っておけば、空気中の水分を吸収して皮膚の表面に薄い膜を作り、皮膚のカサカサを緩和してくれます。湯上がり、まだ肌に水気が残っているうちに塗ることが、効果的です。一日に、何回塗ってもかまいません。

それでも治まらずに、かゆみや赤みがある時は、皮膚科の専門医を受診します。医師の治療では、外用剤として保湿剤を用い、かゆみの強い時に抗ヒスタミン剤の内服を併用したり、湿疹の炎症症状の強い時に副腎(ふくじん)皮質ホルモン含有軟こうを用います。ホルモン含有軟こうの長期使用は避けるべきで、強い炎症症状が治まったら、ホルモンを含まない外用剤に変えます。

次のような工夫で、皮膚の乾燥はかなり予防することができますので、スキンケアを習慣にします。

毎日入浴する場合は、よほど脂ぎった人でもない限り、せっけんでゴシゴシ洗わないほうが、皮膚にとっては安全です。せっけんは洗浄力の強いものを避け、保湿剤入りのものを使うのが、お勧めです。保湿剤入りの入浴剤もあります。ナイロンタオル、ボディソープを使用すると、皮脂が取れ過ぎて悪化することがあるので、お勧めできません。

エアコンや電気毛布、電気シーツ、ホットカーペットなどの電気器具は、室内を乾燥させる元凶です。まず使い過ぎをセーブすることですが、加湿器、ぬれタオル、湯タンポ、観葉植物、水槽などで加湿の工夫をします。ただし、加湿器はカビが発生しやすいので手入れはまめに。

ラクダの下着を使用している人は、繊維の刺激でかゆみを感じることがありますので、肌に優しい木綿の下着を下につけることが大切です。ぴったりと長めの下着で、特にひざから下を覆えば乾燥を防ぐことができます。

できるだけ皮膚をかかないように気を付け、つめは短く切ります。精神的な不安、イライラもかゆみに影響しますので、安らかな気持ちで生活を送ることも必要です。規則正しい生活を心掛け、十分な睡眠を確保し、バランスの良い食事を取ります。刺激の強い食品、辛い食品はかゆみが増すので、避けるようにします。

🇧🇭カンピロバクター食中毒

飲用水や鶏肉などに含まれるカンピロバクター菌による食中毒

カンピロバクター食中毒とは、主にカンピロバクター・ジェジュニ、まれにカンピロバクター・コリという細菌によって起こる食中毒。近年、多く起こる食中毒として注目されています。

カンピロバクター菌は昔から、食中毒の原因菌として知られていましたが、便からの適切な培養法がなかったために、発生状況がよくわかりませんでした。近年、比較的簡単な方法で検出できるようになってみると、食あたりと思われる散発性腸炎の中では最も多いことがわかってきました。

カンピロバクター食中毒の発生は、その他の細菌による食中毒がピークを示す7〜9月よりやや早い、5〜7月にピークがみられ、冬期にも発生が認められています。特に5歳未満の小児に発症の頻度が高く、年長児にも発症頻度の第2のピークがあります。

原因食としては、最も多い鶏肉を始めとして、豚肉、牛肉、馬肉などが知られています。とりわけ、生あるいは加熱があまりなされていないユッケ、鳥わさ、レバ刺しなどは、食中毒を起こす可能性が高いことで知られています。鶏肉の場合、加熱不十分なバーベキュー、鶏鍋(なべ)、焼き鳥などが原因となることもあります。

井戸水や湧水(ゆうすい)、簡易水道水など消毒不十分な飲用水が原因となって、集団食中毒を起こすこともあります。犬、猫などのペットの腸管内にもカンピロバクター菌が存在するため、小児ではペットとの接触によって直接感染することもあります。

1〜7日、平均2〜3日程度の比較的長い潜伏期間を経て、一般の感染型食中毒と同じように、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、発熱などの症状が現れます。下痢は水様便で、赤痢を思わせるような粘血便をみることも少なくありません。このほか、頭痛、悪寒、倦怠(けんたい)感、筋肉痛などが現れることもあり、初期症状は風邪と間違われることもあります。

食中毒症状は通常、1週間以内に治まります。時には症状が長引くこともあり、まれに虫垂炎や腹膜炎などの下痢症以外の症状がみられることもあります。また、治療をしない場合には、腸管内に菌が生き残り保菌者となることがあるので、注意が必要です。

下痢、嘔吐などの回数が多くなると、特に小児や高齢者では、脱水症状が強くなることがしばしばあります。脱水症状とは、体内の水分が不足するために全身のバランスが崩れ、心臓などの循環器、腎臓(じんぞう)、肝臓の働きが悪くなることで、ひどくなったまま放置すればショック状態となり、死に至ることもあります。

カンピロバクター食中毒の検査と診断と治療

食中毒によって乳幼児や高齢者の脱水症状が強くなった場合には、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診します。

医師は急性の中毒症状から感染を疑いますが、カンピロバクター食中毒と確定するには、実際に糞便(ふんべん)などから原因となっている菌を分離することが必要です。

感染初期や軽症の場合は、ブドウ糖液やリンゲル液などの電解質液の点滴、吐き気や嘔吐を止める鎮吐剤の投与、あるいは整腸剤の投与による対症療法を行います。多くの場合は点滴などで自然軽快しますが、重症化した場合は、エリスロマイシン、ホスホマイシンなどのマクロライド系抗菌剤の投与による治療を行います。

カンピロバクター食中毒を予防するためには、食材の中で最も高率にカンピロバクター菌が検出される鶏肉を、生あるいは加熱不十分で食べることは控えるべきです。熱や乾燥に弱いので、まな板、包丁、ふきんなど調理器具は使用後によく洗浄し、熱湯消毒して乾燥させます。

また、食肉からサラダなどへの二次汚染を防ぐために、生肉を扱う調理器具と調理後の料理を扱う器具は区別し、生肉を扱った後は十分に手指を洗浄します。菌は低温に強くて4℃でも長期間生存するので、食品の長期間の保存はできるだけ避けます。

野生動物の糞便などで汚染される可能性のある井戸水や湧水、簡易水道水など消毒不十分な飲用水を飲まない、小児では犬や猫などのペットの糞便に触らないなどの注意も必要です。

🇧🇧眼部帯状疱疹

目の部分に起こった帯状疱疹で、まぶたのはれ、目の痛み、充血が出現

眼部帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは、目の部分にできる帯状疱疹。

ヘルペスウイルス属の1つである水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによる感染症で、左右いずれかの上まぶた、または下まぶたに発疹(ほっしん)と浮腫(ふしゅ)が生じ、痛みを伴います。

水痘・帯状疱疹ウイルスに乳幼児期に初感染すると、水ぼうそう(水痘)になります。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。水膨れは胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。水膨れの数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

乳幼児期に一度かかると免疫ができるため、この水ぼうそうに再びかかることはほとんどありません。しかし、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後も体のいろいろな神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかの切っ掛けにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水ぼうそうのように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。体のどこにでも帯状疱疹の症状は現れますが、胸から背中にかけてが一番多く、顔や手足、腹や尻(しり)の下などに現れることもあり、目の部分に起こった帯状疱疹が眼部帯状疱疹に相当します。

眼部帯状疱疹を発症すると、まず、左右いずれかの上まぶたから前額部にかけて痛み出し、次いで皮膚には赤い発疹ができ、小さな水膨れとなります。上まぶたから前額部にかけての浮腫も起こります。発疹は頬(ほお)、鼻にまで広がることもあります。水膨れにはやがてうみがたまり、その後に乾燥し、かさぶたとなります。普通、2週間以内に治ります。

下まぶたが侵される場合もありますが、この場合、上まぶたは侵されません。帯状疱疹は通常、1本の神経の分布に沿って発症し、三叉(さんさ)神経第1枝(眼神経)が通っている上まぶたと、三叉神経第2枝(上顎〔じょうがく〕神経)が通っている下まぶたとでは、分布している神経が異なるためです。

眼部帯状疱疹は、まぶたから前額部にかけての皮膚の痛みやかゆみにとどまらず、水痘・帯状疱疹ウイルスが三叉神経第1枝(眼神経)を伝わって目に感染すると、黒目の表面を覆う透明な薄い膜である角膜に炎症が起こる角膜炎などを引き起こすこともあり、目の痛み、充血、光への過敏などの症状が現れます。

放置すると、角膜の濁りを残したり、緑内障を生じることもあります。進行すると角膜潰瘍(かいよう)、さらに進行すると角膜に穴が開いて最悪の場合、失明の恐れもあります。

片側のまぶたに痛みや水膨れができた時には、早期に眼科、ないし皮膚科、皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。特に目に異常がみられた時には、速やかに受診することが必要となります。皮膚は清潔にし、水膨れはつぶさないことが肝心です。

眼部帯状疱疹の検査と診断と治療

眼科、皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、血液検査で水痘・帯状疱疹ウイルスに対する抗体価の上昇を調べます。水膨れの内容物から水痘・帯状疱疹ウイルスを検出すれば、最も確実です。

眼科、皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、アシクロビル製剤、バラシクロビル製剤などの抗ウイルス薬の点滴と内服を行います。抗ウイルス薬で治療すると、痛みを伴う発疹の期間を短縮でき、目の合併症のリスクが軽減されます。

これに加え、神経周辺の炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の内服などを行います。皮膚には、抗ウイルス軟こうなどを塗ります。

目の合併症については、炎症を鎮めるための副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の点眼や内服、あるいは点滴を行います。アトロピンなどの点眼薬を瞳孔(どうこう)を広げたままにするために使用すると、重い緑内障が予防され、目の痛みも軽減します。

後遺症として、水膨れが治った後も長期間にわたって、痛みが続く帯状疱疹後神経痛が起こることがあります。 症状が重ければ、ペインクリニックで専門的治療が必要になります。

なお、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスは体内の神経節に潜み、体力や抵抗力が低下した時に増殖し、発症する特徴があるので、再発を防ぐ上でも疲労、ストレス、睡眠不足を避け、免疫力を維持しておくことも大切です。

🇵🇾陥没乳頭

突出しているはずの乳頭が乳房の内部に埋もれた状態

陥没乳頭とは、乳房の先にあって通常は突出しているはずの乳頭が、乳房の内側に埋没した状態を指す症状。陥没乳首とも呼ばれます。

男女を問わず生じますが、主に女性において、外見のコンプレックスや授乳、衛生面などでのデリケートな問題が起こります。主に若い女性に多く、成人女性の1割以上が、陥没乳頭の症状に悩んでいるともいわれています。

陥没乳頭には、両側の乳房先の乳頭が埋没するケース、片側だけの乳頭が埋没するケースがあり、軽症、中等症、重症の別があります。

軽症では、乳頭を容易に指でつまみ出すことができるものの、しばらくすると埋もれてしまいます。中等症では、乳頭を何とか指でつまみ出すことができるものの、指を離すとすぐに埋もれてしまいます。重症では、乳頭を指でつまみ出すこともできず、常に乳輪面よりへこんでいます。

先天性と後天性の別もあります。どちらかというと、先天性の生まれ付きの体質によるほうが、多いとされています。

先天性陥没乳頭は、乳頭下にあって乳頭を支える乳管などの線維組織が発達しなかったり、繊維組織が癒着したりしたために起こります。先天性陥没乳頭が起こる根本的な原因や要因は、明確になっていません。

一説には、10歳代の成長期に、部活などで激しい運動をしたり、ストレスを感じたり、たばこを吸ったりした経験が原因で、成長ホルモンのバランスが崩れ、乳腺(にゅうせん)や乳管などが完全に発育できず、未発育にとどまってしまうために、陥没乳頭になることがあるともいわれています。

一方、後天性陥没乳頭のほとんどは、乳腺炎や乳管炎、乳がんなどが原因となって、起こります。先天性陥没乳頭は疾患を患っていませんが、後天性陥没乳頭はほかの疾患を発症している可能性もあり、やや危険です。生まれたころはごく普通な状態でも、ある日気付くと陥没乳頭になっていた場合、疾患の合図かもしれません。

原因となる疾患の一つである乳管炎では、何らかの炎症が乳管に及ぶと、乳管が委縮、屈曲、癒着および閉塞(へいそく)などを来します。つまり、炎症が及んだ乳管は伸展性が乏しく、正常な乳管の伸展性も妨げてしまい、乳頭が突出できなくなります。

陥没乳頭を起こしていると、子供ができた時の授乳の際に手間がかかります。授乳のためには、まず乳頭を突出させなくてはいけません。軽症、あるいは中等症の場合は、指でつまんで乳頭を突出させることができるため、吸引反射を有する乳児は乳頭に吸い付き、自らも乳頭を突出させるようにして母乳(乳汁)を飲みます。重症の場合は、乳頭が突出しないため、乳児は母乳(乳汁)を飲むことをあきらめてしまいます。

衛生面での問題もあり、突出しているはずの乳頭が埋没している状態のため、清潔な乳頭を維持しにくくなります。そのために、細菌が感染しやすく、いくつかの疾患を発症することがあります。

その一つが、乳輪下膿瘍(のうよう)。乳頭の乳管開口部から化膿(かのう)菌が侵入することにより、乳輪の下に膿(うみ)がたまり、乳輪周囲の皮膚にまで広がる疾患です。乳輪の下に痛みのある硬いしこりができては破れて、膿が出ることを何回も繰り返します。

ほかにも、急性うっ滞性乳腺炎や慢性乳腺炎などを発症することもあります。急性うっ滞性乳腺炎は、授乳も関係しています。慢性乳腺炎は、妊娠や授乳に関係なく起こります。急性うっ滞性乳腺炎が進行すると、急性化膿性乳腺炎を起こし、痛み、熱感、はれなどの症状が発生します。

さらには、乳がんを発症するリスクもありますし、後天性陥没乳頭が乳がんを伴っていることもあります。がん細胞が乳頭付近の乳管に浸潤すると、乳管を短縮させてしまい、乳頭が陥没します。これは乳がんの合図ですから、突然、陥没乳頭になり、痛みや体調不良も伴うようなら、その可能性も視野に入れなければなりません。

このように、陥没乳頭が原因で疾患を発症することがあります。疾患を発症してからでは遅いので、まずは陥没乳頭を改善していきましょう。

マッサージと矯正器具による陥没乳頭のセルフケア

軽症、あるいは中等症の陥没乳頭なら、自宅での矯正で改善できることがあり、刺激を与えることで乳頭が突出し、授乳も可能となります。

日ごろからマッサージで乳頭に刺激を与えて、突出させ、乳児に実際に乳頭を吸わせて授乳を繰り返すと、突出状態を保つようになることもあります。

マッサージ法は多々ありますが、一例を紹介します。1)親指と人差し指を乳輪の外側に置く、2)乳頭を優しく押し出す、3)乳輪を優しく広げるように親指と人差し指を水平に伸ばす、4)親指と人差し指を乳輪の上下に置く、5)乳頭を優しく押し出す、6)乳輪を優しく広げるように親指と人差し指を上下に伸ばす。

これが、基本的なマッサージ法です。マッサージは、定期的に続けることで効果が出ますから、根気よく続けることが大切です。タイミングとしては、入浴時がお勧めで、体がポカポカに温まると血行が促されるので効果的です。1日1回でも、たった2~3分でも構いません。

また、マッサージ以外にも、販売されているプチフィット、ピペトップといった吸引器などの矯正器具を利用します。吸引器の場合は、胸に吸引カップを装着して真空状態にし、吸引力によって乳頭を突出させます。毎日続けることにより、少しずつですが症状を改善していきます。

ただし、妊娠中の陥没乳頭のマッサージは、早産を招くという説もあります。慢性的な陥没乳頭の女性が、無理やりに乳頭を突出させることで、皮膚が切れて出血し、痛み、さらに感染して炎症を起こす危険もありますので、細心の注意が必要になります。

症状に合わせての治療を望む場合は、婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科などを受診することが勧められます。女性は出産や授乳などの将来性があるため、ほとんどの医療機関で保険が適応されますが、美容整形外科は適応外になることもあります。男性の場合は、適応外になることも少なくありません。

陥没乳頭の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科の医師による診断では、陥没乳頭は見た目にも明らかになることが多いので、まず視診、触診で判断します。

続いて、治療を必要とする乳腺炎や乳管炎などの有無、腫瘍の関連の有無を調べるために、マンモグラフィー(乳房X線撮影)、超音波(エコー)、MRI(核磁気共鳴画像)検査、CT(コンピュータ断層撮影法)検査、血液検査、乳頭分泌液の細胞検査、細菌検査などを行うこともあります。

婦人科、産婦人科、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科の医師による治療では、その症状や状態によって異なる処置で改善を図ります。

軽症、あるいは中等症の場合は、乳頭吸引器などの器具を活用したり、乳房マッサージを習慣にしたり、食生活を見直したりすることで、改善することも可能です。乳頭吸引器は、専用のローションを乳頭とその周辺に塗り、吸引カップで毎日乳頭を吸引していくものです。就寝中に装着、あるいは24時間装着し、持続的な吸引の力により、乳頭を少しずつ出っ張らせていきます。

ほかの疾患により後天性陥没乳頭を発症している場合、原因となっている疾患の治療を行います。

乳腺炎の治療としては、抗生剤(抗生物質)を内服したり、状況により鎮痛薬を内服します。

乳輪下膿瘍の治療としては、炎症性の膿瘍(しゅよう)と拡張した乳管の切除と、炎症の元になっている陥没乳頭が外に出る形成手術との両方を行わなければ、必ずといっていいほど再発します。まず抗生剤などで炎症を鎮静させて、それから根治手術を行います。

急性うっ滞性乳腺炎の治療としては、乳汁のうっ滞を取り除くために、乳房を温めて血液の流れをよくし、乳頭と乳輪をよくマッサージして授乳を続ければ、症状はすぐにとれてきます。また、乳頭を乳児がくわえやすいような形にしておくなどの工夫も必要です。

急性化膿性乳腺炎の治療としては、初期には乳房を冷湿布して、乳汁は搾乳器で搾り出し、抗生剤の注射か内服と、鎮痛薬、消炎薬の内服をします。化膿が進み膿瘍ができたら、注射針を刺して膿を吸引したり、局所麻酔をかけて皮膚を切開して膿を出さなければなりません。これらの治療が功を奏すると、急速に症状は改善します。膿瘍ができた場合、抗プロラクチン薬で乳汁分泌を抑制します。

重症の場合など症状によっては、乳輪部分を切開し、裏側から乳頭を押し上げて突出させ、固定する形成手術を行います。手術法にはいくつものパターンがあり、大きく分けると、乳管を温存する方法と乳管を切断する方法の2種類があります。乳管を切断すると乳頭の陥没は改善されますが、母乳(乳汁)の分泌が不能になり、将来の授乳などに影響を来します。

🇸🇧顔面けいれん

自分の意思とは関係なく、まぶたや口角などの顔面の筋肉がけいれんする疾患

顔面けいれんとは、まぶたや口角などの顔面の筋肉がピクピクとけいれんする疾患。

ほとんどの場合は片側の顔面だけにみられ、まれに両側の顔面にみられることがあります。どの年齢層でも発症しますが、比較的女性に多く、40歳代から50歳代に多く発症します。

人前での緊張、ストレス、疲れ、強い閉眼などの顔面筋(表情筋)の運動などで誘発されやすくなります。

典型的な顔面けいれんは、自分の意思とは関係なく、目の周囲がピクピクとけいれんする症状から始まります。徐々に、けいれんは口元にまで広がり、さらに進行すると、ほお、額、耳、あご、首筋にまで広がることがあります。まれに、口元がけいれんする症状から始まり、徐々に、顔全体にけいれんが広がることもあります。

初めは人前で緊張した時など時々だけけいれんが起こり、あまり気にならない程度でも、けいれんしている時間が長くなっていき、持続的にけいれんが起こることもあります。

重症になると、目の周囲や口元のけいれんが同時に起こり、一日中、時には寝ていても起こるようになることもあります。長期間、けいれんが続いていると、けいれんのない時には顔面まひがみられ、顔がゆがむこともあります。

例えば、営業職や会社の受付をしている人などにとっては、顔面がピクピクとけいれんしていると、まともに相手と目を合わせて話すことができず、仕事に支障を来すことになります。

顔面けいれんが起こる主な原因は、顔面にある筋肉を動かす運動神経である顔面神経が、脳幹という脳の中心の部分から出てきている部分で、頭蓋(ずがい)内の動脈または静脈が接触して顔面神経を圧迫していることです。血管の拍動とともに顔面神経が刺激されることで、顔面の筋肉が不随意に収縮して、顔面のけいれんを起こしているのです。

そのため、高血圧や糖尿病、喫煙などで動脈硬化になりやすい人は、顔面けいれんが起こりやすくなります。

そのほかにも、顔面神経の周囲に腫瘍(しゅよう)があり、腫瘍が顔面神経を圧迫することにより刺激が伝わり、顔面のけいれんを起こしていることもあります。また、明らかな原因が見付からない場合に、顔面けいれんが起こることもあり得ます。

顔面けいれんは明らかな症状でわかりやすいので、顔が無意識に収縮するような症状がある場合は、神経内科、脳神経外科を受診することが勧められます。治療可能だと知らないで、誰にも相談できずに一人で悩み、様子をみてしまっているケースも見受けられます。

顔面けいれんの検査と診断と治療

神経内科、脳神経外科の医師による診断では、顔面けいれん症状と特徴的なけいれんを視診することによって、ほとんどの場合は容易に確定できます。

けいれんの原因を突き止めるためにMRI(磁気共鳴画像)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査などの画像診断や、神経伝導検査、筋電図などの検査を行うこともあります。

脳の血管が脳幹の部分で顔面神経を圧迫していることを最もはっきり確認できるのは、血管造影と呼ばれる検査で、血管にカテーテルを入れて造影剤を流し、血管の走行を調べます。 しかし、血管造影は脳梗塞(こうそく)などの危険を伴うことがあるので、MRI検査と同時に、体に負担をかけずに血管の走行がわかるMRA(磁気共鳴血管撮影)検査という画像診断で診断することもあります。

神経内科、脳神経外科の医師による治療では、抗コリン剤、抗てんかん剤(抗けいれん剤)などを内服で使用します。効果は比較的弱く、短期間で再発することがあります。

ボツリヌス毒素(ボトックス)をけいれんする筋肉に局所注射し、筋肉を弱めるボツリヌス療法を行うこともあります。ボツリヌス毒素は細菌兵器として使われることが危ぶまれているボツリヌス菌からの毒素と同じものですが、治療に使われる量は致死量よりはるかに少量なので、命にかかわることはありません。ボツリヌス療法は外来でできますが、効果は約3カ月なので繰り返し注射する必要があります。

脳の血管が脳幹の部分で顔面神経を圧迫している場合には、手術が根本的な治療法になります。圧迫している血管と、圧迫を受けている顔面神経の間に、ウレタン樹脂などのクッションを設けて、再び血管が顔面神経を圧迫しないように固定します。

🇵🇬顔面神経痛(三叉神経痛)

顔面の片側に発作的な激しい痛みが起こる神経痛

顔面神経痛とは、顔面の片側に発作的な激しい痛みが起こる神経痛。正式な呼称ではなく、正しくは三叉(さんさ)神経痛と呼ばれます。

顔面神経は顔面にある筋肉を動かす運動神経のことであり、三叉神経は痛さ熱さなどを感じる知覚神経のことであり、厳密には、顔面神経痛という疾患は存在しないのが実態です。

一般的にいう顔面神経痛、すなわち三叉神経痛は、中年以後から認められ始め、女性にやや多い傾向があります。

脳から出て顔の左右に広がるのが知覚神経である三叉神経で、顔面の感覚を脳に伝えるほか、物をかむ際に使う筋肉をコントロールしています。名前のとおり、三本の枝に分かれていて、第一枝の眼神経は前頭部から目、第二枝の上顎(じょうがく)神経は頬(ほお)から上顎(あご)、第三枝の下顎(かがく)神経は下顎にかけて分布しています。

この分布に沿って、ズキンとする激しい痛みが、あくび、会話、歯磨き、咀嚼(そしゃく)、洗面などの刺激で起こり、時には冷たい風に当たるだけで起こります。

普通は頬と顎に痛みがよく起こり、顔の片側全部に痛みが渡るケースもあります。一回の痛みは数秒から数分と瞬間的ながら、痛みの発作が短い時は数時間、長い場合には数週から数カ月も繰り返し起こるのが特徴。痛みの発作のない間欠期には、神経症状は全くみられず無症状です。

原因がよくわからず、特発性三叉神経痛といわれるものが大部分ですが、近年の研究においては、動脈硬化などで蛇行した血管が三叉神経を圧迫して、痛みを誘発していると考えられています。

また、症候性三叉神経痛といわれるものもあり、こちらは頭部の腫瘍(しゅよう)や動脈瘤(りゅう)、三叉神経の近くにある歯や耳、目、鼻などの疾患、多発性硬化症や帯状疱疹(たいじょうほうしん)などによって引き起こされますが、強い発作性の痛みはないのが特徴です。

一般的にいう顔面神経痛、すなわち三叉神経痛による悩み、不安を感じている場合、神経内科、脳神経外科、麻酔科(ペインクリニック)を受診することが勧められます。

顔面神経痛(三叉神経痛)の検査と診断と治療

神経内科、脳神経外科、麻酔科(ペインクリニック)の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査を行って三叉神経のそばに血管を確認できれば、通常、その血管が神経を圧迫していると判断します。

神経内科、脳神経外科、麻酔科(ペインクリニック)の医師による治療では、薬物療法、神経ブロック、手術、ガンマナイフなどを行います。

薬物療法においては、痛みの発作を予防する働きを持っている抗てんかん剤のテグレトールと呼ばれる薬の内服が有効です。痛みがきれいになくなるという大変有効な薬ですが、注意が必要な面もあります。量が多いとふらつきなどの副作用が出たり、まれに白血球が減る副作用も確認されています。

薬物療法を行っても、期待される効果がみられない場合、神経ブロックを行うこともあります。痛みのある部分に麻酔薬を注射したり、電気凝固して痛みを緩和する方法ですが、原因を治しているわけではないので、根本治療ではありません。仮に症状が軽くなっても、完全に治るわけではないのです。

根本から治すには、手術療法を行います。手術では、三叉神経を直接圧迫している血管を見付け出し、三叉神経と血管の間に筋肉片あるいは綿などを入れて、神経に対する圧迫を除きます。

ガンマナイフは、三叉神経根の部分に放射線を集中照射することで、痛みを緩和するものです。しかし、2013年時点で、保険適応外治療となるので、実費の負担が必要です。

日常生活では、体の過労と精神的ストレスを避けて、規則正しい生活をすることが大切。痛みが始まったら、部屋をやや暗くして刺激を避けるようにします。

🇧🇸顔面神経まひ(ベルまひ)

顔の筋肉の運動がまひする疾患

顔面神経まひとは、顔面神経がはれて圧迫され、顔の筋肉の運動がまひする疾患。顔面神経は、運動神経以外にも舌の前3分の2の味覚を伝達したり、音量を調節する小さな筋であるアブミ骨筋を支配しています。

男女差、年齢層に関係なく、急性あるいは亜急性に発症します。原因疾患が明らかな症候性顔面神経まひと、明らかな原因が不明な特発性顔面神経(ベルまひ)とに分けられます。

症候性顔面神経まひの原因疾患として多いのは、単純性疱疹(ほうしん)、帯状疱疹などのヘルペスウイルス感染症で、一般的には口唇ヘルペスを患ったことがある人が突然の顔面神経まひで発症します。ほかには、腫瘍(しゅよう)や代謝疾患が原因となる場合もあります。

特発性顔面神経まひの原因はいまだ不明ですが、考えられる可能性としてはウイルス感染、アレルギー、局所浮腫、寒冷刺激などがあります。いずれにしても、顔面神経は顔面神経管と呼ばれる骨で取り囲まれた狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの原因で顔面神経がはれると、顔面神経が圧迫されてまひが現れると見なされています。

症状は普通、片側だけに起こります。まれには、両側に起こります。侵された側の表情筋が緩むために、顔がゆがむ、額にしわが寄らず仮面様の顔付きになる、口の一方が曲がって食べ物やよだれが出てしまう、目が完全に閉じられない、などの症状が現れます。

そのほか、まひ側の舌の前方3分の2の味覚障害を伴うこともあり、物を食べた時、金属を口に入れたような感じがしたりします。まひ側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じることもあります。目が閉じにくいために目を涙で潤すことができず、夜間などに角膜が乾燥しやすくなるため、角膜に潰瘍(かいよう)ができることもあります。

帯状疱疹(ほうしん)が耳たぶや内耳にできた場合は、激しいめまい、耳鳴り、歩行障害、味覚の消失とともに、顔面のまひが起こります。

顔面神経まひの検査と診断と治療

基本的には外来で治療可能な場合が多いのですが、検査が必要な場合、診断がはっきりしない場合、顔面神経まひの程度が強い場合などでは、入院が必要です。

顔面神経まひの診断は、典型的な顔の表情から比較的容易です。しかし、原因となる疾患がある場合、両側に同時に発症したり何度も繰り返す場合などは、MRIなどの画像診断が必要です。サルコイドーシス、ライム病などの珍しい疾患で起こった可能性が疑われる場合には、血液検査などの検査が必要になります。障害の程度や回復の正確な評価のために、筋電図や誘発電位検査が行われることもあります。

普通の顔面まひは、数週間で自然に回復することが多いものです。しかし、急性期にはステロイド剤、ビタミンB複合剤などを処方して治療を行います。マッサージや電気治療も行われます。また、目が閉じにくい場合、人工涙液を点眼して角膜を保護します。

帯状疱疹の治療では、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されます。抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止して治癒を早めます。神経がまだ破壊されていない初期の段階で使用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防が期待できます。また、痛みがひどい場合は、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。神経ブロックとは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法です。この治療法によって血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができるのです。

帯状疱疹が原因で起こった場合には、比較的、経過が長く、顔面まひがある程度残ることが多いようです。また、再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋を支配してしまった場合には、口を閉じると目が一緒に閉じたり、熱い物や冷たい物を食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。

顔面神経まひでは、リハビリテーション療法も重要です。家庭でできるマッサージとしては、朝夕30分間ほど、手で額や目の周りの筋肉をゆっくりと回すようにしてマッサージしたり、まひした口角を引っ張り上げるようにしたり。顔面の筋肉を働かせるために百面相の練習をしたりすると、効果があります。

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