2022/08/08

🇪🇷クラッシュ症候群

四肢の筋肉に持続的な圧迫が加えられ、その圧迫から解放された後に起こる全身障害

クラッシュ症候群とは、体の一部が長時間にわたって何かに挟まれるなどして、四肢の筋肉に持続的な圧迫が加えられ、その圧迫から解放された後に起こる各種の全身障害。挫滅(ざめつ)症候群とも呼ばれます。

地震や台風、竜巻などの災害時には、倒壊した建物や家具の下敷きになって多発します。災害時以外では、交通事故などで何かに挟まれ、救出までに時間を要した場合にも発症します。まれに、特定の筋肉を過度に酷使する運動を行うことにより発症する場合もあります。

体の一部、特に四肢が長時間にわたって持続的な圧迫を受けると、筋肉が損傷を受け、組織の一部が壊死(えし)します。その後、圧迫された状況から解放されると、壊死した筋細胞からカリウム、ミオグロビン、乳酸などが血液中に大量に漏出します。

そのため、クラッシュ症候群を発症すると意識の混濁、唇や指先が紫色になるチアノーゼ、失禁などの症状がみられるほか、高カリウム血症、ミオグロビン血症、凝固障害などの全身的な異常を示します。高カリウム血症により心室細動、心停止が引き起こされたり、ミオグロビン血症により腎臓(じんぞう)の尿細管が壊死し、急性腎不全が引き起こされたりします。

圧迫から解放された直後は、意識があるために軽傷とみなされ、その後突然、容体が悪化して重篤となり、死に至ることも少なくありません。

両下肢に起こったクラッシュ症候群では、損傷部にはれと点状出血を生じ、両下肢はまひします。下肢の知覚障害、運動障害もみられますが、少なくとも多少の左右差があります。

クラッシュ症候群の検査と診断と治療

整形外科、形成外科の医師による診断では、受傷した時の状況や、損傷部のはれ、知覚まひや運動まひから判断可能ですが、導尿により赤褐色のミオグロビン尿を認めれば確定できます。

血液検査では、血液が酸性になる代謝性アシドーシス、血液濃縮、高カリウム血症、低カルシウム血症、高クレアチンキナーゼ血症、凝固障害などの異常が現れます。

整形外科、形成外科の医師による治療では、高カリウム血症、代謝性アシドーシスを改善するために、炭酸ナトリウム、グルコン酸カルシウムを投与します。高度で持続する高カリウム血症には、緊急の血液透析を行います。

損傷した四肢のはれは時間がたつとともに進行しますので、筋肉の圧力が高ければ、圧力を抜くための筋膜切開を行います。

受傷から救出までに時間がかかり、治療が遅れた場合は、軽症でも腎不全が起こり、肺水腫(すいしゅ)を合併することもあるため、人工呼吸器による呼吸管理と人工腎臓による血液浄化を行います。

🇸🇸クラミジア感染症

クラミジア感染症とは、クラミジア・トラコマーティスという微生物を原因とする性(行為)感染症です。今日の性感染症のうち、日本においても、世界においても最も多い疾患で、人々の間で流行しています。

性器に感染した場合、性器クラミジア感染症、喉(のど)に感染した場合、咽頭(いんとう)クラミジア感染症と呼ばれます。また、クラミジア感染症は自覚症状がほとんどないので、感染や発病に気が付かないまま進行しますので、検査による早期発見、早期治療が必要になります。

性の場合は、ほとんど症状はありませんが、下り物が増える、下り物が黄色くなる、下腹部に痛みがある、排尿時に痛むといった軽度の症状が現れることもあります。感染したことに気付かず、治療せずにいると、子宮頚管(けいかん)炎を引き起こし、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎になり、将来、不妊症、子宮外妊娠になる恐れがあります。

また、妊婦が感染していると、出産時、新生児が産道を通る際に感染します。感染した新生児は、生後2~3週間ころに結膜炎、生後3~4カ月ころに肺炎を発症する危険性があります。

男性の場合は、性交の1~3週間後に、排尿時に痛む、透明もしくは白いさらさらした分泌液が出る、といった症状が現れます。症状が現れても治療せずにいると、尿道炎、前立腺(ぜんりつせん)炎、精巣上体炎といった病気になる恐れがあります。

肛門に感染すると、痛みが起こり、黄色い膿(うみ)と粘液の分泌物が出ます。そのほか、口を使った性行為により、喉に感染する場合があります。この咽頭への感染により、喉が痛いといった症状が現れることがありますが、症状が出ない場合もあります。

医師による診断では、感染箇所により検査方法が異なります。性器に感染している場合、男性では尿による検査、女性では子宮頚管から採取した分泌物による検査ですが、喉に感染している場合、咽頭のぬぐい液による検査になります。

治療では、キノロン系、テトラサイクリン系の抗生物質が非常に有効です。通常は、7~14日間服用します。また、性的パートナーへの治療も大切です。

🇸🇩拒食症

心因性の反応によって食欲不振に陥り、著しくやせる疾患

拒食症とは、神経性の摂食障害の一つで、どこにも病変が認められないのに心因性の反応によって食欲不振に陥り、著しいやせ症になることをいいます。思春期前後の若い女性に多く発症し、神経性食欲不振症、思春期やせ症、神経性無食欲症、神経性食思不振症とも呼びます。

母子関係に問題があるなど何らかの精神的原因によって極度に食欲を失うか、自分自身で太りすぎだと思い込んだり、美容上の観点から肥満を病的に恐れて節食や断食をすることから、やせが始まります。拒食と過食、嘔吐(おうと)を繰り返すケースもあります。心因的な反応ばかりではなく、視床下部にある食欲中枢の機能に異常があるのではないかとの見方も近年、出ています。

症状としては、高度のやせのほかに、月経がなくなり、便秘が強く、皮膚の色が真っ白になり、体毛が産毛のように細く柔らかくなります。内分泌疾患で体重の減少を来すケースに比較して、肉体的な活動力もあり、耐久力もあることが特徴です。

医師による治療では、根気よく悩みの原因を聞くことと、精神的指導が必要になります。本人には病気の意識がなく、やせたいという願望が強いため、著しくやせてしまっていても、あまり異常であることが自覚できません。従って、治療意欲もないため、病気の治療は難しく、期間も長引く場合が多いようです。

食べたいものを食べさせ、少しずつ摂取エネルギーを増やしていきます。頑固な便秘、胃のもたれに対しては、下痢や便の排出を促す補助薬が用いられます。母子関係など家庭に問題のみられるケースでは、家族からの隔離を目的に入院治療が原則となります。

🇪🇬巨人症

発育期に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰分泌されて起こる疾患

巨人症とは、骨の末端部分の骨端線が閉鎖する前の発育期に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されるために起こる疾患。

骨の末端部分の骨端線が閉鎖して骨の発育が止まった後、すなわち思春期が終了した後に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されると、末端肥大症(先端巨大症)が起こります。巨人症、末端肥大症とも大部分は、脳下垂体に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから成長ホルモンが過剰に分泌された場合に起こります。

脳下垂体に成長ホルモンを作る腫瘍が生じる原因ははっきりわかってはいませんが、もともと成長ホルモンを作っている細胞が腫瘍化して、成長ホルモンを過剰に産生、分泌するようになるとの考えがあります。膵臓(すいぞう)や肺に、まれに発生する特定の腫瘍でもホルモンが産生され、脳下垂体を刺激して過剰な成長ホルモンが作られこともあります。

巨人症を発症すると、急に身長が伸び、同年齢の子供の平均身長に比べて格段に高くなります。小児では最初の急激な成長は異常にみえないことがありますが、やがて、極端な成長による異常がはっきりしてきます。例えば、10歳男子では150センチ以上、15歳男子では185センチ以上になったような場合には、注意を要します。治療をしないでいると、身長が2メートルを超えることもあります。

身長ばかりでなく、手足も長くなり、思春期の遅れや、性器の発育に障害がみられることがあります。成人してくると、いくぶん末端肥大症の特徴を伴ってきて、手足が大きくなり、特有な顔や体形を示すこともあります。

発症する確率は、100万人当たり10人はいないといわれています。巨人症自体は命にかかわる疾患ではないものの、治療をせずに放っておくと、普通の人に比べて寿命が10年前後短くなるともいわれています。

ちなみに、身長が2メートルを超えたすべての人が、巨人症というわけではありません。ほとんどが体質が関係して、身長が伸びた人です。

極端に身長が伸びた場合は、念のため内科ないし内分泌科の専門医を受診したほうがよいでしょう。

巨人症の検査と診断と治療

医師による診断は、症状、血中ホルモンの測定、および画像検査により行われます。

検査では、まず血中の成長ホルモンを測ります。ブドウ糖液を飲んで、血中の成長ホルモンを測定する検査も行われます。血中の成長ホルモンは正常者ではブドウ糖により低下しますが、巨人症では低下が認められません。また、血中の成長ホルモンは分泌が不規則なために、最近は、成長ホルモンにより作られるインスリン様成長因子(IGF―I)というホルモンの信頼性が高いといわれており、診断のために測定されています。

画像検査として、脳下垂体の異常成長を調べるためにMRI検査やCT検査が行われます。

医師による治療は、第一に手術が考慮されます。鼻腔(びくう)から脳下垂体と接している骨を削り、脳下垂体の腫瘍を摘出する方法が一般的に行われています。腫瘍が小さいと完治させることも可能ですが、大きい場合や周囲に広がっている場合は、完全に取り除くことは難しくなります。

その場合は、放射線や薬による追加治療が行われます。コバルトやリニアックを照射する放射線治療では、効果が出るまでに数年かかり、ほかの脳下垂体ホルモンの分泌が低下することがあります。多くの場合、定位手術的照射という直接的照射治療が、治療効果を早く得るため、そして正常な脳下垂体組織を残すために行われています。

薬による治療でも、時にはブロモクリプチンなどのドーパミン作用薬が有効で、錠剤を服用することで成長ホルモンの量を減らせます。最も有効なのは、成長ホルモンの産生と分泌を正常に遮断するソマトスタチン系のホルモンの皮下注射です。注射薬にはオクトレオチドや、持続型インスリンアナログもあり、1カ月に1回程度の投与ですみます。

🇨🇴巨赤芽球性貧血

赤血球を作る際に必要なビタミンB12や葉酸が欠乏するために起こる貧血

巨赤芽球性貧血とは、赤血球を作る際に必要なビタミンB12や、ビタミンB群の一つである葉酸が欠乏するために起こる貧血。悪性貧血とも呼ばれます。

かつては原因が不明で治療法がなかったため、死に至る疾患として恐れられて「悪性」と呼ばれていましたが、多くの医師や研究者が原因や治療法を突き止めようとビタミンや疾患の研究を重ねた結果、今では原因が解明されてビタミンB12や葉酸の注射で治すことができます。

ビタミンB12や葉酸は細胞の核内にあるDNA(デオキシリボ核酸)を合成するのに必要なもので、欠乏すると赤血球の産生の際に細胞の分裂、増殖がうまく進まず、赤血球が途中で死滅します。そして、赤血球に成熟できなかった赤芽球が巨大化した巨赤芽球が、骨髄中にたくさんたまってきます。

赤血球は鉄分を材料にして体内で作られますが、たとえ十分な鉄分を食品から取っても、ビタミンB12や葉酸が不足していると正常な赤血球に成長しません。

ビタミンB12は赤芽球の増殖、正常な赤血球の産生のほか、上皮細胞、胃粘膜、神経細胞の成長にも関係しており、巨赤芽球性貧血になると舌炎や委縮性胃炎、知覚障害も生じてきます。

ビタミンB12の欠乏は、うまく吸収されないことで起こります。ビタミンB12の吸収には、胃に存在する糖蛋白(たんぱく)の一種の内因子が必要で、この内因子自体が欠乏したり、腸内細菌や寄生虫によってビタミンB12が消費され尽くすことで起こります。

また、胃を手術で全部切除した場合は内因子が分泌されないので、手術後3~7年たってビタミンB12の貯蔵がなくなると、巨赤芽球性貧血と全く同様の症状が起こります。

そのため、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)を作る鉄分をしっかり摂取していても貧血が改善されないという人や、血液検査でヘモグロビンの生産量はあるのに赤血球数が少ないという人は、巨赤芽球性貧血の疑いが考えられます。

食欲不振や消化不良など、鉄欠乏性貧血などほかの貧血でもみられる症状もありますが、巨赤芽球性貧血の特徴としてみられるのは神経性の症状です。舌の炎症や口内炎、手足のしびれや皮膚の感覚まひから始まり、進行すると、手足がまひして動かしにくくなったり、排尿障害も現れます。排尿障害では尿意の感覚が鈍くなるほか、下痢、便秘、吐き気を繰り返しやすくなります。

さらに症状が進行すると、記憶力が低下し認知症になることもあります。巨赤芽球性貧血での記憶障害や知能低下の症状は、早期に適切な治療を行えば回復しやすいのも特徴です。

医師による巨赤芽球性貧血の診断では、まずビタミンB12欠乏か葉酸欠乏かを血液検査で調べ、続いて骨髄を調べて巨赤芽球が認められれば確定されます。

巨赤芽球性貧血の治療法は、基本的に鉄欠乏性貧血と同じで、不足しているビタミンB12か葉酸を補給すれば治ります。ただし、ビタミンB12が不足している場合、いくら大量に摂取したとしても、胃に存在するビタミンB12の吸収を助ける内因子がなければ吸収はされません。内因子が欠乏している発症者には、ビタミンB12の錠剤を投与しても効果はなく、吸収に内因子を必要としない筋肉注射という方法が有効的です。

通常、ビタミンB12を1日当たり500~1000μg(マイクログラム)注射し、これを1週間続け、以後2~3カ月に1回投与することで、巨赤芽球性貧血は完全に治ります。委縮性胃炎や胃の全部切除で胃に内因子がない場合は、ビタミンB12の注射を一生続ける必要があります。高齢者で認知症などの症状が重い場合は、回復しないこともあります。

ビタミンB12の含有量が多いのは、魚肉を始め、カキ、アサリ、ホタテガイなどの貝類、牛や豚のレバー、牛肉、卵、牛乳などの動物性食品で、植物性食品にはほとんど含まれていません。ただし、しょうゆ、みそ、納豆などには、微生物によって作られるビタミンB12が含まれています。よほど偏食しない限り、日常の食生活で不足することはありません。

葉酸の含有量が多い食品には、ホウレン草などの緑黄色野菜、果物、レバー、卵黄、胚芽(はいが)、牛乳などが挙げられます。ただし、調理や長期間の保存による酸化によって、葉酸は壊れてしまうため、新鮮な生野菜や果物がよい供給源となります。

💅巨爪症

爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態

巨爪(きょそう)症とは、爪(つめ)の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態。爪肥厚症、オニキクシス、ハイパートロフィーとも呼ばれます。

爪の甲は先端に向かって押し進むように長く伸びますが、何らかの原因で圧迫されて伸びが妨害されると、成長する部分が厚くなったりします。厚くなった部分は、後から伸びてくる爪の甲の成長を阻害し、さらに盛り上がってくるという悪循環になります。

巨爪症の原因は、遺伝、物理的圧迫、けが、糖尿病、内臓の疾患、細菌感染、血行不良、栄養不足などさまざまです。

中でも、長期間にわたって爪に何らかの物理的圧迫が加わって、巨爪症になることが多く、手の爪よりも足の爪でしばしばみられます。原因となる物理的圧迫としては、足の形に合っていない靴が挙げられます。特に、先端が細くなったハイヒールを履き続けた時、足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧力がかかることになり、爪の甲がはがれてしまうことがあります。これを何回も繰り返した場合に、巨爪症が起こることがあります。

同様の理由で、足の形に合っていないシューズで長距離ランニングした場合に、巨爪症や、爪の両端が指の肉に食い込む陥入爪が起こることがあります。陥入爪、深爪が原因で、正常な爪の成長が妨げられ、巨爪症が起こることもあります。

巨爪症があると、爪が割れやすくなったり、はがれやすくなったりします。そのため、割れた爪が衣服や布団に引っ掛かり、はがれた部分から細菌が入って化膿(かのう)などのトラブルを起こすことがあります。

この場合、盛り上がった部分に触ると、激しい痛みがあり、ほかの爪にも移ります。靴を履くのが困難になるのはもちろんのこと、布団がこすれても痛みを感じます。また、巨爪症の症状として、爪の変色も挙げられます。

この巨爪症はたまに、爪白癬(そうはくせん、つめはくせん)と間違えられることがあります。白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)が感染して起こる爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもので、爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。症状が似ていても違う疾患ですので、水虫用の治療を独自で行うと、巨爪症が完治するまでに時間がかかるなど、さらに厄介なことになる可能性があります。

巨爪症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、巨爪症の原因がかなり多岐にわたっているため、その原因を見極めることがポイントになります。

症状が似ている爪白癬と鑑別するためには、皮膚真菌検査を行うのが一般的。ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察します。時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、巨爪症の症状が軽い場合、保湿してマッサージすることで少しずつ改善します。また、爪やすりで厚い部分を滑らかに磨いたり、磨き粉で仕上げ磨きしたりして、爪の成長を阻害する盛り上がっている部分を平らにすれば、正常な爪の甲が再生してきます。

原因となる菌が同定されれば、その増殖を止めたり、死滅させる抗生物質(抗生剤)を用います。

栄養不足が原因で巨爪症を生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

内臓などの疾患が原因で巨爪症を生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、むやみに巨爪症になった患部を触らないようにします。刺激を与えないことはもちろん、ほかの隣接する指と接しないように気を付けます。

巨爪症にならないためには、いつも清潔を心掛け、正しい爪の切り方をしていることが大切で、自分の足に適した履きやすい靴を選ぶことも予防となります。どうしてもハイヒールを履く必要がある時は、なるべく長く歩かないようにします。

🇫🇷巨大結腸症

腸管が細くなって慢性の便秘になり、大腸の大部分を占める結腸が異常に拡張する疾患

巨大結腸症とは、腸管が細くなって慢性の便秘になり、大腸の大部分を占める結腸が著しく拡張する疾患。

大腸や小腸など消化管の壁の中には、神経節細胞があります。その細胞の刺激により、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋(輪状筋)の伸び縮みが起こり、口から摂取した食物は腸管を経由して消化され、便となって肛門(こうもん)から排出されます。

巨大結腸症は、神経節細胞が機能せず蠕動運動がうまく起こらないために、主に直腸からS状結腸がギュッとしぼんだままになり、その口側の結腸が拡張します。一種の腸閉塞(へいそく)で、ヒルシュスプルング病とも呼ばれる先天性巨大結腸症と、後天性巨大結腸症に分けられます。

先天性巨大結腸症は、神経節細胞が先天的に欠損しているために、蠕動運動が起こらず腸管が細くなり、結腸が拡張して慢性の便秘となります。1886年に、デンマークの内科医ハラルド・ヒルシュスプルングによって初めて報告されました。

日本では出生5000人に1人の頻度でみられ、男児が女児の3倍多いとされています。原因については、いくつかの遺伝子情報の異常が深くかかわっていることが明らかにされつつありますが、十分には解明されてはいません。

生まれてすぐの新生児では、胎便の排出が遅れることが最初の症状です。排便、排ガス(おなら)ができず、腹部は風船のように膨満してきます。ほ乳力が低下し、濃緑色の胆汁の色に染まったものを嘔吐(おうと)したり、症状が進むと体重増加不良や栄養不良が現れてくることもあります。

また、嘔吐で塩分が失われるため、体内の塩分(電解質)バランスも崩れます。嘔吐物を肺に吸い込んでしまうと、重い肺炎になります。重い腸炎や腸に壊死(えし)や穿孔(せんこう)が起こって、危険な状態になることもあります。腹部が張るために呼吸がうまくできなくなり、死に至ることもあります。

約9割は生まれてすぐに先天性巨大結腸症の症状が出てきますが、少数は1歳以降に症状が出てくることがあります。乳幼児では、慢性的な便秘などの排便障害がみられます。

症状の程度は、神経節細胞のない腸管の長さでおおよそ決まります。全体の約80パーセントは、直腸から比較的近いS状結腸までの部分に神経節細胞の欠損がみられます。12パーセントは直腸からS状結腸を越えて結腸までの部分に、5パーセントは全結腸と小腸の一部までの部分に、3・5パーセントは小腸の口側までの部分に神経節細胞の欠損がみられます。

新生児や乳幼児に頑固な便秘が続く場合は、小児科、ないし消化器科を受診することが勧められます。

一方、後天性巨大結腸症は、ほかの疾患に付随して起こる症候性巨大結腸症と、原因が明らかでないい特発性巨大結腸症に分けられます。

成人にみられる後天性巨大結腸症は、小児期に発見されなかった先天性巨大結腸症の場合もありますが、症候性巨大結腸症と特発性巨大結腸症の占める割合が小児に比べて高いとされています。

症候性巨大結腸症を合併する疾患としては、全身性エリテマトーデス、アミロイドーシス、全身性硬化症による筋肉の障害、鉛中毒、甲状腺(こうじょうせん)機能低下や低カリウム血症などの代謝異常、パーキンソン病、、糖尿病性神経障害、脊髄(せきずい)損傷などの神経系の病気、感染症および炎症性の疾患、中毒性大腸炎、シャーガス病などがあります。また、ストレスや下剤の乱用が原因になることもあります。

後天性巨大結腸症の症状としては、強い便秘があり、腹部膨満、吐き気、嘔吐がみられます。

頑固な便秘が続く場合は、消化器科、ないし内科を受診することが勧められます。

巨大結腸症の検査と診断と治療

小児科、消化器科の医師によるヒルシュスプルング病とも呼ばれる先天性巨大結腸症の診断では、新生児では胎便が排出された時期、乳幼児では排ガスが出ているか、何をどのくらい食べているか、便の性状と排便の頻度などを確認します。その後、腹部膨満の有無を確認し、肛門から指を入れる直腸指診でガスの噴出や便の有無を確認します。

腹部X線検査を行い、拡張した腸管ガス像が腹部全体に認められ、小骨盤内の腸管ガス像が欠如していれば、先天性巨大結腸症を疑います。

精密検査としては、肛門から腸の中に軟らかい造影剤を注入してX線撮影をする注腸造影検査を行い、大腸の肛門側の狭窄(きょうさく)と大腸の口側の拡張を確認し、肛門側と口側の口径差を確認します。

さらに、通常鎮静剤を用いて眠った状態で、直腸で風船(バルーン)を膨らませる肛門内圧検査を行い、直腸肛門反射と呼ばれる直腸が拡張した際に認められる肛門管圧の下降の欠如を確認します。また、直腸の粘膜を一部採って、特殊な染色を行った上で顕微鏡で調べる生検を行い、腸管壁内の神経節細胞の欠損に伴う外来神経の増加を組織学的に確認することもあります。

先天性巨大結腸症と区別する疾患には、生まれながらに肛門や腸が閉鎖している鎖肛や先天性腸管閉鎖症、上方の腸管が下方の腸管の中に入り込む腸重積(じゅうせき)症などがあります。

小児科、消化器科の医師による先天性巨大結腸症の治療では、腸管壁内の神経節細胞が欠損した領域が非常に狭い場合は、浣腸(かんちょう)などでコントロールできることもあります。

ほとんどの場合は、腸管壁内の神経節細胞が欠損した領域を切除し、端々をつなぎ合わせる手術が必要です。手術は、小児外科という特殊な診療科で行います。

神経節細胞が欠損した領域の広さにより、根治手術を行う場合や、人工肛門を形成する場合もあります。根治手術には複数の方法がありますが、その基本は正常な腸管を肛門部に下ろして肛門から排便ができるようにすることです。近年は、腹腔鏡(ふくくうきょう)補助下手術や、開腹しない経肛門手術が導入されています。

また、根治手術はある程度の発育を待って行うため、それまでの間は、点滴栄養、肛門拡張、浣腸などで状態を保つことになります。生後3カ月以降、体重が5〜6キログラム以上で根治手術を行うのが一般的ですが、最近では早めに生後1カ月以降、体重4キログラム以上で行う傾向にあります。

一方、消化器科、内科の医師による後天性巨大結腸症の治療では、原因となる疾患と便秘の治療を行いながら、適度な運動や、食物繊維が多く規則正しい食事など日常生活での改善を実施します。人工肛門を形成する場合もあります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...