2022/08/02

🇫🇮ストレートネック

首の骨である頸椎が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれが起こる障害

ストレートネックとは、首の骨である頸椎(けいつい)が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれなどが起きる障害。

通常、頸椎は前に向かって軟らかに湾曲している前湾構造をしており、これにより頭の重さを分散させ、体全体のバランスを取っています。しかし、パソコンや携帯電話、スマートフォンを使うなどで前かがみになって、うつむく姿勢を続けていると、頸椎が頭の重さを支えられなくなるために、生理的に正常な前湾構造が失われてゆがみ、真っすぐな状態に近くなるストレートネックとなります。

生理的に正常な頸椎の前湾角度は30~40度であるのに対して、ストレートネックになった頸椎の前湾角度は30度以下を示します。

ストレートネックになると、歩行などの緩やかな動作を行う際にも、分散しない頭の重さが常時、首回りの筋肉に加わることになります。この負担が長期間にわたって継続すると、首回りの筋肉や神経を徐々に圧迫し、血流も悪くなって、肩凝りや手のしびれが起きることがあります。

パソコンや携帯電話、スマートフォンの普及と比例して発症するケースが多くなっている点も、ストレートネックの大きな特徴であり、仕事中に限らず休憩中や移動中も画面を見詰める20~40歳代の働き盛りに多く、特に女性は男性の2倍ほど多いといわれています。女性は首が細いため、筋肉の疲労が蓄積しやすいのが原因と見なされます。

ストレートネックの症状としては、肩凝り、手のしびれ、頭痛、めまいのほか、首の痛み、首の傾き、首の動かしにくさ、上方の向きにくさ、寝違い、枕の不一致、吐き気、自律神経失調症などがあります。

また、ストレートネックが引き金となって、頸椎の椎間板の一部が後方へずれて神経を圧迫する頸椎椎間板ヘルニアや、頸椎の椎間板と椎骨の変性によって脊髄や神経根が圧迫される頸椎症が起きることもあります。

ただし、一時的に症状が改善したように感じられるケースや、症状が度々治まるケースもあることから、症状が慢性化しない限りストレートネックを見極めることが難しい面もあります。

ストレートネックの検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、頸椎の形状を確認します。頸椎の前湾の角度が少なく、生理的に正常な前湾の角度の欠如が確認された場合は、ストレートネックと確定されます。

確定された場合は、さらにMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、症状の進行状況を確認します。また、ストレートネックが要因となって頸椎に負担がかかり、合併する可能性を持つ頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症などの有無も確認します。

整形外科の医師による治療では、前かがみになって、うつむくという不適当な姿勢を長時間継続することが大きな要素を占める障害のため、姿勢を改め、スマートフォンの画面を見詰め続けたりする悪い習慣を避けることが根本となります。根本を解決しない限り、どのような治療を行っても再発の危険性がぬぐえないためで、実際、ストレートネックを発症した人の半数以上が再発を経験しています。

具体的には、パソコンを使って長時間のデスクワークをする人の場合は、画面を視線の高さに合わせるようにし、負担のかかる前かがみの姿勢が続かないようにしていきます。また、一定時間おきにストレッチを行い、頸部周囲の筋肉の緊張を和らげるようにしていきます。重症ではない限り、姿勢に気を付けストレッチを行うことで十分改善できます。

継続的な負担から頸部に炎症を起こし、痛みが強い場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤や筋弛緩(きんしかん)剤を用いて治療します。局所の安静のために、頸椎固定用のカラー(えり巻き式補装具)を首に装着することもあります。

ストレートネック対策の矯正枕(まくら)もあり、睡眠時を利用して、首に当たる部位の枕の高さを調節することによって、首に正常な湾曲を強要させて矯正していきます。背筋を強制的に伸ばす働きを持つ姿勢矯正ベルトもあります。

そのほかの理学療法としては、外部から温めることによって血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するホットパックなどの温熱療法、首の牽引(けんいん)と休止を繰り返すことによって首の痛みや手のしびれを緩和する頸椎牽引療法、低周波治療、レーザー治療などがあります。

🇵🇦ストレス性高体温症

体は健康であるのに、精神的ストレスで発熱し、37℃以上の高体温となる状態

ストレス性高体温症とは、精神的ストレスで熱が出て、37℃以上の高体温となる状態。心因性発熱とも呼ばれます。

精神的ストレスで高い熱が出るケースもありますが、37℃を少し超える程度の軽い熱がずっと続くケースが多くがみられます。

高い熱が出るケースは、仕事をする、人に会う、授業に出る、極度に緊張する、他人と激しい口論を交わすなどの精神活動に伴って、高熱が出ます。大学入試や資格試験など大切な試験当日の朝、急に39℃の高熱が出たけれど、試験が終わったらすぐ下がったというようなことがあります。

これは小児によくみられるタイプで、すぐ解熱するものの、ストレスの原因を解決しないと何度でも繰り返すことがあります。

微熱が続くケースは、仕事で残業が続く、介護で疲れ果てている、授業と部活の両立が難しいなど、慢性的なストレスが続いて気が抜けない状況や、いくつかのストレスが重なった状況で、37℃台の微熱程度の高体温が続くものです。微熱はしばしば、頭痛、倦怠(けんたい)感などの身体症状を伴います。

これは働き盛りの成人によくみられるタイプで、ストレスの原因が解決した後もしばらく続くことがあります。

この精神的ストレスがある時の発熱は、風邪を引いた時の発熱とメカニズムが異なります。

風邪を引いた時の発熱は、ウイルスやマイコプラズマ、細菌などへの感染によって生じた炎症が信号となり、脳が交感神経と筋肉に指令して体温を上げ、ウイルスなどをやっつけようとする正常の反応です。この時の信号として働くのが、炎症性サイトカインとプロスタグランジンE2(PGE2)と呼ばれる物質。風邪を引いた時に服用する漢方薬の葛根湯(かっこんとう)はサイトカインの産生を抑えることで、また解熱薬はプロスタグランジンE2の産生を抑えることで解熱作用を発揮します。

一方、精神的なストレスがある状況では、ストレスに対処するために交感神経の働きが活発になり、体温が上がります。体温が上がるという点では風邪を引いた時と同じですが、ストレス性の高体温の場合、サイトカインとプロスタグランジンE2は働かないため、医療機関で血液検査をしても炎症反応は認められず、風邪薬や解熱薬など炎症を抑える薬を飲んでも、熱は下がりません。

ストレス性高体温症の症状は、風邪とよく似たもので、頭がくらくらして歩く時にふらついたり、体が熱っぽく感じたり、集中力の低下で仕事や勉強の能率が下がったりするようになります。ストレス性高体温症を風邪と勘違いして解熱剤を服用すると、解熱剤の効果で一時的に体温は下がります。しかし、薬の効果が切れたところですぐに体温が上昇してくるのが、ストレス性高体温症の特徴です。

精神的ストレスは体にも心にも多くの影響を与えますので、ストレスで体調を壊す時、一つの疾患だけでなく、複数の身体疾患、精神疾患が同時に起こることがあります。ストレス性高体温症では、小児では起立性調節障害、成人では緊張型頭痛、うつ病、双極性障害(躁〈そう〉うつ病)、不安障害、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を合併していることがあります。

開業医などの医療機関を受診して各種の検査を受けてもなかなか疾患名がはっきりしないというのも、ストレス性高体温症の特徴です。風邪でもないのに微熱が3週間以上続いている場合には、ストレス性高体温症が疑われることになりますが、自己判断は禁物で、実は感染症、自己免疫疾患、悪性腫瘍(しゅよう)など発熱を伴う器質的な疾患が隠れているかもしれません。

まず、子供の場合は小児科、大人の場合は内科で、しっかり発熱の原因を調べてもらうことが勧められます。器質的な疾患が否定的でストレス性高体温症が疑われる場合は、検査を受けた医療機関から心療内科、ないし精神科を紹介してもらってください。

ストレス性高体温症の治療と生活上の注意

心療内科、ないし精神科の医師による治療は、薬物療法、心理療法、自律訓練法などのリラクセーショントレーニング、合併している身体疾患、精神疾患の治療、生活指導を組み合わせて行います。

薬物療法では、不安障害には、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が使われ、不安を即効的に鎮めます。抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も使われ、長期的な効果が得られています。

うつ病、双極性障害(躁〈そう〉うつ病)などの治療には、抗うつ薬SSRI、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が第一に選ばれる薬となります。不安が合併する時には、抗不安薬を併用します。

十分な睡眠がとれていない人には、睡眠薬が有効です。風邪薬や解熱薬はほとんど効きませんが、緊張型頭痛に対しては有効です。

薬による治療に併せて、過労、緊張状態、対人関係など精神的ストレスの原因を探って、それを改善する心理療法も行います。交感神経の過剰な興奮を鎮め、自律神経を鍛えてバランスを整え、免疫力を回復する自律訓練法を併用すると、さらに効果的です。

日常生活では、仕事や学業、家事などのペースダウンを試みて、精神的ストレスをためないように気分転換を図る、3食きちんとバランスのよい食事を心掛ける、早寝早起きで睡眠を十分にとる、酒やたばこ、コーヒーを控える、軽い運動を定期的に続ける、入浴で心身ともにリラックスするなどが大切です。

🍓ストロベリーマーク

出生時や生後間もなくに出現する、イチゴ状の赤く軟らかい小腫瘤

ストロベリーマークとは、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)。イチゴ状血管腫とも呼ばれます。

出生時にはわずかに赤いか無症状で、生後1週から数週より、平らで小さい赤あざが出現し、次第に増大、隆起し、生後6〜8カ月ごろピークに達します。表面はイチゴの実のように顆粒(かりゅう)状で、軟らかく、鮮紅色を示す場合が多いのですが、色調に変化がないこともあります。また、表面が腫瘤状に隆起するものは3割程度で、6割近くは軽度に隆起するだけです。

ストロベリーマークができる部位は、顔や首が一番多いものの、頭、背中、肩、手足など、どこにでもできます。まぶたや唇、鼻孔部や肛門(こうもん)部、外陰部などに生じたものでは、視力や呼吸に障害を与えたり、腸閉塞(へいそく)などを来す危険性もあります。

大きさは数ミリから数センチとさまざまで、鶏卵大以上の大きな腫瘤になることもあるものの、年月とともに自然に小さくなっていき、早ければ1~2歳で、遅くとも5~7歳ごろまでに自然消退しますが、完全ではなく、表面にしわや変形が残ることも少なくありません。

このストロベリーマークは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するために、皮膚の表面が盛り上がって出現します。胎児期の発達段階にある血管を構成する細胞が何らかの原因で残り、出生後、母親から受けていた増殖抑制因子が欠乏して、増殖するのではないかとも考えられています。

通常、大部分のものは自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団が皮下にあるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

ストロベリーマークの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師は通常、見た目と経過からストロベリーマークを診断します。

自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは、無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたや唇、鼻孔部や肛門部、外陰部などに生じたものでは障害の危険性もありますので、早急に治療を施します。

即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

自然消退した後に表面にしわや変形が残ったケースでは、後日、形成外科的に手術します。また、乳幼児期からレーザーによる早期治療を行い、色調を自然経過よりも淡くしたり、自然消退を促して変形を抑制することもできます。表面の赤あざには、パルス色素レーザーを照射して色調を淡くします。皮下血管腫には、内部にヤグレーザーを照射して血管腫が腫瘤になるのを未然に防いだり、すでに盛り上がった腫瘤を縮小したりします。

なお、ストロベリーマークなどの赤あざに限らず、すべてのあざは日光の紫外線を受けると、症状が悪化したり、医療レーザーの効果が小さくなる可能性があります。症状の悪化や治療効果を妨げないように、過度の日焼けを避けるサン・スクリーン対策をすることが勧められます。

🇷🇺スピッツ母斑

一般に子供の顔面に多く発現し、急速に大きくなる良性の腫瘍

スピッツ母斑とは、特に顔面に、また小児に多く発現する腫瘍(しゅよう)のこと。この最初の報告者の名前に基づいた疾患名のほか、若年性黒色腫、若年性良性黒色腫、紡錘細胞性母斑という別名もあります。

良性の腫瘍であり、ほくろのがんと呼ばれることもある悪性黒色腫(メラノーマ)とは違います。青壮年にできることもありますが、主に3~13歳の幼児や小児にでき、突如として顔面に現れると、急速に1センチ程度まで大きくなるという特徴があります。

一見すると、ほくろのように思えることもありますが、色がやや淡い淡紅色から淡紅褐色のことが多いことや、円形や楕円(だえん)形に盛り上がった部位の表面が滑らかで、光沢があるという特徴を持っています。また、病変の周囲が赤みを帯びることもあります。傷付いたり、出血しやすく、黒褐色の色素沈着を伴うこともあります。

顔面だけではなく、ほかの部位にできることもありますし、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素性母斑の病変内に、スピッツ母斑ができることもあります。

原因は、色素性母斑と同じとされていて、メラニンを作る機能を持っているメラノサイトが病変に集中してしまうことが挙げられています。

スピッツ母斑で悪性化することはありませんが、悪性黒色腫との区別が難しいともいわれているので、見極めが重要になってきます。ただし、この見極めは素人には困難だとされているので、皮膚科や皮膚泌尿器科、形成外科で検査してもらい、慎重な対応をしていくことがポイントになります。

スピッツ母斑の検査と診断と治療

医師によるスピッツ母斑の診断では、見た目だけでは迷うことが多く、最終的には切除した組織の病理検査で確定診断します。組織学的には、著しく色素沈着した真皮表皮接合部に、深部へと広がる多核巨大細胞、類上皮細胞様細胞、紡錘状細胞など混在する細胞が認められます。

鑑別すべき他の疾患として、悪性黒色腫のほか、化膿(かのう)性肉芽腫、偽リンパ腫があります。

医師による治療では、外科的切除が一般的です。切除した組織の病理検査が必要になるケースが多いため、ほとんどの組織が焼き消えてしまうレーザー治療は通常、行われません。

💅スプーンネイル

つめの甲の先端、あるいは全体の表面がへこんでいる状態

スプーンネイルとは、つめの甲の先端、あるいは全体がスプーン状にへこむ状態。匙状(さじじょう)づめとも呼ばれます。

全指のつめがスプーン状に表面がへこんでいる場合、成人では鉄欠乏性貧血の症状のことがあります。同時に、口角炎、口唇炎、赤い舌がある場合は、さらにその可能性が強いので、内科を受診する必要があります。

鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することにより、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の産生が不十分になって、発症する貧血です。ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしていますので、ヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になって貧血を起こし、めまいや、立ちくらみ、スプーンネイルの症状が現れたりします。体内には、鉄分がため込まれているため、すぐに鉄分がなくなってしまうということはありませんが、ため込まれている鉄分がなくなった時に症状が現れます。

また、数本のつめだけに、スプーン状に表面がへこんでいる変化がみられる場合は、局所的な原因のことが多く、クリーニング業など、酸やアルカリ、有機溶剤などに長期間、接している人に生じることがあります。

また、スプーンネイルは、手先に圧迫のかかるような職業の人にも多くみられます。

スプーンネイルの検査と診断と治療

内科や皮膚科の医師によるスプーンネイルの治療では、鉄剤を内服します。この鉄剤には、徐放性鉄剤と非徐放性鉄剤があります。徐放性鉄剤は、胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出して、少しずつ吸収されるため、胃粘膜への刺激は少なく、空腹時に飲むことができます。ただ、この製剤は胃酸がないと効果がないため、胃の切除を受けた人には使えません。非徐放性鉄剤は、胃を切除した人や胃酸の分泌が低下している高齢者、低酸症の人に吸収可能な薬剤です。

徐放性、非徐放性ともに主な副作用として、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹痛、下痢、便秘などの胃腸障害を起こすことがあります。鉄剤を服用すると便が黒くなることがありますが、心配はいりません。貧血が改善されたからといって、医師の指示なしに服用をやめてはいけません。赤血球中のヘモグロビンの量が正常になっても、その後2〜3カ月は服用を継続する必要があります。

スプーンネイルは、生活習慣の改善によって予防することができます。まず、無理なダイエットや偏食、不規則な食事、夜更かしを改め、鉄分の多い食品を積極的に摂取します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっても、鉄分を意識的に摂取することはお勧め。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

成人男性は鉄分を1日約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの摂取を心掛けたいもの。女性は月経や妊娠、授乳のため鉄分が失われやすいので、男性より多くを必要とします。鉄分を多く含む食品は、大豆、大豆製品、レバー、ひじき、もずく、のり、あさり、かき、ほうれん草、小松菜、切干大根、いわし丸干し、牛もも肉、まぐろ赤身など。

蛋白(たんぱく)質を摂取することも、大切です。ヘモグロビンは鉄と蛋白質でできているので、肉や魚、豆腐、卵などを適量食べます。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進させる働きがあるので、野菜や果物なども食べるようにします。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンを鉄分と一緒に摂取すると、鉄分の吸収が悪くなりますので、食事とは時間をずらして飲むとよいでしょう。

💅スプリットネイル

爪の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態

スプリットネイルとは、爪(つめ)の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態。オニコレクシス、爪甲(そうこう)縦裂症とも呼ばれます。

爪の甲に縦線が入るのは老化現象として一般的にみられるものですが、スプリットネイルでは縦の割れ目が入るまでに至り、しかも、その割れ目は深く、爪が2つに分かれていることがはっきり確認できるほどになります。

1本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合のほか、数本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合、すべての爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合もあります。炎症や痛みを伴う場合もあります。

スプリットネイルの原因は、爪母の損傷、栄養素不足、マニキュアや薬剤、水仕事、爪根部の末梢(まっしょう)循環障害、皮膚疾患、全身性疾患などいくつかあります。

爪の付け根の皮下にあり、爪を作り出している爪母を強打したり、傷付けたりして、爪母が損傷した場合は、新しく生えてくる爪にはすでに縦の割れ目が入っていたり、中央で裂けていたりします。この縦の割れ目は爪母に損傷が加わってできるものですから、現れるのは損傷が加わってから数週間後。

食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素不足になった場合も、爪がもろくなっているために、圧迫などによって簡単に縦の割れ目が入ることがあります。偏った食生活や過度なダイエットによって鉄欠乏性貧血になり、これが原因でスプリットネイルになることもあります。

手の爪に施すマニキュア、足の爪に施すペディキュア、マニキュアなどを落とす除光液(エナメルリムーバー)を使用する機会の多い女性や、仕事で有機溶剤や殺菌・消毒用のアルコールの一つであるエタノール(エチルアルコール)を使用している人の場合、揮発性の高い溶剤が爪から水分と脂分を奪い、爪表面を乾燥させるために、縦の割れ目が入りやすくなります。マニキュアなどを落とす除光液に含まれるアセトンなどが外的刺激になって、スプリットネイルを誘発することになります。

水仕事の多い人や、湿気の多い環境にいる人も、水分過多によって爪がもろくなったり、お湯の使用によって爪の脂分が奪われるために、縦の割れ目が入りやすくなることもあります。蛋白質を分解する成分が入っている洗剤などが、蛋白質の一種のケラチンを主成分とする爪への外的刺激になって、スプリットネイルを誘発することもあります。

自律神経失調症や糖尿病などが原因で末梢循環不全という疾患を発症し、手足などの末梢まで血液循環が行き届かず爪に必要な栄養素が不足した場合も、爪に縦の割れ目が入ったり、爪が伸びなかったりすることがあります。

乾癬(かんせん)、湿疹(しっしん)、皮膚炎、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)、カンジタ菌による爪囲炎などの皮膚疾患がある場合も、爪がもろくなって爪の甲の先端や中央部に縦の割れ目が入ることがあります。

卵巣機能障害、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、慢性肝障害、貧血、低体温、糖尿病、高尿酸血症、神経疾患などの全身性疾患がある場合も、それが原因でスプリットネイルを合併して発症することもあります。

爪に縦の割れ目が入るのは、体に異常が出ているシグナルかもしれません。爪に何カ所も割れ目が入り、炎症や痛みがある場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

スプリットネイルの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲に縦の割れ目を起こし得る外的物質や薬剤、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、原因に応じて行います。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合があります。

爪を作り出している爪母の損傷が原因でスプリットネイルを来している場合は、現在の医療では手当できないとされています。

栄養素不足が原因の場合は、まずは蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類など、爪に必要な栄養をしっかり摂取します。

マニキュア、除光液、有機溶剤、あるいは水仕事などが原因であれば、極力それらの使用や機会を中止したり、減らします。爪への負担が減るため、多くのケースでは自然に治ります。仕事などでどうしても薬剤、水、洗剤などを使わなくてはいけない場合は、手を保護するものを着用したり、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行います。

爪の末梢循環不全が原因であれば、ステロイド剤を配合した塗り薬をこまめに塗ったり、末梢血管の収縮を防ぐビタミンEの飲み薬を内服します。医師による治療と並行して、血液循環をよくするために日ごろから、手足のマッサージ、爪もみを心掛けます。

一部の爪にスプリットネイルがみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。すべての爪にスプリットネイルがみられる全身性疾患があれば、その治療を行います。

🏃‍♀スポーツ心臓

長期にわたり、激しい肉体運動を続けるスポーツ選手などにみられる心臓の状態

スポーツ心臓とは、長期にわたって激しい肉体運動を続けるマラソン、水泳、ボート、自転車などの持久力を要するスポーツ選手にみられる、心臓が肥大する症状。アスリート心臓、スポーツ心臓症候群とも呼ばれます。

1899年、スウェーデンのヘンシェン医師がクロスカントリースキー選手の診察をして、心臓疾患がないのに心臓が大きくなっていることに気付いて、この特異な症状をスポーツ心臓と名付けました。

高血圧や心臓弁膜症などの疾患でも心臓が大きくなりますが、このような病的な心臓とスポーツ心臓との最も重要な相違は、病的な心臓では心機能が低下しているのに対して,スポーツ心臓では心機能が優れている点です。一般的に、スポーツを中止すると平常のサイズの心臓に戻ります。

スポーツ心臓の特徴は、心臓自体が球状に大きくなっていくのとともに、不整脈や徐脈など脈拍に変動がみられることが挙げられます。

一般的な人の場合、安静時の心拍数は1分間に60~80回が正常とされ、安静時の心拍数が50回以下になると、脈拍が遅くなる徐脈性の不整脈である疑いが指摘されます。しかし、スポーツ心臓が出現するようなトップ選手では、安静時の心拍数が40回を下回ることが少なくなく、中には30回以下という例もあります。一般の人では異常とされる所見も、スポーツ心臓の場合には激しい肉体運動によって心臓に構造的、機能的な変化が生じたもので、生理的な適応現象だと考えられています。

なお、脈拍は徐脈の傾向を示しますが、血圧に関しては、一般の人の血圧とスポーツ心臓の人の血圧とには、数値にそれほど大きな違いはみられないとされています。

スポーツ心臓は、いずれの競技種目の選手にもみられるものではなく、種目によって出現しやすさが変わります。比較的多くみられるのは、マラソン、水泳、ボート、自転車、クロスカントリースキー、重量挙げ、柔道などの持久力や耐久力が必要とされる競技種目の選手です。

スポーツ心臓の特徴を示すに至るには、スポーツ歴が長く、しかもかなりハードなトレーニングを長い期間にわたって続けることが必要になります。ある調査で、1日に10キロほどのジョギングの習慣があり、フルマラソンやトライアスロンのレースにも出場するような市民ランナーを対象に心臓の所見を調べたところ、スポーツ心臓の場合と同様に徐脈の傾向はみられたものの、スポーツ心臓との所見がみられた例はなかったといいます。

このことからも、スポーツ心臓自体はかなりハードで高度なトレーニングを何年にもわたって続けてきたトップ選手にのみ出現するものだと考えられています。トップ選手がスポーツ心臓になる確率は、女性が22・5%、男性が7・5%と女性のほうが高くなっています。

スポーツ心臓は競技種目の特性やトレーニングの強度などにより、心肥大型、心拡張型、複合型に分類されます。

心肥大型は、瞬発力を要するような競技種目の選手に多くみられる型です。代表的な競技種目に、重量挙げや柔道、レスリングなどがあります。筋力トレーニングのように、筋肉を急激に縮めるような運動を行うことで心臓にはその圧力の負荷がかかるため、次第に心臓の壁が厚くなっていきます。特に、左心室の壁に筋肉が増えることによる肥厚が顕著となります。また、それに伴って心臓の重さも増します。

心拡張型は、持久力を要するような競技種目の選手に多くみられる型です。代表的な種目としては、マラソンなどの長距離走や水泳があります。持久性トレーニングのような運動により、運動をしている時には血圧が上昇し、心拍数も増加します。また、1回に心臓から送り出される血液量も増加するため、一度に送り出す血液の容量を増やすという負荷が心臓に加わります。その結果、次第に心臓は容積を増やすように拡張して大きくなります。とりわけ、左心室の内腔に容積の拡大が顕著にみられるという特徴があります。

複合型は、心肥大型と心拡張型との両方が起こった状態です。代表的な競技種目に、自転車やクロスカントリースキーがあります。競技時間が長く有酸素的な酸素供給量が必要なことと、筋肉が1回当たり出力している時間が他の競技と比べ長いために、心室の壁が厚くなり、かつ心室の容積が増えるタイプの心臓となります。

心電図にしばしば異常が認められ、不整脈や徐脈など脈拍に変動がみられる場合でも、スポーツ心臓と診断される場合には病的なものとはされません。しかし、例えばスポーツ中に突然死する原因の一つとされる肥大型心筋症のように、スポーツ心臓と類似した所見を示す疾患が、スポーツ心臓と誤診される可能性がないわけではありません。

定期的に検診やメディカルチェックを受けるようにして、必要な場合にはきちんと治療を受けておくようにすることが大切です。

スポーツ心臓の検査と診断と治療

循環器科、内科循環器科、内科などの医師による診断では、スポーツ歴、病歴を問診した上、聴診、心電図検査、胸部X線検査を行います。スポーツ心臓の特徴である聴診時の心雑音、安静時の心拍数が1分間に40~50回未満の徐脈、胸全体の大きさに対して心臓が占める割合である心胸郭比50%超を認める場合は、スポーツ心臓である可能性が高いと判断します。

過去に心筋症や不整脈がなかったことを確認できない場合は、特発性拡張型心筋症、肥大型心筋症などがスポーツ選手にとっての突然死の原因となり得るため、心エコー検査、ホルター心電図検査、運動負荷心電図検査などを追加して精密検査を行い、重篤な心疾患との鑑別を行います。

循環器科、内科循環器科、内科などの医師による治療では、一般に経過が良好なため、処置を行いません。スポーツ心臓における変化は可逆的なのが特徴で、トレーニングを中止するとスポーツ心臓にみられる特徴の多くはみられなくなります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...