2022/08/04

🇵🇦グリーンネイル

爪が緑膿菌に感染し、緑色に変色する状態

グリーンネイルとは、細菌の一種である緑膿(りょくのう)菌が感染して、爪(つめ)の甲が緑色になる状態。 緑色爪(りょくしょくそう)とも呼ばれます。

この緑膿菌は腸内細菌の一種で、湿潤な自然環境中に広く存在している常在菌の一つであるため、健康な爪には感染することはありません。緑色の色素を持つ緑膿菌が感染して、爪の甲の色が緑色に変色したように見えるグリーンネイルは、爪が何らかの疾患にかかって傷付いている場合や、爪が常に湿っていて軟らかい状態の場合に起こります。

元になる爪の疾患として多いのは、爪カンジダ症や爪白癬(はくせん)、爪乾癬(かんせん)、爪甲剥離(はくり)症で、これらの疾患に合併して緑膿菌が爪の甲の下に侵入、繁殖して、グリーンネイルを引き起こします。

水仕事をする女性に多くみられ、抵抗力が低下している時には、感染した爪から、ほかの爪へ感染することもあります。時に爪囲炎を伴うと、圧痛が生じます。

女性が指先のおしゃれとして、爪の甲の上に付け爪(人工爪)をしている場合も、付け爪と爪の甲との間に透き間ができてきて、そこに水仕事や手洗いや入浴時に水が入り込んで湿潤した環境ができると、緑膿菌が侵入、繁殖して、グリーンネイルを引き起こします。

グリーンネイルになると、最悪の場合には爪を失ってしまうこともありますし、体内に入り込んでしまう可能性もあります。体内に感染すると、角膜炎や外耳炎、発疹(はっしん)、肺炎、敗血症、心内膜炎を引き起こしてしまう可能性があります。

緑膿菌は、消毒や抗生物質に対して抵抗力が強いため、治療が困難であるとされています。免疫不全や栄養状態が悪い場合は、重篤な全身感染症を引き起こし、致死的ともなります。また、ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性緑膿菌も多いのが特徴で、院内感染を引き起こす起因菌となっています。

まずは、爪の緑色の変色に気付いたら、付け爪をしている場合は使用をやめ、自然治癒を待つことです。そして、変色した爪とその周囲も清潔に保つこと、水仕事や手洗いや入浴後は、ぬれたまま放置せず、しっかり乾燥させることが大切です。それでも改善がみられない場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科での治療が必要になります。

元になる爪の疾患に合併して生じているグリーンネイルの場合は、自然治癒しないので、自己判断で間違った対処をしたり、たかが爪とほうっておかないで、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科で治療を受けることが必要になります。

グリーンネイルの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、症状や問診でグリーンネイルと判断できます。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、緑膿菌は湿潤な環境で増殖するため、患部を乾燥させます。また、元になっている爪の疾患を治します。

爪カンジダ症で爪の甲が緑色になっている時は、浮き上がっている爪の甲をニッパー型の爪切りで取り除いて乾燥させ、緑膿菌に感受性のある外用抗真菌剤を半年ほど毎日、爪が伸びて緑色に変色した部分がなくなり、健康な爪に生え変わるまで塗ります。また、症状によっては、血液検査などで状態をよく見極めて、経口抗真菌剤を内服するケースもあります。

爪白癬で爪の甲が緑色になっている時は、水虫の外用剤はほとんど効果がないため、経口抗真菌剤を内服します。少なくとも、3〜6カ月間は内服します。硬く厚くなった爪の外側から外用剤を塗っても、奥深く潜んでいる白癬菌まで薬の有効成分がゆき渡りませんが、飲み薬ならば血流に乗って直接白癬菌にダメージを与え、体の内側から治すことができますす。

爪乾癬で爪の甲が緑色になっている時は、爪乾癬に対する根本的な治療法はまだなく、完治させることは難しいと考えられているため、症状に合わせて外用剤、内服剤、光線療法などいろいろな治療を行います。

爪甲剥離症で爪の甲が緑色になっている時は、カンジダ菌の感染の可能性が強い場合には、外用抗真菌剤を塗ります。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの内服剤を使用する場合もあります。完治には1年程度を要します。

付け爪(人工爪)で爪の甲が緑色になっている時は、付け爪を取り除いて、患部を乾燥させます。自然の爪の甲の表面が変色していれば、爪やすりで着色部分を削り、緑膿菌に感受性のある外用抗菌剤を塗ります。

🇵🇦クリグラー・ナジャール症候群

遺伝的体質により、ビリルビンが体内から排出されにくいために黄疸を生じる疾患の一つ

クリグラー・ナジャール症候群とは、遺伝的体質により、生まれながらにしてビリルビン(胆汁色素)が体内から排出されにくいために、黄疸(おうだん)を生じる疾患。先天性ビリルビン代謝異常症とも呼ばれ、体質性黄疸の一つに相当します。

血液の赤血球の中には、ヘモグロビン(血色素)という物質が含まれています。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を担っているのですが、寿命を120日とする赤血球が古くなって壊される際に、ヘモグロビンが分解される過程でビリルビンが作られます。

本来、脾臓(ひぞう)などで作られたビリルビンは血液に入ってアルブミンと結合し、肝臓に運ばれグルクロン酸抱合(ほうごう)を受けて解毒され、続いて、肝臓で生成される消化液である胆汁の中へ排出され、その胆汁の成分として胆道を通って小腸の一部である十二指腸の中に排出され、最終的には便と一緒に体外へ排出されます。便の黄色は、このビリルビンの色です。

ビリルビンが体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなり、これを黄疸といいます。

従って、赤血球や肝臓の細胞が急に壊された時や、胆道が結石や悪性腫瘍(しゅよう)などで閉塞(へいそく)した時などに、黄疸はよく現れます。しかし、このような疾患がないにもかかわらず、しばしば黄疸を認める場合はクリグラー・ナジャール症候群などの体質性黄疸が疑われ、その原因はビリルビンの肝臓の細胞の中への取り込みや、十二指腸の中への排出がほかの人より行われにくいという遺伝的なものと見なされます。

クリグラー・ナジャール症候群では、新生児期から発症し、黄疸を生じます。

特徴は、脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビン(非抱合型ビリルビン)を、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビン(抱合型ビリルビン)に変換するグルクロン酸抱合酵素の活性が低下しているため、グルクロン酸抱合を受けていない間接型ビリルビン優位の高ビリルビン血症を示すことです。

変換酵素の活性が完全に欠けているため、生後まもなくから長引く核黄疸、もしくはビリルビン脳症と呼ばれる状態を示す生命予後の不良な重症型と、酵素の活性は正常の10パーセント未満を示すものの、問題なく成長し、黄疸以外の症状は認められない軽症型があります。

変換酵素の活性がゼロの場合には、高度の新生児黄疸を来してビリルビンが脳細胞まで侵すことがあり、後遺症を残したり、幼児期のうちに死亡してしまうこともあります。

クリグラー・ナジャール症候群の検査と診断と治療

小児科、あるいは内科の医師による診断では、血清中の間接型ビリルビン値の上昇、および胆汁中の直接型ビリルビン値の低下により判断します。重症型と軽症型の区別には、フェノバルビタールという薬剤を投与し、間接型ビリルビンを直接型ビリルビンに変換する酵素の有無を調べる方法があり、酵素の活性が残っている場合には活性の上昇が認められます。

小児科、内科の医師による治療では、クリグラー・ナジャール症候群の重症型の場合、間接型ビリルビン値を下げるために、光エネルギーでビリルビンをサイクロビリルビンに変化させて排出させる光線療法を行ったり、ビリルビン合成を抑えるための薬剤、便への排出を促すための薬剤を投与します。

しかし、成長とともにこれらの治療効果が低下し、最終的には肝移植療法が必要になります。

クリグラー・ナジャール症候群の軽症型の場合、フェノバルビタールの投与が有効です。

🇨🇷グリシン脳症

血液中に高濃度にグリシンが蓄積し、けいれん、呼吸障害などの神経症状を引き起こす疾患

グリシン脳症とは、脳や肝臓に存在するグリシン開裂酵素系の遺伝的な欠損のために、血液中や脳にグリシンが大量に蓄積することにより発症する疾患。高グリシン血症とも呼ばれ、先天性代謝異常症の一種です。

グリシンは人間の体内で合成できる非必須(ひっす)アミノ酸の一つであり、中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシンの蓄積が重篤な神経障害をもたらします。新生児期に無呼吸となり突然死に至る重症型(新生児型)と、筋緊張の低下と精神発達の遅滞のみを示し、成人で偶然診断されることもある軽症型(乳児型、遅発型)が存在します。いずれも常染色体の劣性形質として遺伝します。

日本における発症率は、新生児60~70万人当たり1人と見なされます。欧米では新生児25万人当たり1人の割合で発症しますが、国によって大きな差があり、フィンランド北部で発症頻度が高く、発症率は新生児1万人当たりに1人となっています。カナダのブリティッシュ・コロンビア州で、新生児6万人当たり1人という報告もあります。

グリシン開裂酵素系はT蛋白(たんぱく)質、P蛋白質、L蛋白質、H蛋白質という4種類の蛋白質から形成される複合酵素で、GLDC、AMT、GCSH、DLDの4つの遺伝子にコードされる酵素により構成されています。遺伝子に変異が生じると、遺伝子情報に基づいて合成された蛋白質を基にして構成されている酵素にも変異が生じ、グリシンの分解反応を進めることが不可能になる結果、分解されなかったグリシンが血液中に蓄積し、グリシン脳症を発症します。

グリシン脳症の約6割ではGLDC遺伝子に変異を認め、残りの約2割ではAMT遺伝子に変異を認めます。GCSH 遺伝子の変異は極めてまれです。DLD遺伝子変異はリー脳症を引き起こしますが、グリシン脳症とはなりません。

重症型は、生後数日以内に活力低下、筋緊張の低下、無呼吸、しゃっくり、昏睡(こんすい)などが始まり、後に30分以上けいれんが持続するけいれん重積が起こり、しばしば死に至ります。

人工換気などの治療で新生児期を乗り切ると、自発呼吸が出てきます。その後、成長は認められますが、精神機能や運動機能の発達の遅れが目立つようになります。

重症型には、左右の大脳半球をつなぐ脳梁(のうりょう)の欠損、大脳皮質にあるシワの隆起した部分である脳回(のうかい)の異常、水頭症などの脳形成異常が高率に合併します。

軽症型は、新生児期をほぼ無症状に過ごし、乳幼児期から発達の遅れや筋緊張の低下が現れます。診断の手掛かりとなる特異的な症状を欠くため、多くは未診断のままと考えられます。軽症型では、多動、衝動的行動などの注意欠損多動症候群に類似した行動異常を伴います。

グリシン脳症の検査と診断と治療

小児科、小児神経科の医師による診断では、CTやMRIなどの頭部画像検査、血液検査、尿検査、脳脊髄(せきずい)液検査、脳波検査などを適宜行います。最近では、13Cグリシン呼気試験によって残存酵素の活性の程度を検査することもあります。

小児科、小児神経科の医師による治療では、有効な治療法が確立していないため、体内に蓄積したグリシンの排出目的で安息香酸(あんそくこうさん)ナトリウムの大量投与を行います。

グルタミン酸受容体の一種のNMDA型グルタミン酸受容体の拮抗(きっこう)剤(ブロッカー)であるデキストロメトルファン、ケタミンなどの投与による治療が、重症型のグリシン脳症の早期新生児期の障害を軽減してくれますが、長期予後はよくありません。

🇨🇷クリプトコックス症

ハトの糞中などにいる真菌を吸い込んで起こる感染症

クリプトコックス症とは、ハトの糞(ふん)などにいるクリプトコックスという真菌(かび)を吸い込むことが原因となって、発症する感染症。

クリプトコックス菌は自然界に広く存在する酵母状真菌で、日本では特に神社仏閣などのハトの糞の中から高率に見付けられています。ハトなど鳥の糞に含まれる窒素成分があると、クリプトコックス菌は大変よく増殖し、鳥の活動範囲の土が乾燥すると細かい微粒子となって、少しの風で舞い上がり、人間が気道から吸い込むこととなります。

鳥自身はクリプトコックス菌を運ぶことはあっても、体温が高いためにクリプトコックス菌の増殖が難しいために、クリプトコックス症にはなりません。猫などの動物も、人間と同じく発症します。

初めての感染は肺で感染を引き起こすことが多いものの、肺での初感染は何の症状もないことが多くみられます。健康診断や他の疾患で病院にかかった時に、偶然発見されたりします。 多くは体力や免疫力が落ちた時か、体力を消耗する疾患の二次感染として、初めて症状が出ます。まれに、健康な人にも症状が出ることがあり、必ずしも体力、免疫力の低下と関係しているとは限りません。

発症した場合には、発熱、せき、喀(かく)たん、頭痛、徐々に進行する倦怠(けんたい)感や食欲不振が現れます。次いで、急性または亜急性に髄膜脳炎を発症すれば、吐き気、嘔吐(おうと)を起こします。また、病巣が大脳皮質、脳幹、小脳にも及ぶ場合は、脳神経まひ、意識障害を起こします。重症になると、脳、脊椎(せきつい)髄膜の病巣により死亡に至ることもあります。肺で発症する場合、肺の中に単一または複数の腫瘤(しゅりゅう)ができたり、肺炎を起こすことがあります。

一般人口での発症者は、10万人につき年間0.2〜0.9人と見なされています。なお、自然条件では、クリプトコックス症になった人や動物から、他の人や動物への感染は起こりにくいと考えられています。

クリプトコックス症の検査と診断と治療

クリプトコックス症の症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。早期に診断されない場合は急速に病状が進行することもありますので、注意が必要です。

医師による診断に際しては、胸部X線検査やCT検査が行われ、たん、髄液、皮膚滲出(しんしゅつ)物から原因となるクリプトコックス菌を調べ、円形の酵母様細胞が検出されれば、診断が確定します。

治療に際しては、一般に抗真菌剤が用いられ、フルコナゾール、イトラコナゾール、フルシトシンを始めとするアゾール系抗真菌剤が第一選択となります。このほか、アムホテリシンBなどの抗真菌剤も使われ、静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。また、肺のクリプトコッカス症では、自然治癒する場合もあります。

予防のためには、体力や免疫力が落ちた人、他の疾患を持っている人は、ハトが集まるような場所に近寄らない注意が必要です。周囲の人たちには、そういう人が治療を受ける医療機関の近くで、ハトにエサをあげるのをやめる配慮が必要です。

🇬🇹巨大肥厚性胃炎

胃の粘膜がはれて、肥厚し、巨大なひだを形成する疾患

巨大肥厚性胃炎とは、胃の粘膜がはれて、肥厚し、巨大なひだを形成する疾患。メネトリエ病、胃巨大皺襞(しゅうへき)症、胃粘膜肥厚症とも呼ばれます。

肥厚した粘膜から、血液の蛋白(たんぱく)質が漏れるために、低蛋白血症となることがあります。その結果、体にとって重要な栄養分である蛋白質濃度が低下して、初期では主に胃もたれ、上腹部痛、吐き気、嘔吐(おうと)、あるいは下痢などの消化器症状が現れます。無症状のこともあります。

進行すると、低蛋白血症のために貧血や、疲れやすい、食欲の低下、体重の減少、全身がむくむなどの症状が出てきます。さらに進行すると、胃液を分泌する胃腺(せん)が委縮し、胃酸とも呼ばれる塩酸、および酸性条件下で活性化する蛋白分解酵素のペプシンの分泌が減少し、食べ物を消化するために胃で分泌される胃液の量が少ない低酸症が起こります。

胃がんのリスクが高くなる可能性があり、巨大肥厚性胃炎の発症者の約10パーセントが数年後に、胃がんを発症します。

まれに小児にも巨大肥厚性胃炎が起こることがありますが、一般的には中年以降の男性に多く発症します。

成人例では、免疫反応の異常が原因だと考えられているほか、グラム陰性菌のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染とも関連があるといわれています。小児例では、ヒトヘルペスウイルスの仲間であるサイトメガロウイルス感染との関連があるとされています。

巨大肥厚性胃炎は、無症状で健診などで偶然に発見されることも多い疾患です。消化器症状や、疲れやすさなどがあったら、消化器科、消化器内科、内科を受診しましょう。

巨大肥厚性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、消化器内科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査が最も重要で、胃粘膜の巨大な肥厚が観察されます。また、胃内視鏡検査の時に胃の粘膜の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うと、胃粘膜の最も表層にある被蓋(ひがい)上皮細胞(粘液産生細胞)の過形成とともに、固有胃腺の委縮が認められます。生検を行うと、原因となるヘリコバクター・ピロリがいるかどうかを診断することもできます。

さらに、血液検査で低蛋白血症があれば、その検査を進めます。また、胃液検査により低酸または無酸を確認します。

区別すべき病気としては、胃がんや胃リンパ腫(しゅ)が最も重要です。

消化器科、消化器内科、内科の医師による治療では、消化器症状がみられるようであれば、胃の中に放出された胃酸を中和する制酸剤や、胃酸の分泌を減少させる抗コリン剤(自律神経遮断薬)、ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)、プロトンポンプ阻害薬などを使用します。食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

低蛋白血症に対しては、高カロリー高蛋白食を数回に分けて摂取するようにします。食欲不振などにより摂取が不十分な場合は、高カロリー輸液などの栄養療法を行います。

ヘリコバクター・ピロリやサイトメガロウイルスが感染した場合は、それぞれの治療を行います。

ヘリコバクター・ピロリに対しては、2~3種類の抗生物質(抗菌剤)を、同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。低蛋白血症ばかりでなく、胃粘膜の巨大な肥厚も改善し完全に治ることもあります。

これらの内科的治療が無効な場合で、胃粘膜からの蛋白漏出の程度が強い場合は、外科的治療として胃の部分切除術または胃全摘術が行われます。

🇬🇹巨頭症

さまざまな疾患を背景に、頭が異常に大きくなる病状

巨頭症とは、さまざまな疾患を背景にして、乳幼児の頭が通常の大きさよりも異常に大きくなる病状。

頭の大きさは、頭の周囲の一番大きい部分である頭囲の値を目安にします。頭囲は、おでこの一番出ている部分と後頭部の一番出ている部分とを通るようにメジャーで計測し、その最大値で決めます。正常な子供の頭囲は、脳の発育と一致して増加し、とりわけ1、2歳までが脳の発育が盛んなため、頭囲の増加もこの期間に大きくなります。

巨頭症は、計測した頭囲の値が標準となる乳幼児の頭囲成長曲線の上限を上回った時に、判断されます。

巨頭症では、頭の大きさが異常に大きくなるので、見た目にも違和感があります。出生時に巨頭を示すこともありますが、2歳以前では徐々に進行する頭囲の拡大を示すことが多く、5、6歳では頭痛、うっ血乳頭(眼底にある視神経の乳頭にむくみが起きて、大きくはれ上がり、充血する状態)、嘔吐(おうと)などの頭蓋(とうがい)内圧高進症状を示す場合があります。

個人差はありますが、知能や運動能力の発達が遅れる精神運動発達障害や、てんかんを伴って発症することもあります。

巨頭症を引き起こす疾患としては、脳の内部に4つに分かれて存在する脳室に髄液がたまる水頭症、脳の表面に髄液や侵出液がたまる硬膜下水腫(すいしゅ)、転んで頭をぶつけたり、誤って転落するなど頭の外傷のため頭の骨の中に出血した硬膜下血腫、頭の中に袋状に液がたまるくも膜嚢胞(のうほう)、脳腫瘍(しゅよう)、頭蓋骨(とうがいこつ)の肥厚、代謝異常による神経細胞の肥大や増殖などを起こす神経皮膚症候群、軟骨異形成症、ソトス症候群(脳性巨人症)、コーデン病などいろいろな疾患があります。

乳幼児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大するため、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られます。脳の発育が盛んな1、2歳までの時期は頭蓋縫合がまだ軟らかいので、脳が圧迫されて頭の骨の中の圧力が高くなる疾患が発生すれば、頭蓋縫合の部分が広がって頭囲がより大きくなります。

そのため、乳幼児の頭囲が標準となる頭囲成長曲線の上限に近付いたり上限以上に大きければ、脳の疾患を疑って小児科、ないし脳神経外科を受診することが勧められます。

ただし、家系的に頭が大きく、脳の障害を伴わない巨頭症も多くみられますので、頭が大きいからといってすべての乳幼児が巨頭症であるわけではありません。

巨頭症の検査と診断と治療

小児科、脳神経外科の医師による診断では、頭囲を計測し、その値が標準の頭囲成長曲線の上限を上回った場合に、巨頭症と確定します。

必要であればCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、脳の疾患を調べます。また、てんかんなどの疾患が関与していることがあるので、そうした疾患の検査を行うこともあります。

小児科、脳神経外科の医師による治療では、脳の検査で疾患が見付かれば速やかな処置を行いますが、疾患が見付かっても軽ければ経過を観察します。

原因が水頭症、硬膜下水腫の場合は、脳内にたまった水を腹腔(ふくこう)などに排出する外科手術を行います。

遺伝的な精神運動発達障害に対しては、精神科や心療内科によって療育を行う必要があり、物理的に障害がない場合は外科手術を行わないことがあります。

また、てんかんに対しては薬物療法を行うなど、それぞれの症状に対して処置を行います。

🇸🇻魚鱗癬

魚の鱗のように皮膚の表面が硬くなり、はがれ落ちる皮膚病

魚鱗癬(ぎょりんせん)とは、魚の鱗(うろこ)のように皮膚の表面が硬くなり、はがれ落ちる皮膚疾患。

皮膚の表面は表皮細胞が細胞核を失って死んで作られる角質層で覆われていて、この角質層は皮膚のバリア機能に重要な役割を果たしています。角質層には、垢(あか)になって自然にはがれ落ちては作られる一定のサイクルがあり、その際、皮膚には古い角質層がスルリと落ちる巧みなメカニズムが備わっています。ところが、魚鱗癬においては、その機能がおかしくなって角質層がうまくはがれ落ちないために異常な角質層、すなわち魚の鱗のようにカサカサした鱗屑(りんせつ)がみられるようになります。

魚鱗癬はいくつかの種類があり、最も多くみられる尋常性魚鱗癬のほか、より重症の伴性遺伝性魚鱗癬、水疱(すいほう)性魚鱗癬性紅皮症、非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症、葉状魚鱗癬、道化師様魚鱗癬があります。いずれもまれな先天性の皮膚疾患です。遺伝しますが、両親に症状がなくても子供に現れることがあります。

これらの皮膚疾患とは別に、魚鱗癬を部分的な症状として、神経を中心とするさまざまな臓器に異常を生じる遺伝的な疾患があり、それらを魚鱗癬症候群といいます。

また、これらの先天性魚鱗癬のほかに、後天性魚鱗癬もあります。こちらはホジキン病、菌状息肉症、悪性リンパ腫(しゅ)などの悪性腫瘍(しゅよう)、ビタミン欠乏症などの栄養障害、甲状腺機能低下、あるいは医療行為である人工透析などが原因で生じ、遺伝はしません。

尋常性魚鱗癬は、100~200人に1人くらいの頻度で発症します。常染色体優性遺伝形式をとり、生まれた時は症状がなく、乳幼児期になってから発症します。ほぼ全身の皮膚が極度に乾燥し、特に四肢の伸側と下腿(かたい)の前面に、皮膚症状が強く出ます。腋(わき)や肘(ひじ)の屈側や、外陰部など湿っている部位には、皮膚症状が目立たないのが普通です。

皮膚症状は夏に軽快し、空気が乾燥した冬に増悪。汗がほとんど出ない場合が多いため、体温調節が難しく、夏場は熱中症になりやすく、冬は角化による亀裂(きれつ)によって歩行に支障を来す場合もあります。アトピー性皮膚炎を合併することもあります。難治性の疾患ですが、成人になると自然軽快する場合もあります。

伴性遺伝性魚鱗癬は、X染色体により伝えられる伴性遺伝性で、ほとんどが男児が発症します。X 染色体上にあるステロイドサルファターゼ(ステロイドスルファターゼ)という蛋白(たんぱく)に異常があることが、はっきりわかっています。ステロイドサルファターゼは、角質層にあるコレステロール硫酸から硫酸基を外してコレステロールにする酵素を作る遺伝子であるため、コレステロールに比べてくっつきやすいコレステロール硫酸がたまって、角質層が落ちにくくなります。

生まれた時には皮膚症状がありませんが、数カ月から四肢の伸側を中心に鱗屑がみられます。腋や肘の屈側にも鱗屑がみられるなど、尋常性魚鱗癬に比べて症状がより高度である特徴があります。冬の時期に症状が目立ち、夏には軽くなります。

水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は、10万人に1人の頻度で発症します。ケラチン1、ケラチン10、ケラチン2eという蛋白の遺伝子の異常により、常染色体優性遺伝します。全身が赤くなって、古い角質層が厚い鱗状に硬くなり、硬くてゴワゴワした水疱を伴うのが特徴。ウイルスなどから体を守る皮膚のバリア機能の低下で、感染症にかかりやすく体温調節も難しくなります。

水疱を伴わない非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症は、染色体劣性遺伝し、30〜50万人に1人の頻度で発症するとされている。

水疱型と非水疱型の先天性魚鱗癬様紅皮症は、国の小児慢性特定疾患研究事業に認定されており18歳未満、治療継続の場合は20歳未満まで、医療費補助を受けることができます。伝染性は全くありませんが、外見の印象が強い症状であるため、差別や偏見の対象となる問題があります。

葉状魚鱗癬は、ケラトヒアリンという蛋白の遺伝子の異常により染色体劣性遺伝し、生まれた時より発症します。全身が赤くなることはなく、大形の鱗屑が皮膚に生じます。眼瞼(がんけん)外反、口唇突出、手足の角化などを生じることがあります。

道化師様魚鱗癬は、染色体劣性遺伝し、よろい状の非常に硬くて厚い皮膚を生じる最重症型で、死亡することもあります。

魚鱗癬の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師は、皮膚の症状から診断します。伴性遺伝性魚鱗癬の確定診断は、白血球のステロイドサルファターゼの活性を測定して、活性が極めて低値であることからなされます。アトピー性皮膚炎の人でも肌の乾燥のために軽度の魚鱗癬のような症状がみられることがあり、この場合は、アトピー性皮膚炎の症状の有無により判断します。

まれですが、悪性リンパ腫などの時に、魚鱗癬のような皮膚症状が現れることがあるので、大人になって出現した後天性魚鱗癬には注意が必要です。

遺伝子の研究によって、伴性遺伝性魚鱗癬はステロイドサルファターゼ、水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症はケラチン、葉状魚鱗癬ではケラトヒアリンという蛋白に異常があることがわかってきましたので、医師による診断の確定、遺伝相談のためには、遺伝子検査も役立ちます。

魚鱗癬には特効的な治療法はなく、対症療法が行われます。軽症の尋常性魚鱗癬には、皮膚の表面を滑らかにする尿素含有軟こう、ビタミンA含有軟こう、サリチル酸ワセリンが効きます。重症の場合は、エトレチナート剤(ビタミンA誘導体)を内服します。各々特有の副作用に注意が必要です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...