2022/08/03

🇧🇲味覚障害

味覚障害とは、食べ物の味を感じなくなったり、何を食べても嫌な味になったり、甘いものを苦く感じたりといった、舌に感じる味覚の障害を指します。

人間の味覚には塩味、甘味、苦味、酸味の四つの基本的な要素があり、それぞれの刺激に対して、より反応しやすい味蕾(みらい)が、舌の表面の乳頭内に存在します。味蕾が刺激されると、延髄、間脳を経由して大脳の側頭葉味覚中枢に味覚が伝達され、私たちは味を感じています。

味蕾では絶えず新しい感覚細胞が作られ、この感覚細胞は新陳代謝を繰り返し行うことで、味覚を正常に保っています。新陳代謝がうまくいかなかったり、大脳への伝達経路が障害されると、味覚障害が起きます。

新陳代謝に必要な酵素を作り出すために必要なのは、ミネラルの一種である亜鉛。亜鉛の摂取が不足すると、新陳代謝が滞って新しい感覚細胞が作られにくくなります。

貧血、肝不全、糖尿病などの疾患や低亜鉛血症、薬物の副作用などで生じるほか、喫煙や舌の乾燥が原因となることもあります。中でも、亜鉛不足の原因で最も多いのは、薬物による副作用です。疑わしい時は、服用している薬について医師に相談してみましょう。

医師の側では、舌の上に甘味(砂糖)、酸味(レモン汁)、塩味(塩)、苦味(アスピリン、キニーネ、アロエなど)の4種類を乗せて味覚検査をするほか、正確には電気味覚計を用います。

🇺🇸ミクリッツ症候群

耳下腺、顎下腺、涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患

ミクリッツ症候群とは、唾液腺(だえきせん)である両側の耳下(じか)腺、顎下(がくか)腺と涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患。

白血病、悪性リンパ腫(しゅ)、結核、サルコイドーシス、軟部好酸球肉芽(にくげ)腫症(木村病)、シェーグレン症候群などが基礎にあって起こるものと、疾患の本体を明らかにできない原因不明ものとがあります。

白血病、悪性リンパ腫などが原因のミクリッツ症候群の時は、発熱、全身倦怠(けんたい)感、強い口内乾燥がみられることがあります。両側対称的に耳下腺、顎下腺、眼瞼(がんけん)部がはれるため、特徴的な顔貌(がんぼう)になります。

疾患の本体を証明できない原因不明のミクリッツ症候群は、ミクリッツ病、ないし良性リンパ上皮性疾患と呼ばれています。両側または片側の耳下腺、顎下腺、涙腺がはれる症状が現れ、痛みは伴いません。はれが増すにつれ、唾液が出にくくなり、口やのどの渇きなどが発生して耳下腺炎を起こし、涙が出にくくなって結膜炎を起こします。口内や目の乾燥感は強くありませんが、顔全体が熱っぽい感じになり、不快になります。

病理学的には、ミクリッツ病はシェーグレン症候群に類似しています。良性の病変で、唾液腺や涙腺にリンパ球が浸潤することで、慢性の炎症に類似した症状が現れます。リンパ球の浸潤の原因は、不明です。性別では、男女で症状の現れ方や、症状の現れる頻度に差はありません。経過をみている間に症状が消えることも、まれではありません。

長い期間、耳の前や顎(あご)の下がはれているようであればミクリッツ症候群、ミクリッツ病(良性リンパ上皮性疾患)の可能性もありますので、耳鼻咽喉(いんこう)科か歯科口腔(こうくう)外科、上まぶたがはれているのであれば眼科を受診することが勧められます。

ミクリッツ症候群の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査や超音波検査を始めとするさまざまな検査で、腫脹(しゅちょう)がある部位と全身的な広がりを確認します。

確定診断には、腫脹した組織の一部を切り取って顕微鏡検査を行う細胞診の必要がありますが、白血病などが原因であるとわかっていれば判断しやすくなります。

白血病、悪性リンパ腫などの基礎疾患が明らかになった際はミクリッツ症候群と確定し、これらの基礎疾患を除外するとミクリッツ病(良性リンパ上皮性疾患)と判断します。従来、シェーグレン症候群と診断されていた中に、ミクリッツ病がみられる場合もあります。シェーグレン症候群とは異なり、血液検査で高IgG4血症を認め、唾液腺と涙腺組織の細胞診で明らかなIgG4陽性形質細胞浸潤を認めます。

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による治療では、基礎疾患が明らかになった際は、その白血病、悪性リンパ腫などの治療を行います。

基礎疾患が不明の場合は、ステロイド剤(副腎〔ひくじん〕皮質ホルモン)による薬物治療を行います。ステロイド剤に対する治療反応性は良好で、唾液腺と涙腺機能の回復がみられます。悪性リンパ腫に変化する可能性があるので、定期的な検査が必要です。

🇦🇱ミクリッツ病

耳下腺などの唾液腺と涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患

ミクリッツ病とは、両側または片側の唾液腺(だえきせん)と涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患。自己免疫疾患であるIgG4関連疾患の一種と見なされます。

唾液腺の耳下(じか)腺にはれが好発し、時に唾液腺の顎下(がくか)腺、舌下(ぜっか)腺、涙腺にもはれが発生し、まれには複数の腺に同時にはれが発生することがあります。

はれが増すにつれ、唾液が出にくくなり、口やのどの渇きなどが発生して耳下腺炎を起こし、涙が出にくくなって結膜炎を起こし、視力障害が出ることがあります。口内や目の乾燥感は強くありませんが、顔全体が熱っぽい感じになり、不快になります。

唾液腺や涙腺にリンパ球が浸潤することで、慢性の炎症に類似した症状が現れます。リンパ球の浸潤の原因は、不明です。性別では、男女で症状の現れ方や、症状の現れる頻度に差はありません。

従来、このミクリッツ病は、目と口が乾燥する自己免疫疾患であるシェーグレン症候群の亜型または同一の病態として認識されてきました。しかし、21世紀に入り、ミクリッツ病を発症すると、血中に免疫蛋白(たんぱく)IgG4が多くなり、唾液腺、リンパ節、膵臓(すいぞう)や胆管などにIgG4を分泌する細胞が多数集まっていることがわかったことから、IgG4関連疾患の一種と考えられるようになりました。

ミクリッツ病として症状が表に現れた場合、IgG4関連疾患をしばしば合併し、時間経過を経て、膵臓、腎臓(じんぞう)、肺臓、後腹膜など全身のさまざまな臓器にこぶやはれが見付かることも多くなります。

IgG4関連疾患は、全身性の慢性炎症性疾患であり、ミクリッツ病や自己免疫性膵炎、自己免疫性下垂体炎、リーデル甲状腺炎、間質性肺炎、間質性腎炎(じんえん)、後腹膜線維症などがあり、悪性腫瘍(しゅよう)が潜在していることもあります。

長い期間、耳の前や顎(あご)の下がはれているようであればミクリッツ病の可能性もあり、耳鼻咽喉(いんこう)科か歯科口腔(こうくう)外科、上まぶたがはれているのであれば眼科を受診することが勧められます。

ミクリッツ病の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査や超音波検査を始めとするさまざまな検査で、腫脹(しゅちょう)がある部位と全身的な広がりを確認します。

悪性リンパ腫を始めとする悪性腫瘍、白血病などの除外を慎重に行い、IgG4関連疾患の合併を念頭に置き、確定診断には、血液検査と、腫脹した組織の一部を切り取って顕微鏡検査を行う細胞診を行います。

従来、シェーグレン症候群と診断されていた中に、ミクリッツ病がみられる場合もあります。シェーグレン症候群とは異なり、血液検査で高IgG4血症を認め、唾液腺と涙腺組織の細胞診で明らかなIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めます。

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による治療では、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)による薬物治療を行います。ステロイド剤に対する治療反応性は良好で、唾液腺と涙腺機能の回復がみられます。しかし、ステロイド剤を減量すると再燃することが多くみられます。複数の臓器障害を伴う場合は、ステロイド剤を増量します。

ミクリッツ病から悪性リンパ腫を始めとする悪性腫瘍に変化する可能性があるので、厳重な経過観察と定期的な検査が必要です。

🇸🇮ミクロペニス

ペニスが基準よりも小さい状態にある性機能疾患

ミクロペニスとは、男性のペニス(陰茎)が基準よりも大幅に小さい状態にあり、生殖や性行為に支障を来す性機能疾患。マイクロペニス、矮小(わいしょう)陰茎とも呼ばれます。

短小ペニスという呼び方もありますが、こちらは俗語であって医学的に定義されたものではなく、個人差の範囲にすぎないものを指している場合が多く認められます。これに対して、ミクロペニスは医学的に定義されたもので、性機能疾患として認められている疾患の一つです。

ペニスの形態は正常であるものの、その大きさが平常時はもちろん、勃起(ぼっき)時でも一定の基準よりも小さく、成人男性で勃起時の長さが5センチ以下のものが、ミクロペニスと定義されています。勃起時でも長さ太さともに5ミリに達せず、陰嚢(いんのう)に埋没して、外見上は生まれ付きペニスを所有しない陰茎欠損症に見える極端な例もあります。

性腺(せいせん)からのホルモンの分泌不足によって起こる性腺機能低下症が、最も多い原因と考えられています。また、全身的な症候群の一症状として、ミクロペニスがみられることもあります。積極的な治療を必要とするミクロペニスは、男児250人に1人程度に認められるとされています。

ペニスの発達はまず、胎生期における生殖茎の分化、成長が基軸にあります。排泄腔(はいせつくう)ひだが左右ともに癒合し合って、生殖結節が形成され、その生殖結節が伸びた状態が生殖茎であり、その生殖茎が男性のペニス、女性のクリトリス(陰核)のベースになります。

生殖茎は、おおよそ胎生12週までは男女ともに同様の分化、成長を続けます。その後、男性では胎児精巣(睾丸〔こうがん〕)から分泌される男性ホルモンの一種であるテストステロンの影響で、生殖茎が伸びていき、ペニスの形状をなしていきます。生殖茎は伸長に並行して、尿道ひだを引き込んで尿道を形成し、それに応じて尿道口が亀頭の先端に形成されます。

この生殖茎の伸長と尿道ひだの引き込みが、テストステロンの分泌量が足りない場合に不十分に進行して、ミクロペニスと、尿道の出口が亀頭の先端になくてペニスの途中や陰嚢などにある尿道下裂の原因になります。

また、第二次性徴期におけるテストステロンの分泌障害もまた、ペニスの成長発達を阻害し、結果としてミクロペニスを示すことがあります。

胎生期ならびに出生後に発生するテストステロンの分泌障害は、精巣自体に問題がある原発性性腺機能低下症と、テストステロンの上位ホルモンで、脳下垂体から出される性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌障害などが原因の続発性性腺機能低下症があります。

こうしたテストステロンの分泌不足によって発生するミクロペニスなどの障害は、テストステロンの受容体の障害でも同様に発生します。

原発性性腺機能低下症によってミクロペニスを示す疾患には、類宦官(るいかんがん)症や、クラインフェルター症候群などの染色体異常を示す疾患があります。クラインフェルター症候群では、第二次性徴の障害は続発性性腺機能低下症などに比較して少ないことが多く、成人後の勃起障害(ED)や男性不妊症で、クラインフェルター症候群自体が発見されることも珍しくありません。

ミクロペニスでは、ペニスが小さすぎるために性交障害を生じる時があります。また、テストステロンの相対的な不足は勃起障害(ED)を引き起こし、これもミクロペニス同様の性交障害の原因になります。

通常は新生児期に、医師や看護師による性別の確認が行われる際に見付かり、専門医に紹介されて治療が行われます。

ミクロペニスの検査と診断と治療

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、内分泌代謝科の医師による診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、アンドロゲン(男性ホルモン)受容体の検査、超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による内性器の存在確認を行います。

また、埋没陰茎、翼状陰茎などと鑑別します。これらの疾患は、いずれもペニスが一定の基準より小さい、もしくは小さく見えるという疾患になります。

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、内分泌代謝科の医師による治療では、ミクロペニスは男性ホルモンであるテストステロンの分泌不全、もしくは機能不全が問題であることがほとんどなので、幼少期のテストステロン製剤による刺激療法を行います。テストステロン製剤には塗布薬と注射薬があり、病態に合わせて局所塗布か全身投与かを決めます。

注射薬を用いて全身投与を行う場合、骨の成長を進行させる副作用があり、骨の発達が早期に完了してしまうリスクがあります。身長が伸びる思春期以前に、このホルモン療法を行うと、背が十分伸びないことがあります。

また、子供をつくる生殖能力を獲得するために、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの注射など、上位ホルモンから性腺に刺激を与える治療を行うこともあります。

ミクロペニスの成人以降の処置としては、自家移植手術の陰茎海綿体延長術が行われることもあります。大腿(だいたい)部や腹部から採取した真皮を使用して、ペニスの勃起機構の主体をなす陰茎海綿体に移植して、ミクロペニスの伸長を図ります。

🇭🇷水ぼうそう(水痘)

全身に水膨れが現れ、かゆみを伴う感染症

水ぼうそう(水痘)とは、ヘルペスウイルスの一種の水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で起こる疾患。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。

一般に冬から春にかけて、子供に流行する疾患で、時折、大流行することもあります。感染経路は、主に空気感染、飛沫(ひまつ)感染で、水疱液の接触感染もあります。ウイルスは強い感染力を持っているため、病院などでは同一フロアにいるだけで軽度の接触と見なします。

従って、水ぼうそうにかかった時には、水膨れが完全にかさぶたになるまで、幼稚園や学校、会社などは休まなければなりません。通常は1週間くらいで治り、免疫力が低下している場合には、重症化することがあります。

ほとんどの人が子供の時にかかりますが、最近では、小児期に感染する機会が減ってきていることから、大人になってから初めてかかる例も増えてきています。大人の水ぼうそうは、脳炎や肺炎の合併が多くて重症となることが多いので、注意が必要です。また、妊婦が出産直前に感染すると、生まれた新生児は重症水ぼうそうになりやすいため、緊急の処置が必要になります。

潜伏期間は11~21日で、発疹(はっしん)の現れる1日前から、軽い発熱、だるさ、食欲低下がみられます。症状の初めは、数個の発疹がみられるだけですが、その後数時間で、全身に円形の赤い発疹が現れ、すぐにエンドウ豆大の水膨れになります。水膨れは数日でかさぶたとなりますが、次々と新しく発疹が現れるので、新旧さまざまな発疹が混在してみられるのが特徴です。

発疹は胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。発疹の数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

一度かかると免疫ができるため、再び水ぼうそうにかかることはほとんどありません。しかし、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後も神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかのきっかけにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水ぼうそうのように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。

水ぼうそうの治療法

水ぼうそう(水痘)は軽いものから重いものまであり、発症者によってさまざまな症状が現れるので、医師の判断の下に症状に合わせた治療を受けるようにしましょう。

水ぼうそうの典型例では多くの場合、その皮膚症状から容易に診断できます。非典型例でほかの病気との区別を要する場合や、早期に診断を確定する必要がある場合などには、水疱の底にある細胞を採取し、蛍光抗体法を用いて水痘・帯状疱疹ウイルス抗原を検出します。また、抗体検査を水ぼうそうの発症者に行えば、ウイルスの初感染であることが確認できます。

治療には対症療法しかありませんが、原因となるウイルスの増殖を抑える治療と、発熱、かゆみなどの症状を和らげる治療があります。

乳幼児期の水ぼうそうは軽症である場合が多いので、非ステロイド性解熱鎮痛薬、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬やフェノール亜鉛華軟膏(なんこう)などが処方され、安静などによる対症的な治療が行われます。

年長児あるいは成人などでは、比較的に重症化することが多いので、抗ウイルス薬のアシクロビル、バラサイクロビルなどの内服を行います。

悪性腫瘍(しゅよう)やその他の疾患により免疫状態が低下している場合では、致死的になることがあるので、入院した上でアシクロビル、ビダラビンなどの点滴静脈注射が行われる場合があります。

水膨れが壊れたら、抗生剤入りの軟膏で二次感染を防ぎます。また、化膿(かのう)がなければ、ドレッシング材などで覆って湿潤環境を維持することで、皮膚に跡が残りにくくなる場合があります。

予防手段としては、水痘ワクチンが使用されます。水痘ワクチンは弱毒化生ワクチンであり、接種により80~90パーセント程度の発症阻止効果があります。発症した場合も症状は軽くてすみますし、ワクチンによる重い副作用もほとんど発生していません。

日常生活で注意すること

全身症状が軽くても、発疹がすべてかさぶたになって症状が治まるまで、安静にしていることが大切。熱が高い場合には、両脇(わき)を冷やすなどとともに、脱水状態にならないように水分を十分取るようにします。

水ぼうそう(水痘)はかゆみを伴うため、つい引っかいてしまいがちですが、水膨れをつぶすと、化膿したり、跡が残ることもあります。水膨れはつぶさないようにし、手などを清潔にして細菌感染を起こさないようにします。引っかいてしまわないように、爪(つめ)を丸く切ったり、手袋をするのもよいでしょう。

また、水痘・帯状疱疹ウイルスは伝染力が強いので、発疹が現れる1日前からかさぶたになるまでのおよそ1週間くらいは、他人に感染する可能性があります。くしゃみや咳(せき)、会話などによって飛び散ったウイルスが、気道から吸引されて移るため、水ぼうそうにかかったことのない人の近くに寄らないようにします。

特に、家族の中に水ぼうそうにかかったことのない人がいる場合には、感染する可能性が高く、家族から感染した場合は重症化することが多いので、注意が必要です。

熱がある時や新しい水膨れが増えている間は、入浴は控えます。ほとんどの水膨れがかさぶたになれば、これらを破らないように気を付けながら入浴してもよいでしょう。入浴した後には、皮膚から細菌が入らないように処置が必要なこともあるので、医師に相談して指示を受けましょう。

学校保健法による第2類学校伝染病に指定され、すべての発疹がかさぶたになるまでは、幼稚園や学校を休ませることになっていますので、それまでは子供が元気でも休まなければなりません。すべての発疹がかさぶたになれば、人に移すこともないので、集団の中に入っても大丈夫です。

通常、1週間程度で治りますが、もし4~5日を過ぎても発熱が続いたり、体がだるいなど具合が悪いような場合には、他の病気を合併している可能性がありますので、すぐに医師に相談しましょう。

🇲🇪水虫(足白癬)

足に生じる感染症で、日本人の4人に1人が発症者

水虫(足白癬)とは、真菌の一種である白癬(はくせん)菌で足に生じる感染症。白癬菌で皮膚に生じる白癬の中では圧倒的に多く、全白癬発症者の65パーセント程度を占めます。さらに、水虫にかかっていても皮膚科を受診しない人も多く、日本人の4人に1人くらいがかかっているというデータもあります。

この水虫(足白癬)は、趾間(しかん)型、小水疱(しょうすいほう)型、角質増殖型に病型分類されます。複数の病型を示すことも、多くみられます。

趾間型は、足の指の間に浸軟、あるいは乾いた鱗屑(りんせつ)を付着する紅斑性局面を示し、びらん(ただれ)や亀裂を伴うことがあります。小水疱型は、足の底から足の側縁にかけて、半米粒大までの集まったり癒合する傾向のある水疱、膿疱(のうほう)を伴う紅斑性局面を示します。ともに春から夏にかけて発症したり悪化しやすく、かゆみを伴うことが多いのですが、必ずではありません。角質増殖型は、かかとを中心に足の底全体の皮膚の肥厚と角化、細かく皮膚がむける落屑を特徴とします。かゆみは少なく、冬もあまり軽快しません。

水虫(足白癬)を放置していると、白癬菌が爪(つめ)を侵し、爪(そう)白癬になります。爪にできることはまれと従来いわれていましたが、最近の統計によると水虫(足白癬)を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。高齢者に多くみられます。爪の甲の肥厚と白濁を主な特徴とし、自覚症状はありません。まれに、爪の甲の点状ないし斑(まだら)状の白濁のみのこともあります。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の爪囲炎の合併はまれです。

水虫(足白癬)と区別すべき主な疾患は、接触皮膚炎、汗疱(かんぽう)、異汗性湿疹(しっしん)、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症、掌蹠角化症などです。炎症症状の強い水虫(足白癬)の悪化時に、手あるいは白癬病変のない足に小水疱が左右対称に生じることがあります。この病変中からは白癬菌は検出されず、一種のアレルギー反応と考えられ、白癬疹と診断されます。

水虫の検査と診断と治療

医師による水虫(足白癬)の検査では、水疱部の皮膚を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。手足に水ぶくれがみられ、原因が明確になっていない汗疱との区別が、水虫(足白癬)の検査では必要とされます。

治療法としては、白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。4週間で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるもの、爪白癬では、内服療法を行います。爪白癬の場合、少なくても3〜6カ月間の内服が必要です。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

生活上で水虫(足白癬)に対処する注意点を挙げると、真菌(カビ)は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。ふだんから足の清潔を心掛けることは、予防のためにも大事です。家族で他に水虫(足白癬)の人がいたら、一緒に治療することが必要です。白癬菌は共用の足ふきから移ることが最も多いため、足ふきは別々にします。

🇷🇸三日ばしか(風疹)

急性ウイルス性疾患で、発疹、リンパ節のはれ、発熱が主要な兆候

三日ばしかとは、発疹(ほっしん)、リンパ節のはれ、発熱を主な兆候とする急性ウイルス性疾患。風疹(ふうしん)とも呼ばれます。

はしか(麻疹)より感染力が弱く、通常3日程度で発疹が消えて治るため、三日ばしかと呼ばれます。怖いのは妊娠初期の女性が感染した場合で、流産したり、風疹ウイルスが胎盤を介して胎児に感染し、生まれた新生児に先天性風疹症候群と呼ばれる形態異常を起こす確率が高くなります。症状や重さは感染時期によって異なり、妊娠2カ月以内だと白内障、心臓の形態異常、聴力障害のうち2つ以上を抱えて生まれることが多くなります。妊娠3~5カ月でも聴力障害がみられます。

こうした新生児は1965年に、沖縄県で400人以上生まれました。また1977~79年の全国的な大流行の際は、影響を恐れた多くの妊婦が人工妊娠中絶をしました。

三日ばしかは例年、春先に流行し始め、ピークは5、6月。かかりやすい年齢は5~15歳ですが、成人になってからかかることもあります。感染力はそれほど強くなく、かかっても症状の現れない不顕性感染が約15パーセントあります。一度自然にかかれば、一生免疫が続くと考えられています。

かつてはほぼ5年ごとに全国的な流行を繰り返しましたが、1994年以降は局地的、小規模な流行にとどまっています。患者の全数把握が始まった2008年は294人。その後、2009年147人、2010年90人と減少しましたが、2011年は12月11日までの集計で362人と増加し、特に予防接種政策の影響でワクチンを打たずにきた成人の男性が職場で集団感染するケースが目立ちました。

14~21日の潜伏期間の後、全身の淡い発疹、耳の後ろや後頭部の下にあるリンパ節のはれ、発熱などの症状が現れます。人に移るのは発疹の出現数日前から出現後5日間で、感染者の唾液のしぶきなどに接触することで移ります。一般に症状は軽く、初期はごく軽い風邪症状のこともありますが、気付かれないことも多く、発疹が出て初めて気付くくらいです。

しかしながら、発疹に先立ってリンパ節のはれや圧痛が耳や首の後ろ、または後頭部に起こるのが特徴です。リンパ節のはれは、発疹が消えてからも数週間に渡って続くことがあります。一般に発熱は軽度で高熱をみることは少なく、40〜60パーセントは無熱で経過します。そのほか、全身倦怠(けんたい)感や、のどの痛み、結膜の充血がみられることがあります。

発疹は、はしかと比べると小さめで、色も薄く桃色をし、3日間くらいで色素沈着を残さずに消えます。

まれに、重い合併症が起きます。主なものには脳炎、髄膜炎、血小板減少性紫斑(しはん)病、関節炎があります。特に注意を要するのは脳炎で、三日ばしかの流行期に5000〜6000例に1例の頻度でみられます。発疹の出現後2〜7日で発症しますが、予後はよく、後遺症を残すことはまれです。

三日ばしか(風疹)の検査と診断と治療

小児科や内科、感染症内科の医師による診断では、一般的に、保険適用されている血清診断を行います。ウイルスの分離が基本ですが、通常は行わず、保険適応もされていません。

血清診断では、急性期と回復期の抗体価が4倍以上上昇することにより確定診断する赤血球凝集抑制反応や、急性期に三日ばしか(風疹)に特異的なIgM抗体を検出することで確定診断する酵素抗体法などの方法がよく用いられます。はしか(麻疹)や水痘(水ぼうそう)と違い、三日ばしかは症状や所見だけで診断することの難しい疾患の一つです。

医師による治療では、特別な方法はないため、対症的に行います。発熱、頭痛、関節炎などに対しては、解熱鎮痛剤を用います。治療を必要としない場合も多くみられ、子供では一般に症状は軽いので、安静だけで3〜5日で自然に治ります。

三日ばしかは第二種の伝染病に定められており、幼稚園や学校を休む必要があります。発疹がなくなることが目安になるため、発症後6日目ごろから登園、登校してもよいのですが、1カ月くらいは無理をさせないで合併症に気を付けます。

予防法として、風疹(三日ばしか)ワクチンの接種があります。風疹ワクチンの接種の対象は1977年から94年までは中学生の女子のみでしたが、同年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上~90カ月未満の男女とされました。さらに、2006年以降は、風疹ワクチンは麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)として接種、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前年度の1年間に当たる子)に計2回接種しています。これは1回の接種では免疫が長く続かないため、2回目を接種して免疫を強め、成人になってから三日ばしか(風疹)やはしか(麻疹)にかからないようにするためです。

2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種対象が、第3期(中学1年生相当世代)、第4期(高校3年生相当世代)にも拡大され、接種機会を逸し1回しか接種されていない子も2回接種が可能になっています。

先天性風疹症候群を始め、脳炎、髄膜炎、血小板減少性紫斑病などの発症予防のために、麻疹・風疹混合ワクチンの接種が勧められます。

また、妊娠を望むものの風疹抗体がないか少ない成人女性も、積極的に麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種を受けることが望まれます。ただし、妊婦の風疹ワクチン接種は禁忌で、風疹ワクチン接種後2~3カ月間は妊娠は避けることが望ましいでしょう。風疹抗体がないか少ない女性が妊娠した場合、三日ばしかの流行期は特に注意が必要で、抗体価検査を定期的に行い、経過観察を続ける必要があります。

身近に妊娠を望む女性がいる場合、麻疹・風疹混合ワクチン未接種で三日ばしかにかかったことがない成人の男性も、ワクチンを接種して予防することが望まれます。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...