2022/08/02

🇭🇳桐沢型ぶどう膜炎

ヘルペスウイルスの眼内感染が原因で、ぶどう膜と網膜とに炎症が起こる疾患

桐沢型ぶどう膜炎とは、単純ヘルペスウイルスや水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスの眼内感染によって、ぶどう膜と網膜に炎症が起こる疾患。急性網膜壊死(えし)とも呼ばれます。

1971年に、東北大学の浦山晃、山田酉之らの眼科研究者により、当時の上司である桐沢長徳教授の名前を採用して、初めて報告されたぶどう膜炎です。その後、欧米で報告された急性網膜壊死と同一の疾患であることが、ウイルスの分離により確認されました。

重症の眼疾患の一つで、高度の網膜血管炎による血流障害から網膜の壊死を起こし、また高頻度に網膜剥離(はくり)を合併し、しばしば高度の視力障害を来します。

主要な原因ウイルスとして、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、水痘・帯状疱疹ウイルスが確認されています。これらのヘルペスウイルスは成人ではほとんどがすでに感染していて、体内に潜伏していると考えられていますが、多くの場合、生涯にわたり特に問題なく経過します。

しかし、この桐沢型ぶどう膜炎では、これらの潜伏していたヘルペスウイルスが再活性化することにより、疾患を起こします。健康な人にも生じるため、再活性化の原因は明らかではありませんが、何らかの免疫異常が関与している可能性が示唆されています。

突然、主に片方の目の虹彩(こうさい)、毛様体に、やや強い炎症が起こり、角膜と水晶体との間にある前房や、水晶体の後面に接していて眼球の内容の大部分を占める硝子体(しょうしたい)の混濁、飛蚊(ひぶん)症や視力低下、高眼圧などの症状が出ます。

急速に進行すると、網膜血管が閉塞(へいそく)し、眼底の前方から後方に向かって網膜の壊死が始まります。壊死の部分は黄白色に変化し、網膜に強い炎症とむくみが生じ、網膜が強く損傷、破壊され、多数の穴ができて網膜剥離が起きます。網膜剥離が起こると、高度の視力障害を来し、最終的に失明にまで至ることがあります。

桐沢型ぶどう膜炎は6対1の割合で片方の目に起こりますが、両方の目に起こる場合は発症の時期に差のあることがあります。

桐沢型ぶどう膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、症状から桐沢型ぶどう膜炎を疑い、前房水を採取したり、硝子体の悪い部位をこすり取ったりして、その中に原因となっているヘルペスウイルスがいないかどうかを調べます。

一般には、ヘルペスウイルスを分離するのはごく一部の専門の施設でないと行えないため、ウイルスの持っている蛋白(たんぱく)に反応する抗体を用いた蛍光抗体法や、ウイルスのDNAを検出するPCRという方法を使用します。

眼科の医師による治療では、網膜の壊死を防ぐために、抗ウイルス薬のアシクロビルやバラシクロビルの全身投与あるいは眼内注射を行い、補助的にステロイド剤、抗血小板薬のバイアスピリンの投与を行います。

網膜剥離に対しては、その発症予防にレーザー光凝固術を行い、発症後は網膜剥離手術、硝子体手術を行います。

予後は大変不良ですが、近年の抗ウイルス薬の進歩、レーザー治療、硝子体手術の進展に伴い、治療成績は改善してきています。

🇭🇰起立性調節障害

長時間立っていたり、急に立ち上がる際に、気分が悪くなって倒れたりする疾患

起立性調節障害とは、小中学校の朝礼などで子供が長時間立ち続けていることなどが原因で、気分が悪くなって倒れたりする疾患。起立性低血圧症ともいわれ、俗称で脳貧血ともいわれています。

起立性調節障害は、貧血とは異なります。貧血は血液中の赤血球(ヘマトクリット)の数が減少したり、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の量が減少した状態をいいますが、起立性調節障害の場合は血液を調べても正常で、問題はありません。だから、あくまでも一時的なもので、貧血のように治療を行わなければ治らないというものではありません。

小学校高学年から中学生の子供が気分が悪くなって倒れてしまうのは、立ち続けていると重力によって血液が足のほうへ下がってしまい、脳までうまく血液が循環せずに脳が酸素不足を起こすためです。

人間が立っている時に、血液が一番たまるのは足の静脈です。もともと静脈には血液を送り出す力はほとんどなく、血管周辺の筋肉の収縮を利用するなどして静脈血を上に循環させています。しかし、成長過程にある小中学生では、そのような筋肉がしっかりできていなかったり、血管の弾力性に乏しかったります。

そのような子供が長時間立ち続けていると、足にたまった静脈血を脳まで押し上げてやることができなくなるのです。筋肉がしっかりと形成された大人では、子供の時のような起立性調節障害は起こりにくくなります。

起立性調節障害の症状は、立ちくらみや、めまい、顔色や皮膚が青白くなる、冷や汗をかく、手足が急に冷たくなる、寒気がする、脈が遅く、弱くなるなどです。このような症状が出たら、すぐに横になるようにしましょう。仰向けに寝て、深呼吸をするようにします。

起立性調節障害は、長時間立ち続けているほか、急に立ち上がった時などに起こります。突然意識を失って倒れてしまいますので、頭を打つ可能性もあり、大変危険です。

意識を失って倒れてしまったら、足を高くして横にさせます。安静にして、吐きそうな様子を見せたら顔を横に向けて、気道を確保しておきましょう。倒れてしまっても、5~6分で治まりますが、回復するまで時間がかかるようであれば、内科、ないし小児科を受診し、診察を受けたほうがいいでしょう。

また、起立性調節障害の子供には、自律神経がうまく働かずに血圧も低くなり、朝起きるのがつらく、食欲も不振で、倦怠(けんたい)感もあり、自然と学校にゆきたくてもゆけない状況になってしまう傾向もあります。

しかし、一般に夕方になると症状が回復することがほとんどで、下校時刻ころには元気になるため、学校にゆかないことを怠けや仮病と誤解されることもあります。子供の起立性調節障害には、家庭での理解はもちろん、学校関係者の理解も必要とされます。

一方、起立性調節障害は、最近では高齢者に多い症状であるといわれています。朝、目を覚ましていざベッドから出ようと立ち上がる時、または布団から出て立ち上がる時、めまいや立ちくらみが伴う場合は、起立性調節障害であることもあります。

大人の起立性調節障害とは、通常の低血圧とは違って、起床時などの起立時に血圧が21mmHg以上変化する症状をいいます。

重度の場合は失神したり、倦怠(けんたい)感を伴い、何をするにもだるさを感じ、午前中いっぱいは寝て過ごす人もいます。めまいや立ちくらみなど起立時の症状は、午前中に現れやすく、特に食後や運動後に増悪することがあります。高齢者では特に食後に一過性の失神をすることがありますが、その原因として、食後に血液が内臓にたまることが、全身の血管抵抗を減少させているとされています。

起立性調節障害の検査と診断と治療

内科、小児科の医師による診断では、問診に加え、血圧や心拍数を測定することもあります。起立時のみに症状が現れる場合、起立時に血圧測定を行う起立試験により、起立性調節障害の精査を行います。起立した時に血圧が明らかに下がり、横になると正常に戻ることが確認されれば、診断が確定します。

内科、小児科の医師による治療では、生活習慣を変えることから始めます。まず、急に座ったり立ったり、長時間立ったままでいないよう気を付けるべきです。早寝早起きを心掛け、だるくても日中は体を横にしないようにします。

血液循環をよくするためには、下半身の筋力をつけて静脈の血液が心臓、脳へと戻る力を強くすることが有効なので、軽い全身運動やウオーキングなども心掛けます。弾力性に富んだストッキングをはくことで、脚の静脈内に血液をたまりにくくすることもできます。さらに、水分は1日1・5〜2リットル補給し、塩分もふだんより多めに10〜12グラムを目安に補給します。

子供で軽症なら、生活習慣を変えることで、おおむね数カ月以内で改善します。

子供で週に1〜2回の遅刻や欠席がある場合、血圧を上げる薬を処方することもあります。一方、不登校を伴う重症の場合、復学まで長期間かかることもありますが、家族が子供を信じて見守る姿勢が症状の改善にもつながります。

🇭🇰起立性低血圧症

長時間立っていたり、急に立ち上がることが原因で、気分が悪くなったり、倒れたりする疾患

起立性低血圧症とは、小中学校の朝礼などで子供が長時間立ち続けていることなどが原因で、気分が悪くなって倒れたりする疾患。起立性調節障害ともいわれ、俗称で脳貧血ともいわれています。

起立性低血圧症は、貧血とは違います。貧血は血液中の赤血球(ヘマトクリット)の数が減少したり、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の量が減少した状態をいいますが、起立性低血圧症の場合は血液を調べても正常で、問題はありません。だから、あくまでも一時的なもので、貧血のように治療を行わなければ治らないというものではありません。

小学校高学年から中学生の子供が気分が悪くなって倒れてしまうのは、立ち続けていると重力によって血液が足のほうへ下がってしまい、脳までうまく血液が循環せずに脳が酸素不足を起こすためです。

私達が立っている時に、血液が一番たまるのは足の静脈です。もともと静脈には血液を送り出す力はほとんどなく、血管周辺の筋肉の収縮を利用するなどして静脈血を上に循環させています。しかし、成長過程にある小中学生では、そのような筋肉がしっかりできていなかったり、血管の弾力性に乏しかったります。

そのような子供が長時間立ち続けていると、足にたまった静脈血を脳まで押し上げてやることができなくなるのです。筋肉がしっかりと形成された大人では、子供の時のような起立性低血圧症は起こりにくくなります。

起立性低血圧症の症状は、めまい、顔色や皮膚が青白くなる、冷や汗をかく、手足が急に冷たくなる、寒気がする、脈が遅く、弱くなるなどです。このような症状が出たら、すぐに横になるようにしましょう。仰向けに寝て、深呼吸をするようにします。

起立性低血圧症は、長時間立ち続けているほか、急に立ち上がった時などに起こります。突然意識を失って倒れてしまいますので、頭を打つ可能性もあり、大変危険です。

意識を失って倒れてしまったら、足を高くして横にさせます。安静にして、吐きそうな様子を見せたら顔を横に向けて、気道を確保しておきましょう。倒れてしまっても、5~6分で治まりますが、回復するまで時間がかかるようであれば、病院で診察を受けたほうがいいでしょう。

また、起立性低血圧症の子供には、体の変化に伴って血圧も低くなり、朝起きるのがつらくなり、食欲も不振で、自然と学校にゆきたくてもゆけない状況になってしまう傾向もあります。しかし、一般に夕方になると症状が回復することがほとんどで、下校時刻ころには元気になるため、学校にゆかないことを怠けや仮病と誤解されることもあります。子供の起立性低血圧症には、家庭での理解はもちろん、学校関係者の理解も必要とされます。

一方、起立性低血圧症は、最近では高齢者に多い症状であるといわれています。朝、目を覚ましていざベッドから出ようと立ち上がる時、または布団から出て立ち上がる時、めまいや立ちくらみが伴う場合は、起立性低血圧症であることもあります。

大人の起立性低血圧症とは、通常の低血圧とは違って、起床時などの起立時に血圧が21mmHg以上変化する症状をいいます。

重度の場合は失神したり、倦怠(けんたい)感を伴い、何をするにもだるさを感じ、午前中いっぱいは寝て過ごす人もいます。めまいや立ちくらみなど起立時の症状は、午前中に現れやすく、特に食後や運動後に増悪することがあります。高齢者では特に食後に一過性の失神をすることがありますが、その原因として、食後に血液が内臓にたまることが、全身の血管抵抗を減少させているとされています。

起立時のみに症状が現れる場合、内科の専門医を受診し、起立時に血圧測定を行う起立試験により、起立性低血圧症の精査を行ってもらう必要があります。起立した時に血圧が明らかに下がり、横になると正常に戻ることが確認されれば、診断が確定します。

治療法やその後の経過は原因によって異なるため、診断が確定した後は起立性低血圧の原因疾患を探し、それに伴う治療が行われます。

原因疾患が治療できない場合でも、その症状を軽くしたり、取り除いたりする方法はあります。例えば、起立性低血圧症になりやすい人は急に座ったり立ったり、長時間立ったままでいないよう気を付けるべきです。弾力性に富んだストッキングをはくことで、脚の静脈内に血液をたまりにくくすることもできます。

ライフスタイルを見直すことも大切です。まず、適度な水分補給と塩分の補給を心掛け、たとえ朝が苦手でも、規則正しい生活を心掛けます。血液循環をよくするためには、下半身の筋力をつけて静脈の血液が心臓へと戻る力を強くすることが有効なので、軽い全身運動やウオーキングなども心掛けます。

🇵🇱切れ痔(裂肛)

肛門部の皮膚の外傷で、強い痛みがあるのが特徴

切れ痔(じ)とは、肛門(こうもん)部の皮膚が切れたり裂けたりした外傷で、ひりひりとした強い痛みがあるのを特徴とする痔疾。医学用語では、裂肛と呼びます。

肛門周辺の疾患の総称である痔は、虫歯に次ぐ第2位の国民病といわれており、その症状には成人の3人に1人が悩んでいるとされています。痔には大きく分けて3種類、いぼ痔(痔核)、この切れ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻〔じろう〕)があります。いぼ痔が最も多く、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性ではあな痔13パーセント、切れ痔8パーセント、女性では切れ痔15パーセント、あな痔が3パーセントの順だという統計があります。

切れ痔は、便秘している硬い大便が肛門を無理に通過する際に、肛門管の粘膜面が傷付いて出現します。具体的には、肛門上皮の出口である肛門縁から約2センチ奥にあって、肛門上皮と直腸粘膜の境界部分である歯状線よりやや前にある肛門上皮が傷付きます。ここは普通の皮膚より薄いため、硬い便によって切れたり裂けやすいものです。

放置して慢性化すると、大腸菌などの感染によって傷は深くなり、内括約筋を含めて硬くなって、肛門は狭くなります。そのためますます便が出にくく、傷も治りにくくなり、排便後、強い肛門痛が起こります。ひどくなると、数時間から半日以上続きます。

そのため、肛門上皮の側と直腸粘膜の側に、いぼ状の突起ができたり、小さな潰瘍(かいよう)ができたりします。切れ痔の肛門上皮の側にあるいぼは、直腸粘膜の側にも切れ痔があることを示すので、見張りいぼといわれます。まれに出血することもあるものの、トイレットペーパーでふいた時に少量の鮮血が付着する程度です。

切れ痔は普通、肛門の後ろにできますが、女性では前にもできます。

切れ痔の検査と診断と治療

切れ痔などの痔では、何が原因で起こっているのかを見極めることが大切になります。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えていますので、ほかの疾患が隠れていないのかどうかを確認するためにも、肛門科の専門医を受診します。

どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

医師による治療では、出血や痛み、はれに対して座薬や軟こうを局所に用います。消炎剤の服用も、時に痛みやはれなどに効果があります。便を軟らかくすることを目的に、弱い下剤である緩下剤、軟便剤を服用することもあります。医師が薬を使うのは、痛みや出血、はれを和らげるほかに、肛門内を薬の膜で覆って、排便時の刺激を減らす目的もあります。

初期のうちの切れ痔は、薬と排便の調整によって、たいてい治ります。切れ痔の治療中は、排便後に入浴するなどして、肛門周辺を清潔にしておくことが望まれます。

薬と排便調整による保存療法を行っても、効果や改善がみられないケース、肛門が狭かったり潰瘍ができて進行したケース、再発を繰り返すケースでは、手術ということになります。とはいえ、なるべく手術をしないで治すのが医師側の主流となっており、最近では炭酸ガスレーザーによる、切らない手術で切れ痔を治療している施設もあります。

手術でも、単純なものは内括約筋をわずかに切開するだけです。複雑なものは潰瘍とその周囲の組織を取り除き、近くの皮膚をずらして覆います。

どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。切れ痔は、悪化させない生活習慣が大切です。引き起こす原因となるのは、便秘、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒といった生活習慣です。

中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、切れ痔を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。食物繊維を多く取るなど、食事を見直すことも大切。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。休養と睡眠を十分にとり、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫を。

過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。酒を断つ必要はありませんが、ほろ酔い程度の適量を心掛けます。

🇵🇹筋委縮性側索硬化症

筋肉が委縮し、運動神経線維の側索が変性する疾患

筋委縮性側索硬化症とは、筋肉が次第に委縮し、同時に脊髄の運動神経線維である側索にも変性を起こしてくる疾患。神経性の疾患の中でも、難病の代表的なものといえます。

この疾患の特徴は、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者を侵すことであり、運動ニューロン疾患と呼ぶこともあります。上位運動ニューロンは、大脳皮質の運動領野から起こって、延髄または脊髄までいく神経系。下位運動ニューロンは、延髄または脊髄から末梢(まっしょう)神経を経て、筋肉に達する神経系。運動ニューロンが侵されると、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉が委縮していくのです。一方、体の感覚や知能、視力や聴力、内臓機能などはすべて保たれることが普通です。

運動ニューロンが侵される疾患には、下位ニューロンだけが侵され、筋委縮の強い脊髄性進行性筋委縮症や、延髄の神経核が侵され、飲み下しにくくなる嚥下(えんげ)障害、言語障害などの延髄症状の強い進行性球まひなどもあります。いずれも経過をみると、最後には同じ状態となります。

筋委縮性側索硬化症の原因はまだ、よくわかっていません。一部には遺伝的に発生するものもあり、体質も問題にされています。また、一部の発症者はがんに合併するので、何らかの因子が関与しているのではないかとも考えられています。1年間で新たに発症する人は人口10万人当たり約1人で、男女比は約2:1と男性に多く認めます。

発症は一般的に遅く、40〜60歳代に起こります。一般的には、手指の筋肉が次第に委縮し、力が入らなくなります。時には、足先から委縮が始まります。

委縮は次第に体の上のほうに進んで全身に及び、ついには舌の筋肉も委縮して、嚥下困難、発語困難となり、さらに進行すると呼吸筋もまひして、呼吸も十分にできなくなります。筋肉の委縮とともに、脊髄の下位運動ニューロンが変性するために、筋肉が勝手に細かくピクピクと収縮を起こすのも特徴です。

進行性に悪化するために、多くは平均3〜5年で死亡します。進行性球まひは進行が早く、平均約1年7カ月といわれています。時には、数十年に渡って徐々に進行するものもあります。

筋委縮性側索硬化症の検査と診断と治療

筋委縮が起こる場所の分布は特異的で、筋電図や、筋肉の組織の一部を切り取って顕微鏡などで調べる筋生検などで、運動ニューロンの病変を確かめられます。

末梢性筋委縮を示すものに、末梢神経炎や進行性筋ジストロフィー症の末梢型があり、時には区別の困難なこともあります。

治療としては、進行を遅らせる作用のあるリルゾール(商品名:リルテック)という薬が日本でも承認されて、使用されるようになりました。一般的には、対症療法的にビタミン剤や、弱い筋弛緩(しかん)剤を用い、筋委縮が進行して呼吸障害を来した時には、呼吸管理を自動調節する機械であるレスピータを用います。

体の自由が効かないことや、疾患に対する不安などから起こる不眠には、睡眠薬や安定剤を使います。筋肉や関節の痛みに対しては、毎日のリハビリテーションが大切になります。

生活上の注意としては、疾患が進行性であることや特別な治療法のない点で、発症者は精神的にショックを受け、次第にわがままになる傾向がありますので、家族の理解が必要です。

疾患が進行してくると、食べ物を飲み込みにくくなりますが、このような場合は流動食よりも、ゼリーなどで半固形食にしたほうが飲み込みやすく、栄養もよく取れます。飲み込みにくさがさらに進行した場合には、おなかの皮膚から胃に管を通したり、鼻から食道を経て胃に管を入れて流動食を補給したり、点滴による栄養補給などの方法があります。

入浴も、一時的には浮力がついて手足を動かしやすくなりますが、疾患が進行すると入浴させるのがなかなか困難になります。

🇨🇱筋クランプ

運動中や睡眠中に、ふくらはぎの筋肉が突然、けいれんして激しい痛みを伴う状態

筋クランプとは、ふくらはぎの筋肉が突然、けいれんして激しい痛みを伴う状態。こむら返り、こぶら返り、腓腹(ひふく)筋けいれん、有痛性筋けいれんとも呼ばれます。

同じような筋クランプは、太もも、足の裏、足の指、首、腹などにも起こります。筋クランプが起こりやすいのは、登山や水泳などの運動中や睡眠中。立ち仕事の多い人や、高齢者に多くみられます。局所的けいれんは無痛なケースが多いものの、一般的には激痛を伴います。

原因の多くは筋肉の疲れや冷え、運動不足、いつもと違う動きをしたことなどによるものです。血液の電解質異常、腎臓(じんぞう)や心臓の病気、糖尿病、腰椎(ようつい)の病気などが原因で起こる場合もあります。

人間の体は、筋肉の収縮と弛緩(しかん)を調節することによって、バランスのとれた動きをします。この筋肉の調節の仕組みは、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経からの信号が末梢(まっしょう)神経を通って筋肉に送られて、筋肉の収縮が起こり、次に筋肉や腱(けん)のセンサーから逆方向に信号が中枢神経に送られ、どれくらい収縮するか弛緩するかが決められています。

筋クランプは、この仕組みの中で起こる異常収縮で、ふくらはぎの腓腹筋が異常な緊張を起こし、収縮したまま弛緩しない状態になり、激しい痛みを伴います。

筋肉の異常収縮が起こる理由は、2つ考えられます。1つは、神経や筋肉が刺激を受けやすい状態になっていることです。運動などで多量の汗をかいた時は、血液中のナトリウムやカリウムなどの電解質のバランスが崩れ、神経や筋肉が興奮しやすくなります。

もう1つは、筋肉や腱のセンサーがうまく作動しないことで、立ち仕事の後や、久しぶりに運動した後、加齢とともに夜に起こりやすくなる筋クランプなどに相当します。足の筋肉が緊張した状態が長時間持続すると、センサーが常に刺激された状態に置かれ、やがてセンサーがうまく働かなくなります。この時に、ふくらはぎに余分な力がかかるとセンサーが過剰に反応し、異常な収縮が引き起こされ筋クランプが起こります。

高齢者では、慢性の運動不足のために常に腓腹筋が緊張した状態にあり、少し脚を伸ばしたりふくらはぎを打っただけでも、筋クランプを起こすことがあります。

また、寝ている時は脚の温度が低下し、センサーの感度が鈍くなることも理由に挙げらます。布団の重みや重力のため足先が伸びた状態になっていることも、筋クランプを起こしやすくします。寝ていて伸びをする時に、かかとを前に出すようにすると少なくなります。

ほとんどの筋クランプは病気とは無関係に起こるものですが、健康な人でも夏に多量の汗をかいた時に水だけ飲んで電解質が補給されないと、熱けいれんと呼ばれる筋クランプを起こすので危険です。妊娠中のカルシウム不足、下痢によるカリウム不足などでも起こりやすくなります。

利尿剤やある種の漢方薬、民間薬などの薬剤も、電解質バランスを崩すことがあります。アルコール依存症や胃摘出後数年たってからビタミン欠乏によって起こることもあり、近年では、若者の食生活の偏りによるビタミンB1不足によって起こることも増加しています。

腎臓や心臓の病気、糖尿病のほか、ある種の筋肉や神経の病気、甲状腺の病気でも、筋クランプが起こりやすくなることがあります。腰椎の変形が原因で、脊髄神経を圧迫するために神経の異常な興奮が起こりやすくなり、筋クランプを起こすこともあります。

筋クランプの対策と軽減策

頑固な筋クランプや、足以外の筋肉にけいれんが起こる場合は、整形外科、内科、内分泌代謝科、老人科などの医師による診察が必要です。

医師による治療では、基礎疾患があればその改善を図るのが原則で、筋クランプがひどい時には、筋弛緩薬、抗不安薬、漢方薬などを用い、電解質を改善する薬、タウリン、糖尿病の合併症に使用する薬を用いることもあります。一般的には、ビタミンEを摂取すると効果的といわれています。

薬の内服で症状が改善すれば、薬は減量または中止することが望ましく、再発するようであればその都度内服するようにします。

スポーツや立ち仕事の後では、筋肉の疲労をとることが予防に大切。血行をよくする意味からスポーツマッサージや指圧などを早めに行い、スポーツドリンクなどで水分と電解質の補給を心掛けます。

また、慢性的な筋クランプでは運動不足の注意信号と考え、ふだんから脚のストレッチやマッサージをすることが予防になります。寝る前に、軽いストレッチやマッサージをするのもお勧めです。

カリウムやカルシウム、マグネシウムなどの電解質を補給するために、野菜や果物、海藻類、牛乳、小魚などをバランスよく食べることも、予防に役立ちます。ビタミンB1も筋肉代謝には重要な成分といえるので、多くを含む卵や豚肉、ぬか漬けなどを食べるようにします。

予防に心掛けても筋クランプが起きてしまった時は、片方の手で痛いところを優しくさすって、もう片方の手で足のつま先をゆっくり顔の方へ曲げるようにして、ふくらはぎの筋肉をよく伸ばします。そうすれば、少しずつ痛みは治まります。

🇨🇱菌血症

細菌が血液の中に侵入して、体内を循環している状態

菌血(きんけつ)症とは、細菌が血液中に入って体内を循環している状態。一過性で他の疾患を引き起こさない場合と、血液中に入った細菌が髄膜に入って髄膜炎、全身の臓器に傷害を起こして敗血症などの疾患を引き起こす場合とがあります。

人体は少数の細菌であればすぐに排除することができるので、一過性の菌血症では症状が起こることはめったにありません。例えば、過度の歯磨きや歯科治療の際に、歯茎に常在する細菌が血液中に入って、一過性の菌血症が起こることがあります。細菌は腸からも血液中に入ることがありますが、血液が肝臓を通過する時に速やかに取り除かれます。こういった状態に関しては、通常は心配する必要はありません。

細菌が血液中に入る機会は意外と多く、外傷、食中毒、マラリアやウイルス性肝炎などの血液感染、膿瘍(のうよう)または感染創傷の外科的手術、泌尿生殖器または静脈内カテーテルの留置で自然発生的に生じることがあります。

一過性の菌血症はめったに症状を起こすことはありませんが、以前から何らかの感染症にかかっている人が突然、高熱を出した場合には通常、敗血症が疑われます。この敗血症は菌血症より発生率は低く、肺、腹部、尿路、皮膚など体のどこかにすでに感染がある時に、最もよく起こります。

感染がある臓器や、腸のようにふだんから細菌がいる臓器への手術を行った場合に、起こることもあります。消毒していない注射針を使う麻薬常習者や、化学療法を受けているなどの理由で免疫システムがうまく機能していない人も、かかりやすくなります。まれに、非細菌性の感染でも敗血症が起こります。

敗血症の症状は、震え、悪寒、発熱、脱力感、錯乱、腹痛、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢などです。

一過性または持続性の菌血症から、体内を循環している細菌がさまざまな器官に定着し、転位性感染症を引き起こすこともあります。脳を包む膜に感染して髄膜炎、心臓を包む膜に感染して心外膜炎、心臓の内側の膜に感染して心内膜炎、骨に感染して骨髄炎、関節に感染して感染性関節炎などを起こします。

また、体内のほぼすべての器官に定着し、膿(うみ)の固まりを作る転位性膿瘍(のうよう)を引き起こすこともあります。膿瘍を作る細菌としては、ブドウ球菌、腸球菌、連鎖球菌が挙げられます。

菌血症の検査と診断と治療

通常、過度の歯磨きや歯科治療、外科的手術で起こる菌血症は、治療の必要はありません。以前から何らかの感染症にかかっている人が、突然高熱を出して敗血症が疑われる場合は、速やかに内科の専門医を受診します。抗生物質が発展する前までは致命的な疾患だった敗血症は、現在でも治療が遅れたり合併症の具合によっては、致命的となる重篤な疾患であることに変わりありません。

医師による診断では、血液中の細菌を直接検出することは一般に難しいので、いくつかの血液サンプルを採取して1〜3日間の培養検査に出します。発症者が抗生物質を服用している場合など、細菌をうまく培養できないこともあります。尿、脳脊髄(せきずい)液、傷口の組織、たんなど、ほかの体液や分泌物の培養も行い、細菌の有無を調べます。体内に留置しているカテーテルを抜去し、その先端を切り取って培養に回すこともあります。

敗血症は重篤な疾患で、死亡するリスクも高いので、診断を確定する検査結果を待たずに、抗生物質ですぐに治療を始める必要があります。抗生物質による治療の開始が遅れると、助かる可能性が大幅に低下します。

治療ではまず、どの細菌による感染の可能性が高いかに基づいて抗生物質を選択します。これは、感染がどの部位から始まったかによります。感染巣が不明な時は、効果を確実にするために2〜3種類の抗生物質を組み合わせて使い、検査結果が出た時点で、感染を引き起こしている特定の菌に最もよく効く抗生物質に切り替えます。

通常は、細菌の起源であると疑われるカテーテルなどの体内器具を取り除きます。感染巣を取り除くために、手術が必要になることもあります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...