2022/08/09

🇸🇿スーパー女性症候群

女性だけにみられる性染色体異常で、言葉の障害や運動機能の遅れがみられる疾患

スーパー女性症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患群。XXX症候群、トリプルX症候群、スーパー女性、超女性とも呼ばれます。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで、全部で46対の染色体を持つことになります。

性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

スーパー女性症候群の女性の場合は、性染色体がXXXと1本多く、女性約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってXが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でXが1つ多くなることで起こるとされます。母親の高齢出産で、スーパー女性症候群の新生児女児が生まれる頻度が高いともいわれています。

このスーパー女性症候群は、パトリシア・ジェイコブズらがイギリスのスコットランドで、染色体構成47XXXを持つ2人の女性を見付け、1961年に最初に報告しました。

染色体構成47XXXを持つ新生児女児のほとんどは、スーパー女性症候群の症状をいくつかしか持っていないか、全く持っていません。

新生児女児のほとんどは、身体的には誕生時から正常に発育します。ただし、誕生時の平均体重値は、正常な染色体を持つ女児よりわずかに低くなっています。8歳までは、正常な染色体を持つ女児よりやや身長の伸びが速く、最終的に2、3cm高くなり、高身長で手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

ほとんどは、性関連と性ホルモン条件に関して、正常な染色体を持つ女児と違いはありません。外陰部や卵巣、子宮、膣(ちつ)に異常はなく、一般的な胸部、体毛の成長、そして第二次性徴も普通に現れます。妊娠、出産も可能で、その子供の大部分は正常な染色体を持って生まれます。

染色体構成47XXXを持つ女児のほとんどは、通常の知能、もしくは低くても通常の範囲の知能を持っています。しかし、その多くは、言葉の障害や学習障害を持ち、運動機能や感情の発達の遅れがみられます。数は少ないものの、軽い知的障害を持っていることもあります。

なお、スーパー女性症候群の症状の現れ方は人によって大きく異なり、筋緊張低下によって上まぶたにしわが寄ったり、小指が短く内側に曲がった斜指症がみられることがあります。中には、発作や、腎臓(じんぞう)を含む泌尿生殖器の奇形など、より深刻な状態がみられることもあります。

普通、スーパー女性症候群のほとんどは、治療の必要はありません。

🇸🇿スーパー男性症候群

男性だけにみられる性染色体異常で、背が高く、言語発達の遅れがみられたりする疾患

スーパー男性症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、男性にだけ起こる先天的な疾患群。XYY症候群、スーパー男性、超男性、Y過剰男性とも呼ばれます。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には、22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで、全部で46対の染色体を持つことになります。

性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

スーパー男性症候群の男性の場合は、性染色体がXYYと1本多く、47XYYということになります。性染色体が3本ある異常で、性染色体トリソミーにも該当します。トリソミーとは、3本という意味です。

47XYYの完全型のほか、性染色体異常の細胞と通常の細胞が混在する47XYY/46XYのモザイク型もありますが、大半が完全型です。

スーパー男性症候群の男性は、約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってYが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でYが1つ多くなることで起こるとされます。

スーパー男性症候群の男性は身長が高くなるのが特徴といわれ、出生時の身長は平均的なので、思春期に急速に伸びると考えられます。これは、Y染色体にあって身長を高くするSHOX (身長伸長蛋白〔たんぱく〕質)遺伝子が二重に働き、身長伸長蛋白質が多く作られるためと考えられます。

知能指数がほかの家族よりやや低い傾向があり、軽い言語発達の遅れがみられたりします。軽度の行動障害、多動性、注意欠陥障害、および学習障害を来すこともあります。

男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルは、先天的にも後天的にも一般の男性と同じ値で、精子の造成機能にやや難があり精子の数が少ないものの、子供を作ることは可能です。

スーパー男性症候群の男性のほとんどは、原則として知能と生殖能力は正常で、一般の人と変わりはありません。障害が全くないこともあり、本人も家族も気が付かないまま通常に学校を卒業し、通常に就職し、通常に結婚して、一生を通じて全く気が付かないこともあります。性染色体は1本多いトリソミーになっても不活性化し、症状が軽くなるためです。

一説によると、スーパー男性症候群の男性は男性としての特徴が極端に出て、背が高くて、攻撃的、または活動的な性格になりやすく、この性格が良い方向に向かえば成功者になる確率が高くなる一方、悪い方に向かえば犯罪に結び付くこともあるとされています。この説に対しては、現在では否定的な意見が多いようです。

1960年代のアメリカでは、1966年にシカゴの看護婦寮に押し入り8人の女性を殺害した事件など、いくつかの殺人事件の犯人が47XYYの染色体構成を持つ男性だったという報告があり、注目を集めました。

このため、要注意の染色体異常であるというイメージが広まり、47XYY型の男性に対する偏見、差別が生まれました。しかし、現在では、検査ミスであったと判明し、スーパー男性症候群の男性と犯罪との関連性は否定されています。

スーパー男性症候群の男性のほとんどは、普通に日常生活を送っていますので、治療の必要はありません。

🇪🇪スーパー便秘

直腸がポケット状に膨らんだり、肛門周辺の筋肉の機能が悪化することが原因で起こる便秘

スーパー便秘とは、直腸がポケット状に膨らんだり、肛門(こうもん)周辺の筋肉の機能が悪化することが原因で起こる便秘。

便は肛門近くまできていて便意があるにもかかわず、腹部に力を入れて息んでもなかなか排便できないタイプの便秘で、普通の便秘の原因となる大腸の運動能力には問題はなく、便の最終的な通り道である直腸に問題があるために起こります。そのため便秘を治すために食物繊維や水分を多量に補給したり、便秘薬を飲んでも解消されず、逆に便がたまって悪化させることになります。

このスーパー便秘は、直腸瘤(りゅう)とアニスムスが原因で起こります。

まず、直腸瘤は、直腸と膣(ちつ)の間にある直腸膣隔壁が弱って、排便しようと息んだ際に直腸の前側が膣の中に向かってポケット状に膨らむ状態。直腸膣壁弛緩(しかん)症、直腸ポケットとも呼ばれます。

隣り合わせにある直腸と腟の間にある直腸膣隔壁が弱くなったために起こる現象で、直腸そのものの疾患ではありません。

直腸瘤は、婦人科医の間では以前から知られていましたが、息んでも出にくいタイプの便秘の原因として、最近では大腸肛門病の専門医にも注目されています。

ごくまれに男性にも直腸瘤がみられますが、ある程度の大きさの直腸瘤は、女性に限られます。また、比較的中高年の女性に多くみられますが、小さな直腸瘤は無症状の若い女性にもまれにみられます。

直腸と腟の間にある結合組織や筋膜からなる直腸膣隔壁が弱くなる原因としては、加齢、出産、習慣的な息みなどが考えられています。女性ホルモンの低下が、結合組織のもとであるコラーゲンの脆弱(ぜいじゃく)化に影響するという説もあります。

息んでも便が出にくいといった排便困難が主な症状で、そのほかに残便感、腟の違和感、会陰(えいん)部の重苦しさといった症状が現れます。

排便困難は、便が直腸瘤に入り込むために起こり、入り込んだ便はどんどん水分を奪われて硬くなり、ますます排出しにくい状態になります。指で会陰を押さえたり、腟の中に指を入れて押さえると、排便しやすくなります。

直腸瘤がある人の多くは、肛門括約筋の強さは正常ですが、中には肛門括約筋が弱いため便失禁を伴う場合もあります。

排便時の出血や、肛門の外に直腸の粘膜や筋層が飛び出すのは直腸瘤の症状ではなく、痔核(じかく、いぼ痔)などの肛門疾患を伴う場合にみられます。

次に、アニスムスは、肛門周辺の筋肉の機能が悪化し、排便時にうまくコントロールできないために便秘が起こる状態。骨盤底筋協調運動障害、協調障害性排便障害とも呼ばれます。

正常な排便ならば、便意の起きたタイミングで洋風便座に座れば、特に息む必要もなくスムーズに便が出ます。少し便が出にくい際は腹部に力を入れて息めば、肛門周辺の筋肉である骨盤底筋や肛門括約筋はリラックスしている状態なので協調して緩み、肛門が開いて便が出てきます。

この排便に際して息めば息むほど、骨盤の底にあって下腹部の臓器を支えている骨盤底筋や、普段は収縮し排便時に広がる肛門括約筋、肛門括約筋の一つである恥骨直腸筋が緊張して収縮し、肛門が閉じるために排便が困難になるのが、アニスムスです。

骨盤底筋は排便に際して緩むことで、直腸と肛門を真っすぐにつなげる役割を持ち、その作用で便をスムーズに送り出すことが可能になっています。この骨盤底筋の機能が悪化して、排便時に緩まずに緊張した状態が続くと、便の通り道ができなくなり、排便が困難な状態になります。

便意はあるのに、便がなかなか出ず、残便感もあります。便秘薬を飲むと、一転して下痢をします。これは大腸の運動能力には問題がないため、正常な大腸が便秘薬で刺激されて、動きが活発になりすぎるためです。

また、便秘を治すために食物繊維や水分をいくら補給しても、便の通り道がなくては腸内にたまる一方で、便秘を逆に悪化させることになります。

アニスムスは、女性に多いものの男性にも起こります。無意識の内に習慣化していることが多く、自分では気付きにくい症状です。

便がなかなか出ないために、むやみやたらに息むと肛門が閉じてしまうので逆効果。便秘が長く続くと、大腸に便が滞りガスがたまることによる腹部膨満感、腹部不快感、食欲の低下などの症状がみられます。また、腸内細菌のバランスが崩れ、腐敗便がたまると、肌のトラブルや大腸がんの発生の引き金になることもあります。

スーパー便秘の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは肛門科の医師によるスーパー便秘の1つである直腸瘤の診断では、直腸の指診で腟の後壁の膨らみを調べます。肛門から指を入れて直腸の前側を膣方向に押すと、膣の後壁がポケット状に飛び出してくるので、それだけでほとんど直腸瘤の見当がつきます。

直腸瘤の大きさをより客観的に調べるためには、造影剤を混ぜた模擬便を直腸に入れて、排便時の直腸の形や動きをX線透視下で観察する排便造影検査(デフェコグラフィー)を行います。さらに状況に応じて、大腸内視鏡検査、肛門内圧検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことがあります。

婦人科、産婦人科、あるいは肛門科の医師による治療では、軽度の場合、緩下剤や食物繊維の作用を持つ薬、座薬を用いて便通をコントロールする方法を取ります。

それでも排便困難が解消せず、腟の中に指を入れて息むと便が出やすいという重度の場合、手術を考慮します。手術は腟と直腸の間の組織を縫い合わせて直腸瘤の前に堅い壁を作ることで、強く息んでも直腸が膣側に飛び出さないようにするもので、肛門から行う方法と腟から行う方法があります。

肛門科、あるいは婦人科、産婦人科の医師によるスーパー便秘の1つであるアニスムスの診断では、肛門から指を入れる直腸の指診で、息む動作を行った時に肛門が緩まずに肛門括約筋と恥骨直腸筋が収縮するのを確認できれば、ほぼ診断可能です。

より客観的に調べるためには、造影剤を混ぜた模擬便を直腸に入れて、排便時の直腸の形や動きをX線透視下で調べる排便造影検査(デフェコグラフィー)や、小さな錠剤のようなX線マーカーを服用して大腸における通過時間を調べる検査を行います。排便造影検査では、息んだ際に直腸から肛門に連なる直腸肛門角の角度が緩まず、鋭角になるのがわかります。

また、肛門内圧検査(マノメトリー検査)を行うことがあります。肛門管に圧力を感知するカテーテルを入れて、息んだ際や肛門を締めた際の圧力の変化を測定します。アニスムスの人は、排便しようとする時に骨盤底筋が緊張し、緩めるところを逆に力が入ってしまうため、圧力のかかり方を測定することで確認できます。正常な人ならば、息んでも骨盤底筋は緩んだ状態で、ほとんど力は入りません。

さらに状況に応じて、大腸内視鏡検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことがあります。

肛門科、あるいは婦人科、産婦人科の医師による診断では、排便時の姿勢や息み方を正して骨盤底筋を矯正する指導をしたり、座薬などを用いて治療します。

まずは、和風便所を使い、しゃがんだ排便姿勢をとることが、直腸肛門角が開くために推奨されます。より一般的な洋風便所で骨盤底筋を矯正する手順は、1)排便時には上体を前傾させて両ひじを太ももの上に置く(前傾姿勢になると直腸肛門角が開いて便がスムーズに直腸へ送られるため)、2)かかとをおよそ20度上げる(腹筋の力を腸にかけやすくなるため)、3)息む時は、腰に手を当ててせきをした時に動く筋肉である腹筋だけに力を入れる(肩や背中に力を入れて全身で踏ん張らないようにするため)。

トイレに行った時に、この手順を繰り返すようにすることで、骨盤底筋の機能を回復させることができます。

正しい排便姿勢や息み方を身に着けるために、バイオフィードバック療法(直腸肛門機能回復訓練)を行うこともあります。これは肛門筋電計という圧力センサーを肛門管から差し入れて、息んだ時の肛門括約筋や恥骨直腸筋の動きを、医師と一緒にモニターで視覚情報として確認し、排便時に緩めるべき肛門周辺の筋肉を無意識に締めないで腹圧をかける感覚をつかみます。

次に、直腸内に入れたバルーン(風船)を50ccほどの空気や水で膨らませて便に見立て、そのバルーンを排出する訓練を行います。水を入れるとバルーンの重みや形状が便に似てくるため、便意を感じる、我慢する、便を出すという排便に関係する筋肉の正常な協調運動を実践的に練習できることになります。

🇦🇺スキーン腺嚢胞

膣の上部に位置する左右一対のスキーン腺の排出管が詰まり、尿道口付近に嚢胞が生じる疾患

スキーン腺嚢胞(せんのうほう)とは、女性の膣(ちつ)の上部に位置する左右一対の分泌腺であるスキーン腺の排出管が詰まり、尿道口付近に嚢胞が生じる疾患。スキーン管嚢胞とも呼ばれます。

スキーン腺は、スケネー腺、小前庭腺、傍尿道腺とも呼ばれ、陰核(クリトリス)と腟口の間に位置する尿道口の左右両側に、小さな穴として開口しています。開口部の大きさは一人一人ばらつきがあり、完全に消失している女性もいるとされています。

スキーン腺からは、性的刺激によって粘液が分泌され、膣から分泌される粘液とも混ざり合い、性交時の潤滑液としての役割を果たしています。

また、スキーン腺のある位置は、女性の膣の内部にある快感スポット、いわゆるGスポット(グレフェンベルグ・スポット)として知られています。スキーン腺は発生学的に男性の前立腺に相当し、女性の射精中、俗にいう潮吹き現象で現れてくる透明、あるいは乳白色の液体は、男性の前立腺で産出される液体と非常によく似た酸性フォスファターゼなどの構成成分を持っています。この液体は、オーガスムの際に時々緊張から解放されて放たれる尿の中に混ざります。

このスキーン腺の開口部から、細菌などが侵入し、それらの細菌に感染すると、急性期には排出管に炎症が起こり、開口部が発赤して、はれが現れます。炎症が治まった後に、開口部の閉鎖が起こると、本来は外に分泌される粘液が排出管内部にたまり、拡大して嚢胞を形成します。嚢胞は液体を満たした袋を意味し、これがスキーン腺嚢胞です。

スキーン腺嚢胞はまれで、主に成人に発症します。ほとんどの嚢胞は、大きさが直径約1センチメートル未満で、症状はありません。大きくなると、性交時に痛みを感じたり、排尿のトラブルが生じることがあります。

こうした場合の初期症状には、尿道を通る尿の流れをスキーン腺嚢胞が遮るために、なかなか尿が出ない、排尿が終わる時に尿がポタポタと滴る、尿が出なくなるなどがあります。尿路感染症が生じ、切迫した尿意が頻繁にみられたり、排尿時に痛みを感じることもあります。

さらに、スキーン腺嚢胞内に細菌感染が起きると、うみが排出管内部にたまって、膿瘍(のうよう)を形成することがあります。膿瘍はうみの塊を意味し、これをスキーン腺膿瘍といいます。

膿瘍ができるとスキーン腺がある部分の皮膚は赤くなり、はれが生じ、何もしていなくても痛む自発痛と、押すと痛む圧痛が生じます。発熱はほとんどみられません。膿瘍が大きくなりすぎて自然に破裂して、うみが出ることもあります。

スキーン腺嚢胞、スキーン腺膿瘍の症状に気付いたら、婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科を受診することが勧められます。

スキーン腺嚢胞の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科の医師による診断では、嚢胞や膿瘍が大きくなって症状が現れるようになると、通常、内診の際に触れることができます。

ただし、診断を確定するために、超音波(エコー)検査や、柔軟性のある内視鏡で膀胱(ぼうこう)を観察する膀胱鏡検査を行うこともあります。鑑別すべき疾患には、女性の尿道の前部3分の1に発生する遠位尿道の憩室があります。

時には、スキーン腺の排出管内部にたまっている粘液やうみを培養して、原因となっている菌を特定する細胞検査を行うこともあります。

婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科の医師による治療では、症状のあるスキーン腺嚢胞ができている場合、切除します。切除は、外来の処置室や手術室で行います。処置室で切除を行う場合は、通常、局所麻酔を用います。

膿瘍ができている場合は、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)のセファレキシンなどの経口剤を7~10日間投与し、その後切除を行います。あるいは、膿瘍を小さく切開して、切開創の縁を外陰部の表面に縫い合わせる造袋を行い、膿瘍内の液を出すこともあります。

🇦🇺腎性骨異栄養症

腎不全に伴って骨にいろいろな変化が起きる疾患

腎性骨異栄養(じんせいこついえいよう)症とは、腎不全に伴って起こる骨障害の総称。腎性骨症、透析骨症とも呼ばれます。

腎不全そのものが、この疾患の発症や進行に大きく影響し、長く人工透析を続ける場合の代表的な合併症となっています。発症は15パーセントの頻度といわれていますが、長期の人工透析になればなるほど腎性骨異栄養症が起こる頻度は高まります。症状はさまざまで、無症状のものから、骨の痛み、骨折、骨の変形、異所性石灰化、関節の痛み、皮膚のかゆみ、筋力の低下、さらに皮膚の潰瘍(かいよう)などが挙げられます。

原因から、線維性骨炎、無形成骨、骨軟化症、混合型の大きく4つに分けられます。

線維性骨炎は、腎臓の機能の低下とともに生じる血液中のカルシウムやリンのバランス異常や、血液中のカルシウムの濃度を増加させる働きがある活性型ビタミンD3の不足が、副甲状腺(せん)ホルモン(上皮小体ホルモン)の分泌高進を招くことによって、骨吸収と骨形成が激しい状態で骨量が減少し、それに伴って生じます。せきや日常の動作で、容易に肋骨(ろっこつ)や背骨に骨折を引き起こします。

無形成骨は、極端に骨吸収と骨形成の両方が低下した状態です。高齢者や糖尿病の患者、カルシウムやビタミンD3製剤の過剰な摂取患者では、極端に副甲状腺ホルモンの分泌が抑えられている状態で生じやすいと考えられています。カルシウムやリンが有効に骨代謝に利用されないため、容易に皮下などの軟部組織や血管などに異所性石灰化を起こします。血管の壁に異所性石灰化が起きた時には、血管が固くなり動脈硬化が進みます。

骨軟化症は、骨の形成に必要不可欠な石灰化障害の結果、骨組織の基質要素の1つである類骨量が増加した状態です。その骨の石灰化障害は、活性型ビタミンD3の欠乏、または骨のカルシウム沈着部位(石灰化前線)へのアルミニウムの蓄積により生じるアルミニウム骨症が招きます。アルミニウムは水道水、アルミニウム製剤(水酸化アルミニウムゲル、制酸薬など)などから体内に入り、腎臓から排出されないないために、体内に蓄積します。骨軟化症になると、骨折を起こしやすくなります。

腎性骨異栄養症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、線維性骨炎に対しては、定期的にカルシウムやリン、副甲状腺ホルモン、骨代謝マーカーなどの血液検査や骨X線検査を行います。副甲状腺機能高進が疑われる時は、頸部(けいぶ)のCTやシンチグラムによる画像診断も行います。無形成骨に対しては、 線維性骨炎と同様、血液検査や骨X線検査により、異所性石灰化を含めた画像評価を行います。骨軟化症に対しても、カルシウム、アルミニウムなどの血液検査や骨X線検査を行います。

泌尿器科の医師による治療では、線維性骨炎に対しては副甲状腺ホルモンの分泌抑制が基本となり、人工透析前の場合、多くは活性型ビタミンD3の内服で治療が可能です。活性化ビタミンD3を服用することは、骨の軟化による痛みや骨折を防ぐのに有効です。長期の人工透析例の場合、加えて炭酸カルシウムやレナジェルといったリン吸着剤や、カルシウム感受性受容体拮抗(きっこう)剤が必要になることがあります。重度の副甲状腺機能高進が続く場合、人工透析後にビタミンD3製剤を静脈投与こともあります。

副甲状腺機能高進がある場合は、リンの体内への蓄積を防ぐ必要があり、低たんぱく食を摂取する食事療法が重要になります。同じ目的から、人工透析を行う場合に、透析液の組成や、透析膜を変えることもあります。このような内科的な治療でもよくならず、はれた副甲状腺が確認され、副甲状腺ホルモンの分泌が高いままである時には、手術で副甲状腺を摘除します。

無形成骨に対しては、過剰なカルシウムやビタミンD3製剤の服用を中止し、高リン血症にはリン吸着剤の塩酸セベラマーを使用します。

骨軟化症に対しては、ビタミンD3製剤の服用や、腎臓の機能低下時にアルミニウムを含んだ胃腸薬を避けることが有効です。体内に入ったアルミニウムは、キレート剤の一つのデフェロキサミンを筋肉注射、または点滴静脈注射によって投与して除去を図ります。

🇸🇬腎性糖尿

糖尿病ではなく、血液中の高血糖を伴わずに、尿中に多くのブドウ糖が認められる疾患

腎性(じんせい)糖尿とは、血液中のブドウ糖(グルコース)濃度が過剰である高血糖を伴わず、血糖値は正常な範囲内にあるにもかかわらず、腎臓からブドウ糖が継続して尿中に漏れる疾患。正常血糖性糖尿とも呼ばれます。

腎臓では、糸球体という部位で、体の老廃物とともに、糖分(ブドウ糖、フルクトース、ガラクトースなど)やミネラル(ナトリウム、カリウムなど)などの血液中の小さな物質はいったん、すべて尿の原液である原尿の中に、ろ過されます。その後、原尿が尿細管という細い管を流れる間に、ブドウ糖やミネラルなど体に必要な物質は再び血液中に再吸収され、血液中に残った老廃物はさらに尿中へ排出されます。その結果、最終的な尿が作られることで、必要な物質は体に保ち、老廃物のみを効率よく体外に排出することができます。

ブドウ糖は体に必要な栄養源ですから、尿細管でナトリウム・グルコース共役輸送体(SGLT)というポンプにより、すぐに血液中へ再吸収されます。しかし、このポンプの力には限度があり、年齢や個人差もあるのですが、通常は血液中のブドウ糖濃度である血糖値が170mg/dlを超えると限界となって再吸収されずに、ブドウ糖が最終的な尿中に排出されます。この尿中に認められるブドウ糖を尿糖と呼びます。

糖尿病でなければ、通常は血糖値が食後でも140mg/dlを超えることはないので、尿糖は出ないことになります。ところが、体質によりポンプの力が弱いと、尿細管におけるブドウ糖再吸入の機能不全が起こるため、血糖値が正常な範囲内にあってもブドウ糖が最終的な尿中に排出されます。これを腎性糖尿と呼んで、糖尿病による尿糖と区別しています。

ポンプの力が弱い体質は、親から子へと遺伝することが確認されています。ポンプの力が普通より弱く、その後どれだけ血糖値を上昇させてもそれ以上にはブドウ糖を再吸収できないA型と、尿糖を示しながらも最大再吸収は普通にできるB型があります。通常、常染色体優性の形質として遺伝しますが、時として劣性遺伝します。

50〜60gのブドウ糖が尿中に排出されますが、多くの場合、生まれ付きで腎臓の機能がやや弱っているだけで、ほかに腎臓に問題がなければ、治療の必要はありません。腎臓以外の部分でも大きな問題が出るケースはほとんどなく、将来の糖尿病のリスクも健康人と変わりありません。

ただし、尿中に排出されるブドウ糖が多い場合、尿の量が増え、脱水によるのどの渇きや倦怠(けんたい)感などの症状がみられることがあります。

なお、まれに尿細管を主に障害する尿細管障害や間質性腎炎などの腎臓病が、尿糖の原因になることもあります。特に、むくみや倦怠感などの症状があるのであれば、その可能性は否定できませんので、腎臓内科で一度相談してみてください。また、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症などのホルモン異常、クッシング症候群、眼脳腎症候群(ロー症候群)、ファンコニ症候群、ウィルソン病、ガラクトース血症など種々の全身性障害に併発することがあり、妊娠中にも女性ホルモンなどの影響でポンプの力が弱まり、血糖値がそんなに高くなくても、尿糖が出ることが知られています。

健康診断の尿検査で尿糖が確認された場合、医療機関で血液検査を受けて血糖値を調べ、糖尿病でないか確認するのが安全です。また、尿から糖が出るのが当たり前なので、糖尿病の発見を見逃す原因ともなる可能性がありますので、年に一度は検査を受けておくと安心です。生活習慣病対策として2008年4月から導入された特定健康診査(特定健診、メタボ健診)でも、尿糖の測定は必須となっています。

腎性糖尿の検査と診断と治療

内科、内分泌科、腎臓内科、泌尿器科などの医師による診断では、血糖と尿糖の程度を同時に比較することで、糖尿病と腎性糖尿を鑑別します。

また、血糖値140mg/dl未満で高血糖が存在しない場合の24時間採尿における500mg超のブドウ糖(グルコース)所見に基づき、排出された糖がブドウ糖(グルコース)であることを確認し、ペントース尿、フルクトース尿、スクロース尿、マルトース尿、ガラクトース尿、ラクトース尿を除外するために、グルコースオキシダーゼ法という検査を行うことがあります。

内科、内分泌科、腎臓内科、泌尿器科などの医師による治療では、単独の腎性糖尿は良性であり、処置を施すことはありません。当然、運動療法や食事療法の必要はありません。

🇸🇬腎性尿崩症

抗利尿ホルモンに腎臓が反応しないために、体内の水分が過剰に尿として排出される疾患

腎性(じんせい)尿崩症とは、利尿を妨げる働きをする抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌は正常でも、腎尿細管における作用障害に由来して腎臓が反応しなくなり、体内への水分の再吸収が低下するために、水分が過剰に尿として排出される疾患。

一方、利尿を妨げる働きをする抗利尿ホルモンの分泌量の低下で、体内への水分の再吸収が低下するために、水分が過剰に尿として排出される疾患は、中枢性尿崩症です。抗利尿ホルモンは、大脳の下部に位置する視床下部で合成され、神経連絡路を通って下垂体(脳下垂体)後葉に運ばれて貯蔵された後、血液中に放出されて腎臓に作用し尿の量を調節します。

腎性尿崩症はまれな疾患で、その多くは先天的な遺伝が原因で、出生直後から症状が出現します。このほか、薬剤の副作用などで後天的に症状が出現することがあります。

先天性の腎性尿崩症は、腎臓の腎尿細管の抗利尿ホルモン2型受容体の遺伝子異常でほとんどが出現するとされ、性染色体であるX染色体の劣性遺伝のため、男性にのみに発症します。X染色体を2本持つ女性は、発症しないものの保因者になるため、妊娠した場合、腎性尿崩症を受け継ぐ男子が生まれる可能性があります。

また、まれに尿細管の抗利尿ホルモン感受性アクアポリン(水チャンネル)の遺伝子異常によっても出現します。この遺伝子異常は、常染色体の劣性遺伝によって発症します。

後天性の腎性尿崩症の原因となる薬剤は、双極性障害(躁〈そう〉うつ病)の躁状態治療薬、抗リウマチ薬、抗HIV薬、抗菌薬、抗ウイルス薬など広範囲にわたります。薬剤を服用後、数日から1年くらいで発症することが多く、数年以上たって発症することもあります。

また、何らかの理由で血液中のカリウム値が低くなった場合や、カルシウム値が高くなった場合にも、発症することがあります。そのほか、慢性腎盂(じんう)腎炎、シェーグレン症候群、骨髄腫(しゅ)などの疾患によって腎臓が障害された時にも、発症することがあります。

先天性の腎性尿崩症により乳幼児が発症すると、のどの渇きによる多飲、多尿があり、また、夜間尿の増加や夜尿症などが起こります。のどの渇きを訴えることができないため、激しい脱水による発熱と嘔吐(おうと)、けいれんを起こし、血中のナトリウム値が上昇します。この高ナトリウム血症が起こると、脳が障害され、発達障害や精神遅滞を起こしてしまう可能性があります。

後天性の腎性尿崩症は、いずれの年代でも、徐々にあるいは突然、発症します。発症すると、のどが渇いて過剰に飲水するといった症状が現れ、多尿を呈します。1日に排出される尿量は3~15リットルと、通常の2倍~10倍にもなります。ひどい時には、1日30リットル〜40リットルになることもあります。

薄い尿の大量排出は、特に夜間に著しくなります。飲水は冷水を好む傾向があり、たくさん飲むために、食べ物があまり取れず、体重は減少します。

一般に、口渇中枢は正常であるため、多尿に見合った飲水をしていれば脱水状態になることはありません。進行すると、体液が減少し、発汗の減少、皮膚や粘膜の乾燥、微熱などの症状がみられることがあります。

1日3リットル以上の著しい多尿や口渇、多飲などの症状がみられた際には、糖尿病や心因性多飲症とともに腎性尿崩症である可能性があります。内科か内分泌科、頭部外傷や脳手術の既往歴がある人は中枢性尿崩症である可能性もありますので、脳外科か脳神経外科の専門医と相談して下さい。

腎性尿崩症の検査と診断と治療

内科、内分泌科、脳外科、脳神経外科の医師による診断では、早急に採尿検査、採血検査などを行い、多飲、多尿を示す糖尿病を除外します。これが除外された後、心因性多飲症などとの鑑別が必要になります。

心因性多飲症は、精神的原因で強迫的に多飲してしまう疾患です。血漿(けっしょう)浸透圧と血中の抗利尿ホルモンを測定して、鑑別診断に用います。鑑別が難しい場合、水制限試験を行います。水分摂取の制限を行うと、心因性多飲症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えて濃縮がみられますが、中枢性尿崩症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えることはありません。腎性尿崩症では、抗利尿ホルモンは高値になります。

腎性尿崩症と中枢性尿崩症の区別は、利尿ホルモンの合成類似体であるバソプレシン剤の投与によって、尿が濃縮されるか否かで調べます。反応せず尿が濃縮されないのが腎性尿崩症であり、尿が濃縮されるのが中枢性尿崩症です。

内科、内分泌科、脳外科、脳神経外科の医師による治療では、先天性の腎性尿崩症の場合は根治できる治療法がないため、高度脱水、高ナトリウム血症を起こさないように長期的な経過観察を続けます。

薬剤が原因の後天性の腎性尿崩症の場合は、早期発見で障害が軽度なら、原因薬剤の中止のみでよく、1カ月ほどで症状が改善されることが多いので、経過観察を行います。

原因薬剤の中止でも回復が遅れる場合は、利尿ホルモンの合成類似体であるバソプレシン剤や、デスモプレシン剤を用いた治療を行います。尿量を減らす目的で、抗利尿ホルモンの産生を刺激するサイアザイド系(チアジド系)利尿薬を使用することもあります。

そのほかの疾患が原因とされる後天性の腎性尿崩症の場合は、原因疾患の治療と、腎臓障害、脱水、高ナトリウム血症の有無の経過観察を続けます。

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