2022/08/04

🇸🇻ギヨン管症候群

手のひらの小指球にあるギヨン管で神経が圧迫されて、引き起こされる疾患群

ギヨン管症候群とは、手のひらの小指球にあるギヨン管(尺骨〔しゃくこつ〕神経管)の中を通る尺骨神経が圧迫され、引き起こされる疾患群。尺骨神経管症候群とも呼ばれます。

手のひらの肉の盛り上がりである小指球の手根部にあるギヨン管は、周囲を屈筋支帯と尺側手根屈筋で囲まれるトンネル構造になっており、首からの神経がわきの下を通り肘(ひじ)の内側から指に通じている尺骨神経と尺骨動静脈が通り、さまざまな原因で圧迫や引き延ばしが加わることで、尺骨神経まひが発生します。

原因として多いのは、ギヨン管周辺組織の退行変性(老化)、ギヨン管を囲む靭帯(じんたい)などの軟部組織の肥厚、ギヨン管内外にできたガングリオン(結節腫〔しゅ〕)、外傷、骨折。ペンチなどの工具を握る動作やドリルの長時間の使用、タイル張りなどの長時間の床仕事、長時間の自転車走行、繰り返す腕立て伏せなどで小指側の手のひらを圧迫することによっても、症状が現れることもあります。

職種としては、大工、プロゴルファー、プロ野球選手、ロードレースや競輪などの自転車選手がかかりやすいとされています。

発症当初は、手首の手のひら側から小指、薬指の小指側にしびれ、痛みが生じます。肘関節部で尺骨神経が圧迫され、引き起こされる肘部管(ちゅうぶかん)症候群と異なり、小指の背側のしびれはありません。

手関節を手の甲側に反らせる背屈と、手関節を手の平側に曲げる掌屈(しょうくつ)でしびれ、痛みが増強します。しびれ、痛みなど感覚の障害がないのに、手指の小さな筋肉が利かなくなってしまうこともあります。ギヨン管の中で尺骨神経は浅枝(知覚枝)と深枝(運動枝)に分枝するため、傷害される部位によって特徴ある症状を示すことがあるためです。

進行ととともに、尺骨神経が支配する筋肉の委縮が始まり、握力の低下、はしを使うなどの細かい動きがうまくできない巧緻(こうち)運動障害、親指と人差し指でのつまみ運動障害、親指と小指の対立運動不全を引き起こします。顔を洗うために手で水をすくったりする動作も、難しくなってきます。 筋肉が固まって小指が曲がったままになる鉤爪(かぎづめ)変形(鷲手〔わして〕変形)と呼ばれる現象も起こります。

このギヨン管症候群の自己診断はとてもむずかしく、専門家でもきちんと電気生理学的な検査を含んだ精密な神経の診察をしないと、診断は容易ではありません。しびれも重要な症状ですが、手の筋肉のやせも重大な症状ですので、放置せずに、すぐに整形外科、神経内科の医師の診察を受けるようにしましょう。

ギヨン管症候群の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、手の筋肉の委縮や鉤爪変形、親指と人差し指で紙をつまみ、医師が紙を引く時に親指の第1関節が曲がるフローマンサインがあれば、診断がつきます。

感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。ギヨン管症候群では、豆状骨と有鈎(ゆうこう)骨の間をたたくと、手首の手のひら側から小指、薬指の小指側に放散痛が広がります。

確定診断には、電気生理検査を行います。 また、神経伝導速度を測定し、尺骨神経の伝導速度に遅れが認められると、ギヨン管症候群と確定されます。

また、頸椎(けいつい)症による首の第7頸椎椎間板の障害でも、小指のしびれや痛み、手の筋肉の委縮、手指の変形が起こりますので、鑑別が必要になります。

整形外科、神経内科の医師による治療では、局所の安静、ビタミン剤の服用、少量のステロイド剤の注射、温浴療法、電気刺激療法、超音波療法などを行います。急性発症例で明らかな誘因がある場合には、手首を酷使するなどの生活習慣の改善と局所の安静で、自然に軽快することが多い傾向にあります。

筋委縮を起こしている場合や、骨折やガングリオンなどよって手関節に変形を起こしている場合では、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術が行われます。

🇳🇮ギラン・バレー症候群

筋肉を動かす運動神経の障害で、急に手足が脱力

ギラン・バレー症候群とは、広範囲に渡って末梢(まっしょう)神経を侵してくる多発性神経炎の一種で、ウイルスなどの感染が関係している自己免疫疾患。急性感染性多発性神経炎とも呼ばれています。

筋肉を動かす運動神経の障害のため、急に両手両足に力が入らなくなります。小児まひ(ポリオ)が発生しなくなった先進国においては、脳卒中を除けば、急に手足が動かなくなる原因として最も多い疾患であることが知られています。人口10万人当たり年間1〜2人発症し、日本では少なくとも年間2000人以上発症していることが推定されています。日本では特定疾患に認定された指定難病。

慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど多くの自己免疫疾患は女性のほうが多いのですが、ギラン・バレー症候群では男性のほうがかかりやすいと見なされています。乳児から高齢者まで、どの年齢層でも発病し得ますが、遺伝はしません。

発症の原因は、ウイルスなどを排除して自分を守るための免疫システムが異常となり、運動神経、感覚神経など自分の末梢神経を攻撃するためと考えられています。最も症状の強いピークの時には、約3分の2の発症者の血液中に、神経に存在する糖脂質という物質に対する抗体が認められ、これが自分の神経を攻撃する自己抗体として働いている可能性があります。そのほかに、リンパ球などの細胞成分やサイトカインなどの液性成分も、関係していると考えられています。

約7割ほどの人が発症の前に、風邪を引いたり、下痢をしたりしています。軽い発熱、頭痛、咽喉(いんこう)痛、下痢が数日続いた後、1週間前後を経て、急に手足の脱力が始まってくるのが普通です。片側の手足が動かなくなる脳卒中と異なり、両手両足が動かなくなります。大部分の人は運動神経だけでなく感覚神経も傷害されて、手足の先のしびれ感もしばしば伴います。

顔面の筋肉や目を動かす筋肉に力が入らなくなって、目を閉じられなくなったり、物が二重に見えたり、ろれつが回らなくなったり、食事を飲み込みにくくなったりすることもあります。手足のまひの程度は発症してから1〜2週以内に最もひどくなり、その後は改善していきます。重症の場合には、寝たきりになったり、呼吸もできなくなります。

ギラン・バレー症候群の検査と診断と治療

ギラン・バレー症候群では、発症してからなるべく早い急性期に免疫グロブリン大量静注療法、あるいは単純血漿(けっしょう)交換療法を行うと、ピークの時の症状の程度が軽くなり、早く回復することがわかっています。単純血漿交換療法では、人工透析のような体外循環の回路に血液を通して、血液を赤血球、白血球などの血球成分と、血球以外の血漿成分に分けます。自己抗体を含む血漿成分を捨てて、ウイルスが混入していない代用血漿と自分の血球を体内に戻します。

重症の場合は、まひが次第に体の上のほうに広がって、呼吸まひを起こすようになるので、呼吸管理に気を付ける必要があります。ピークの時には人工呼吸器を用いたり、血圧の管理を行ったりといった全身管理が重要であり、回復する時期にはリハビリテーションも大切となります。

症状は遅くとも1カ月以内にピークとなり、その後徐々に回復に向かい、6~12カ月で多くの発症者はほぼ完全によくなります。比較的、良性の疾患ながら、何らかの障害を残す人が約2割いて、急性期やその後の経過中に亡くなられる人が約5パーセントと報告されています。再発率は多くても、5パーセント未満と見なされています。

🇳🇮汗孔角化症

カサカサした皮疹が四肢を中心に多発する皮膚病

汗孔角化(かんこうかくか)症とは、直径数ミリから数センチの大きさで、赤や茶色の円形または環状の形をした、平たく少しだけ盛り上がったカサカサした皮疹(ひしん)が、四肢を中心として、全身の皮膚に多発する疾患。

男性に多く、自覚症状が乏しいことが多くなっています。皮膚の症状はよくなったり悪くなったりして、基本的に慢性的かつゆっくり症状が経過します。時にしこりのようになり、皮膚がんに移行する例もあります。

以前は、汗の出口である汗孔が厚みを増して硬くなる角化異常が関与していると考えられていましたが、今は、皮膚病変が汗孔に限局しないことがわかっています。

皮疹の分布や経過により、古典型(ミベリ型)、日光表在播種(はしゅ)型、表在播種型、線状型、掌蹠(しょうせき)播種型、限局型の病型に分けますが、明確でないことも多くみられます。

古典型(ミベリ型)汗孔角化症は、手足や顔面に小型の皮疹が左右対称に数個、散発性に生じます。常染色体優性遺伝の疾患で、親子や兄弟がともに発症することがあります。

日光表在播種型汗孔角化症は、特に日光に当たる腕や足の外側に小型の皮疹が多数現れます。皮疹が融合することもあります。

表在播種型汗孔角化症は、常染色体優性遺伝の疾患で、紫外線が皮疹を誘発していると考えられています。症状は日光表在播種型とほぼ同様ですが、日光が当たる部位以外にも皮疹が多数現れます。皮疹は、円形ないしは楕円(だえん)形の不規則な環状の隆起局面で、中心部の皮膚は委縮しています。

線状型汗孔角化症は、生まれた時から幼少期までの間に、体の一部分の皮膚に集中して皮疹ができ始め、線状、帯状に現れます。

掌蹠播種型は、手のひらや足の裏に角化した小さな皮疹が多数現れます。全身に拡大することもあります。

限局型は、限られた部位に大型の皮疹ができます。

発症の原因として、常染色体優性遺伝、外傷、加齢、紫外線、放射線、免疫抑制状態、肝炎ウイルスなどが考えられています。

日本人の400人に1人は、汗孔角化症を発症する生まれ付きの素因を持っていると見なされています。さらに、そのような人では、日光に含まれる紫外線に当たるなどにより後天的に皮膚細胞のゲノムが変化すると、汗孔角化症の症状が全身の皮膚に多発することになります。

汗孔角化症を発症する人は、メバロン酸経路の酵素をコードするMVD、MVK、PMVK、FDPSなどの遺伝子に、生まれ付きの変化(遺伝子変異)を1つ持っています。人の細胞は遺伝子を2つずつ持っているため、遺伝子の片方が変化して働かなくても、もう片方がスペアとして働き、通常は何も問題は起きません。

しかし、皮膚細胞のゲノムに生じた後天的な変化によって、MVD遺伝子などが2つとも働かなくなった細胞が汗孔角化症の皮疹を作り、後天的な変化が胎児期に1度だけ生じると線状型汗孔角化症になり、大人になってから後天的な変化が皮膚のあちらこちらで何度も生じると、表在播種型汗孔角化症になります。

皮膚がんに移行することがあるので、皮膚病変に気付いたら、皮膚科専門医を受診して正しい診断をつけてもらい、適切な治療を受けることが必須です。

汗孔角化症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍(しゅよう)科、小児科の医師による診断では、典型的な皮膚の症状では、見た目でも確定できます。

尋常性乾癬(かんせん)、表皮母斑(ぼはん)、疣贅(ゆうぜい)、扁平苔癬(たいせん)、日光角化症などの疾患と鑑別する必要があり、区別が難しい時は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる生検をすることがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科、小児科の医師による治療では、確立された治療法

は存在していないため、遮光のほか、外用薬や内服薬の使用、外科的な処置をします。

しかし、治療に抵抗性を示し、なかなか治療効果が出なかったり、再発したりすることが多く見受けられます。皮膚がんに移行した場合は、手術による治療が必要です。

外用薬は、主にサリチル酸ワセリンや尿素軟こうといった角質溶解剤、ビタミンD3軟こう、保湿剤を用います。内服薬としては、レチノイド(エトレチナート)を用いることがあります。

外科的な処置などによる治療としては、液体窒素による凍結療法、切除手術による治療のほか、炭酸ガス(CO2)レーザーやルビーレーザーなどのレーザー治療を行うことがあります。

🇧🇿肝硬変

肝細胞が壊死し、線維化して発症

肝硬変とは、肝細胞が壊死(えし)して組織の中に線維が増え、肝臓が硬く変わる疾患です。 内部の血液循環に異常が生じ、肝臓の働きが果たせなくなります。特に、40歳以上の男性に多くみられ、好発年齢は60歳代。

肝臓は再生力が強い臓器ですので、肝細胞が壊死などを起こしても、その原因が一過性の場合には、欠損部分が新しい肝細胞によって補充されて治癒します。しかし、慢性的に傷害されている場合には、肝臓の中に線維が増えてきます。

肝硬変では、この増えた線維によって、肝細胞の集団が島状に取り囲まれ、結節状になっています。肝臓の表面も、同様に結節がみられて凹凸状となっています。

肝硬変の主な原因は、アルコール性肝炎、B型およびC型慢性肝炎です。アルコールが原因のものをアルコール性肝硬変といい、ウイルス肝炎を原因とするものを壊死後性肝硬変といいます。

日本では、B型およびC型肝炎ウイルスによるものが最も多く、アルコール性肝硬変がそれに次ぐものです。そのほか、自己免疫、毒物、心臓性肝硬変、胆汁うっ滞、寄生虫、先天性の代謝異常を原因とするものもあります。

症状は黄疸、腹水、むくみ、出血など

肝硬変の初期には、自覚症状がないことが多く認められます。肝臓は予備力が大きいために、特に肝機能に異常のない場合も、決してまれではありません。

次第に肝機能障害が進行するとともに、肝臓の予備力が低下してくると、皮膚が色素沈着を増して黒褐色となり、倦怠(けんたい)感、脱力感、体重減少、毛細血管の拡張によって手のひらが薄く赤黒くなる手掌紅斑(しゅしょうこうはん)、首から胸にかけて赤いクモ状の斑点ができるクモ状血管腫(しゅ)などの症状がみられるようになります。

また、肝臓での性ホルモンの不活性化によって、男性では乳房が膨らむ女性化乳房、精巣委縮、ED(インポテンス)などが、女性では月経異常などが起こります。

さらに進行してくると、黄疸(おうだん)が出て、おなかが膨らみ、腹水がたまります。足にむくみが出現し、へそ周辺の静脈が腫(は)れ、門脈圧亢進(こうしん)症という状態になると、食道静脈瘤(りゅう)の破裂で吐血します。

本来、腹部内の臓器から集められた血液は、すべて門脈という血管によっていったん肝臓に運ばれ、大静脈を経由して心臓に戻ります。肝硬変があると肝臓内の血液の流れが悪くなるため、門脈の血液が肝臓に入る時に抵抗がかかり、門脈の圧が高くなって、門脈圧亢進症を招きます。

肝臓内を通り切れない門脈血は、食道の部分の静脈を脇(わき)道として遠回りし、大静脈に注ぐことになります。この食道部分の静脈を流れる血液量が多くなると、静脈の圧が高まって腫れ、その食道静脈瘤が破れると吐血を起こすのです。

門脈圧亢進症があると、その下流の臓器の脾(ひ)臓が腫れるために、白血球減少、血小板減少や貧血がみられるようにもなります。

また、肝臓での蛋白(たんぱく)代謝で生じるアンモニアを処理して、毒性のない尿素に変える働きが低下するために、中毒物質であるアンモニアが血液中に増加して、精神症状も起こります。性格が急に変わったり、普通では考えられないような異常行動をとったりすることがあり、ついには、うとうとと眠ったような昏睡(こんすい)状態となります。これを肝性脳症と呼んでいます。

肝硬変の診断と治療

肝硬変は進行性の病気ですので、予防し、初期のうちに進行を食い止めることが重要です。

肝臓の働きにはかなりの予備力があり、また生化学検査は感度が比較的低いため、肝硬変があっても肝機能検査の結果はしばしば正常値となりますが、超音波検査やCT検査で、肝硬変を示唆する肝臓の縮小や、結節などの組織の異常がわかることがあります。放射性同位元素を用いた肝スキャン検査では、肝臓のどの部分が機能し、どこが線維化しているかが画像に示されます。

医師が診断を確定するには、肝生検が行われます。肝生検とは、肝臓に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行うもの。麻酔が使われますので痛みはありませんが、肝臓に傷を付けるため、検査後は安静にしていることが必要です。

肝硬変の臨床的な機能分類として、肝硬変の原因を問わず、肝臓の機能不全症状の有無から、代償期と非代償期とに分けられます。

代償期肝硬変とは、黄疸、腹水、むくみ、肝性脳症、消化管出血などの肝機能低下と、門脈圧亢進に基づく明らかな症候が1つも認められない病態です。非代償期肝硬変とは、これらの症候のうち1つ以上が認められる病態です。

肝硬変の初期で、体の機能に支障がない代償期の治療は、本人のQOL(生活の質)を維持していきながら、肝硬変の進行を食い止めることを目的として行われます。規則正しい生活、バランスのとれた食事が基本となり、定期的に検査を受ける以外は特別な治療は行われないのが、一般的です。

進行した非代償期の治療では、アルコールなどの毒性物質の摂取をなくし、腹水や食道静脈瘤、肝性脳症といった合併症が生じれば、その治療が行われていきます。

腹水の治療では、水分と塩分を制限し、肝臓への負担を軽減するために、ある程度は安静も必要となります。さらに、効果を見ながら利尿剤を用いられることもあります。これでも改善しない場合は、アルブミンを注射で補います。ただし、薬剤は弱っている肝臓には負担になるので、なるべく使わず、使っても少量ずつが原則です。

食道静脈瘤の治療では、静脈瘤ができても痛みや異物感などの自覚症状がないため、定期的な検査を受けてもらい、破裂を防止します。静脈瘤が赤みを帯びてきたら、破裂の危険信号ですので、予防のための治療が必要になります。患部に硬化剤を注入して静脈瘤を固めてしまう方法や、静脈瘤を輪ゴムで縛って血流を止めてしまう静脈瘤結紮(けっさつ)術などがあります。

肝性脳症の治療では、まず食事で取る蛋白質を1日40グラムに制限します。そして、薬物療法に使われるのは、ラクツロースという一種の緩下剤で、腸内の有害な細菌を抑えて排便を促し、腸内を浄化する薬です。アンモニアの産生を促す細菌を殺すための抗生物質、あるいはアミノ酸バランスを調整する特殊アミノ酸製剤なども使われます。

また、肝臓で代謝される栄養を補う薬の服用が必要な場合には、過剰投与を避けるため、通常よりも大幅に用量が減らされます。適切な栄養摂取を心掛け、蛋白質や塩分の摂取制限、ビタミン剤の服用などが行われます。

肝臓は本来、脂質、炭水化物、蛋白質、アミノ酸およびエネルギー代謝など栄養代謝の中心的な臓器ですので、肝硬変、特に機能不全を来す非代償期肝硬変では、さまざまな栄養代謝障害が引き起こされるからです。

🇭🇳カンジダ性間擦疹

わきの下や股部など皮膚のこすれる部分に、カンジダという真菌の一種が増殖して生じる皮膚病

カンジダ性間擦疹(かんさつしん)とは、わきの下や股部(こぶ)など皮膚と皮膚のこすれ合う部分に、カンジダという真菌の一種が増殖して、赤い発疹(はっしん)が生じる皮膚病。

カンジダという真菌、いわゆるかびの一種は、もともと人間が持っている常在菌で、口腔(こうくう)や気管支、肺、腸管、膣(ちつ)内、皮膚などに常在して生息し、病原性が弱いため害を及ぼしません。しかし、疲労が重なったり、疾患で体の免疫力が低下している時、あるいは妊娠している時、糖尿病にかかっている時などに、カンジダが増殖して病原性が現れると、さまざまな部位に炎症を引き起こします。

その一つが、皮膚と皮膚のこすれ合う間擦部分に生じるカンジダ性間擦疹です。

鼠径(そけい)部から陰嚢(いんのう)、左右の尻(しり)の間、わきの下、乳房下部、頸(けい)部などの間擦部分に、境界がはっきりとした赤い発疹が生じます。その周囲には葉状の薄皮(鱗屑〔りんせつ〕)が付着しますが、赤い発疹から少し離れた部分にも小さなあせも(汗疹)様の赤いぶつぶつ(丘疹〔きゅうしん〕〉)や、小さなうみ(膿疱〔のうほう〕)がみられます。

小さなうみが破れて、湿潤したびらん(ただれ)になることもあります。軽いかゆみや、痛みがあることもあります。

カンジダ性間擦疹は、夏期に多く、肥満気味の人や多汗症の人、疾患などで寝たきりの人などに生じやすい皮膚病で、汗をかいて不潔にしていると悪化します。

カンジダ性間擦疹の検査と診断と治療

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、患部の皮膚の表面をピンセットで軽く引っかき、採取した角質を顕微鏡で見る直接鏡検法KOH(苛性〔かせい〕カリ)法で真菌を検出することで、確定します。真菌の種類を特定するために、培養検査を行うこともあります。

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、1日1回、抗外用真菌剤を塗布します。それと同時に、患部を清潔にし、乾燥させるケアが大切です。

基本的に外用剤による治療で比較的簡単に治りますが、しばしば再発します。特に、汗をかきやすい時期には再発を繰り返しやすいため、皮膚を清潔にして乾燥させ、湿気をこもらせないように気を付けることが必要です。

🇵🇭カンジダ性亀頭包皮炎

真菌の一種のカンジダが感染して、陰茎の亀頭部と包皮に炎症が生じる疾患

カンジダ性亀頭(きとう)包皮炎とは、女性との性交渉などの際に、男性の陰茎の先に当たる亀頭や、陰茎を包んでいる皮膚に当たる包皮に、カンジダという真菌の一種が感染して引き起こされる疾患。

カンジダという真菌、いわゆるかびの一種は、もともと人間が持っている常在菌で、口腔(こうくう)や気管支、肺、腸管、皮膚、そして女性の腟(ちつ)内などに常在して生息し、病原性が弱いため害を及ぼしません。

しかし、女性の場合は、疲労が重なったり、病気で体の免疫力が低下している時、あるいは妊娠している時、糖尿病にかかっている時などに、カンジダが増殖して病原性が現れると、腟や外陰部に炎症を起こし、カンジダ性腟外陰炎を発症します。

冬季の厚着、パンティーストッキングやジーンズの着用、こたつの使用などの高温多湿の環境や、抗生物質、風邪薬などの服用時などでも、カンジダが増殖して炎症を起こしやすいとされています。

カンジダ性腟外陰炎の症状としては、腟や外陰部に激しいかゆみがあり、濃いクリーム状、または粉チーズのような下り物が増えてきます。外陰部が赤くただれ、ひどい時は皮膚がカサカサに乾燥します。

男性の場合は、カンジダが多く生息したり、増殖した膣を持った女性と性交渉をすると、陰茎に大量のカンジダが付着し、カンジダ性亀頭包皮炎を発症することがあります。

基本的に陰茎は空気にさらされているためにカンジタは増殖しにくいのですが、あまり清潔でないまま放置していたり、傷口があったりすることで、亀頭や包皮に根付いて発症することがあるのです。

特に、亀頭が包皮に包まれている包茎の男性の場合には、多く発症する傾向にあります。包茎の場合、常に亀頭と包皮が乾かずに湿っているので、かびの一種であるカンジダが好んで生息する可能性が高いためです。

女性との性交渉が主なカンジダの感染経路ですが、接触、入浴での家族内感染などもあります。

カンジダ性亀頭包皮炎を発症した場合は、亀頭部の付け根に当たる冠状溝(環状溝)や包皮に、白いコケのようなものが一面に付着するのが特徴です。亀頭部の粘膜が赤く発疹(はっしん)し、かゆみ、痛みなどの症状を覚える場合もあります。また、無症状のことも多く見受けられます。

再発を繰り返すことが、しばしばあります。その原因としては、男性の陰茎の冠状溝に移ったカンジダが性交により、再び女性のほうに移行するピンポン感染などが挙げられます。

カンジダ性亀頭包皮炎の症状を自覚した時は、泌尿器科を受診することが勧められます。受診をためらって市販のかゆみ止めの軟こうなどに頼る男性もいますが、それで症状が改善されてもカンジダそのものは殺せないので、慢性化や悪化に注意する必要があります。

カンジダ性亀頭包皮炎の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、問診および視診を行います。確実な診断を得るために、亀頭やその周辺を綿棒でこすって分泌物を採取して、培養検査を行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、かびを殺す抗真菌剤の入った軟こうを1日数回、塗布します。抗真菌剤には、アスタット、ニゾラール、ラミシールなどがあります。

外用薬で改善がなければ、抗真菌剤の内服を試みます。赤い発疹やかゆみがある場合は、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を併用することもあります。

手で包皮をむいても亀頭が顔を出さないものを真性包茎と呼びますが、真性包茎でカンジダ性亀頭包皮炎を繰り返すと、皮膚自体が弱まり、皮膚が部分的に切れる包皮裂傷などの原因となります。この真性包茎で再発を繰り返す場合や、尿が出にくい場合、なかなか治癒に至らない難治性の場合、他の疾患の合併症などが生じた場合は、炎症が治まった時点での手術が考慮されます。手術には、包茎の環状切除または包皮形成術があります。

治療中のカンジダ性亀頭包皮炎の皮膚や粘膜は刺激に敏感になっているため、できるだけ清潔に保つことが必要ですが、せっけんなどで洗いすぎないように気を付け、完治するまでは、性交渉の時にはコンドームを使用すべきです。

🇰🇷カンジダ性指間びらん症

主に手の指と指の間に、真菌のカンジダが増殖して起こる皮膚病

カンジダ性指間びらん症とは、主に手の指と指の間に、カンジダという真菌の一種が増殖して起こる皮膚病。皮膚がびらんし、赤みを伴った状態になります。

カンジダという真菌、いわゆるかびの一種は、もともと人間が持っている常在菌で、口腔(こうくう)や気管支、肺、腸管、膣(ちつ)内、皮膚などに常在して生息し、病原性が弱いため害を及ぼしません。しかし、疲労が重なったり、病気で体の免疫力が低下している時、あるいは妊娠している時、糖尿病にかかっている時などに、カンジダが増殖して病原性が現れると、さまざまな部位に炎症を引き起こします。

発症すると、指の間の皮膚がむけて、ただれたようになり、赤くなります。びらん面の中心部は白色にふやけますが、かゆみはないか、あっても軽度。経過中、皮膚表面からはがれかけている葉状の薄皮である鱗屑(りんせつ)が、辺縁にみられることもあります。

発汗が多い手の指の間に多くみられますが、足の指の間に生じることもあります。とりわけ、静止時に合わさっている利き手の第3指間、すなわち中指(第3指)と薬指(第4指)の間に生じやすく、皮膚がしばしばふやけた状態になってカンジダが増殖します。

カンジダに属する真菌の中でも、カンジダ・アルビカンスが圧倒的に多い原因菌となり、カンジダ・トロピカーリス、カンジダ・パラプシローシスなどが原因菌となることもあります。

このカンジダ性指間びらん症は、カンジダ性爪囲爪炎(そういそうえん)と合併することもあり、爪の基部が白く濁り、周囲の皮膚が赤くはれ上がり、悪化すると、爪と皮膚の間が化膿(かのう)して、うみが出たり、痛みが生じます。

カンジダ性指間びらん症は、水仕事をする中年女性や、飲食店などに従事する男性に多くみられます。

指の間の皮膚がびらんし、赤みを伴った状態になっているのに気付いたら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。カンジダ性指間びらん症症から、内臓の疾患が見付かることもあります。

カンジダ性指間びらん症の検査と診断と治療

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、病変部の皮膚の表面をピンセットで軽く引っかき、採取した角質を顕微鏡で見る直接鏡検法KOH(苛性〔かせい〕カリ)法でカンジダに属する真菌を検出することで、確定します。カンジダに属する真菌の種類を特定するために、培養検査を行うこともあります。

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、内臓の疾患が見付からない場合、基本的に外用薬による治療で比較的簡単に治ります。1日1回、抗外用真菌剤を塗布します。それと同時に、患部を濡らさないように水から避けて、手を乾燥した状態に保つことが大切です。

外用薬では、イミダゾール系のものが抗菌域が広く、カンジダに対しても有効性が高く、第一選択薬といえます。ネチコナゾール(アトラント)、ケトコナゾール(ニゾラール)、ラノコナゾール(アスタット)などの新しい薬は、抗菌力が強化されています。基剤としては、軟こう剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤がありますが、カンジダ性指間びらん症などの皮膚カンジダ症ではただれの症状を示すことが多いので、刺激が少ないクリーム剤か軟こう剤が無難です。

カンジダ性爪囲爪炎を合併している場合は、外用薬による治療だけでは治りにくいため、1日1回、抗外用真菌剤を塗布するとともに、抗真菌剤の内服を行います。内服薬では、トリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が、抗菌域が幅広く、第一選択薬です。副作用は比較的少ないのですが、血液検査は必要で、併用に注意する薬剤があります。

予防法としては、カンジダ性指間びらん症は水仕事の機会の多い中年女性や調理人などがかかりやすく、特にささくれ、小さい傷がある時にカンジダに属する真菌が入りやすくなりますので、指先に小さい傷がある時には、まめに消毒を行い、水などに指先をつける時には、手袋をして直接、触らないように注意する必要があります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...