2022/08/02

🇹🇷胆嚢炎、胆管炎

2つが合併して起こることが多い

胆嚢(たんのう)炎とは胆嚢に、胆管炎とは胆管に、それぞれ炎症を起こして腫(は)れを生じる疾患です。2つの疾患は合併して起こることが多いため、一緒にして胆道炎と呼ぶこともあります。急性と慢性に分けられます。

肝臓で生成された胆汁を濃縮して貯蔵する胆嚢や、その胆汁を十二指腸に送る管である胆管の炎症は、主に細菌感染で起こります。原因となる細菌で最も多いのは大腸菌で、そのほかにブドウ球菌、連鎖球菌、緑膿(りょくのう)菌などがありますが、近年は緑膿菌が多くなっています。まれにチフス菌もみられます。大部分の症例では、胆石症を合併しています。

胆嚢炎の症状は激しい腹痛と発熱

急性胆嚢炎では、胆嚢から胆汁を送る管である胆嚢頸部(けいぶ)や胆嚢管が胆石でふさがれたことが原因で、約90パーセントが起こっています。流れを遮られた胆汁は、胆嚢の中で濃縮され、胆汁中の化学物質が刺激や圧力を作り出します。この状態に細菌の感染が加わって、炎症がひどくなっていきます。

症状は、右上腹部に激しい痛みが起こると同時に、発熱します。吐き気が強く、嘔吐(おうと)することもあり、胆管炎を合併すると黄疸(おうだん)が現れます。

腹痛の持続時間は胆石発作では2~3時間程度ですが、4~6時間以上も続く場合には、急性胆嚢炎を疑います。また、腹部全体が硬くなっている時は、胆嚢が破れて胆汁性腹膜炎を起こしている可能性があります。

胆嚢の炎症を繰り返すと、胆嚢の壁が厚くなって収縮機能は低下し、慢性胆嚢炎になってしまいます。慢性の場合の症状としては、右上腹部に軽い痛みが時々、現れ、発熱をみることがあります。

胆嚢の働きが悪いので、脂っこい食事を取ると、消化不良を起こして、便秘になったり、腹痛、食欲不振、吐き気が続きます。

胆管炎ではショック症状が加わることも

急性胆管炎では、約80パーセントが胆管の結石によるものです。膵(すい)頭部がんや胆管がんなどの腫瘍(しゅよう)による胆管狭窄(きょうさく)、膵炎、手術後の胆管狭窄なども、胆管炎の原因となります。胆管の出口の乳頭括約筋括の機能が不十分な高齢者では、細菌が侵入して感染が起こりやすいといわれています。

症状は、寒気を伴う発熱、黄疸、食後の右上腹部痛が典型的です。痛みはしばしば右の肩や背中に響き、吐き気や黄色い液を吐いたりします。

胆管の閉塞(へいそく)に細菌の感染が加わると、胆汁中の細菌の毒素が肝臓内の血液やリンパ管を介して全身に広がり、死に至る急性(閉塞性)化膿性胆管炎を引き起こすこともあります。発熱、黄疸、右上腹部痛に、意識障害やショック症状が加わります。高齢者では、必ずしも症状がそろわないで重症化することが多いようです。

発熱を伴った右上腹部痛に気付いたら、内科や外科の診察を受けることが最も重要となります。中には腹痛もなく、微熱だけが続く場合がありますが、やはり一度は診察を受ける必要があります。

黄疸に気付いたら、すぐに診察を受けなければなりません。特に、高齢者の急性胆管炎では重症となりやすいため、注意が必要です。

検査と診断と治療

医師の側では最初に、詳しい症状を聞き取る問診や、聴診、触診を行います。血液検査では、白血球の増加や炎症反応、肝臓や胆道の酵素上昇を調べます。画像診断では、腹部超音波検査を行って、胆嚢の腫大、胆嚢壁の肥厚、胆嚢内の胆泥、胆嚢の液体貯留を調べます。腹部CT検査、内視鏡的逆行性膵胆管造影、経皮経肝胆道造影、磁気共鳴膵胆管造影を行うこともあります。

急性胆嚢炎の治療では、炎症を抑える抗生剤の投与を主体とする保存的治療、感染した胆汁を抜き取るドレナージ療法、胆嚢を摘出する外科治療が行われます。保存的治療やドレナージ療法で炎症は改善されますが、きわめて重症な場合や、慢性化して胆嚢の機能が失われ、その上に胆嚢内に膿汁がたまっているような場合には、内科的治療の効果は得られないことが多く、外科的手術が必要となります。

この際、腹腔(ふくくう)鏡下胆嚢摘出術が標準治療となりますが、手術に危険が伴う場合には、内科的治療のみで経過をみることもあります。

急性胆管炎では、ショックや臓器障害に進展する危険性があるため、強力な抗生物質の投与、胆管内を閉塞している炎症物質や胆汁を排除し、胆道の内圧を下げるためのドレナージ療法など、緊急な対応が必要です。

胆道ドレナージ療法としては、内視鏡的経鼻胆道ドレナージや経皮経肝的胆道ドレナージ、開腹手術によるドレナージがあります。胆汁排出量の確認や胆管の洗浄ができるため、内視鏡的経鼻胆道ドレナージが標準治療となります。胆道の減圧処置により全身状態の改善を図った後に、胆管炎の原因となった病気の治療を行います。

また、食事は脂肪を制限しますが、エネルギー不足や、必須不飽和脂肪酸の不足にならないように、心掛けなければなりません。

🇹🇷蛋白漏出性胃腸症

血液中の蛋白質が消化管の中に漏れ出てくる疾患

蛋白(たんぱく)漏出性胃腸症とは、血液中に含まれている蛋白質が胃壁や腸管壁から大量に漏れて、消化管の中に出てくる疾患。広い意味での吸収不良症候群の一つに含まれます。

血液中の蛋白質、特にアルブミンが消化管の中に異常に出てくることによって起こる低蛋白血症によって、むくみや貧血、腹水などの主症状が現れてきます。

蛋白が漏出する原因には、潰瘍(かいよう)形成に基づくもの、消化管の粘膜の病変に基づくもの、リンパ系の異常に基づくものがあり、これらが単独、あるいは複合して漏出を起こすと考えられています。

潰瘍形成に基づくものでは、消化管に潰瘍ができ、そこから血液中の蛋白質が漏れる多発性潰瘍、胃がん、クローン病、小腸潰瘍などが原因となる疾患として挙げられます。

消化管の粘膜の病変に基づくものでは、びらん性胃炎、メネトリエ病、アレルギー性腸炎、大腸ポリポージスなどが原因となる疾患として挙げられます。メネトリエ病では、胃粘膜のひだが著しく厚くなり、そのひだの間から蛋白質がつららのように流れ出します。

リンパ系の異常による基づくものでは、腸壁から静脈に至るリンパ管の形成不全や閉塞(へいそく)による腸リンパ管拡張症、悪性リンパ腫、腸結核、フィラリア病などが原因となる疾患として挙げられます。腸リンパ管拡張症では、小腸壁のリンパ管が病的に拡張し、そこから蛋白質が漏出します。フィラリア病は、亜熱帯地方にいる寄生虫のフィラリアの感染によって起こり、男性の精巣が大きくなったり、足が象の皮膚のようになります。

いろいろな疾患によって蛋白漏出性胃腸症が起こるため、その症状も雑多で、むくみや貧血、腹水のほか、下痢、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、腹部膨満感、腹痛、栄養不良、発育障害などを起こします。時には、脂肪の消化障害によって、白色で脂肪を含んで酸性臭のある脂肪便をみることもあります。

蛋白漏出性胃腸症の検査と診断と治療

原因不明のむくみに気付いたら、総合病院の内科を受診します。

医師による診断では、詳しい検査が必要とされるため、多くは入院して検査を受けます。血液検査では、低蛋白血症、低コレステロール血症、低カルシウム血症、鉄欠乏性貧血がみられます。血液中の蛋白質の胃腸管への漏出を証明するためには、アイソトープを利用したα1—アンチトリプシンクリアランス試験やシンチグラフィが行われます。

さらに原因となる疾患の診断には、消化管造影X線検査、内視鏡検査、生検による組織検査、リンパ管造影、尿検査による尿蛋白測定や、糞便(ふんべん)の潜血反応、肝臓機能検査なども行われます。

蛋白漏出性胃腸症の治療法は、原因となる疾患によって多少異なります。低蛋白血症を改善するためには、十分なエネルギーと高蛋白食を摂取します。そのほか、アルブミンの点滴静注や、カルシウム、ビタミンの補給も行われます。

メネトリエ病では、H2受容体拮抗(きっこう)剤やプロトンポンプ阻害剤などの薬物療法が行われます。この保存的治療で効果があまりなく、病変が限局している場合には外科的治療の適応となり、胃切除術によって低蛋白血症の多くは改善されます。

腸リンパ管拡張症では、低脂肪食、高蛋白食の摂取と、中鎖脂肪酸を含む半消化態栄養剤の投与が行われます。薬物療法としては、通常は利尿薬やアルブミン製剤の投与が行われますが、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与が有効な場合もあります。

そのほかの症例では、原因となる疾患に対する治療が行われます。

🇫🇷弾発指

手の指に起きる腱鞘炎の一種で、手の指を曲げ伸ばしする際にばね現象が発生

弾発指(だんばつし)とは、手の指に起きる腱鞘(けんしょう)炎の一種。ばね指、肥厚性腱鞘炎とも呼ばれます。

手の指には、指の関節を曲げたり伸ばしたりする腱というものが備わっています。手を握ったりする強い力を発揮する筋肉は前腕にあり、その力を筋肉と骨を結び付けている腱が伝えます。腱のうち指を曲げる腱を屈筋腱といい、親指には1本あり、人差し指から小指には深指(しんし)屈筋腱と浅指(せんし)屈筋腱の2本がそれぞれあります。

計9本の屈筋腱の外囲には、筒状に包む腱鞘という組織があります。腱鞘には、指を曲げる時に腱が浮き上がらないようにする硬い靭帯(じんたい)性腱鞘と、靱帯性腱鞘を裏打ちしている滑膜性腱鞘があり、滑液という油のようなものを分泌して、屈筋腱と靱帯性腱鞘が擦れて摩擦が生じにくいようになっています。そのほかの腱の周囲は、パラテノンという軟らかい軟部組織が覆う構造になっています。

しかし、指の付け根の手のひら側で、機械的刺激によって力が掛かりやすい部位で、屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると腱鞘炎になります。腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、はれ、熱感が生じます。朝方に症状が強く、日中は手を使っていると症状が軽減することも少なくありません。

この腱鞘炎が進行して、指を動かす時の痛みとともに腱の動きが悪くなって、腱が厚く硬くなったり、腱鞘が厚くなると、ばね現象を現すようになり、弾発指となります。ばね現象とは、腱鞘炎のために動きの悪くなった指が伸びたままになったり、曲がったままになって、それを無理に伸ばそうとしたり、曲げようとしたりすると抵抗があり、ばね仕掛けのようにピクンと曲がったり、伸びたりする現象です。

指の付け根に腫瘤(しゅりゅう)を触れ、圧痛があります。重症例では、安静時にも痛みがあったり、発赤などの症状があったり、指が動かない状態になることもあります。

弾発指は手の酷使による機械的刺激で発生しますが、主に妊娠時、産後や更年期の女性に多く発生することから、ホルモンバランスの影響も考えられています。ゴルフ、テニス、野球などのスポーツをする人や、指をよく使う仕事の人にも多いのも特徴で、最近ではパソコンや携帯電話で指を酷使する人にも発生します。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。

小児にも弾発指は発生しますが、親指以外の発生は多くありません。親指に発生する弾発指は弾発母指、あるいはばね母指とも呼ばれ、先天性で、靭帯性腱鞘の入り口で屈筋腱がこぶのように大きくなって引き起こされると考えられています。親指の関節が曲がったままで、無理に伸ばすとばね現象がみらます。指の付け根に軟骨のような硬い腫瘤を触れますが、痛み、圧痛はありません。

弾発指の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断は、指の付け根に腫瘤や圧痛があり、ばね現象があれば容易につきます。小児の場合は、握り母指症や先天性母指屈指症との区別が必要です。

整形外科の医師による治療は、成人の弾発指の場合、まず指の過度の使用を避けるよう指導します。また、湿布剤、軟こうなどの使用、非ステロイド性鎮痛消炎剤の投与を行います。時には、副木(ふくぼく)を当てて固定することもあります。

症状が強い時には、局所麻酔薬入りステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を発症している腱鞘に直接注射するのが有効です。3回以上の直接注射は、腱の損傷を起こすことがあるので避けます。

以上の保存療法で効果のない時、慢性化して治りにくい時には、腱鞘を切開する手術が行われる場合があります。手術は局所麻酔を用い、腫瘤が触れる指の付け根に約1cmほどの皮膚切開を入れて、靭帯性腱鞘を縦に切ってトンネルを開放し、腱の滑りをよくします。手術後はすぐに、指の曲げ伸ばしを行うことになります。

小児の弾発母指の場合、全身麻酔を用いた手術で腱鞘切開をすることがありますが、成人になると自然に治るのが普通なので、気長に親指を伸ばしたり、曲げたりする訓練をするのも一つの方法です。

成人の弾発指を予防するには、手の酷使を避けることが一番大切です。

🇩🇪続発性緑内障

ほかの目の疾患などが原因となって、眼圧が上昇するタイプの緑内障

続発性緑内障とは、何らかの目の疾患などが原因となって、眼圧が上昇するタイプの緑内障。一般に、眼圧が上昇することによって視神経が侵され、視野が狭くなったり欠けたりします。

原因は多岐に渡り、ぶどう膜炎、角膜炎などの目のほかの疾患、糖尿病などの全身の疾患、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)などの薬剤、目の外傷、白内障などの手術の影響などが挙げられます。

目のほかの疾患、糖尿病が原因の続発性緑内障では、網膜症の悪化により酸素が行き渡らなくなるために、眼内液の房水(ぼうすい)の排出口に当たる前房隅角(ぐうかく)に、新生血管という新しい血管が延びてくることで眼圧が上昇します。

ぶどう膜炎の炎症、水晶体の亜脱臼(だっきゅう)、眼球内の悪性腫瘍(しゅよう)や網膜剥離(はくり)などの手術の影響が原因の続発性緑内障では、どれも原因となる疾患によって虹彩(こうさい)が押し上げられ、前房隅角が閉塞(へいそく)することにより、眼圧が上昇します。

薬剤が原因の続発性緑内障では、例えばアレルギー性結膜炎や角膜炎に対しての治療で、ステロイド剤の点眼や内服を長期間連用した際に、眼圧が上昇します。起こしやすい素質のある人は、人口のおよそ4パーセントといわれ、決して少なくはありません。

目の外傷が原因の続発性緑内障では、眼球を強く打った後しばらくしてから、虹彩の付け根が眼球壁から外れ、前房隅角より先にある房水の排水路である線維柱帯の機能が悪くなって、眼圧が上昇します。

また、高齢者に多くみられる続発性緑内障の一つとして、水晶体嚢性(のうせい)緑内障があります。片目ないし両目の水晶体、虹彩、隅角などに、フケのような白い物質である偽落屑(ぎらくせつ)が沈着し、しばしば高眼圧を伴います。

続発性緑内障の検査と診断と治療

続発性緑内障は原因となる疾患の種類によって治療法が異なりますので、視野が狭くなる、目が重い、目が疲れる、軽い頭痛がする、肩が凝るといった自覚症状があれば、眼科医の診察を受け、早期の治療で進行を食い止めます。

医師は、視力検査、視野検査、眼圧検査、眼底検査などを行い、充血や炎症を判断し、原因となる元の疾患、合併症についても検査します。

治療としては、原因となっている疾患の治療と、眼圧を下降させるために薬物療法、レーザー治療、手術療法を適宜行います。薬剤としては、局所に投与する点眼剤(縮瞳剤)や全身に作用する炭素脱水酵素阻害剤やグリセリンを用い、房水圧の抑制によって眼圧を下げます。

ぶどう膜炎が原因の場合はステロイド剤による消炎、新生血管が原因の場合は網膜へのレーザー治療や手術、水晶体が原因の場合は白内障手術などが必要です。また、水晶体嚢性緑内障では、レーザー治療が有効であることが知られています。原因となる疾患が鎮静化せず、高眼圧が続く時は、降圧のために緑内障手術治療も必要になります。

ステロイド剤が原因の場合は、その投与を中止すると、数日で眼圧は正常に戻ります。しかしながら、一度枯れた視神経は元には戻りませんので、ステロイド点眼薬を使用する際は、1カ月以上連用しないことが最も大切です。アレルギー性結膜炎や角膜炎などの治療のために、この目薬を渡される際には、医師から点眼の量、回数、期間などの注意、眼底検査の必要性、副作用などについて十分な説明があるはずですから、厳重に守るようにします。

緑内障は早期発見、早期治療を行えば大事には至りませんが、眼圧を常に上手にコントロールしていかなければならない疾患で、眼科医と一生付き合っていかなければなりません。つまり、眼圧をコントロールする点眼薬や内服薬を医師の指示通りに使用し、定期的に眼圧などの検査を受けます。

日常生活では、コーヒー、アルコール類、お茶などの刺激物や水分の取り過ぎに気を付け、目を疲れさせないようにし,血液の循環をよくするために過度の喫煙をやめ、便通もよくするよう気を付けます。加えて、首を圧迫するような服装は避け、ストレスのたまらない生活を送るように心掛けます。

🇺🇸側副靱帯損傷

膝の内側と外側にあって、関節の横ぶれを防いでいる側副靱帯が損傷、断裂した状態

側副靱帯(そくふくじんたい)損傷とは、膝(ひざ)の内側と外側にあって、関節の横ぶれを防ぐ役目をしている側副靱帯が損傷、断裂した状態。

側副靱帯はすじ状の繊維性結合組織で、大腿骨と下腿骨の脛骨(けいこつ)および腓骨(ひこつ)とを連結しています。

スキーやサッカーなどのスポーツで急激な反転、方向転換をした時に、下腿が無理に内側や外側へ曲げられて起こります。この側副靱帯の損傷は、内側に多く、外側の受傷は比較的まれです。

損傷を受けると、階段を降りる時や歩行などの時に膝がグラグラして、安定しなくなります。断裂すると、断裂部の圧痛と腫脹(しゅちょう)、膝を軽く屈曲した位置で側方へ動揺する不安定性をみます。

整形外科医の診断では、膝の不安定性を検査します。この場合、麻酔下で、痛みのために起こる筋肉の防御的緊張を取り除いた状態で行うと、はっきりします。不安定性の程度によって、痛みのみで不安定性はない1度、膝を伸ばした状態、伸展位で不安定性はないが、30度ほど屈曲すると認められる2度、伸展位で不安定性を認める3度に分類されています。

側副靱帯単独の損傷のことが多いのですが、3度の不安定性がある場合は、前十字靭帯損傷を合併している可能性があります。そのほか、X線撮影、関節造影、MRI、関節鏡などの所見を総合的に判断して、診断します。

内側の側副靱帯の損傷の場合、損傷の程度により2週間から4週間、弾性包帯、ギプス、固定装具による安静固定を行います。痛みや炎症の強い時期は、冷湿布などで冷やします。

内側の側副靱帯の単独損傷では、しっかりした固定とリハビリによって、回復することも多くみられます。しかし、しっかりした固定をしないと、痛めた靱帯が伸びた状態で修復され、膝関節が不安定な状態となり、痛みや腫(は)れも慢性化するケースがあります。慢性化した場合は、サポーターなどによる固定をしたり大腿四頭筋の強化訓練をして、膝関節がグラグラしないように安定させる必要があります。

また、完全に靱帯が断裂している重症のケースでは、膝関節の不安定性が大きくなるために手術を要することもあり、靱帯縫合術、靱帯再建術を行います。前十字靱帯の損傷と合併している場合も、その不安定性が大きく、スポーツや重作業に復帰するには手術をしたほうが予後も良好のようです。

外側の側副靱帯の損傷の場合も、損傷の程度により2週間から4週間、ギプスなどによる安静固定を行います。炎症や痛みの強い時期は、冷湿布などで冷やします。

スポーツや事故による損傷では、外側の側副靱帯の単独損傷を発生するケースはほとんどみられず、十字靱帯損傷や、膝裏の筋肉である膝窩(しっか)筋損傷、膝関節の中の軟骨である半月板損傷に合併して生ずることが多いため、固定期間や安静期間は、専門医の判断に委ねるべきです。

単独損傷では、後遺症として関節の不安定性が起こる場合は少なく、また不安定性を起こしても内側の側副靱帯と比較して、その動揺の程度は小さく回復も良好ですが、複合靱帯損傷では、多くが強固な靭帯修復術が必要になります。

🇦🇲側湾症

背骨がねじれを伴って側方に曲がる疾患

側湾症とは、脊椎(せきつい)、すなわち背骨がねじれを伴って側方に湾曲する疾患。脊椎側湾症、脊柱側湾症とも呼ばれます。

人間の脊椎は7個の頸椎(けいつい)、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。正常な脊椎は前あるいは後ろから見ると、ほぼ真っすぐに伸びているものですが、側湾症の場合には、脊椎が側方、すなわち横方向に湾曲し、脊椎のねじれも加わっています。

湾曲のパターンは主に、3つに分けられます。胸椎を中心に曲がる胸椎カーブ、腰椎を中心に曲がる腰椎カーブ、そして、胸椎と腰椎の間で曲がる胸腰椎カーブです。

側湾症は痛みを伴うことはまれなため初期における発見は難しく、ある程度進行してから気付く場合が多くみられます。肩や腰の高さが左右で違うなどの外見上の問題のほか、高度の湾曲になると、腰背部痛に加え胸の圧迫と変形による呼吸器障害、心臓の圧迫による循環器障害など内臓にも影響を及ぼしたりします。

日本では、乳幼児の健康診査や学校の健康診断で脊椎検査が行われており、1980年(昭和55年)年ごろよりモアレ式体型観察装置を用いた撮影による検診(モアレ検査)が普及し、早期発見が可能になりました。

側湾症のうち、原因のわからない特発性側湾症が80~90パーセントを占めています。発症時期により、0歳~3歳に発症する乳幼児側湾症、4歳~10歳に発症する学童期側湾症、10歳以降に発症す思春期側湾症に細分され、多くが思春期側湾症であることから、小学校4年生から中学校3年生までの間が特に注意が必要とされ、男子の5~7倍と女子に多く発症します。

曲がりの角度が10度以上の人は女子の2〜3パーセントにいるとされ、軽症なら疾患ではなく単なる骨格の特徴と考えられていますが、成長とともに徐々に進行することもあり、角度が20度以上になると注意が必要です。原因は不明ですが、遺伝も一部関連しているようです。

原因の特定ができている側湾症としては、先天的または発育段階に生じた脊椎の異常によって発症する先天性側湾症のほか、脳や脊髄の異常によって発症する神経原性側湾症、筋肉の異常により正常な姿勢を保てないことによって発症する筋原性側湾症、神経線維腫(しゅ)症(レックリングハウゼン病)による側湾症、間葉系疾患であるマルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などによる側湾症、さらに外傷性側湾症、その他の原因による側湾症が挙げられます。

側湾症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、身長、体重の測定に始まり、肩の高さが左右同じかどうか、背中側から見て肩甲骨の高さに左右差はないか、骨盤の傾きはないか、深くお辞儀をした格好で肩や肩甲骨の高さに左右差は出ないか、という4つのチェックポイントを中心に、外観上の骨格の変形を調べます。

特発性側湾症では、出っ張った側の肋骨(ろっこつ)が盛り上がっているのがはっきりわかります。皮膚にコーヒー色の色素斑(はん)や硬い盛り上がりがあれば、神経線維腫症(レックリングハウゼン病)が原因で側湾が起こったと見なします。神経線維腫症は、脳神経や脊髄神経および皮膚の末梢(まっしょう)神経に腫瘍(しゅよう)が発生する遺伝性の疾患で、皮膚に色素が沈着するのが特徴です。

側湾の状態を正確にみるためには、X線(レントゲン)検査を行い、いろいろな姿勢でさまざまな角度から、頸椎から骨盤までを長いフィルムで撮影します。また、コブ法という方法で、側湾の度合を測り、脊椎の回旋の状態、矯正の可能性なども、各種の計測によって調べます。

X線検査と計測は一定期間ごとに行い、側湾の進行、矯正治療の効果などを観察します。特発性側湾症の場合は、骨の成長が終わる18歳ごろまで半年から1年に1回、X線検査と計測を行います。

整形外科の医師による治療では、コブ法による計測で20~50度の側弯症は、一般に脇(わき)から腰までを覆う矯正装具を身に着け、側湾症体操を毎日欠かさず行うことで、曲がった脊椎を矯正します。矯正装具による治療は、骨の成長が終わる18歳ごろまで続け、3~4カ月ごとに側湾の状態と装具の適合性をチェックしたり、状態に応じた側湾症体操の適応を検討しながら進めます。

また、牽引(けんいん)療法やギプスなどにより、側湾の矯正と進行の防止を行うこともあります。

コブ法による計測で50度以上に進んだ強い側湾は、一般に手術による治療が必要になります。手術の目的は、主として、側湾の進行防止、肺の機能障害が出ている場合の悪化防止、著しい変形に対する美容上の矯正などです。腰背部痛を起こしている場合や、神経性の疾患を合併している場合などにも、手術を行うことがあります。

手術は、牽引やギプスによって可能な限り矯正してから行い、背中などを切開して背骨にボルトを入れ、金属の棒でボルトをつなげて固定します。手術後の安静期間を含めると、3〜6カ月の長期間にわたる入院が必要になります。

🇦🇪鼠径ヘルニア(脱腸)

足の付け根などから腸などの臓器が脱出した状態

鼠径(そけい)ヘルニアとは、足の付け根の特に内側の部分や下腹部から、腸などの臓器が脱出した状態。俗に脱腸とも呼ばれます。

おなかを覆う腹膜が弱いことが原因になって、腹筋の圧力で臓器が脱出します。先天性(若年性)と後天性のものがあります。

男性の場合、脱出した臓器は主に陰嚢(いんのう)に飛び出るため、袋が大きく膨らみます。女性の場合、または男性でも部位によっては、下腹部にポコッとした膨らみができます。膨らんだ部分によって、鼠径ヘルニアは細かく外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿(だいたい)ヘルニアに分けられます。

体の中の至る所にできるヘルニアの中で最も多いのが外鼠径へルニアで、大部分は小児期、特に乳幼児期に発生し、右側、左側、そして両側の順に多く、男女比は4対1です。乳幼児の場合は、泣いた時、入浴させた後、おむつを取り替える時などに気付きます。

胎児の段階で、袋状になっている腹膜鞘状(しょうじょう)突起というものが形成され、成長に従って陰嚢に下がってきて、本来であれば袋の口がふさがります。生まれ付き、袋の口がふさがっていなかったり、ふさがっていても不十分だったりすることが、先天性鼠径ヘルニアの原因になります。

生後1年以内で自然に治る可能性がありますが、年を加えるにつれて、その可能性は少なくなります。また、学童期に近付いて運動が激しくなるにつれて、症状が著明になります。

後天性鼠径ヘルニアは高齢者にみられ、加齢することで腹膜や筋肉が弱るために、小腸などの臓器が鼠径部分に脱出してきます。たいてい脱出する穴であるヘルニア門が非常に大きく、ヘルニアの内容部が大きく袋状に突き出ます。 起こしやすいのは、ふだんから立って作業することが多い人や、重い荷物を持ち上げることの多い人、便秘気味でトイレで気張る人、妊婦、せきやくしゃみをよくする人、太った人など。

当初のうちは、腹に力を入れると下腹部に軟らかい膨らみを感じる程度で、手で押したり、横になってリラックスすれば簡単に引っ込のが普通です。しかし、何回も繰り返していくうちに、ヘルニア門が広がってきて突き出す部分が増え、痛みや便秘などの症状を伴うことになります。

まれに、臓器の突き出した部分がヘルニア門で締め付けられて戻らなくなってしまうことがあります。これを嵌頓(かんとん)ヘルニアと呼び、締め付けられた状態が長期に及ぶと、血流の流れが妨げられて、腸が腐る壊死(えし)に至ることがあり、激しい痛み、嘔吐(おうと)などの腸閉塞の症状が出現します。

鼠径ヘルニアの検査と診断と治療

大人の鼠径ヘルニアの場合、放置していると悪化していく一方で、嵌頓ヘルニアにもなりやすいので、早めに消化器科、外科を受診します。鼠径ヘルニアは見た目で気付きやすいので、乳幼児の場合も早めに受診します。

生後1年以内で自然に治る可能性がある乳幼児の鼠径ヘルニアの治療としては、ヘルニアバンドによってヘルニア内容物の脱出、増大を防ぎます。乳児ではヘルニアバンドをしているだけで自然に治る可能性があります。

年長児や大人の鼠径ヘルニアの治療としては、一応、臓器が突出しないようにヘルニアバンドで抑える方法もありますが、常時装着しておく必要があるなど通常生活にかなりの負担を強いることになり、早いうちに手術を受けることが勧められます。

手術は大きく分けて、従来法の手術(バッシーニ法)、腹腔(ふくくう)鏡下手術、メッシュ法の3種類が行われます。

従来法の手術は、腸管などの出てくる穴を周囲の筋肉を寄せて縫い合わせてふさぐ方法。入院が1週間と長い、術後に痛みがある、再発率が15パーセントと高いなどの問題があって、今はそれほど行われない手術法です。

腹腔鏡下手術は、腹部に小さな穴を3カ所開けて、モニターを見ながら手術を行う方法。脱出部に、腹腔内からポリプロピレン製のメッシュで閉鎖固定をして補強します。手術時間が1時間と長いというデメリットがある。

手術の主流となっているのは、メッシュ法。全世界の鼠径ヘルニア手術の90パーセントを占め、日本でも85パーセントを占めています。再発率が3パーセントと低い、手術時間が15~20分と短い、局所麻酔で行える、手術創が3~4センチと小さくて痛みが軽いなどのメリットがあります。

メッシュ法の中のメッシュ&プラグ法では、脱出した小腸などを押し戻して穴にふたをするように、ポリプロピレン製のバドミントンの羽根のような形のプラグを入れ、さらに、鼠径管内にメッシュシートを入れて補強し、皮膚を縫合します。メッシュ法にはこのほか、リヒテンシュタイン法、クーゲル法、PHS(プロリン・ヘルニア・システム)法などがあります。

鼠径ヘルニアは、立ち仕事の人、重い荷物を持ち上げることの多い人、せきをよくする人、妊娠している人、便秘症の人、太っている人がなりやすいといわれています。その点から、食生活で行う予防方法は以下の3点です。

野菜を積極的に摂取。野菜は葉物と根の物をバランスよく、また赤、黄、緑、白など色合いも考えて1日350グラムは取るようにすると、肥満予防に結び付きます。

食物繊維を十分に摂取。今日の日本人の食物繊維摂取量は1日平均15グラムですが、1日平均20~25グラムにします。そのために、豆類、海藻類、キノコ類、山菜類を積極的に取ると、バナナのような健康的な硬さの便になります。

ヨーグルトやオリゴ糖を摂取。腸内の善玉菌であるビフィズス菌はヨーグルトで増え、オリゴ糖はビフィズス菌のエサになります。善玉菌が優位になると便秘知らずに。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...