2022/08/10

🇧🇯乳輪腺

妊娠中や産後に、乳頭の周辺に目立つようになるブツブツと小さく隆起した突起物

乳輪腺(にゅうりんせん)とは、乳首、すなわち乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位である乳輪の中に、にきびやいぼのようにブツブツと小さく隆起した突起物として認められる皮脂腺。モントゴメリー腺、モンゴメリー腺とも呼ばれます。

この乳輪腺は、一種のアポクリン汗腺であり、男性、女性を問わず誰(だれ)にでも10 個ほど存在し、乳頭と乳輪を乾燥や刺激から保護するための皮脂を分泌しています。皮脂腺にしては非常に珍しく、表皮に近い位置に存在するので、その大きさや数の多い少ないに個人差こそあれ、多くの人に目で見てわかるくらいのブツブツとした突起物として認められます。乳頭を刺激すると、乳輪腺はより隆起し、突出します。

妊娠中や産後の授乳中の女性では、今まで気にも留めていなかったのに、いきなりブツブツとした突起物が目立つようになるということが、よくみられます。

妊娠すると、女性の体は少しずつ、産後の授乳のための準備を始めます。乳房や乳頭もそれに伴い、変化していきます。乳輪の中にブツブツとした突起物が目立つようになるのも、授乳のための準備の一つです。

個人差もありますが、特に妊娠初期から妊娠中期は、卵巣で分泌される女性ホルモンの影響で母乳(乳汁)を作る乳腺が肥大し、乳腺を支える脂肪組織も増えて乳房が次第に大きくなっていきます。乳房が大きくなるとともに、乳輪腺も大きくなります。

出産後の授乳中には、乳輪腺から分泌される皮脂がにおいを発して、視覚がまだ未発達で明暗を認識することができるだけの新生児に、乳頭の位置を知らせる役割を果たしているといわれています。

このように乳輪腺は機能的にも本来必要なもので、授乳期が終わると自然にブツブツとした突起物が目立たなくなることもありますので、気にならなければ何もしなくて構いません。しかし、女性ホルモンの分泌が過剰になると、乳輪腺の働きが促進されて皮脂が多く分泌され、かゆみが出ることがあります。

また、分泌された皮脂を、にきびのような感覚で無理やり絞って押し出したり、つぶしたりすると、白い皮脂が出ることがあります。その際に手についていた細菌に感染してしまうと、炎症を起こして痛みを感じたり、膿(うみ)が出てきたりすることにつながります。

分泌された皮脂の薄黄色の残りカスが乳頭や乳輪に付着した場合は、ガーゼやタオルで優しくふき取りましょう。風呂やシャワーの際に、そっと洗い流すだけでもかまいません。洗浄した後は、保湿をしましょう。乳首専用のケアクリームなどを塗って保湿することで、かゆみ対策にもなります。

乳輪腺が必要以上に発達して、乳頭より大きくなったり、乳輪が膨らんで見た目が気になるなどの症状がある場合は、健康上に害がない範囲で目立つものだけ除去することができますので、乳腺外科、形成外科、整形外科、あるいは美容整形外科を受診し、手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

乳輪腺の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。

乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による治療では、いぼやほくろを除去するような手術で、乳輪腺を切除します。入院の必要はなく、30分程度の通院手術で取り除くことが可能です。傷跡もほとんど残りません。切除手術は乳輪腺1個ずつの治療となり、大きさや数によって費用は異なります。

手術後、麻酔が切れると多少痛みが出る場合があり、痛み止めの薬を内服します。患部はガーゼで保護しますが、その上から締め付けの少ないブラジャーを使えます。

患部を保護するガーゼは手術の翌日に外し、以後、せっけんを使いシャワーで洗い流すことができます。微量の出血が数日程度続く場合は、シャワー後に交換用のガーゼを患部に当てます。湯船の入浴は、1週間後から可能です。

日常生活や家事、事務仕事は、翌日から可能です。飲酒や運動は1週間控え、激しい運動や乳首への強い刺激は1カ月間程度避けます。1週間後に抜糸の通院があります。

切除縫合した部分が一時的に感覚が鈍くなる場合も、傷がいえるにつれて元の感覚に戻ります。乳輪腺を切除した後でも、妊娠や授乳には影響はありません。

🇧🇯乳輪内多乳頭

乳輪の中に2つ以上の乳頭が存在している状態

乳輪内多乳頭とは、女性の乳首、すなわち乳頭の周囲を取り囲む輪状の部位である乳輪の中に、複数の乳頭が存在している状態を指す症状。重複乳頭とも呼ばれます。

通常、片側の乳房の乳輪中にある乳頭は1つですが、まれに2つ、ないし2つ以上の乳頭が生まれ付き存在していたり、あるいは1つある乳頭が生まれ付き2つに分裂していたりすることがあります。乳頭が2つに分裂しているものは分裂乳頭といいます。

乳輪内多乳頭ではおおかた、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。

分裂乳頭でも同様に、乳輪の内部に乳頭が2つ並んでおり、2つがほぼ同じくらいの大きさの場合や、大きさがかなり異なる場合、2つともあるいは1つが通常の乳頭より大きすぎる場合、両側の乳房の乳輪中に乳頭が2つ並んでいる場合、片側の乳房の乳輪中だけに乳頭が2つ並んでいる場合など、症状はさまざまです。

乳輪内多乳頭、分裂乳頭とも、生まれ付きのものがほとんどで、胎児期の発生段階での個体差によるものと考えられていますが、発症の理由はよくわかっていません。

また、一部は神経線維腫(しゅ)症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)という特定の疾患に合併して起こることが知られていますが、極めてまれです。

乳輪内多乳頭、分裂乳頭であっても、本人にとって支障がなければ治療をする必要はありませんが、見た目が気になるという問題と、授乳という機能的な問題が存在します。子供ができて実際に授乳を試みると、その形状や大きさのせいで乳児が乳頭をうまくくわえられないために、母乳育児を断念するということも少なくありません。授乳がしにくい場合や形態的異常が、医師による手術の対応となります。

乳頭の症状が明らかで目立つために、変形した乳頭を普通くらいの形状、大きさにして、授乳の際の支障を解消したいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、整形外科、あるいは美容整形外科を受診し、手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

乳輪内多乳頭の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による診断では、乳輪内多乳頭と分裂乳頭は見た目にも明らかになることが多いので、視診、触診で判断します。

乳腺外科、形成外科、整形外科、美容整形外科の医師による治療では、乳輪内多乳頭の場合、片側の乳房の乳輪中におおかた2つある乳頭のうちの1つが十分な大きさなら、1つを残して一方を単純に切除する手術を行います。どちらか1つでは大きさが不十分なら、2つある乳頭をを1つに縫合して一体化し、通常の一つの乳頭の形状にする手術を行います。局所麻酔で行え、リスクの少ない手術です。

分裂乳頭の場合も、乳頭の一部を切除して、分裂した乳頭を1つに縫合して一体化し、通常の乳頭の形状にする手術を行います。左右両側の場合でも、左右どちらかの場合でも問題なく手術でき、左右の乳頭のバランスを見ながらデザインして、乳頭を形成します。

乳腺で作られた乳汁(母乳)を乳頭へ運ぶ管である乳管をできるだけ温存し、なおかつ見栄えよく通常の乳頭に近い形状に整えることが理想的ですが、場合によっては乳管を温存できない、または一部分しか温存できないこともあります。また、完全に真ん丸な形の乳頭にすることが難しく、ややいびつさが残ることもあります。

乳管がある程度温存できていて、そこそこ丸みのある乳頭に整えることができれば、授乳が可能です。それらの条件を満たせない場合には、授乳が困難になる可能性があります。

🇬🇶乳輪肥大

乳房全体から比べて乳輪の面積が大きすぎる状態

乳輪肥大とは、乳房全体から比べて乳輪の面積が大きすぎる状態。乳暈(にゅううん)肥大とも呼ばれます。

乳輪の大きさは、乳房と同じように個人差があるので、明確な標準はありません。一般的には、乳輪の標準的な大きさは、4センチから5センチといわれています。そのため、5センチ以上になると、乳輪としては大きいといえるかと思われます。乳輪が大きい人だと7センチから8センチほどで、10センチ以上の人もおり、小さい人ならば3センチくらいです。

また、同じ人だから左右の乳房の乳輪が同じ大きさとも限りません。乳房の大きさ自体が左右対照的ではなく、それに比例して乳輪も右と左で大きさが違うことがあります。そのため、片方だけ大きいのがかえって気になるということも起こり得ます。

一概にはいえないものの、乳房が大きいほど、乳輪も大きくなる傾向があります。

遺伝的な要素も乳輪の大きさに関係しています。そのため、両親どちらか、または祖父母など直系の親族に乳輪の大きい人がいれば、生まれ付きで乳輪が大きくても何ら不思議はありません。

しかし、年齢とともに乳輪が大きくなる場合もあります。その原因はいくつかあります。

まずは、乳房が発育して大きくなるにつれ、一緒に乳輪が大きくなるなることが1つ。

もう1つが、妊娠による乳輪の大きさの変化です。妊娠すると女性の体は変化していき、乳輪が大きくなったり黒ずんできたりもします。

妊娠すると、母乳が出るように体が準備を始めることで乳房が大きくなるのですが、乳房が大きくなるほど乳輪も大きくなりがちです。また、新生児が確実に乳房を探せるように、乳首や乳輪の色が濃くなります。乳輪の色が濃くなることで、実際に大きくなったわけではなくても、乳輪が目立って大きくなった感じを受けることもあります。

大半の人は、出産、授乳時期をすぎると、乳輪の大きさや色が元に戻ります。ただし、妊娠前より大きくなった、あるいは大きくなったまま戻らないという人も中にはいます。

さらに、自律神経の乱れも、乳輪が大きくなる原因の一つだと考えられています。自律神経というのは1日中休まず働いている神経で、交感神経と副交感神経が昼夜交互に活動的になります。不規則な生活習慣や、過度なストレスを抱え込むことによって、その2つの神経がうまく機能しなくなると体内のホルモンバラスが崩れ、それが乳輪の肥大化につながります。

乳輪が大きいことで悩んでいる人は、少なくありません。乳輪が大きいと温泉など人前で裸になる場面で気になる、性パートナーと結ばれる時に相手の反応が気になるなどの悩みがあり、本人にとっては深刻で強いストレスになっていることもあります。

美容的な問題により乳輪を小さくしたいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、乳輪縮小術という形成手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

乳輪肥大の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による乳輪縮小術には、乳輪外側をドーナツ型に丸く切除して乳輪のサイズを調整する外側法と、乳頭基部の円周を切開して乳輪を縮める内側法の2つがあります。

手術後の傷が目立ちにくいのは内側法ですが、外側法でも時間の経過で次第に目立たなくなります。内側法では切除できる乳輪の範囲が限られているのに対して、外側法では比較的広範囲の乳輪を切除することが可能なので、乳輪のサイズを希望通りに調整しやすいという違いがあります。

現在の乳房、乳輪、乳頭の大きさや状態から、医師の側が適した方法を提案します。どちらの方法も、乳腺を傷付けることもなく、授乳にも影響ありません。

手術は1時間ほどで、局部麻酔を行うため痛みを感じることはありません。眠っている状態での手術を希望する場合は、静脈麻酔も行っています。

手術当日は、患部を濡らさないようにすれば、シャワーが可能です。1週間から10日後に抜糸を行い、その後は入浴が可能です。

乳輪を縮める際に皮膚を寄せ集めて縫合しますので、2カ月程度、傷の赤みや突っ張り感を伴う場合があります。数カ月かけて、薄茶色から白っぽい線と変化し改善します。乳頭や乳輪は、人体の中でも傷跡が目立ちにくい部位の一つのため、ほかの部位に比べて、手術後比較的短い時間で傷跡がほとんどわからなくなります。

🇬🇶ニューロパチー

体中に分布する末梢神経に障害が起こった状態

ニューロパチーとは、脳や脊髄(せきずい)から分かれた後の、体中に分布する末梢神経に障害が起こった状態。末梢(まっしょう)神経障害とも呼ばれ、以前は神経炎と呼ばれていました。

末梢神経には、筋肉を動かす運動神経のほか、感覚神経(知覚神経)、自律神経の3種類があります。そのニューロパチーによる症状は、多彩で、複雑です。

老人には、手や足のしびれや運動まひを起こすニューロパチーがよくみられます。原因には、栄養障害、貧血、糖尿病、中毒、各種のがん、骨の変形などが挙げられます。

ニューロパチーの原因としては、外傷、圧迫など機械的原因によるもの、動脈周囲炎や全身性エリテマトーデスなどが原因となる血管性のもの、および糖尿病、栄養障害、中毒によるもの、がん性のもの、遺伝性のものなどがあります。

症状としては、運動障害や感覚障害などが一時的なものも、進行して重度になるものもありますが、頭から足の指まで体のあらゆる部位に現れます。運動神経に障害が起こると、筋力が低下したり筋肉が委縮します。感覚神経に障害が起こると、しびれや痛みが現れたり、逆に、痛みや熱さ、冷たさなどの感覚が鈍くなったりします。深部感覚のニューロパチーでは、スリッパが脱げても気が付かないなどの症状が現れます。自律神経の障害では、立ちくらみ、排尿障害、発汗異常などが現れます。

実際には、どの神経にも平等にニューロパチーが起こるわけではなく、主に感覚のほうに障害が強いといった感覚優位、あるいは運動優位といった特徴があるのが普通です。

しびれや痛みは、神経に故障が起こったことを知らせる警告信号といってよいでしょう。神経症状の現れ方は、ニューロパチーの分布によって、全身の末梢神経が障害を受ける多発神経炎と、一つの神経だけに障害が起こる単神経炎、および単神経炎があちこちに起こる多発性単神経炎に分類されます。

ニューロパチーの中で、よくみられる糖尿病性ニューロパシーは、注意が必要です。下腿(かたい)や足に強いしびれ感、痛みが起こり、進行すると、足部の感覚低下、栄養障害に循環障害が加わって、ちょっとしたけがから壊疽(えそ)に陥ったりします。放置しておくと、内臓の神経も侵されます。

ニューロパチーの検査と診断と治療

内科、神経内科の医師による診断では、しびれや痛みを感じる部位、発症の様子、進行度などを聞きます。その痛みに沿って皮膚の変化があるかないか、末梢動脈の脈を触れるかどうかを診ます。さらに、触覚、痛覚、温度感覚、振動感覚や手足の運動を神経学的所見から把握します。

これらの所見から推測される原因によって、必要な検査を進め、骨の単純レントゲン撮影、MRI、CT、血管造影検査、脳脊髄液検査、血液検査などを行います。

医師による治療は、原因によって多様です。冷湿布、局所麻酔剤の注射、神経ブロック、骨の変形や脊髄腫瘍などの手術療法、消炎鎮痛剤などの薬物療法などが行われます。外傷による神経の痛みは日数がたてば自然治癒しますが、がん性の痛みはモルヒネなどの薬でも軽減できないこともあります。

糖尿病性ニューロパシーの場合は、糖尿病の治療として、食事療法と運動療法でコントロールを保ち、必要に応じてインシュリン注射か内服薬を用います。対症療法としては、ビタミンB複合体の大量投与が有効。そのほか、鎮痛剤、末梢血管拡張剤なども効果的です。

🇳🇬尿管異所開口

尿管が本来とは違う位置で膀胱とつながったり、膀胱以外の部位に開口している尿路奇形

尿管異所開口とは、通常は膀胱(ぼうこう)につながっている尿管が、膀胱の正常でない部位や尿道、女児で外陰部、膣(ちつ)、子宮、男児で精管、精嚢(せいのう)に開口しているまれな尿路奇形。異所性尿管とも呼ばれます。

尿は腎臓(じんぞう)から尿管を通って排出されますが、尿管の出口が膀胱三角部という正常な部位ではない場合、尿失禁や尿路感染などの原因となります。男児よりも女児に6倍多くみられ、多くは先天的形態異常としてみられますが、まれに成人になってから発症する場合もあります。

尿管異所開口の原因は、胎児期の尿管の発達異常や腎臓障害などにあると見なされていますが、尿管の先天性異常ということ以外はよくわかっていません。

尿管が膀胱内部ではなく、膀胱以外の部位に開口していると、尿路感染、尿失禁、下腹部のはれなどの症状で、医療機関の診察を受けることになり、幼少期に発覚することが多い疾患です。多くの場合、尿管異所開口と診断されると、2つある腎臓の両方の尿管の位置が異常な重複腎盂(じんう)尿管であることも知られています。

初期では痛みなどの自覚症状がない場合もあり、尿路感染や尿失禁などを起こさなければ、異常に気が付かずに成長することもあります。

多くの場合は、尿失禁が昼夜かまわず発生し、治ることなく持続します。腎臓から尿管を通じて膀胱へ尿がたまり、膀胱壁が尿の存在を感じ取ることで尿意が生じますので、尿管が膀胱につながっていないことで尿意をコントロールできなくなり、尿失禁の原因となってしまうのです。

腎盂腎炎などの尿路感染症による発熱などで判明する場合が多いのが特徴で、症状が悪化すると、尿が腎臓に逆流する水腎症と呼ばれる疾患になり、発熱、腹痛、頻尿、嘔吐(おうと)、尿切迫などの症状が起こる可能性があります。

尿管異所開口の検査と診断と治療

小児外科、泌尿器科の医師による診断では、腹部超音波(エコー)検査、静脈に造影剤を注入してX線撮影する静脈性腎盂造影検査、膀胱内視鏡とカテーテルを用いて造影検査をする逆行性腎盂造影検査などを行います。

小児外科、泌尿器科の医師による治療では、尿管をできるだけ正常に近い形で膀胱につなぎ直し、腎臓の機能低下を防ぐための外科手術を行います。これにより、持続性尿失禁は消失します。

腎臓の機能が大きく落ちている時は、腎臓と尿管を摘出する腹腔鏡下手術を行うこともあります。

尿路感染症に対しては、ペニシリン系抗菌薬、セフェム系抗菌薬などを投与したり、予防的に内服したりします。

🇳🇬尿管結石

尿の通り道である尿管に結石ができた結果、いろいろな障害が発生する疾患

尿管結石とは、尿の通り道である尿路の1つの尿管に結石ができた結果、いろいろな障害が発生する疾患。

尿路に石ができる疾患をまとめて尿路結石といい、石がある尿路の部位により、腎(じん)結石、尿管結石、膀胱(ぼうこう)結石、尿道結石といい、腎結石と尿管結石の上部尿路結石に対して、膀胱より下位にある膀胱結石と尿道結石は下部尿路結石といわれます。

尿路結石が増えている近年の日本では、約95パーセントは上部尿路結石で、下部尿路結石は約5パーセントのみで、しかも前立腺(ぜんりつせん)肥大症や尿道狭窄(きょうさく)などの尿の出にくくなる状態の時にのみできます。

結石の大小は、小さい砂のようなものから、腎盂(じんう)全体を占める大きな石で、形からサンゴ状結石と呼ぶものまでいろいろあります。結石の数は、1個のことも多数のこともあります。

これらの結石は、腎臓で尿の中の結晶成分を核にしてできます。約90パーセント以上はカルシウムを含むカルシウム結石で、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはその複合結石が大多数を占め、そのほかに尿酸結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、シスチン結石などがあります。

結石ができる理由は、まだよくわかっていません。尿の停滞と細菌感染、手術時の縫合糸など尿路の異物、副甲状腺機能高進症、代謝異常などが、結石を作りやすい誘因になると考えられています。

結石が腎臓の中にあるだけでは、基本的には無症状ですが、腎臓から尿管に下降して、腎盂尿管移行部、血管交差部、尿管膀胱移行部の3カ所にある生理的狭窄部といわれる狭い部位に詰まると、腎臓部の痛み、血尿、結石の排出など、いろいろな障害が出ます。

腎臓部の痛みには、腎臓や尿管の強い痛みの疝痛(せんつう)と、腎臓部や腰部の鈍い痛みの鈍痛の2種類があります。

疝痛というのは、結石が尿管の狭窄部に詰まって、尿が下に流れないで急に腎盂の内圧が高くなり、腎臓が大きく張るために痛みが起こるもの。時には、背中や肩、あるいは下腹部から外陰部へ痛みが走ります。また、尿管のけいれん性の収縮によっても、痛みが起こるといわれています。

痛みがひどいと、安静にしても痛みは楽にならず、苦しくて一定の姿勢で寝ていられません。疝痛の発作時は、吐き気や嘔吐(おうと)、脈が速くなる頻脈、腹部膨満感なども起こります。

疝痛が治まると、鈍痛が腎臓部に感じられます。大きな結石では、鈍痛のことが多く、X線(レントゲン)検査によって偶然発見されることもあります。

血尿は、疝痛時にみられます。これは結石が尿管の粘膜を傷付けるためで、尿に目で見てわからない血が混じったり、目で見てわかる血が混じることも珍しくありません。結石の排出は、疝痛の後の排尿時にみられることがあります。

また、結石が膀胱に近付くと、その刺激で尿が近い、排尿後すっきりしないといった膀胱炎のような症状が出ることもあります。

尿とともに体外されるのは、小さい結石です。結石がある大きさになると、尿管に長い間とどまったままとなり、水腎症になります。また、細菌感染が起こった場合、急性腎盂腎炎になって高熱が出ます。

このような時は、強い抗生物質を用いないと、進行して膿腎(のうじん)症になることもあるので、注意が必要です。速やかに泌尿器科の専門医を受診するようにします。

尿管結石の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、尿検査で血尿があるかどうか、超音波(エコー)検査や腎膀胱部X線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査などで結石の陰影があるかどうかを調べます。

加えて、腹部の痛みなどの問診でほぼ尿管結石と確定できます。そのほか、造影剤によって結石の大きさや場所を調べる排泄(はいせつ)性尿路造影と呼ばれる検査もあります。

泌尿器科の医師による治療法は、結石がどこにあり、どんな大きさで、その成分は何かによっては異なります。5ミリ以下の小さい結石では、多くのケースで自然排出が期待できますので、水分を多量に摂取したり補液を行って、尿管の蠕動(ぜんどう)運動を活発にさせることで、結石の下降を促します。

6ミリから9ミリ程度の結石でも、水分を多量に摂取することでおよそ3カ月以内に排出される可能性があります。

疝痛がある場合には、鎮痛薬としてインドメタシン座薬を使用したり、ペンタゾシンを注射したり、鎮けい薬を使用したりしながら、結石形成抑制薬などを投与します。

また、尿酸結石やシスチン結石の場合には、尿をアルカリ性に変えるクエン酸カリウムか重炭酸ナトリウムを服用して、結石を溶かす治療を行います。これには数カ月、あるいはそれ以上を要します。

自然排出が期待できない1センチ以上の尿管結石で、その結石が中部尿管よりも腎臓に近い位置にある場合には、体外衝撃波砕石術(ESWL)が治療の第1選択となります。衝撃波発生装置から出た衝撃波を皮膚を通して、結石に収束させて、破砕するものです。さまざまなタイプの優れた機種が広く普及して、ごく一般的に使用されています。

自然排出が期待できない1センチ以上の尿管結石で、その結石が膀胱側に近い下部尿管にある場合には、経尿道的尿管砕石術(TUL)が治療の第1選択となります。尿道から尿管鏡という細い内視鏡を挿入して、尿管口から尿管内へ進め、結石を直視下に観察しながら破砕するものです。

ESWL、TULを行った後は、尿流を保つ目的で、円周が6~7ミリの尿管ステントを留置します。かつて主に行われていた切開手術は、まれにしか行われなくなっています。

一部の結石では、結石を作りやすい疾患が合併しているものもあり、元になる疾患の治療も行います。尿路感染症を伴っている場合には、原因となる菌を特定し、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の投与を行います。

原因がはっきりしないため、予防には難しい面があります。ただし、尿管結石などの尿路結石で最も多い成分のシュウ酸カルシウムに関していえば、食物中のシュウ酸が体内に吸収されて、尿になる時にカルシウムと結合して結石になるため、予防にはシュウ酸の多く含まれた食物を控えるか、腸で吸収されて血液中に入る前に、腸内でカルシウムと結合させることです。

それには、シュウ酸の多いコーヒー、紅茶にはカルシウムを含むミルクをたっぷり入れたり、結石を溶かす作用があるクエン酸を含む食べ物を取ることです。クエン酸を含む食べ物は、レモン、みかん、グレープフルーツ、いちご、パイナップル、キウイ、梅干し、酢などです。

日本で尿路結石が増えてきた背景には、食生活が欧米型になったこともあると見なされるで、魚や野菜中心の日本型食生活を心掛けることも有効。逆に、ビールにもシュウ酸が多く含まれているので、注意が必要です。

さらに、尿路結石では一般に、尿の濃縮と運動不足が結石の増大を促しますので、水分をよく摂取し、縄跳びやジョギングなど適度の運動を続けることが大切です。

🇨🇲尿失禁

無意識に尿が漏れて、日常生活に支障

尿失禁とは、他覚的に認められる尿の不随意な排尿であり、社会的衛生的に何らかのトラブルを引き起こすもの。つまり、無意識に尿が漏れてしまい、社会生活、日常生活に支障を来す状態をいいます。

尿失禁のうち、一時的な漏れではなく、一日中、常に漏れ続ける失禁を真性尿失禁、または全尿失禁と呼びます。真性尿失禁、全尿失禁の代表例として挙げられるのは、尿管開口異常などの先天性尿路奇形によって常に尿が漏れているもの、または手術などの際、尿道括約筋を完全に損傷したものです。

一時的な漏れを示す尿失禁のほうは、腹圧性、急迫性(切迫性)、溢流(いつりゅう)性、反射性の4タイプに大別されます。

腹圧性尿失禁は、中年以降の出産回数の多い女性に、しばしば認められます。せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わる時に尿が漏れるもので、漏れの程度はさまざまです。

起こる原因は、膀胱(ぼうこう)を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が緩んで、弱くなったためです。肥満の女性に多くみられ、骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、

膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。

急迫性(切迫性)尿失禁は、尿意を感じても我慢することができずに、尿を漏らしてしまうもの。脳、脊髄(せきずい)など中枢神経系に障害があるものと、膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものとがあります。

溢流性尿失禁は、前立腺(せん)肥大症や神経因性膀胱などを発症している高齢男性に、しばしばみられます。著しい排尿障害があって十分に排尿できず、常に膀胱が伸展しているために起こるものです。

反射性尿失禁は、中枢神経系の障害や、事故による脊髄損傷でしばしば認められます。尿意を感じることができずに排尿の抑制ができないため、尿が一定量たまると、意思とは関係なく排尿が起こるものです。

尿失禁の検査と診断と治療

尿失禁の原因が明らかで治療可能なものは、当然、その治療を行います。

腹圧性尿失禁の程度の軽いものでは、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周りの筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、 仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、 ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、 仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。

失禁の程度の強いものでは、状態に応じた治療法が選択されます。内視鏡によるペーストなどの注入療法、各種の失禁防止手術が工夫されています。カテーテルによる導尿などの処置が選択される場合もあります。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...