2022/08/01

🇻🇳乾癬

慢性の経過をとり、なかなか治りにくい炎症性角化症

乾癬(かんせん)とは、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)がついて、その一部がポロポロとはがれ落ちる皮膚疾患。炎症性角化症の代表で、慢性の経過をとり、なかなか治りにくい疾患ですが、周りの人に移ることはありません。

日本では3〜16万人の発症者がいると推定されていますが、近年は増加傾向にあります。男女比は2対1で男性に多く、主に30〜40歳代に発症します。女性では、10歳代と50歳代の発症が多いともいわれています。

乾癬の起こる原因は、いまだはっきりとしていません。一説によると、一種の免疫反応の異常により生じるとされます。すなわち、健常の皮膚では、表皮細胞と白血球(リンパ球など)がサイトカインなどの伝達物質を使って、うまく連絡を取り合ってお互いを制御していますが、このバランスが崩れると表皮細胞が一方的に増殖して、早く脱落していくことが起こります。健常の皮膚では普通、表皮細胞はその一番外側に角質層という死んだ細胞の層を作り、垢(あか)になって落ちていくことを、一定の周期の45日で繰り返しています。乾癬では、この周期が4~5日と極度に短縮しているため、カサカサした薄皮である鱗屑がどんどんできては、ポロポロとはがれていきます。

この免疫反応の異常は、遺伝的になりやすい体質がある人に、扁桃腺(へんとうせん)炎などの感染症、薬物や外傷などの外的因子、糖尿病や高血圧、肝臓病、ストレスなどの内的因子が複雑に絡み合って発症したり、悪化したりすると考えられています。第二次世界大戦後に増加した疾患であり、もともと欧米人に多いことから、食事の西洋化が関係しているのではと類推されています。

一つひとつの発疹(はっしん)は、にきびのような赤いぶつぶつで始まり、次第に周囲に拡大するとともに厚い鱗屑を持つようになり、ある時を境によくなって、鱗屑がなくなるということを繰り返します。その時の鱗屑の大きさは、一定していません。このように、よくなったり悪くなったりを年余に渡って繰り返します。

乾癬では、ケブネル現象といって、繰り返しこすったり、傷付いたりした個所に、数日してから新しい発疹が出てくることがあります。これは、体の中でよくこすれる部位である肘(ひじ)や膝(ひざ)、尻(しり)、頭の毛の生え際などから発疹が出てきたり、あるいは発疹がひどい傾向にあります。

また、アウスピッツ血露現象といって、鱗屑を無理にはがすと、点状に出血がみられることがあります。これは、乾癬の特徴的な表皮の増殖の仕方と関係しています。すなわち、表皮が厚くなった部分と薄くなった部分が隣り合っているため、薄い表皮の下にある血管が傷付いて生じると考えられます。

鱗屑が厚い時にかゆみがありますが、基本的には自覚症状もなく、内臓にまで疾患が及ぶことはありません。爪が白く厚ぼったくなり、爪水虫と間違われる場合もあります。

こういった乾癬の典型的症状のみがみられる例を、尋常性乾癬といいます。乾癬の中の特殊な病型として、発疹が全身に広がり真っ赤になる乾癬性紅皮症、赤みの上に小さな膿(うみ)が多発する膿疱(のうほう)性乾癬、リウマチのような関節症状を伴う関節症性乾癬があり、これらは何かのきっかけで急に悪化する重症型の乾癬といえます。別の特殊型に、滴状乾癬があります。これは、子供から若い人に多く、風邪のような症状に引き続いて、全身に小型の発疹が一度に多発します。

乾癬の検査と診断と治療

乾癬の症状に気付いたら、近くの皮膚科専門医のいる医療機関を受診し、治療法を相談します。多くのケースでは外来通院治療が行われ、重症型の場合には入院治療が必要なこともあります。

診断は、特徴的な発疹とその分布、経過より判断します。通常は内臓の異常はありませんが、時に糖尿病、高血圧、肝臓病を合併していることがあるので、検査で確認することが必要です。また、薬の副作用で乾癬のような発疹が出てくることもあります。治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行うと、診断が確定します。

まだ根本的な治療法はなく、症状に合わせたいろいろな治療が行われます。いずれの治療法も治療を中止すると、再発することがあります。また、必ずしも強力な治療法を行うことが最善とは限りません。そこで、乾癬のタイプなど医学的要因、年齢など発症者の要因などをもとに、治療による効果と危険性を考え、医師と発症者とで検討をして治療方針を決めます。

症状に合わせた治療の方法には、外用薬、内服薬、光線療法などさまざまあります。症状が軽い場合には主に外用薬で、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します。

外用薬には、副腎皮質ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、活性型ビタミンD3外用薬も副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。古くから用いられてきた外用薬にタールやアンスラリンなどがありますが、現在は一部の病院でしか使用されていません。

内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。

エトレチナート(チガソン)は、表皮細胞がどんどん増殖していくことを抑制する薬で、特に膿疱性乾癬の場合には最も効果があります。問題は副作用で、妊娠中に内服すると奇形児が産まれる可能性が高まります。薬をやめてからも、女性は2年、男性は半年間避妊の必要もあります。長期間に渡って内服した場合には、骨への影響が出ることがあり、口唇がカサカサと荒れることもあります。

シクロスポリン(ネオーラル)は、最も即効性があります。副作用として腎(じん)障害、高血圧があり、薬の血中濃度と併せて定期的チェックを行い、薬の量を調整します。胎児への安全性は確立されていないので、妊娠中は内服を行いません。

光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を発疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。

ただし、皮膚への障害が少ないUVAとはいっても、長期間に渡る場合は将来の発がんの危険性を高める可能性もありますので、照射する総量を一定量以下にしておく配慮が必要とされます。妊娠中は、胎児への影響がわかっていないので行いません。近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。

いずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。乾癬の多くは慢性に経過しますが、自然に軽快、治癒する寛解こともあります。滴状乾癬は、副腎皮質ステロイド薬外用と抗生物質内服で軽快し、他の病型と異なり多くは一過性です。

生活上の注意としては、こすると新しい発疹が出てくるケブネル現象がありますので、皮膚をこすり過ぎないように注意します。入浴は構いませんが、こすり過ぎず、また鱗屑を無理にはぎ取らないようにします。ただし、鱗屑には発疹の慢性化に関係する物質も含まれていますので、ぬるま湯につかって軟らかく後で無理なく鱗屑を取ることはよいことです。

日光浴も効果があるので、適度に行います。急激に日焼けをするとやはりケブネル現象で悪化することもあるので、あくまでも適度に。風邪を引いたりした後など、感染によりサイトカインのバランスが崩れ、乾癬の症状が悪化することがあります。風邪を引かないように、まめにうがいを励行します。精神的な動揺やストレスが疾患を悪くしますので、短気を起こさず、気長に治療していきます。

🇻🇳感染性胃腸炎

冬場に流行する代表的な感染症

感染性胃腸炎とは、ウイルス、細菌、原虫などの病原微生物を原因とする胃腸炎の総称。一年を通じて発生しますが、例年晩秋から冬季に多くなります。

原因となる主な病原微生物は、ノロウイルスやロタウイルス、サポウイルス、アデノウイルスなどのウイルスと、病原性大腸菌やサルモネラ属菌などの細菌があります。晩秋から冬季にかけての流行の大半はウイルス性のもので、ノロウイルスやロタウイルスが主な原因とされています。

ウイルス性の感染性胃腸炎の主な症状は、腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、発熱です。ロタウイルス、アデノウイルスによる胃腸炎は、乳幼児に多くみられます。

これらの胃腸炎は、症状のある期間が比較的短く、特別な治療法がないことから、ウイルス検査を行わず、流行状況や症状から感染性胃腸炎と診断されることもあります。

ノロウイルス、ロタウイルスによる感染性胃腸炎は、1~2日間の潜伏期間を経て、典型的には腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、37℃台の発熱がみられます。ノロウイルスを原因とする場合、症状が続く期間は1~2日と短期間ですが、ロタウイルスを原因とする場合は5~6日持続することもあります。また、ロタウイルスによる感染性胃腸炎の場合、便が白色になることもあります。

ノロウイルスやロタウイルスなどが、人の手などを介して、口に入った時に感染する可能性があります。ノロウイルスによる感染性胃腸炎の場合は、人から人への感染と、汚染した食品を介して起こる食中毒に分けられ、次のような感染経路があります。

1)感染した人の便や吐物に触れた手指を介してノロウイルスが口に入った場合、2)便や吐物が乾燥して、細かなちりとして舞い上がり、そのちりと一緒にウイルスを体内に取り込んだ場合、3)感染した人が十分に手を洗わず調理した食品を食べた場合、4)ノロウイルスを内臓に取り込んだカキやシジミなどの二枚貝を、生または不十分な加熱処理で食べた場合。

ノロウイルスは2002年8月、国際ウイルス学会で命名されましたが、元はSRSV(小型球形ウイルス)と呼ばれていました。ちなみに、ノロとは発見された地名に由来しています。

非常に小さい球形の生物で、直径0.03マイクロメーター前後の蛋白(たんぱく)質でできた球の中に遺伝子(RNAリボ核酸)が包まれた構造をしています。近年、新しい検査法(PCR法)の普及によって、食品からのウイルスの検査が可能になり、100粒子以下の少量で感染するなど食中毒との関係が明らかになってきました。多くの遺伝子型が存在しますので、一度感染したからといって次に感染しないとは限らず、何度でも感染します。

感染性胃腸炎の治療と予防のポイント

下痢止めの薬を控え、水分補給と消化のよい食事での対処が基本です。ただし、激しい腹痛や血便がみられた場合や、体力の弱い乳幼児や高齢者は下痢などによる脱水症状を生じることがありますので、早めに内科、消化器科、胃腸科、小児科を受診してください。また、症状が長引く場合は受診してください。

特に高齢者は、嘔吐物が気管に入る誤嚥(ごえん)により肺炎を起こすことがあるため、体調の変化に注意しましょう。嘔吐の症状が治まったら少しずつ水分を補給し、安静に努め、回復期には消化しやすい食事を取るよう心掛けましょう。

感染性胃腸炎の治療は、ウイルスが原因の場合は有効な薬がないため対症療法になり、細菌が原因の感染性胃腸炎の場合は抗生剤の投与による治療が行われることがあります。脱水症状がひどい時は点滴で水分を補います。

予防のポイントとして最も大切なのは、手を洗うことです。特に排便後、また調理や食事の前には、せっけんと流水で十分に手を洗いましょう。便や吐物を処理する時は、使い捨て手袋、マスク、エプロンを着用し、処理後はせっけんと流水で十分に手を洗いましょう。また、カキなどの二枚貝を調理する時は、中心部まで十分に加熱しましょう。

🇧🇮乾癬性関節炎

皮膚病である乾癬に、手指や足指、四肢などの関節炎を合併する疾患

乾癬(かんせん)性関節炎とは、皮膚病である乾癬に、手指や足指、四肢などのはれと痛みを伴う関節炎を合併する疾患。関節症性乾癬とも呼ばれます。

乾癬の重症型と考えられており、30~50歳代の乾癬発症者の5~10パーセントにみられ、やや男性に多いとされています。

乾癬症として、頭部、体幹、四肢などの皮膚に赤い発疹(はっしん)ができて盛り上がり、表面に厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)がついて、その一部がポロポロとはがれ落ちます。爪(つめ)にできると、爪の甲が変形して点状にへこんだり、白く厚ぼったくなったり、悪化すると表面がはがれ落ちます。

関節炎は徐々に生じ、左右非対称に手指、足指など少数の関節にみられることが多いのですが、左右対称的に肩や肘(ひじ)、膝(ひざ)など多くの関節に生じたり、腰の後ろの仙腸(せんちょう)関節、脊椎(せきつい)の関節に生じて、はれと痛みを伴うものもあります。

手指では、爪の隣にある遠位指節間(えんいしせつかん)関節に関節炎が起こり、骨の表面が破壊されたびらん状態がみられます。

関節の組織が壊れる破壊性関節炎、骨の硬直、手指の変形、手指の関節が脱臼(だっきゅう)する離断性関節炎などが起こることもあります。皮膚の症状の程度と関節炎の症状の程度は、必ずしも一致しません。

完治することが難しく、進行すると関節が変形して日常生活にも支障を来す関節リウマチと比べると、一般に予後は良好です。

乾癬性関節炎の原因は明らかではありませんが、乾癬に関連して、免疫の異常、体質的な因子、環境因子などが考えられています。

症状に気付いたら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の専門医のいる医療機関を受診し、診断と治療を受ける必要があります。また、重症の場合には入院して治療を行うこともあります。

乾癬性関節炎の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特徴的な乾癬の発疹に加えて、関節リウマチのような関節痛、関節の変形がみられれば、乾癬性関節炎と判断します。関節の痛みがある部分にはX線(レントゲン)検査を行い、関節の状態をチェックします。関節リウマチと区別するために、血液検査も行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、発疹と関節炎の両方の改善を図ります。通常、この両方に効く免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)を内服薬として用い、一定の効果が得られています。

発疹にはステロイド外用薬が多く用いられますが、活性型ビタミンD3外用薬も効果があります。関節痛には関節リウマチの薬であるメトトレキサート(リウマトレックス)が有効です。

生物が作り出す蛋白(たんぱく)質をもとに作られた生物学的製剤という新しいタイプの薬の使用も重症例では行われつつあり、関節リウマチと同様、特に関節痛に絶大な効果を示します。腫瘍壊死(しゅようえし)因子αというサイトカインを抑える生物学的製剤の使用に関しては、過去に結核の既往がないかどうか、感染症を増悪させないかなどの検査や診察が必要です。

🇧🇳感染性結膜炎

細菌やウイルスが目に感染し、眼瞼結膜、眼球結膜に炎症が起こる疾患

感染性結膜炎とは、細菌やウイルスの感染によって目の結膜に炎症が起こる疾患。目の充血、痛み、かゆみ、目やになどが主な症状です。

結膜は、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分は眼瞼(がんけん)結膜、白目の表面を覆っている部分は眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。

その結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ること。そこで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しているのですが、多くの細菌やウイルスにさらされたり、睡眠不足、過労などで抵抗力が落ちている時には、炎症を起こすことがあります。

感染性結膜炎の原因には、大きく分けて、細菌による感染と、ウイルスによる感染があります。細菌性結膜炎もウイルス性結膜炎も感染力が強く、人から人へ、あるいは感染した目からもう一方の目へとたやすく移ります。

細菌性結膜炎の原因となる細菌には多くの種類が存在しますが、代表的なものはインフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、クラミジア菌、淋(りん)菌。

通常よくみられる細菌性結膜炎は乳幼児や学童期に多く、原因菌はインフルエンザ菌が最も多いようです。発症時期は冬期が多く、風邪にかかった時に起こりやすいといわれています。

肺炎球菌の場合は、インフルエンザ菌に比べて罹患(りかん)年齢がやや高い傾向にあります。

黄色ブドウ球菌による細菌性結膜炎は、高齢者の慢性細菌性結膜炎の代表的な疾患です。黄色ブドウ球菌は、健康な人ののどや鼻、皮膚、手指、毛髪、腸管などにも分布しています。感染力が弱いため、感染の危険は大きくありませんが、目にけがをした時、病気などで体の抵抗力が落ちた時は、高齢者や子供が感染しやすくなります。

クラミジア菌、淋菌は主に性感染症(STD)で知られる細菌ですが、感染者の手などが感染源となり、接触感染を通じて細菌性結膜炎を発症することがあります。

細菌性結膜炎の主な症状は、目の充血や眼球の痛み、大量の目やにが出ること。放置しておくと、結膜だけではなく角膜にまで感染し、角膜が混濁して、永久に視力が低下したままになる危険性も伴います。

原因となる細菌により症状に多少の差があり、インフルエンザ菌や肺炎球菌の場合は、結膜の充血と粘液膿性(のうせい)の目やにが現れます。肺炎球菌の場合は、時に小点状の出血斑(はん)や軽度の結膜のむくみも現れます。黄色ブドウ球菌の場合は、成人では眼瞼結膜炎の形で慢性的にみられることが多く、角膜にも病変が存在することもあります。

一方、ウイルス性結膜炎の原因となるウイルスには、アデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、ヘルペスウイルスなどがあります。いずれも他人の分泌物などからウイルスが体に入って発症するものであり、他人に感染させる力も強く、家族内感染や学校内の集団感染などの原因になります。

夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス8型を主に、19型、37型、54型も原因となるウイルス性結膜炎には、まず流行性角結膜炎があります。

はやり目とも呼ばれ、白目が充血し、目やにが出て、目が痛くなることもありますが、かゆみはほとんどありません。耳の前やあごの下にあるリンパ節がはれることもあります。感染してから約1週間で発症し、それから1週間くらいがピークで、次第によくなります。

同じアデノウイルス3型、4型、7型が原因となるウイルス性結膜炎には、咽頭(いんとう)結膜炎もあります。

プール熱とも呼ばれ、突然39度くらいの高熱が出て、のどがはれ、目が充血したり、目やにが出るなどの症状が出ます。悪化すると、肺炎になることもあります。感染してからの経過は、流行性角結膜炎とほぼ同じです。

エンテロウイルス70型やコクサッキーA24変異株が原因となるウイルス性結膜炎には、急性出血性結膜炎があります。

症状は急性で、目が痛くなったり、目やにが多くなり、白目に出血がみられることもあります。ひどくなると、黒目の部分の角膜に小さな傷ができることがあります。感染した翌日くらいから発症し、1週間くらいでよくなってきます。

単純ヘルペスウイルスが原因となるウイルス性結膜炎には、ヘルペス性結膜炎があります。

ウイルス性結膜炎の一種ではあっても、あまり他人に移ることはありません。症状としては、白目が充血したり、目やにが多く出たりするのに加え、目の周囲の皮膚面に赤く小さな水疱(すいほう)が出ることもよくあります。角膜ヘルペスを合併することもあります。

感染性結膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて結膜を丹念に調べます。症状からほぼ類推することができますが、感染性分泌物のサンプルを採取して培養し、原因となっている細菌やウイルスを特定することもあります。しかし、このような検査は通常、症状がひどい時、再発した時、クラミジア菌や淋菌が原因と考えられる時にのみ行います。

眼科の医師による細菌性結膜炎の治療では、原因菌に対する感受性の高い抗菌剤を配合した点眼剤による症状の改善が基本となります。細菌の種類によっては、抗菌剤を配合した眼軟こうや、抗菌剤の内服も必要となります。治療が適切な場合は、約1~2週間で完治します。

細菌性結膜炎の症状が治まってきたころに、黒目の部分を覆っている角膜の表面に、小さな点状の濁りが出てくることがあります。この時に治療をやめると、角膜が混濁して視力が低下することがありますので、眼科医の指示に従って点眼などの治療を続けることが必要となります。

眼科の医師によるウイルス性結膜炎の治療では、流行性角結膜炎、咽頭結膜炎、急性出血性結膜炎の場合、結膜炎の段階での有効な薬剤がないため、対症療法的に抗炎症剤の点眼を行い、細菌による混合感染を防ぐために抗菌剤の点眼を行います。さらに、角膜炎の症状が認められる際は、ステロイド剤の点眼を行います。熱が高い時は、解熱剤を使います。

ヘルペス性結膜炎の場合、単純ヘルペスウイルスに対して効果がある抗ウイルス剤の眼軟こうを目に塗ります。また、症状によっては抗ウイルス剤の内服や点滴治療を併用することもあります。

ウイルス結膜炎の感染を予防するには、目をこすった手やハンカチ、タオルなどから感染することがありますので、目に何らかの異常がある場合には家族であってもタオルなどを共用せず、手洗いをまめに行うなどが効果的です。

🇧🇫乾癬性紅皮症

乾癬が広がって、全身が真っ赤に炎症を起こす疾患

乾癬(かんせん)性紅皮症とは、皮膚疾患の乾癬が悪化し、全身が真っ赤に炎症を起こす疾患。

乾癬を発症すると、にきびのような赤いぶつぶつが発生し、次第に周囲へ拡散して皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)がついて、その一部がポロポロとはがれ落ちていきます。さらに、この症状が悪化し、赤い皮疹(ひしん)が全身に広がると乾癬性紅皮症を患います。

発症頻度は低く特殊な症状ですが、健康な皮膚が一切なくなるほど症状が悪化することもあります。

乾癬が進行して乾癬性紅皮症を発症する確定的な理由は、わかっていません。しかし、強い薬による乾癬の治療を継続したり、急激に治療を中止したりすると、乾癬性紅皮症へと進行するといわれています。また、遺伝的に紅皮化しやすい体質の人で進行するといわれ、睡眠不足、精神不安定、ストレスなどの要因で進行するともいわれています。

もともと乾癬を発症する理由も、いまだはっきりとわかっていません。一説によると、一種の免疫反応の異常により生じるとされます。すなわち、健常の皮膚では、表皮細胞と白血球(リンパ球など)がサイトカインなどの伝達物質を使って、うまく連絡を取り合ってお互いを制御していますが、このバランスが崩れると表皮細胞が一方的に増殖して、早く脱落していくことが起こります。

健常の皮膚では普通、表皮細胞はその一番外側に角質層という死んだ細胞の層を作り、垢(あか)になって落ちていくことを一定の周期の45日で繰り返しています。乾癬では、この周期が4~5日と極度に短縮しているため、カサカサした薄皮である鱗屑がどんどんできては、ポロポロとはがれていきます。

この免疫反応の異常は、遺伝的になりやすい体質がある人に、扁桃腺(へんとうせん)炎などの感染症、薬物や外傷などの外的因子、糖尿病や高血圧、肝臓病、ストレスなどの内的因子が複雑に絡み合って発症したり、悪化したりすると考えられています。第二次世界大戦後に増加した疾患であり、もともと欧米人に多いことから、食事の西洋化が関係しているのではと類推されています。

乾癬の症状が全身に及んで乾癬性紅皮症になると、皮疹の間に健康な皮膚が存在することもある一方、すべての皮疹が融合して健康な皮膚が一切なくなることもあります。全身が真っ赤に炎症を起こすと、皮膚の働きが損なわれるため体温調節ができなくなり、発熱や悪寒、全身倦怠(けんたい)感を生じます。時に、入院が必要となることもあります。

また、乾癬性紅皮症は、一時的に正常な状態となる寛解(かんかい)と再燃を繰り返すことが多く、治療も難しいとされています。

乾癬性紅皮症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特徴的な皮疹とその分布、経過より判断し、次いで血液検査を行います。乾癬性紅皮症であれば、血液検査所見として白血球数、好酸球数、LDH(乳酸脱水素酵素)がいずれも増加します。

乾癬性紅皮症の可能性が高ければ、入院をしてさらに詳しい検査を行います。通常は内臓の異常はありませんが、時に糖尿病、高血圧、肝臓病を合併していることがあるので、検査で確認することが必要です。治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、皮疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、外用薬、内服薬、光線療法、注射薬などで乾癬そのものを治療していくほかありません。すべては乾癬から進行したものなので、乾癬を気長にじっくりと治療することで症状が治まっていくことがあります。

外用薬には、炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、皮膚の細胞が増殖するのを阻害する活性型ビタミンD3外用薬も、副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。

内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。

光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を皮疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。

近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。

注射薬は、生物が作り出す蛋白(たんぱく)質をもとに作られた生物学的製剤という新しいタイプの薬を、皮下注射や点滴で投与し、体の免疫機能などにかかわる物質で、過剰に増えると乾癬の症状を引き起こすサイトカインの働きを弱め、乾癬の皮膚症状の改善を図ります。

現在日本では、腫瘍壊死(しゅようえし)因子αというサイトカインを抑えるインフリキシマブ(レミケード)とアダリムマブ(ヒュミラ)、インターロイキン12とインターロイキン23というサイトカインを抑えるウステキヌマブ(ステラーラ)、インターロイキン17というサイトカインを抑えるセクキヌマブ(コセンティクス)という4種類の生物学的製剤を用いることができます。

しかし、生物学的製剤もすべての発症者に必ず効果があるとはいえず、副作用が現れることもあり、長期的に投与した場合の影響については不明です。

外用薬、内服薬、光線療法、注射薬のいずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。

生活上の注意としては、風邪を引いたりした後など、感染によりサイトカインのバランスが崩れ、乾癬の症状が悪化することがありますので、風邪を引かないように、まめにうがいを励行します。精神的な動揺やストレスが症状を悪くしますので、短気を起こさず、気長に治療していきます。

🇧🇬頑癬

白癬菌が皮膚、特に内またなどに感染して起こる皮膚病

頑癬(がんせん)とは、かび(真菌)の一種の白癬菌が原因となって起こる皮膚病で、特に、またやしり、太もも、下腹部など、すれて湿っている部分にできるもの。いんきんたむし、股部白癬(こぶはくせん)ともいいます。

夏季に、男性に多くみられ、時に集団発生することもあります。白癬菌は皮膚糸状菌とも呼ばれ、日本では10種類ほどみられるとされていますが、頑癬の原因菌は大部分が猩紅(しょうこう)色菌で、まれに鼠径(そけい)表皮菌によることもあります。

初めの変化は、丘疹(きゅうしん)と小さな膿疱(のうほう)です。丘疹とは、小さなぶつぶつで皮膚面からわずかに盛り上がっているものです。膿疱とは、黄色く濁った液が入っている小さな水疱です。

これらが集まって輪状に並び、堤防状に盛り上がって、境界が鮮明になっていきます。中心部の皮膚は一見、治ったように見え、厚く硬くなって、褐色の色素沈着がみられるようになります。辺縁部には、赤いやや水っぽい丘疹が集まり、むけかかった皮がついているのが特徴です。激しいかゆみを伴い、体が温まると強くなります。

なお、白癬菌は高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)を栄養源とするため、男性の陰茎、陰のうに白癬菌がつくことは、まれです。

頑癬の検査と診断と治療

皮膚科の医師による頑癬の検査では、水疱部の皮膚を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。

治療法としては、表在性の白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。普通、1週間から10日で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるものでは、内服療法を行います。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

生活上で、頑癬に対処する注意点を挙げると、真菌は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。毎日、入浴して、その日についた汚れをせっけんや、ボディソープできれいに洗い流して、後は十分に水をふき取ります。湿った下着類も毎日、取り替えます。ふだんから体の清潔を心掛けることは、予防のためにも大事です。

🇫🇷乾燥症候群

全身の細胞などに乾きが出現し、障害が生じる一群の症状

乾燥症候群とは、全身の細胞、皮膚、粘膜に乾きが出現し、潤いがなくなることで障害が生じる一群の症状。ドライシンドロームとも呼ばれます。

目が乾く角膜乾燥症(ドライアイ)、鼻の中が乾く乾燥性鼻炎(ドライノーズ)、口の中やのどが渇く口腔(こうくう)乾燥症(ドライマウス)、肌が乾く乾燥肌(ドライスキン)、女性の膣(ちつ)が乾く膣乾燥症(ドライバジャイナ)などが含まれます。

角膜乾燥症は涙の減少によって生じる障害

テレビ、パソコンなどに取り囲まれて、目が酷使されてしまう現代社会では、「目が疲れやすい」、「何となく目に不快感がある」という人が、確実に増えています。視覚を担う目に不快感や違和感が生じれば、仕事や勉強を始めとした日常生活で、大変な不便を感じてしまいます。

このような疲れ目などの原因として最近、注目を集めているのが、目の乾き、すなわち角膜乾燥症、別名でドライアイです。

あなたの目の不快感も、目を使いすぎたせいばかりでなく、実は角膜乾燥症が原因かもしれません。角膜乾燥症は自分では気が付きにくく、「何となく目が疲れるわ」といった症状で病院や診療所に行き、医師から指摘される人が多いのです。

簡単にいえば、角膜乾燥症とは、涙液、すなわち涙の減少によって目が乾き、表面に障害を生じる疾患です。涙が減少すると涙の役割が低下し、乾きのために角膜が傷付きます。重症になると、角膜の表面に無数の傷が付きます。

我が国では角膜乾燥症の疾患を持つ人が多く、潜在患者は800万人いるともいわれています。放置しておくと眼病のもとになるので、早めに専門医に診察してもらうのが、お勧めです。

専門医による角膜乾燥症の検査では、シルマー試験紙という目盛りの付いた細い紙を下まぶたに挟んで、涙の染みる量を測定するシルマーテストを行い、涙の分泌低下を調べます。このほか、蛍光色素試験で角膜の傷の状態、ローズベンガル試験で結膜の傷の状態を調べます。

目は、なぜ乾いてしまうのか

涙腺から分泌される涙は、泣く時以外にも少しずつ出されており、目の表面の保護や、栄養分・酸素の供給、ゴミ・細菌の侵入防止といった働きをしています。

この涙が乾いてくると、眼球の前面を覆う透明な膜である角膜の上に、ドライスポットと呼ばれる穴のような物が、開いてしまいます。通常であれば、そこをすぐ涙が覆い、やがて穴はふさがっていくのですが、ある一定量以上に涙が減り続けると穴は残ったままとなり、最も傷付きやすい角膜が露出して障害が生じるのが、角膜乾燥症なのです。

角膜乾燥症の主な原因を挙げると、

1)涙の質・量の低下を来す場合:シェーグレン症候群などの涙が減少する疾患、あるいは加齢、夜間作業、大きなストレス、降圧剤や精神安定剤などの服用の影響で涙の質が低下したり、量が少なくなることが、角膜乾燥症の原因になります。

2)涙が蒸発しやすい・まばたきが少ない場合:エアコンなどの影響で部屋が乾燥している環境、あるいは、まばたきの少なさ、コンタクトレンズの装着、アレルギー性結膜炎の罹患、パソコン・テレビの見すぎ、目の酷使などが、角膜乾燥症の原因になります。

ちなみに、私たちの目全体に涙をゆき渡らせてくれるのが、まばたきなのですが、パソコンなどを凝視すると、まばたきの回数は通常の1/4にもなります。

 下の項目で、長期に渡って当てはまるものが5つ以上あれば、要注意!

1.目が疲れやすい  2.目やにが多く出る 3.目がゴロゴロする 4.目が乾いた感じがする 5.重たい感じがする

 6.何となく目に不快感がある 7.目が痛い 8.何もしていないのに涙が出る 9.視界がかすむ 10.何となく目がかゆい

11.光がまぶしく感じる 12.なぜか目が赤い 13.涙が出ない 14.悲しい時でも涙が出ない

目を乾燥させないための対処法

角膜乾燥症(ドライアイ)によって、目が疲れたりするだけでなく、肩が凝ったり、頭痛を引き起こしたりと、体に変調を来します。集中力も当然低下し、仕事や勉強の能率は落ちます。

角膜乾燥症を予防したり、進行させないための基本は、目を乾燥させないことです。そのためのケアの一部を紹介します。「乾いているな」と感じる方は、お試しを。

目薬を上手に使う

目を乾燥させないためには、やはり目薬が手ごろ。この目薬にもいろいろな種類がありますが、最もいいのは眼科で処方してもらう目薬です。市販されている目薬を使う場合には、防腐剤が入っていないものを選ぶよう注意しましょう。

目薬は通常、開封した後に非常に細菌感染を起こしやすい構造になっていて、カビが増殖しやすいために、防腐剤が入っていることが多いのです。目薬を使用した時に「目に染みる」と感じるのは、防腐剤のせいです。

角膜乾燥症の場合には、目の表面に傷が付いていることが多く、また防腐剤を洗い流すだけの涙が足りないために、悪影響を及ぼす恐れもあります。よって、防腐剤が入っていないかどうかを確認して購入し、開封後は早めに使い切るようにしましょう。

病院、診療所での治療においても目薬が有効で、角膜乾燥症用(ドライアイ用)の防腐剤を抜いた目薬や人工涙液などを使用します。目の乾燥のひどい人に対しては、涙の排水口である涙点を小さなシリコンプラグや手術でふさぐ方法もあるので、専門医に相談しましょう。

何よりリラックスを

涙腺は、リラックスした時に優位になる副交感神経によってコントロールされています。従って、くつろぐことで涙がより多く出ます。

逆に、緊張していては目が乾きます。車で出掛ける時などは、余裕のあるドライビングをしたいもの。運転中は無意識に緊張が高まり、まばたきの回数も減少し、さらに目が乾きます。風が目に直接当たるのも、避けましょう。

冷暖房の効いている部屋では、エアコンの風が直接当たらないようにしましょう。目が乾きやすい人は、加湿器やぬれタオルを干すなどして保湿に注意すればよいでしょう。

できればコンタクトレンズの使用を避ける

角膜乾燥症の初期の場合、コンタクトレンズを使うこともできますが、基本的には勧められません。本来、目には常に新鮮な涙が供給されていなければならないのに、コンタクトで角膜にフタをした状態では、まばたきによる涙の交換率がハードで約20パーセント、ソフトでは2~3パーセントにも低下してしまう、と見なされています。

コンタクトレンズ使用者は、防腐剤抜きの人工涙液タイプの目薬を使うように注意しましょう。保湿成分のヒアルロン酸入りの目薬も出ています。また、目を温めることでも角膜乾燥症が改善します。

角膜乾燥症用(ドライアイ用)眼鏡を使用する

顔と眼鏡の透き間を、プラスチックのカバーで覆ったものや、水を含ませるスポンジが内側についた物もあります。「たかがカバー?」と侮るなかれ、スキーのゴーグルのようなものをつけると涙が蒸発しないのでよいとされている通り、かなりの効果があります。ゴミや花粉も防ぐことができます。外出用のほか、パソコン用としてもよいでしょう。

たばこの煙を避ける

たばこの煙も角膜乾燥症の大敵!吸っている人がいた場合は、その煙が自分の目に入らないように気を付けましょう。目は煙の粒子を洗い流そうとしますが、角膜乾燥症の人には相当の負担となります。自分が吸っている人は、この際、禁煙してみてはいかがですか。

パソコン作業には工夫を

パソコンの作業では、1時間したら10分間の休憩が必要で、作業中はまばたきを意識的に増やしましょう。正常では、まばたきは1分間に20回前後です。パソコンのモニターの位置を低くして、目線を下向きにするだけでも、涙の蒸発と目の乾燥が防げます。

私たち人間は、夜になると涙の出る量が少なくなり、朝にはカラカラ状態になっています。頭や体は起きていても、「目が開けられない!」という事態もあり得ます。このような時、無理をして開けると角膜に傷が付きます。目薬をさすなどするようにしましょう。

乾燥性鼻炎は空気の乾燥が原因で、鼻の中の粘膜が乾く状態

乾燥性鼻炎とは、鼻の中の粘膜が潤いをなくし、鼻の乾燥感と呼吸がしにくい感じがする状態。ドライノーズとも呼ばれます。

鼻の中の粘膜が乾いて、カサカサしたような乾燥感や、ムズムズ感を覚えます。乾燥感と同時に、ヒリヒリとした痛みを伴うこともあります。さらに、鼻水が出るわけでもないのに、鼻をかみたくなります。鼻水などが乾いて固まりやすくなるため、粘膜に付着したり、カサブタ状になったりします。

鼻の中の粘膜は弱いため、何度も鼻をかんでいると炎症を起こし、鼻出血を伴うこともあります。

従って、鼻の中に空気が出入りしていても、呼吸がしにくい感じになります。夜、寝る時には、鼻の中が詰まった感じで息苦しく、寝苦しくなることもあります。

鼻は、外界から体に必要な空気を吸い込むための大切な器官。外界の空気は、乾燥していたり、そのまま肺に入ると有害なほこり、ごみのほか、病原菌やウイルスような成分も含んでいます。それゆえに、鼻の中の粘膜は常に粘液を分泌し、乾燥した空気を湿潤にして、異物を粘液に絡み取ってきれいにしています。

乾燥性鼻炎を生じる原因は、空気の乾燥です。冬場の空気の乾燥時に1日の大半を戸外で過ごしたり、空気が乾燥している室内に年がら年中、身を置くことで、乾燥性鼻炎を生じます。

気密性の高いオフィスやマンション、ホテルでは、セントラルヒーティングやエアコンなどの空調設備を使用しているため、湿度が20パーセント以下になることもしばしばです。週3日以上、1日5時間以上、湿度20パーセント以下の部屋にいると、かなりの割合で乾燥性鼻炎になるといわれています。

また、アレルギー性鼻炎を抑える点鼻スプレー薬の使用により、乾燥性鼻炎を発症してしまうこともあります。アレルギー性鼻炎のように鼻水が止まらない場合は、粘膜は常に湿った状態ですが、アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン剤が含まれる点鼻スプレー薬が効きすぎた場合には、粘膜が乾燥してしまって乾燥性鼻炎を発症します。

乾燥性鼻炎の自己治療と予防

生活環境と鼻の保湿と加湿を心掛ける工夫で、乾燥性鼻炎(ドライノーズ)を治したり、予防することができます。

部屋の乾燥を防ぐには、加湿器を使うことが一番の対策で、部屋の湿度が50パーセントくらいになるようにします。ただし、60パーセント以上になると、カビやダニが発生する原因にもなるので、湿度の上げすぎもよくありません。

ぬれタオルをハンガーに掛けたり、観葉植物や水槽を部屋に置くだけでも効果があります。逆に、エアコンや電気毛布、電気シーツ、ホットカーペットなどの電気器具は、室内を乾燥させる元凶ですので、使いすぎをセーブします。

入浴の際には、10分から15分くらいは湯船につかり、鼻から湯気を吸い込むのも効果があります。片方の鼻を指でふさいで深く呼吸をすれば、両方の鼻で息をする時の倍の力で吸い込むことができ、大量の蒸気が鼻の奥までしっかり届いて潤います。

仕事中や外出中などで加湿器を使えない場所にいる時には、マスクで鼻の乾燥を防ぎましょう。普通のマスクでも効果がありますが、水で湿らせたガーゼマスクを使えば、自分の息の湿気をガーゼが吸い込んで鼻を保湿してくれるので、よりいっそう効果が高まります。

食塩水を点鼻するのも、鼻の保湿と加湿に効果があります。1リットルの水に9グラムの食塩を入れれば、人間の体液と同じ濃さの生理食塩水のでき上がりで、これをスプレーボトルなどに入れて、鼻の中に噴き入れるだけで洗浄される上、鼻の粘膜が塩分に反応して鼻水を出し、鼻の粘膜を潤った状態にします。夜、寝苦しいという人は、床に入る5分ほど前に鼻の中に噴き入れるのがよいでしょう。市販されている乾燥性鼻炎用(ドライノーズ用)スプレーも、主成分は食塩水なので、効果は同じです。

市販されている鼻用の保湿ジェルを使って、鼻の中から保湿を行うのも効果があります。

アレルギー性鼻炎を抑える点鼻スプレー薬の使用で、乾燥性鼻炎を生じている場合は、使用量を減らしたり、ほかの薬を使うようにします。

口腔乾燥症は唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾く疾患

口腔(こうくう)乾燥症とは、唾液(だえき)の分泌量が少なくなって唾液の質に異常を来し、口の中やのどが渇く疾患。ドライマウスとも呼ばれます。

ストレスやうつ病による影響が主な原因ですが、さまざまな原因が考えられます。アレルギーを抑える抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、血圧を下げる降圧剤、鎮痛剤、抗パーキンソン剤などの多くの薬の副作用でも起こります。

自分の免疫細胞が唾液腺(せん)や涙腺を攻撃してしまうシェーグレン症候群でも、口や目が渇きます。糖尿病や更年期障害、腎(じん)障害、唾液腺障害、口腔周囲の筋力の低下、食習慣、放射線が関係することもあります。

保湿や抗菌作用がある唾液が足りないと、食べ物の味がよくわからない味覚障害、水分の少ない食品が飲み込めないなどの嚥下(えんげ)障害、口の中がネバネバするなどの不快感、口腔の粘膜の乾燥、夜間の乾燥感といった症状が現れます。さらに、義歯の不適合、装着時の痛み、カンジダ菌という真菌の増殖による舌痛(ぜっつう)や口角炎も認められます。

虫歯の多発や悪化、歯周病、舌苔(ぜったい)の肥厚、舌表面のひび割れ、口内炎や口臭、食事がとれない摂食障害、会話時に話しづらいなどの発音障害を引き起こすこともあります。

口腔乾燥症の検査と診断と治療

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による診断では、安静にして自然に出てくる唾液を15分間採取し1・5ミリリットル以下だと、口腔乾燥症(ドライマウス)の可能性が高いと判断します。

原因により対処は異なりますので、原因を明らかにします。血液検査や画像検査で、シェーグレン症候群などの判別もできます。

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による治療は、唾液の分泌を促す薬や、ジェルやスプレー状の保湿剤で口の中を潤します。夜間の乾燥を防ぐ保湿用マウスピース(モイスチャープレートなど)、夜間義歯などを症状に応じて処方します。

薬の副作用が原因なら、主治医と相談して薬の変更や減量を検討します。原因がはっきりすることでストレスが軽くなり、口腔乾燥症自体が改善する場合もあります。

あごをよく動かして食べ物をかむことも大切。ほおや唇の内側など、口の中に広がっている唾液腺を刺激するマッサージも有効です。舌を転がして押し付けたり、指を入れて軽くこすったりします。口腔筋機能療法も、筋力を強化させ唾液分泌を促進させる効果が期待できます。

シェーグレン症候群からもたらされる口腔乾燥症では、残念ながら根本的な治療法はありません。口や目などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことを目的に、内服薬と症状に応じた人工唾液、口腔乾燥症状改善薬、保湿剤、含嗽剤(うがい薬)などによる対症療法に頼らざるを得ないのが現状です。

なお、シェーグレン症候群で全身性の臓器病変のある人の場合は、内科などでステロイド薬や免疫抑制薬などを含めて適した治療を受けるべきです。

乾燥肌は角質層に含まれる水分量や皮脂量が減少して、皮膚が乾燥した状態

乾燥肌とは、皮膚の水分や皮脂量が不足して、皮膚が乾燥した状態。ドライスキンとも呼ばれます。

皮膚の一番外側にある角質層は、皮脂、アミノ酸や尿素などの天然保湿因子、セラミドを主成分とする角質細胞間脂質の3つの保湿成分によって、皮膚の潤いを保っています。しかしながら、3つの保湿成分は、加齢とともに減少するため、年齢が上がるとともに、多くの人は皮膚が乾燥しやすくなります。中には、体質的にセラミドが少ないために、若いうちから皮膚が乾燥している人もいます。

乾燥肌では、角質層に透き間ができやすく、外から異物が侵入しやすくなるため、表皮のすぐ下にある掻痒(そうよう)点がすぐに刺激を受けて、かゆみが生じたり、湿疹(しっしん)ができやすくなったりします。かくと皮膚の状態が悪化し、一段とかゆみが増すというように、悪循環を繰り返すこともあります。

特に、冬になると、汗などにより皮膚へ補給される水分量が減少する上、空気が乾燥して皮膚の水分が蒸発するため、皮膚が乾燥しやすくなります。

乾燥肌には大きく分けて、一般的な乾燥肌、アトピー性皮膚炎、脂性乾燥肌、老人性乾燥肌の4つのタイプがあります。

一般的な乾燥肌の原因と対策

一般的な乾燥肌は、肌がカサカサしたり、洗顔後に突っ張ったり、白い粉が吹いたりするのが主な症状です。外からの刺激を防御し体内の水分を保つ肌のバリア機能が低下して、皮膚の角質層の水分量が不足している状態です。

その直接的な原因としては、スキンケアの不足、加齢、睡眠不足やストレスなどの生活習慣、食生活による肌の皮脂分泌量の低下、肌が本来持っている保湿機能の天然保湿因子の低下、セラミドなどの角質細胞間脂質などの減少が挙げられます。

これらの理由で一定の水分量を保てなくなり、健康な肌に比べて水分が約30パーセント以下になった状態が、一般的な乾燥肌に相当します。

冬場は夏場に比べて汗をかく機会が減り、皮脂を分泌するサイクル低下するため、一般的な乾燥肌になりやすい季節です。その上、暖房による部屋の乾燥は、洗濯物が乾きやすいのと同じように体の水分を奪い肌を乾燥させるので、暖房器具を上手に使うことが大切です。

一般的な乾燥肌の対策としては、エアコン、ストーブ、電気こたつ、電気毛布、ホットカーペットの使用は最低限にとどめること、急激に暖めないようにし、温度は控えめに設定すること、加湿器を使用したり、ぬれタオルを室内に干して、部屋の湿度を適度に保つことです。

アトピー性皮膚炎の原因と対策

アトピー性皮膚炎による乾燥肌の原因は、もともとの体質として持っている原因と、アレルゲンや肌の外部からの刺激による外部要因の原因があります。

アトピー性皮膚炎はまだ解明されていない部分も多い疾患ですが、アレルゲンなどのアレルギー反応による要因が関連しているケースが多いようです。アトピーになると、その症状として皮膚の乾燥がみられます。

アトピー性皮膚炎の特徴的な症状として、皮膚の炎症や、強いかゆみが出るため、皮膚をかいて傷付けてしまうことで、さらに肌がダメージを受けて、皮膚の保湿能力を下げて乾燥してしまうという悪循環に陥るケースがみられます。

基本的に、アトピー性皮膚炎はセルフケアで治療することはできないため、皮膚科や専門医師による治療を受けなければなりません。

医学的にもまだ、未解明の部分が多く、関係する要因には個人差が大きく、明確な対策ができないのも事実です。ただし、アトピー性皮膚炎の治療と向き合い、医師の指示を受けながら、自分の症状を悪化させる成分や食べ物、環境を理解していくことで、徐々に症状を軽減していくことは可能です。

それらを理解した上で、適切なスキンケアで清潔と保湿を心掛けることで、外からの刺激を防御し体内の水分を保つ肌のバリア機能の低下を防ぐことは可能です。

アトピー性皮膚炎は、通院による治療後、皮膚の調子がよくなったとしても、症状が繰り返すことも特徴です。自身の症状に悪いことを把握して、常に予防を意識した生活習慣を続けることが大切です。

脂性乾燥肌の原因と対策

脂性乾燥肌は、一般的にいわれている混合肌の一種で、乾燥している部分と脂っぽい脂性肌(オイリー肌)の部分が混在している肌の状態です。額から鼻にかけてのTゾーンは脂っぽいのに、口回りやあごからなるUゾーンは常に乾燥しているなど、顔の中に脂性肌と乾燥肌が混在しているために、ケアするのが難しく、基本的に乾燥している部分と、ベタ付く部分に分けてケアをする必要があります。

肌の悩みは、乾燥肌の人が増加傾向にあるのですが、乾燥肌と同じくらいに増加しているのが脂性乾燥肌です。

原因は、生活する環境やストレスによりホルモンバランスが乱れ、体の代謝や循環機能が正常に働かなくなることにあります。そうなると肌の水分量や油分量のバランスを崩れ、肌にカサ付く部分とベタ付く部分が混在するようになるのです。

脂性乾燥肌は、正しいスキンケアを行い、睡眠やストレスなどの生活環境を見直すだけで改善が見込めるので、対策がしやすい肌の状態です。逆に、間違ったスキンケアをしていたり、菓子や脂っこい食事に偏ったり、生活習慣や食生活に気を遣わないと、症状が悪化しやすい肌の状態でもあります。

脂性乾燥肌になると、何度も洗顔しがちですが、それは逆効果です。洗顔で皮脂を落としすぎないことが大切で、洗顔後の保湿もしっかり行います。

老人性乾燥肌の原因と対策

老人性乾燥肌の原因は、加齢です。年齢を重ねると、皮膚の発汗機能や皮脂の分泌機能が低下し、シミやシワができやすやくなり、肌も年齢とともに衰えてきます。また、年を重ねていくと、肌の水分を保つ役割をしている角質細胞間脂質が減少していくことから、皮膚は乾燥しやすくなるといえます。

老人性乾燥肌の中にも、老人性皮膚掻痒症と老人性乾皮症の2種類があります。

老人性皮膚掻痒症は、加齢による皮膚の老化が原因で、ターンオーバーなどの皮膚機能が低下することで発症する皮膚疾患です。分泌される皮脂が減少し、肌に張りがなくなり、汗もかきにくくなるという特徴があります。冬などの乾燥する季節になったり、冷暖房により室内の湿度が低くて空気が乾燥する生活環境にいると、肌がカサカサしてかゆみが強くなる特徴もあります。

老人性乾皮症は、加齢により肌の水分保持能力が低下し、肌の水分が不足することで発症する皮膚疾患です。特に、空気の乾燥する秋から冬にかけて症状が現れることが多く、自覚症状としてかゆみを伴うことが特徴です。冬場の暖房などによる空気の乾燥や、顔や体の洗いすぎで肌の天然保湿因子が失われ、さらに悪化します。

老人性乾燥肌の予防対策としては、熱い湯の長風呂と頻回な入浴を避けることが有効です。入浴する際は、せっけんは洗浄力の強いものを避けて保湿剤入りのものを使い、ゴシゴシ顔や体を洗わないことです。ナイロンタオル、ボディソープを使うと、皮脂が取れすぎて悪化することがあるので、お勧めできません。

入浴後は、顔はもちろん全身をボディローションやボディークリームで保湿するようにします。

できるだけ皮膚をかかないように気を付け、つめは短く切ります。精神的な不安、イライラもかゆみに影響しますので、安らかな気持ちで生活を送ることも必要です。規則正しい生活を心掛け、十分な睡眠を確保し、バランスのよい食事を取ります。刺激の強い食品、辛い食品はかゆみが増すので、避けるようにします。

膣乾燥症は温かく、湿っている膣の中が乾燥し、潤いを欠く状態

膣(ちつ)乾燥症とは、女性生殖器系の器官である膣の中が乾燥し、潤いを欠く状態。ドライバジャイナ(Dry Vagina) 、DVS(Dry Vaginal Syndrome)とも呼ばれます。

膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

しかし、40歳代の後半くらいから閉経を迎える女性、および閉経後の女性では、膣の正常な柔軟性、酸性度、潤滑性を維持するために必要不可欠なエストロゲンの分泌量が減り、これが膣壁の粘膜を薄くして柔軟性を失わせるとともに、潤滑性を失わせ、膣乾燥症の原因になります。膣の中が乾燥することにより、痛みやかゆみを覚え、膣壁がこすれたりすることによる炎症なども起こることがあります。

性交渉の際にも、膣の中が乾燥し、潤いがない上に、膣壁の柔軟性がないことで痛みを伴ったり、状態によっては性交渉そのものが苦痛になることもあります。

エストロゲンは、閉経期および閉経後のほか、妊娠中、授乳中に減少し、卵巣の摘出、喫煙によっても減少します。無理なダイエットによって月経周期が崩れたり、生理がこないという若い女性でも、エストロゲンは減少します。ごくまれに、食べ物などのアレルギー反応に関連して、エストロゲンの減少を経験することがあります。

膣が乾燥する原因は、エストロゲンの減少以外にもいくつかあります。風邪薬、アレルギー治療薬、一部の抗うつ剤は、膣を含め体全体の乾燥の原因になります。乳がんの治療に使用されるような化学療法薬も、膣を含め体全体の乾燥の原因になる可能性があります。市販のビデ(膣洗浄剤)を使用すると、膣の中の自然な化学的バランスが崩れて、これが炎症や乾燥の原因になることがあります。

自分自身の体を異物と認識して攻撃する自己免疫性疾患の一種で、全身の分泌腺(せん)組織を侵して唾液(だえき)や涙などが出にくくなるシェーグレン症候群という難病の一症状としても、膣にあるバルトリン腺と呼ばれる分泌腺が侵され、膣乾燥症がみられることもあります。40~60歳の女性に多いのが特徴で、女性ホルモンの要因も関連して発症すると考えられています。

膣乾燥症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、まず膣乾燥症の原因を探し出すために、問診を行います。自覚症状に関する質問をしたり、治療中の病気や市販薬、処方薬にかかわらず使用している薬について質問をしたりします。

確実な診断を得るためには、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓(じんぞう)と尿管の検査、膣分泌物の顕微鏡検査や培養検査などを行うこともあります。原因を特定できない場合や、ほかの症状がある場合は、追加の検査を行うこともあります。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、閉経期および閉経後の女性ホルモンのエストロゲン不足によるものであれば、天然のエストロゲンを薬として補充します。

しかし、ホルモン療法はすべての人に適した治療というわけではなく、副作用が出ることもあります。副作用には、体重増加、体液貯留、吐き気、頭痛、乳房を押した時の痛み、皮膚にできる色の濃い斑点(はんてん)、脳梗塞(こうそく)、血栓、認知症、乳がんや卵巣がんのリスク増加があります。

ホルモン療法以外の選択肢はいくつかあり、膣の乾燥に対応するために特別に作られた保湿剤を使うと、1回の使用で最大3日間症状を和らげることができます。性交痛の対策としては、性交渉の際に膣用のゼリーやローションといった潤滑剤を使用すると、痛みを和らげることができます。潤滑剤が膣壁の粘膜に潤いを与え、1回の使用で数時間効果が持続します。

市販のビデ(膣洗浄剤)、せっけん、リンスなど膣を洗うために作られた製品を使用して膣の乾燥を生じている場合は、その使用を避けることで悪化させないようにします。

ほかにも、エストロゲンと似た作用をするイソフラボンを含む大豆と大豆製品を食事で摂取すると、膣の乾燥が和らぐことがあります。八味地黄丸(はちみじおうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などの漢方薬を服用することで、膣の乾燥が和らぐこともあります。

シェーグレン症候群による膣乾燥症であれば、内科などでステロイド薬や免疫抑制薬などの服用を含めて、適した治療を受けてもらいます。そちらの治療を行うことで、改善する可能性が考えられます。

🟥禁煙の飲食店、全国で6割にとどまる 2023年12月時点、例外規定多く

 多くの人が集まる場所での受動喫煙対策を強化する改正健康増進法施行後の2023年12月時点で、禁煙の飲食店は全国で約6割にとどまることが、厚生労働省研究班の調査でわかりました。改正健康増進法は飲食店を原則禁煙とするものの例外規定が多く、当初から懸念の声が上がっていました。厚労省...