2022/08/10

🇹🇷表層性胃炎

胃の粘膜の表面だけに炎症が起こっている疾患

表層性胃炎とは、胃の粘膜の表面に慢性の炎症が起こっている疾患。

慢性胃炎の初期症状ともいえる状態で、胃腺(せん)の委縮はあまり目立たず、胃の出口近くの粘膜の表面にびらんやむくみ、発赤などの症状がみられるのが特徴です。

飲酒やたばこ、香辛料の摂取、熱いものの刺激、薬物による刺激が原因になるほか、感染したピロリ菌に対して、人体の免疫が反応している状態であるために炎症が起こっているのが原因の場合もあります。また、表層性胃炎は不安やストレスなどの精神的な状態との関連もあるようです。

胃の粘膜の表面のみの炎症ですから、それほど症状は強くなく、自然と改善していく場合もあります。しかし、そのまま進行して長期化してくると、胃粘膜は次第に委縮し、胃液(胃酸)や粘液を分泌しない状態になり、委縮性胃炎になってしまう恐れがあります。

表層性胃炎はどちらかといえば若い人に多く、胃に不快感があり、胃もたれを起こしたり、食後に腹痛を起こすことがあります。場合によっては、胃潰瘍(かいよう)と同様に空腹になると胃に痛みを感じたり、重苦しさが起こってくることがあります。食事をすると軽減されますが、げっぷや胸焼けなどを伴うこともあります。

胃の炎症症状の強い時には、食欲不振に陥ることもありますし、吐き気を覚えることもあります。このような症状は、1〜2年に及ぶこともあります。

表層性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査を行うと、胃の出口近くの粘膜に多数のびらんやむくみ、発赤が観察されます。正確な診断には、組織の一部を採取して調べる生検による病理学的検索が必要です。 組織を調べると、原因となるピロリ菌がいるかどうかを診断することもできます。

消化器科、内科の医師による治療では、症状がみられるようであれば、胃液の分泌を抑える制酸剤や抗コリン剤(自律神経遮断薬)を使用します。食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

薬の効果によって一時的に回復しますが、炎症が治まっていなければ、薬の服用をやめれば再発することも考えられます。薬の服用が必要だと判断された場合では、医師の指示を守り正しく服用することが必要です。

日常生活では、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいもなど消化の悪いものや、香辛料など刺激の強いものは控えめにします。ストレスを改善する方法も見付けましょう。

🇫🇰表皮嚢腫

表皮にできる袋状の腫瘍で、時に炎症を起こすと痛みや発赤を発症

表皮嚢腫(のうしゅ)とは、表皮にできる袋状の腫瘍(しゅよう)。粉瘤(ふんりゅう)、アテロームとも呼ばれます。

有り触れた皮膚疾患の一つで、ほくろ、いぼを除いた皮膚良性腫瘍の8割程度が、表皮嚢腫に相当します。通常、痛みや発赤などの目立った症状がすぐに出てくることはなく、徐々に増大することが特徴で、時に感染や炎症を起こすと、化膿(かのう)して痛みや発赤、はれを生じます。この場合は、感染性表皮嚢腫、炎症性表皮嚢腫とも呼ばれます。

一般的には、毛穴が狭くなったり、ふさがったりすることが原因となり、毛穴の一部分の組織が皮膚の深い部位に蓄積し、周りの皮膚が表皮の下で袋状に形成されることで、表皮嚢腫ができます。この場合は、皮膚の表面に細い開口部を持つことが多くなります。

また、外傷で皮膚が傷付く際、皮膚の垢(あか)である表皮の角質物質や異物の混入によって、周りの皮膚が袋状に形成され、表皮嚢腫ができることもあります。この場合は、皮膚の表面に開口部を持つことは少なくなります。

皮膚が存在する全身のあらゆる部位に表皮嚢腫ができる可能性がありますが、できやすい部位は、頭部、眉(まゆ)、耳の周囲、頬(ほお)、背中、臀部(でんぶ)などです。耳たぶのピアスの跡にできたり、腋臭(わきが)手術後の腋の下にできることも多く、小さな外傷を原因として手のひらや足底にできることもあります。

多発する場合は生まれ付きの体質によるところが多く、耳たぶ、腋の下、臀部などにできやすく、少しずつ大きくなり、目立ってきます。生まれ付きの体質によるものがごくまれにある一方、あらゆる年齢で発症する可能性があり、老人になってから発症することもあります。

大きさは直径数ミリから2〜3センチほどのものが多く、皮膚表面では隆起した半球形に見えますが、実際は皮膚の厚みの中に球状に存在しています。皮膚の深い部位に形成される場合は、皮膚表面から隆起せずわからないことがありますが、触ると硬いしこりが確認できます。しこりをつまんで上下に移動させると、周辺の皮膚が同時に移動することから、表皮嚢腫であると確認できます。

基本的に初期の小さな表皮嚢腫は、白色から肌色。年単位で徐々に大きくなるにつれて、黄色、黒色、青色など、さまざまな色に変化することがあります。

皮膚の表面に細い開口部を持っている場合は、つぶそうとしたり、つまんだりすると、銀杏(ぎんなん)のような悪臭のする白いペースト状の物質が出てくることもあります。脂肪の塊や脂肪の腫瘍と思われがちですが、正確には脂肪ではなく皮膚でできた腫瘍です。

多くの表皮嚢腫は、ほぼ無症状のまま経過します。しかし、皮膚の表面の開口部から細菌が進入して感染すると、小さなしこりであった表皮嚢腫が炎症のために、2〜3倍の大きさになります。鶏卵やこぶしの大きさくらいまで大きくなったり、臀部など脂肪が多く軟らかい部位ではさらに大きくなったりします。

ひどい場合には、化膿して痛み、発熱を伴って赤くはれ上がり、膿(うみ)を出すケースもあります。ごくまれには、皮膚がんを合併することもあります。

もし、表皮嚢腫だと思っていたものが、急速に増大したり、出血が見られる場合は、皮膚がんの合併も疑わなくてはなりません。該当する症状がある場合は、早めに皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診することが勧められます。

表皮嚢腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、皮膚症状から判断します。角質物質でできている表皮嚢腫は硬いため、軟らかい脂肪腫とは簡単に区別することができます。

診断に疑いがある場合には、手術によって摘出して病理検査を行い、皮膚がんの合併を判断します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、外科的な摘出手術を行います。自然治癒しないこと、徐々に大きくなること、感染すると炎症で痛みや発赤、はれを生じること、薬で治療は不可能であることが、手術を行う理由です。

炎症を起こした場合は、まず抗菌剤、鎮痛剤の投与を行います。化膿している場合は、表皮嚢腫の一部を切開し膿を排出する応急処置を行います。この切開排膿から1カ月ほど時間を空けて、皮膚の下にある球状の表皮嚢腫を手術で摘出します。

炎症が起きた状態で摘出手術を行うと、表皮嚢腫の取り残しのリスクが上がり、再発してしまう恐れがあるからです。

手術で直線状の瘢痕(はんこん)が残りますので、直線状に皮膚を縫合します。顔面などにできた表皮嚢腫は、横じわを利用して、瘢痕を目立たなくする工夫します。

🇲🇺表皮母斑

出生時または乳児期から見られる表皮の過剰形成によるあざ

表皮母斑(ぼはん)とは、表皮の過剰形成により、出生時または乳児期から見られる、いぼ状のあざ。

皮膚の一部分に色調や形状の異常として現れるものが母斑で、あざとも呼ばれています。ほくろも母斑の一種で、その一番小さい型に相当します。

表皮母斑は、さまざまな部位の皮膚表面に、いぼ状の硬く、ざらざらした小さな丘疹(きゅうしん)や小さな結節が集まってできるものです。色は、肌色から淡黄色、または褐色です。表皮に存在する細胞の95パーセントを占める角化細胞(ケラチノサイト)の過剰形成が原因となって、いぼ状の丘疹や結節となります。

この表皮母斑は、疣状(ゆうじょう)母斑、列序(れつじょ)性母斑、列序性苔癬(たいせん)様母斑の3型に分類されます。

疣状母斑は、母斑が限局して集合したもので、単発したり多発することがあります。列序性母斑は、ブラシュコ線という皮膚の一定方向に沿って、母斑が線状、帯状に並んでできるものです。四肢や体幹の片側だけに広範囲にできますが、かゆみなどの症状はありません。

列序性苔癬様母斑は、硬い淡紅色の母斑が線状、帯状に並んででき、かゆみが強く、湿疹状になるものです。多くは、女児の下肢に発症します。

表皮母斑の原因は不明で、新生児1000人に約1人の発生頻度とされています。自然に消退することはなく、他の母斑と同様に成長して体が大きくなるのに比例して、母斑も大きくなります。時には、母斑が全身に及ぶこともあります。

頻度は低いのですが、思春期以降に表皮母斑に良性、または悪性の続発性腫瘤(しゅりゅう)が発生することがあります。また、表皮母斑に中枢神経系、骨格系の異常を合併することがあり、表皮母斑症候群と呼ばれています。まれに、他の皮膚の悪性腫瘍(しゅよう)が合併して生じる可能性もあります。

生まれ付き、または生後早期に、表皮母斑のような皮膚面があり気になるようなら、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科に相談して下さい。特に大きな変化がなければ、そのまま経過を見てもかまいませんが、時に皮膚の悪性腫瘍が合併することがあるので、生まれ付きあったあざの大きさや表面が変化してきた時は、早めに相談して下さい。

表皮母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。確定診断は、皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行えばつきます。

ただし、体の片側に比較的広く分布していると、その側の成長障害、骨変化、脳腫瘍を伴う表皮母斑症候群である場合があります。その際は内臓病変への対応も必要な場合がありますが、頻度はまれです。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療は、表皮母斑が自然に消えることは期待できず、見た目の問題がほとんどとなるため、外科的に母斑を取り除くのが一般的です。

小さいものや列序性のものは、メスで切除して縫合します。広範囲に表皮が肥厚しているものでは、比較的浅い部分の変化なので、皮膚をグラインダーで削る剥削(はくさく)術が有効です。

最近では、切除による傷跡を残さないために、エルビウムヤグレーザーや炭酸ガスレーザーなどの照射による剥削術が注目されています。このレーザー治療の効果は、母斑の性状によっても大きく異なり、治療効果には大きな個人差があるため、実際の本格的な照射を行う前に母斑の一部に試験照射を行い、適切なエネルギーを設定します。その治療効果を見た上で、全体の治療を行うかどうかを決めます。

いずれの治療法も外観を改善するのに有効なものの、多少の傷跡が残る可能性があるので、担当医とよく相談して下さい。

🇲🇺日和見肺感染症

体の抵抗力が低下した時に、病原性の弱い微生物で起こる感染症

日和見肺感染症とは、体力が落ちて抵抗力が著しく低下している時に、ふだんは疾患の原因になりにくい細菌や、かび、ウイルス、原虫などの微生物によって引き起こされる肺の感染症。

糖尿病やがん、エイズ(後天性免疫不全症候群)などを患ったり、長期の治療で体の免疫力が落ちていると、感染することがあります。

日和見感染症の肺炎は、原因となる細菌や微生物などの種類、発症者の体力によって、さまざまです。

毒性の弱い菌では、風邪に似た発熱、せき、たんなどの症状が現れ、ニューモスティスカリニやサイトメガロウイルスなどでは、高熱、空せき、息苦しさが起きます。ニューモスティスカリニは、かび(真菌)の一種で、自然界に存在し、経気道感染すると考えられています。サイトメガロウイルスは、ヘルペスウイルスの一種で、感染者の血液、唾液(だえき)、尿、精液、頸管(けいかん)粘液、母乳などに含まれ、多くは新生児、乳児期に感染し、日本人の80〜90パーセントは抗体を持っています。

ふだんはニューモスティスカリニやサイトメガロウイルスに感染しても発症しませんが、体力が落ちて抵抗力が著しく低下している時には、潜伏感染していたものが増殖して、あるいは新たに感染して肺炎を発症します。

日和見肺感染症の検査と診断と治療

体が著しく衰弱している時に肺炎の症状がみられたら、日和見感染症を疑って、呼吸器内科、呼吸器科を受診します。重症の場合には死に至ることもあるので、十分に注意しなければなりません。

たんや血液の検査を始め、胸部X線検査、CT検査(コンピューター断層撮影)などが行われます。さらに、気管支鏡を使って、原因となっている細菌、微生物を探すこともあります。しかし、これらの検査を十分に行っても、原因が特定できない場合も少なくありません。

日和見肺感染症を招いたもとにある疾患、さらに感染症の原因となった細菌、微生物など、その双方に対して、抗生物質などを用いた薬物療法が行われます。ニューモスティスカリニによる肺炎にはサルファ剤と葉酸拮抗(きっこう)剤のST合剤とペンタミジン、サイトメガロウイルスによる肺炎には抗ウイルス剤であるガンシクロビルが用いられます。これらは予防的にも用いられます。

🇰🇲びらん性胃炎

胃の粘膜に、びらんおよび欠損が現れる疾患

びらん性胃炎とは、慢性また急性の胃の炎症によって、胃の粘膜表面にびらんと呼ばれる組織が多数現れ、わずかにえぐれた欠損も現れる疾患。

原因としては、アルコールの摂取、アスピリンや抗生物質・非ステロイド性抗炎症剤・副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤など薬の副作用、ストレス、細菌やウイルスによる感染症、クローン病などが考えられます。

外傷、血管損傷、強酸やアルカリなど腐食性物質を飲んだ場合の刺激などが原因となった場合は、急性に症状が現れます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)がびらん性胃炎の原因となることは、まれです。

慢性のびらん性胃炎の病変は通常、少し赤く、胃の出口近くの前庭部に多発する傾向があります。症状としては、特に決まったものはなく、自覚症状がない場合もあります。一般的には、上腹部の不快感やもたれ、食後の胸焼け、胃痛、吐き気や嘔吐(おうと)がみられます。

また、初期症状がないのがびらん性胃炎の特徴なので、悪化してきて、急に症状が出てくることもあります。胃の粘膜のびらんが悪化して2~5日後に、下血や吐血で症状が現れます。出血の程度は軽度から中等度で、胃潰瘍(かいよう)と比較すると粘膜の損傷は軽くなります。

急性ストレス性胃炎も、びらん性胃炎の部類に入り、急性疾患や外傷のために大量出血が起こることがあります。出血を伴って、胃痛などの症状が強くなっている場合には治療が必要で、出血量が多くなってしまうと輸血が必要な状態になります。

不快感、胃痛、出血など、びらん性胃炎の症状がみられる場合は、内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師の治療を受けるようにしましょう。

びらん性胃炎の検査と診断と治療

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による診断では、内視鏡検査で多発性の斑(まだら)状また点状のびらんを認めれば、びらん性胃炎と確定します。びらんが認められる部位は、足の裏にできるたこ、いぼ状の形態を示し、胃の出口近くの前庭部に多くみられます。

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による治療では、急性ストレス性胃炎の場合は多量の出血で死に至ることもあるため、必要に応じて静脈内輸液および輸血によって出血を管理します。輸血すると出血がさらに悪化することもあります。

内視鏡で観察しながら出血部を熱で凝固させて一時的に止血する方法もありますが、元になっている疾患が治らなければいずれ再出血を起こします。出血が止まらない場合は、救命処置として外科手術で胃を全部切除せざるを得ないこともあります。

比較的軽度のびらん性胃炎の場合は、アルコールや薬物といった原因物質の除去と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤、あるいはプロトンポンプ阻害剤を投与します。細菌やウイルスによる感染症が併発している場合は、抗生物質を利用して治療します。

薬物療法によって、びらん性胃炎の症状がとれたとしても、胃炎が治ったとは限りません。症状がなくなったからといって薬をやめると、抑えられていた胃酸の分泌が高まり、胃炎が再発することもあります。出された薬剤は、きちんと終わりまで服用する必要があります。

胃炎の治療には生活習慣が密接にかかわってくるため、生活習慣の改善を心掛け、再発の予防をする必要もあります。

食事を抜くと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出すぎたりします。きちんとした食生活に努め、刺激性の強い食べ物の摂取を控えます。塩辛い食べ物、甘すぎる食べ物、冷たすぎる飲み物、熱すぎる飲み物、炭酸飲料などは控えるようにします。コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあり、特に空腹時には控えたほうがいいようです。

十分な睡眠時間の確保は、胃炎の再発防止に欠かせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促され、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体が、ストレスの原因にもなります。

運動は血行を促進し、消化管の機能を活発にします。また、ストレスの発散にも有効です。休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを心掛けることも、再発防止には重要です。

🇰🇲パニック障害

強い不安感を主症状とする精神疾患

パニック障害(PD=Panic Disorder)とは、状況に関係なく突然、発作が起こる精神疾患の一つ。かつては、全般性不安障害とともに不安神経症といわれていました。現在では、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICDー10)によって、独立した病名として登録されています。

日本人の生涯有病率は、2~3パーセントと見なされています。女性の罹患(りかん)率は、男性に比べて2倍程度に上るとも見なされています。

発症の原因は、はっきりと解明されているわけではありません。ストレスや脳内の伝達物質の動きに関連があるといわれ、過労や睡眠不足、風邪などの身体的な悪条件が誘因になるともいわれています。

定型的なパニック障害は、突然に起こるパニック発作によって始まります。続いて、その発作が再発するのではないかと恐れる予期不安と、それに伴う発作の慢性化が生じます。さらに長期化するにつれて、発作が生じた時に逃れられないような、あるいは助けを呼べないような特定の場所や状況を回避して、生活範囲を限定する広場恐怖が生じてきます。

パニック発作の症状は、さまざまです。動悸(どうき)、発汗、身震い、窒息感、胸痛、吐き気、めまい、手足のしびれ、強い不安感、非現実感、発狂への恐怖感、死への恐れなどが代表的です。多くの場合は、10分以内でピークに達し、通常20~30分ほど、長い人でも1時間以内には収まります。

このパニック発作に、発症者は非常に強烈な恐怖を感じるため、再び発作が起きるのではないかと、不安を募らせていく予期不安を生じます。生活様式が変化し、神経質になり、いつも心身の状態を観察するようになります。そして、持続的に自律神経症状が生じることとなり、パニック発作が繰り返し生じるようになっていきます。

パニック発作の反復とともに、広場恐怖の症状、すなわち発作が起きた場合に、その場から逃れられないと思われる状況を回避する症状を生じるようになります。パニック障害を発症した人のうち4人に3人は、多かれ少なかれ広場恐怖が出ると見なされています。

回避される状況は人によってそれぞれ異なりますが、一般的には、電車、バス、飛行機、車、エレベーター、歯科、理容室、美容室、映画館、会議室、商店でのレジ待ち、道路の渋滞といった一定時間、特定の場所に拘束されてしまう環境や、繁華街、ショッピングモールといった人込みの中などが多いようです。

ちなみに、広場恐怖の「広場」はギリシャ語で「市場」、「集会」などの意味を持つ「アゴラ(agora)」が語源であり、「広い場所」という意味ではありません。

より不安が強まると、家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもあります。生活上の障害は強まり、社会的役割を果たせなくなっていき、それに伴う周囲との葛藤(かっとう)もストレスとなり、症状の慢性化をさらに推進していくこととなります。

予期不安や広場恐怖により社会的に隔絶された状態が続くと、ストレスや自信喪失などによって、うつ状態となることも少なくありません。気分の浮き沈みが激しい、夕方近くや夜になると理由なく泣く、いくら寝ても眠い、体が重りをつけたようにだるい、言葉に敏感に反応して切れたり、強く落ち込む、時に自傷行為を図るといった、いろいろな逸脱行動が出ます。

元来うつの症状が見られなかった人でも、繰り返し起こるパニック発作によって不安が慢性化していくことでうつ状態を併発し、実際にうつ病と診断されるケースも多く報告されています。パニック障害にうつ病が併発する割合について、日本では約3割、欧米では約5~6割といった統計も出されています。

ただし、うつ状態はパニック発作に起因して二次的に発症した別個の疾病であり、パニック障害そのものの症状とは分けて考える必要がある、という見方もあります。

診断と一般的な治療法

パニック障害の疑いがあると思う時には、精神科、心療内科を受診する必要があります。

医師による診断では、予期しないパニック発作が繰り返し起こり、それらに対する予期不安が1カ月以上続く場合、パニック障害の可能性を疑います。診断基準としては、アメリカ精神医学会「DSM-IV 精神障害の診断と統計の手引き」が多く用いられています。

実際のパニック障害の診断では、広場恐怖を伴わない軽症例と、広場恐怖を伴う慢性化した症例との2つに区分されます。なお、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病、強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われます。身体疾患が原因になっている場合も、パニック障害とは診断しません。

そのために、心血管系の病気、呼吸器の病気、低血糖、薬物中毒、てんかんなど、パニック障害と同じような症状を引き起こす他の病気がないことを確認するため、尿検査、血液検査、心電図検査、脳波検査などの検査も行われます。

パニック障害の治療法には、薬物療法、精神療法、生活習慣の改善などがあります。

薬物療法では、発作の抑制を目的にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や三環系の抗うつ薬が用いられ、不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系の抗不安薬が用いられます。

最近では、新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が語られることが多いのですが、SSRIの代表とされるパロキセチン(パキシル)では、飲み忘れなどで服用を中止した数日後に起きる激しいめまい、頭痛などの離脱(禁断)症状が問題となり、パニック障害に対する安全性、有用性に疑問も呈されています。

一方、米国ではベンゾジアゼピン系の抗不安薬の依存性が問題とされることが多いのですが、日本では、成人の定型的パニック障害ではあまり問題とならないという意見も多くみられます。

精神療法では、最も基礎的で、重要なものが疾患に対する医師の説明。パニック障害は発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患ですので、医師が明確に症状について説明することが、すべての治療の基礎となります。

同時に、認知行動療法も行われます。精神療法の中で、有効性について最もよく研究されているのが、この認知行動療法です。不安が誘発される状況に想像的または体験的 に身を置き、回避しないことで徐々に慣れる暴露療法、過呼吸にならないようなリラクゼーショントレーニングである呼吸法、筋肉を緩めるリラクゼーショントレーニングである筋弛緩法などが行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう訓練、練習を行います。

認知行動療法は一歩間違えると、症状の悪化につながりかねないので、専門医の指導の元で無理をせず慎重に行なう必要があります。日本には、系統的な認知行動療法を行う施設は多くありませんが、精神科、心療内科の医師は認知行動療法的な指導を行っている場合が多くみられます。

そのほか、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)、森田療法、内観療法も有効とされています。

パニック障害の発症者にとっては、睡眠不足などの乱れた生活習慣や、精神的なストレスが治療の大敵です。生活習慣を改善し、ストレスをためないようにしましょう。 そのためにも規則正しい生活を送り、それぞれに合った気分転換の方法を見付けるとよいでしょう。

🇪🇭ばね指

手の指に起きる腱鞘炎の一種で、手の指を曲げ伸ばしする際にばね現象が発生

ばね指とは、手の指に起きる腱鞘(けんしょう)炎の一種。弾発指(だんばつし)とも呼ばれます。

手の指には、指の関節を曲げたり伸ばしたりする腱というものが備わっています。手を握ったりする強い力を発揮する筋肉は前腕にあり、その力を筋肉と骨を結び付けている腱が伝えます。腱のうち指を曲げる腱を屈筋腱といい、親指には1本あり、人差し指から小指には深指(しんし)屈筋腱と浅指(せんし)屈筋腱の2本がそれぞれあります。

計9本の屈筋腱の外囲には、筒状に包む腱鞘という組織があります。腱鞘には、指を曲げる時に腱が浮き上がらないようにする硬い靭帯(じんたい)性腱鞘と、靱帯性腱鞘を裏打ちしている滑膜性腱鞘があり、滑液という油のようなものを分泌して、屈筋腱と靱帯性腱鞘が擦れて摩擦が生じにくいようになっています。そのほかの腱の周囲は、パラテノンという軟らかい軟部組織が覆う構造になっています。

しかし、指の付け根の手のひら側で、機械的刺激によって力が掛かりやすい部位で、屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると腱鞘炎になります。腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、はれ、熱感が生じます。朝方に症状が強く、日中は手を使っていると症状が軽減することも少なくありません。

この腱鞘炎が進行して、指を動かす時の痛みとともに腱の動きが悪くなって、腱が厚く硬くなったり、腱鞘が厚くなると、ばね現象を現すようになります。ばね現象とは、腱鞘炎のために動きの悪くなった指が伸びたままになったり、曲がったままになって、それを無理に伸ばそうとしたり、曲げようとしたりすると抵抗があり、ばね仕掛けのようにピクンと曲がったり、伸びたりする現象です。これをばね指と呼びます。

指の付け根に腫瘤(しゅりゅう)を触れ、圧痛があります。重症例では、安静時にも痛みがあったり、発赤などの症状があったり、指が動かない状態になることもあります。

ばね指は手の酷使による機械的刺激で発生しますが、主に妊娠時、産後や更年期の女性に多く発生します。スポーツをする人や、指をよく使う仕事の人にも多いのも特徴です。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。

小児にもばね指は発生しますが、親指以外の発生は多くありません。親指に発生するばね母指は先天性で、靭帯性腱鞘の入り口で屈筋腱がこぶのように大きくなって引き起こされると考えられています。親指の関節が曲がったままで、無理に伸ばすとばね現象がみらます。指の付け根に軟骨のような硬い腫瘤を触れますが、痛み、圧痛はありません。

ばね指の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断は、指の付け根に腫瘤や圧痛があり、ばね現象があれば容易につきます。小児の場合は、握り母指症や先天性母指屈指症との区別が必要です。

整形外科の医師による治療は、成人のばね指の場合、まず指の過度の使用を避けるよう指導します。また、湿布剤、軟こうなどの使用、非ステロイド性鎮痛消炎剤の投与を行います。時には、副木(ふくぼく)を当てて固定することもあります。症状が強い時には、局所麻酔薬入りステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を発症している腱鞘に直接注射するのが有効です。3回以上の直接注射は、腱の損傷を起こすことがあるので避けます。

以上の保存療法で効果のない時、慢性化して治りにくい時には、腱鞘を切開する手術が行われる場合があります。手術は局所麻酔を用い、腫瘤が触れる指の付け根に約1cmほどの皮膚切開を入れて、靭帯性腱鞘を縦に切りトンネルを開放し、腱の滑りをよくします。手術後はすぐに、指の曲げ伸ばしを行うことになります。

幼児のばね母指の場合、全身麻酔を用いた手術で腱鞘切開をすることがありますが、成人になると自然に治るのが普通なので、気長に親指を伸ばしたり、曲げたりする訓練をするのも一つの方法です。

成人のばね指を予防するには、手の酷使を避けることが一番大切です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...