2022/08/02

🇱🇻三角筋肩峰部褐青色母斑

生まれ付きか乳児期に発症し、褐青色のあざが肩や腕に発生する皮膚の疾患

三角筋肩峰部褐青色母斑(さんかくきんけんぽうぶかっせいしょくぼはん)とは、生まれ付きか乳児期に発症し、褐青色の母斑が肩や腕に認められる皮膚疾患。伊藤母斑、肩峰三角筋部褐青色母斑とも呼ばれます。

皮膚の一部分に色調や形状の異常として現れるものが母斑で、あざとも呼ばれています。ほくろ(黒子)も母斑の一種で、その一番小さい型に相当します。

三角筋肩峰部褐青色母斑は、胎児期から多くは生後1カ月以内の乳幼児期に症状が現れ、男子より3倍多く女子に認められます。

原因は、メラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮に存在し増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。

母斑は、後鎖骨上神経および外上腕皮神経の支配領域にみられ、肩峰という肩甲骨の最も上の部分を中心に、肩関節を前後および外側から覆っている三角筋がある鎖骨上部、上腕外側に、淡褐色の皮膚の上に濃青色から青みを帯びた小さな斑点がたくさん集まった状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。片側だけの肩や腕に出現することが多いものの、まれに両側の肩や腕にも出現することがあります。

通常、母斑は大きさや状態が変化せず持続して存在し、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。

本人が特に気にしなければ、治療の必要はありません。気にするようなら、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診することが勧められます。

三角筋肩峰部褐青色母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、部位や母斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。

また、蒙古(もうこ)斑が手足や顔、腹部、背中の上部、胸などに現れる異所性蒙古斑や、通常のほくろよりも全体に青色が強く、青色から黒色調に見えるタイプのあざである青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、母斑を除去します。

Qスイッチレーザー治療は、レーザー光線を皮膚に当てるもので、皮膚の表面にはダメージを与えず、その下の真皮上層にあるメラノサイトを選択的に焼灼(しょうしゃく)することができます。ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。

いずれのQスイッチレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行い、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。まれに軽い色素沈着を残したり色素脱出を来すこともありますが、治療はほぼ100パーセントうまくいきます。

治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は乳幼児期からの早期治療が有効です。成人の場合でも、完全に母斑を除去することが可能です。

🇱🇦三叉神経痛

顔面の片側に発作的な激しい痛みが起こる神経痛

三叉(さんさ)神経痛とは、顔面の片側に発作的な激しい痛みが起こる神経痛。

一般には顔面神経痛とも呼ばれますが、正式な呼称ではありません。顔面神経は顔面にある筋肉を動かす運動神経であり、三叉神経が痛さ熱さなどを感じる知覚神経であるため、厳密には、顔面神経痛という疾患は存在しないのが実態です。

三叉神経痛は、中年以後から認められ始め、女性にやや多い傾向があります。

脳から出て顔の左右に広がるのが知覚神経である三叉神経で、顔面の感覚を脳に伝えるほか、物をかむ際に使う筋肉をコントロールしています。名前のとおり、三本の枝に分かれていて、第一枝の眼神経は前頭部から目、第二枝の上顎(じょうがく)神経は頬(ほお)から上顎(あご)、第三枝の下顎(かがく)神経は下顎にかけて分布しています。

この分布に沿って、ズキンとする激しい痛みが、あくび、会話、歯磨き、咀嚼(そしゃく)、洗面などの刺激で起こり、時には冷たい風に当たるだけで起こります。

普通は頬と顎に痛みがよく起こり、顔の片側全部に痛みが及ぶケースもあります。一回の痛みは数秒から数分と瞬間的ながら、痛みの発作が短い時は数時間、長い場合には数週から数カ月も繰り返し起こるのが特徴。痛みの発作のない間欠期には、神経症状は全くみられず無症状です。

原因がよくわからず、特発性三叉神経痛といわれるものが大部分ですが、近年の研究においては、動脈硬化などで蛇行した血管が三叉神経を圧迫して、痛みを誘発していると考えられています。

また、症候性三叉神経痛といわれるものもあり、こちらは頭部の腫瘍(しゅよう)や動脈瘤(りゅう)、三叉神経の近くにある歯や耳、目、鼻などの疾患、多発性硬化症や帯状疱疹(たいじょうほうしん)などによって引き起こされますが、強い発作性の痛みはないのが特徴です。

三叉神経痛による悩み、不安を感じている場合、神経内科、脳外科、麻酔科(ペインクリニック)を受診することが勧められます。

三叉神経痛の検査と診断と治療

神経内科、脳外科、麻酔科(ペインクリニック)の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査を行って三叉神経のそばに血管を確認できれば、通常、その血管が神経を圧迫していると判断します。

神経内科、脳外科、麻酔科(ペインクリニック)の医師による治療では、薬物療法、神経ブロック、手術、ガンマナイフなどを行います。 

薬物療法においては、痛みの発作を予防する働きを持っている抗てんかん剤のテグレトールと呼ばれる薬の内服が有効です。痛みがきれいになくなるという大変有効な薬ですが、注意が必要な面もあります。量が多いとふらつきなどの副作用が出たり、まれに白血球が減る副作用も確認されています。

薬物療法を行っても、期待される効果がみられない場合、神経ブロックを行うこともあります。痛みのある部分に麻酔薬を注射したり、電気凝固して痛みを緩和する方法ですが、原因を治しているわけではないので、根本治療ではありません。仮に症状が軽くなっても、完全に治るわけではないのです。

根本から治すには、手術療法を行います。手術では、三叉神経を直接圧迫している血管を見付け出し、三叉神経と血管の間に筋肉片あるいは綿などを入れて、神経に対する圧迫を除きます。

ガンマナイフは、三叉神経根の部分に放射線を集中照射することで、痛みを緩和するものです。しかし、2013年時点で、保険適応外治療となるので、実費の負担が必要です。

日常生活では、体の過労と精神的ストレスを避けて、規則正しい生活をすることが大切。痛みが始まったら、部屋をやや暗くして刺激を避けるようにします。

🇯🇴三次喫煙

たばこの煙がカーテンや衣服、髪などに吸着して残った有害物資を吸い込むこと

三次喫煙とは、たばこの煙が室内の壁などに吸着して有害物質が残り、たばこを吸わない人が有害物資を吸い込むこと。残留受動喫煙、サードハンドスモークとも呼ばれます。

この三次喫煙は、喫煙者が体内に主流煙を吸い込む能動喫煙(ファーストハンドスモーク)や、非喫煙者が喫煙者と同じ空間にいることで、自分の意思とは関係なく、たばこから出る副流煙を吸い込む二次喫煙(受動喫煙、間接喫煙、セカンドハンドスモーク)とは異なります。

たばこの煙が消失した後も、喫煙者の髪や衣服、部屋の壁紙やカーテン、クッション、カーペット、床、家具などの表面に吸着して残っている有害物質が徐々に揮発し、これを非喫煙者が吸い込むことで健康被害が生じる恐れがある受動喫煙を指します。

とりわけ、たばこの煙に含まれるニコチンは、壁紙などの表面に付着して凝結し何カ月も残存することが可能で、空気中の亜硝酸と反応して発がん性物質のニトロソアミンが生成され、健康被害が生じる可能性が指摘されています。

乳幼児の場合、床や家具に顔が近く、部屋の中の物を手や口で触ったりするため、大人以上に有害物質を吸い込みやすいとされます。

たばこが燃えている時に窓を開けたり、扇風機を回して換気しても、三次喫煙の危険性がなくなるわけではありません。また、屋外で吸うことは屋内での喫煙よりはましですが、たばこの煙の残留物は喫煙者の髪や肌、衣服に付着して屋内に持ち込まれ、広く拡散するとされます。オフィス内で喫煙室が仕事場と別にあっても、仕事場がたばこ臭かったりするのは、そのためです。

たばこの煙については、たばこの先の火のついた部分から立ち上る副流煙のほうが、喫煙者が直接口から吸い込む主流煙よりも、血管収縮作用のあるニコチンや、発がん物質のタール、学習・運動能力が低下する一酸化炭素を始め、非常に発がん性の高いベンツピレン、ベンゼン、トルエン、アンモニアなど200種以上の有害物質を多く含むことがわかっています。

しかし、三次喫煙に関連する有害物質の濃度は極めて低いため、現時点では正確な測定は難しく、健康への影響を判断するのは困難とされています。

二次喫煙による害には、のどの痛み、心拍数の増加、血圧上昇などがあります。また、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患などにかかりやすくなります。とりわけ、子供は大人以上に影響を受けやすくなり、家庭内の喫煙によって、気管支炎、喘息(ぜんそく)などを起こす率が高くなったり、乳幼児突然死症候群が増加することも明らかになっています。

アメリカや日本の有識者らは、「子供がいるなら、家庭内は完全禁煙を」と呼び掛けています。三次喫煙(サードハンドスモー ク)の認識があるアメリカの家庭では、完全禁煙にしている割合が高くなっています。

🇲🇳Ⅲ型高リポ蛋白血症

遺伝子異常が原因で、高リポ蛋白血症を発症する疾患

Ⅲ型高リポ蛋白(たんぱく)血症とは、遺伝によって、血液に含まれるコレステロールとトリグリセライド(中性脂肪)が高くなる高リポ蛋白血症(高脂血症)の一つ。家族性Ⅲ型高脂血症、アポリポ蛋白質E欠乏症、アポリポ蛋白質E欠損症、ブロードβ病とも呼ばれます。

まれな疾患で、1万人に2〜3人くらいと発症する頻度は低いものの、女性よりも男性に発症する傾向があり、男性は比較的若い年代に発症します。

常染色体劣性遺伝によりⅢ型高リポ蛋白血症を受け継いだ人は、生活習慣とは関係なく、高リポ蛋白血症になりやすいと考えられています。高リポ蛋白血症に伴って、若年期にアテローム性動脈硬化症を発症するリスクが高くなります。

一般に、20歳以下では症状が起こらないとされるものの、若年で冠状動脈硬化症や末梢(まっしょう)動脈硬化症を発症しやすく、進行すると狭心症や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞、下肢の動脈が狭くなる末梢血管疾患、間欠性跛行(はこう)、下肢の壊疽(えそ)に対するリスクも高くなります。そのほか、肥満、糖尿病を合併するリスクも高くなります。

肘(ひじ)や膝(ひざ)、手の甲、手首、尻(しり)などの皮膚に、黄色腫(おうしょくしゅ)と呼ばれる黄色いいぼ状の塊が見られることもあります。黄色腫は、血液中の脂質成分と蛋白の結合物であるリポ蛋白を取り込んで、脂肪分をためたマクロファージ由来の泡沫(ほうまつ)細胞が集合したものです。

両親のうちのどちらかにⅢ型高リポ蛋白血症がある場合、子供に50パーセントの確率で遺伝します。両親ともⅢ型高リポ蛋白血症を持っている場合、子供には75パーセントの確率で遺伝します。ただし、Ⅲ型高リポ蛋白血症を持つすべての人が、親が同じ問題を持っているとわかっている訳ではありません。狭心症、心筋梗塞などの冠状動脈疾患の家族歴があるとだけ考えている可能性があります。

コレステロールもトリグリセライド(中性脂肪)も水に溶けないので、特殊な蛋白質であるアポ蛋白に付着して血液中を運ばれています。このコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)とアポ蛋白の結合物をリポ蛋白といいます。

リポ蛋白にはいくつかの種類があり、比重によりカイロミクロン(キロミクロン)、VLDL(超低比重リポ蛋白)、IDL(中間比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)、HDL(高比重リポ蛋白)、VHDL(超高比重リポ蛋白)などがあります。

Ⅲ型高リポ蛋白血症は、肝臓の受容体への結合能を欠くアポ蛋白E2の遺伝子を両親から受け継いでいることを基盤として、まれにアポ蛋白Eの欠損によって発症します。

肝臓へのカイロミクロン(キロミクロン)やVLDL(超低比重リポ蛋白)、IDL(中間比重リポ蛋白)の取り込みが阻害された結果、血液中を流れ続ける状態が継続します。カイロミクロンやVLDL(超低比重リポ蛋白)などに含まれるトリグリセライド(中性脂肪)は、血液中を流れ続けている内に、脂肪組織や筋肉の毛細血管内皮細胞表面に存在するリポ蛋白リパーゼにより分解され、粒子サイズが小さくなってレムナントリポ蛋白の蓄積が起こり、高レムナントリポ蛋白血症を発症します。また、高IDL血症を発症します。

Ⅲ型高リポ蛋白血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。

トリグリセライド(中性脂肪)、 総コレステロールの両方が高値にかかわらず、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が低値、かつRLPコレステロール(レムナント様リポ蛋白コレステロール)が異常高値であることを確認すると、Ⅲ型高リポ蛋白血症(家族性III型高脂血症)が疑われます。また、リポ蛋白の電気泳動で、VLDL(超低比重リポ蛋白)からLDL(低比重リポ蛋白)への連続性のブロードβパターンを示すことを確認し、アポ蛋白の等電点電気泳動で、アポ蛋白Eの異常、アポ蛋白Eの欠損などを確認することで、Ⅲ型高リポ蛋白血症と確定します。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、食餌(しょくじ)療法、運動療法、薬物療法を行ないます。Ⅲ型高リポ蛋白血症は遺伝子異常を背景とし、代謝異常が生涯持続するため、根治療法はなく長期の治療が必要ながら、治療によく反応することから早期診断と早期治療が重要です。

食餌療法では、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限します。そして、野菜や果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。

運動療法では、積極的にウォーキングや水中歩行などの適度な有酸素運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、改善法として効果的です。

薬物療法では、RLPコレステロール(レムナント様リポ蛋白コレステロール)の低下作用が最も強力なフィブラート系薬剤(中性脂肪合成阻害薬)を第一選択として使用します。スタチン系薬剤やエゼチミブも有効です。

🇲🇦産瘤

新生児の産道通過に際して、先頭で進む部分にできるこぶ

産瘤(さんりゅう)とは、新生児が母体の狭い産道を通過する際に、周囲からの圧迫によって先頭で進む部分の皮下の軟部組織にむくみが起こり、こぶ状に隆起した状態。

むくみは、皮下組織内の静脈やリンパ管など体液の流れが妨げられて、うっ血することで起こるものです。こぶの中身は、血液やリンパ液などの体液です。

多くの新生児は頭を先にして生まれてきますので、頭部に生じることがほとんどですが、まれに顔面に生じることもあります。逆子の場合は足を先にして生まれてきますので、こぶが臀部(でんぶ)や足にできることもあります。

新生児は、産道を通る際、頭の形を変形させながら通過していきます。その際、先頭となる頭、あるいは臀部や足が、子宮口や、ふだんは指2本ほどしか入らないのに新生児の頭の大きさに合わせて10センチまで開く膣襞(ちつへき)を押し広げる時に、周囲から強く圧迫されます。すると、その部分の静脈やリンパ液などの体液の流れが滞って、うっ血が起こり、その体液がたまってむくみとなり、こぶ状に隆起します。< /p>

産道の圧迫が強く、新生児のいる時間が長いほど起こりやすく、また、こぶ状の隆起の程度も大きくなります。そのため、初産の時や難産の時に、長時間産道にいた新生児に起こることがあります。

出生直後からみられ、それほど大きなものではなく、大きいものでも手のひらで包み込める程度の大きさです。産道を通過する際の摩擦により、表面や周囲の皮膚に擦り傷ができることもあります。普通は紫色で、しばしば点状出血を伴い、時には暗赤色のように見えます。

こぶは、触ると粘土にも似た触感がし、指で押すと軟らかく、押した跡にくぼみが残ります。正常な部分の頭皮や皮膚との境目が、あまりはっきりしてはいません。

生まれた直後は頭などの大きなこぶに驚いてしまいますが、産瘤は大抵の場合、生後24時間程度、長くても2、3日ほどで、自然に吸収されて消えます。

何の異常もない正常な出産によってもできるものなので、出産の経過で起こる自然現象の一つともいえます。さらに、産瘤ができたことで新生児に何らかの異常が起こることもありません。特に病的なものではなく、治療の必要はありません。

入浴や授乳なども通常通りに行うことができます。注意点としては、こぶ状の隆起をあまり強く押さえないように気を付けることです。

吸引分娩による吸引痕は、陰圧による点状出血と吸引カップによる圧迫の痕が、産瘤に加わってできます。頭に圧力がかかることで、頭に大きなふくらみができて、頭の形が変わったり頭に血が溜まって血腫ができたりする場合があります。それらは、そのあと自然に消えるので心配はありません。

🇲🇩残留受動喫煙

たばこの煙がカーテンや衣服、髪などに吸着して残った有害物資を吸い込むこと

残留受動喫煙とは、たばこの煙が室内の壁などに吸着して有害物質が残り、たばこを吸わない人が有害物資を吸い込むこと。三次喫煙、サードハンドスモークとも呼ばれます。

この残留受動喫煙は、喫煙者が体内に主流煙を吸い込む喫煙や、非喫煙者が喫煙者と同じ空間にいることで、自分の意思とは関係なく、たばこから出る副流煙を吸い込む受動喫煙(二次喫煙)とは異なります。たばこの煙が消失した後も、喫煙者の髪や衣服、部屋の壁紙やカーテン、クッション、カーペット、床、家具などの表面に吸着して残っている有害物質が徐々に揮発し、これを非喫煙者が吸い込むことで健康被害が生じる恐れがある受動喫煙を指します。

とりわけ、たばこの煙に含まれるニコチンは、壁紙などの表面に付着して凝結し何カ月も残存することが可能で、空気中の亜硝酸と反応して発がん性物質のニトロソアミンが生成され、健康被害が生じる可能性が指摘されています。

乳幼児の場合、床や家具に顔が近く、部屋の中の物を手や口で触ったりするため、大人以上に有害物質を吸い込みやすいとされます。

たばこが燃えている時に窓を開けたり、扇風機を回して換気しても、三次的な喫煙の危険性がなくなるわけではありません。また、屋外で吸うことは屋内での喫煙よりはましですが、たばこの煙の残留物は喫煙者の髪や肌、衣服に付着して屋内に持ち込まれ、広く拡散するとされます。オフィス内で喫煙室が仕事場と別にあっても、仕事場がたばこ臭かったりするのは、そのためです。

たばこの煙については、たばこの先の火のついた部分から立ち上る副流煙のほうが、喫煙者が直接口から吸い込む主流煙よりも、血管収縮作用のあるニコチンや、発がん物質のタール、学習・運動能力が低下する一酸化炭素を始め、非常に発がん性の高いベンツピレン、ベンゼン、トルエン、アンモニアなど200種以上の有害物質を多く含むことがわかっています。しかし、残留受動喫煙に関連する有害物質の濃度は極めて低いため、現時点では正確な測定は難しく、健康への影響を判断するのは困難とされています。

受動喫煙による害には、のどの痛み、心拍数の増加、血圧上昇などがあります。また、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患などにかかりやすくなります。とりわけ、子供は大人以上に影響を受けやすくなり、家庭内の喫煙によって、気管支炎、喘息(ぜんそく)などを起こす率が高くなったり、乳幼児突然死症候群が増加することも明らかになっています。

アメリカや日本の有識者らは、「子供がいるなら、家庭内は完全禁煙を」と呼び掛けています。サードハンドスモー ク(残留受動喫煙)の認識があるアメリカの家庭では、完全禁煙にしている割合が高くなっています。

🇲🇷5pモノソミー

5番染色体の短腕の一部分が欠損していること、また、それが原因で引き起こされる重度の先天性障害

5p(ごぴー)モノソミーとは、22対ある常染色体のうち、5番染色体の短腕(5p)の一部分が欠損していること、また、それが原因で引き起こされる重度の先天性障害。5p欠失症候群、5pー(まいなす)症候群、猫(ねこ)鳴き症候群、レジューン症候群とも呼ばれます。

常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、5番染色体の短腕の末端の一部分が欠損している状態が、5pモノソミーに相当します。

5pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。

5pモノソミーの主な原因は、突然変異による5番染色体の変化が原因で、なぜ突然変異が起こるのかまではわかっていません。

まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が5番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。

5pモノソミーは、フランス人のジェローム・レジューンによって1963年に初めて発見されました。レジューンは、1959年にダウン症の原因を発見したことでよく知られる人物です。

5pモノソミーの新生児は、出生時に子猫の鳴き声のような甲高いニャーニャーという泣き声を発します。特有の泣き声は喉頭(こうとう)の変化が原因とされ、数週間継続して消失します。

新生児は子宮内発育不全のため低出生体重であり、医学的な症状としては重度の精神発達遅滞、小頭症、成長不全、筋緊張低下、両目の離れた円形の顔、眼瞼(がんけん)裂斜下、内眼角贅皮(ぜいひ)、外斜視、鼻根部偏平、耳介低位、副耳などが認められます。多指、心奇形、腎(じん)奇形、脊柱側湾などが認められることもあります。発語は3歳以降で、言葉の出ないこともあります。

身体的な合併症がみられる場合は、専門医による適切な治療が必要ですが、乳幼児期の頻繁な呼吸器感染症、筋緊張が弱いことによる便秘を除けば、おおむね健康に育っていき、多くが成人期まで生存します。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...