2022/08/10

💅ハングネイル

爪の周囲の皮膚が細かく裂けたり、めくれたりする状態

ハングネイルとは、爪(つめ)の周囲の皮膚部分が指先の部分から細かく裂けたり、めくれたりする状態。ささくれ、逆むけとも呼ばれます。

ハングネイルができる原因の一つは、皮膚の水分が不足する乾燥。洗い物や掃除、洗濯などの家事が、指先の乾燥を招き、ハングネイルを引き起こします。

特に、空気が乾燥した冬の寒い日にお湯を使って洗い物をしている人は、温度差により指先が一気に乾燥しやすく、ハングネイルになりやすいといえます。さらに、食器を洗う時に使う洗剤には強い殺菌作用があるため、指先の皮脂が出す油分も一緒に洗い流してしまうため、乾燥してしまう原因になります。

最近では、パソコン作業でのデスクワークが原因で、ハングネイルを起こす人が増えています。パソコン作業を長時間続けることにより、指先に負担がかかってしまい、乾燥することがあります。同じ姿勢のままタイピングをする時間が長いため、指先まで保湿成分がゆき渡らなくなっている可能性があります。

また、血行不良もハングネイルの原因。冷え性の女性の特に指先が冷たいのは、血流が悪い証拠。血流が悪いと栄養素や酸素が十分にゆき届かないことが原因で、乾燥しやすくなり、ハングネイルもできやすくなります。

さらに、栄養バランスが悪いと、ハングネイルができやすくなります。爪や爪の周囲の皮膚は蛋白(たんぱく)質でできていますから、蛋白質やビタミンC、ビタミンA、カルシウムなどの栄養素が不足すると、ハングネイルができやすくなります。

ハングネイルは、無理に引きはがしてはいけません。ハングネイルを無理に引きはがすと、真皮が露出したり出血したりして、そこからばい菌が入ってしまうことがあり、ひどくなると化膿(かのう)してしまいます。

カンジダという真菌の一種に感染するとカンジダ性爪囲爪炎(そういそうえん)になり、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌などの化膿菌に感染すると化膿性爪囲炎(ひょうそ)になります。

ハングネイルの対処方法

ハングネイルをそのままにして置くと、何かに引っ掛かったりして痛いなど、どうしても気になる時は、眉毛(まつげ)をカットするような先の細いハサミで処理するのがよいでしょう。爪の根元にある甘皮の処理をするキューティクルニッパーなどがあると便利で、できるだけハングネイルの根元からカットするとよいでしょう。

カットした跡が傷になっていたり、痛みを感じるようであれば、絆創膏(ばんそうこう)などで保護したほうがいいでしょう。

ハングネイルができないように予防するには、手を乾燥させないことが大切で、そのためにはハンドクリームを塗るのが効果的です。洗い物や掃除、洗濯をして水やお湯を使った後や、パソコン作業の合間などに、こまめにハンドクリームを塗るのがよいでしょう。

指先のマッサージで血行をよくすることも、ハングネイルの予防になります。小指から1本1本、マッサージをしていきます。その際には、爪の横をもみほぐすようにしてマッサージをしましょう。

また、指の根元から指先までしっかりマッサージすると、より血行がよくなります。マッサージをする際には、摩擦を避けるためにもクリームやオイルを使いましょう。

マニキュアや除光液などは指を乾燥させる原因になりますので、マニキュアを塗る前や除光液を使った際には、オイルで爪と指をマッサージするようにしましょう。爪を強くするためにも、オイルを塗ってのマッサージは必要です。また、除光液に入っているアセトンという成分は、水分や油分を取り去ってしまうもの。アセトンが入っていない除光液を選ぶとよいでしょう。

乾燥がひどかったりし、ハングネイルがひどい時には、まずは化粧水で水分補給をしましょう。顔のケアを同じで、まずは化粧水で水分をしっかりと浸透させて、保湿クリームを塗ります。

時には、ネイルサロンで甘皮のケアなど、爪のケアをしてもらうと、指先もきれいになります。ネイルサロンにいったからといって、マニキュアを塗らなくてもいいのです。

甘皮は必要以上にあると、水分を吸収してしまうこともあります。余分な甘皮を処理することで、爪や指先の乾燥対策にもなるのです。ハンドケアとしてハンドパックなどをしてもらうと、手がしっとりとして乾燥対策にもなります。

栄養バランスの取れた食事をしていないために、ハングネイルができることもありますので、蛋白質やビタミン、ミネラルなどの栄養素をしっかりと食事から取り入れるようにしましょう。

睡眠不足や酒の飲みすぎ、ストレスなどをためない生活をすることも、ハングネイルを作らないようにするためには必要です。また、血流が悪くなっている可能性が高いため、長時間パソコン作業をする際は適度に体を動かすなどして、体に血液を巡らせると効果的です。

🇲🇱半月板損傷

膝関節の左右にある内側半月板、外側半月板が損傷、断裂した状態

半月板(はんげつばん)損傷とは、膝(ひざ)関節の左右にある内側半月板、外側半月板がスポーツ外傷や、変性などにより損傷、断裂した状態。膝関節を構成する組織のどれかが損傷される膝内障(しつないしょう)の中で、最も多くみられる疾患です。

三日月状の半月板は弾性に富んだ線維軟骨でできていて、大腿骨(だいたいこつ)と、下腿骨(かたいこつ)のうちの脛骨(けいこつ)との間の内側、外側にあり、関節の適合性をよくして安定性を与え、荷重ストレスを吸収、分散するクッションの役目もしています。

この半月板は、膝にひねりが加わるスポーツ活動で損傷を来すことがあります。日常生活でも、こたつから立ち上がる時や、階段を降りる時に損傷を来すことがあります。半月板損傷の発生部位は外側半月板に多いのが特徴とされてきましたが、近年はスポーツ損傷の増加で、内側半月板のほうが頻度が高くなりました。

内側半月板損傷は、サッカーやラグビー、テニスなどのスポーツで、膝のひねりに過度の屈曲、伸展が加わって、クッションの限界を超えてしまうために亀裂が入り、そのために分離した部分が骨の間にはまり込んだり、半月板が異常な動きをするために起こります。半月板単独で損傷が起こる場合と、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)損傷に合併して起こる場合とがあります。

外側半月板損傷のほうは、生まれ付き半月板が大きくて、正常では半月(C字)型をしている半月板が円板状になっている場合に、発症することが多いのが特徴です。明らかな外傷がなくても、膝の伸展障害を示します。

半月板が損傷しても、小さな傷であれば無症状だったり、膝関節の痛みのみで特徴的な症状がないことも多いのですが、断裂が大きくなると、膝に激痛を感じて歩けなくなったり、関節がはれて関節内に出血が起こります。時には、半月板の断片が骨の間にはまり込んで、膝が伸びなくなることもあります。

次いで、炎症を起こして関節に水がたまったり、屈伸に際してポキポキと異常音がしたりします。そのままにしておくと、半月板以外の軟骨などの構造物も傷めて、さらに深刻な状態になります。

初期の治療では、ギプスなどによる固定と、その膝に体重をかけないことが有効です。ギプス固定などが数週間行われた後、関節運動の練習を開始します。

ある程度進行した場合は、MRI検査で半月板の損傷状況を確認し、手術を行います。手術は麻酔下に、膝関節鏡という細い内視鏡を使って、傷んだ部分を切り取り、形を整える半月板部分切除術や、断裂部を縫い合わせる半月板縫合術が行われています。手術後の成績は良好で、スポーツをすることも可能です。

🇸🇳反射性尿失禁

尿意がないのに、膀胱が反射的に収縮して尿が漏れる状態

反射性尿失禁とは、尿意を感じることができないまま、膀胱(ぼうこう)に尿が一定量たまると反射的に排尿が起こる状態。

尿意を感じることができないため排尿の抑制ができず、腎臓(じんぞう)から尿が膀胱に送られた時に刺激が加わると、膀胱壁の筋肉である排尿筋が反射的に収縮して、自分の意思とは無関係に、不意に失禁が起こります。

脳、脊髄(せきずい)など中枢神経系の障害や、交通事故などによる脊髄の損傷などによる後遺症の一つとして、脳の排尿中枢による抑制路が遮断されてしまうことによって起こります。膀胱には物理的に十分な量の尿がたまっているにもかかわらず、尿意が大脳まで伝わらないので尿意を催すことがなく、排尿を自分でコントロールすることができません。

膀胱からの感覚は、脊髄反射により直接的に膀胱括約筋を刺激して、反射的に膀胱収縮を起こして排尿を起こします。漏れ出る尿量は多いことが、特徴です。

逆に、排尿筋が反射的に収縮して膀胱が収縮する時に、外尿道括約筋が弛緩(しかん)せず尿道が閉鎖したままになると、膀胱内の圧力が異常に高くなり、腎臓に尿が逆流する膀胱尿管逆流症を起こします。尿の逆流を放置して進行すると、腎機能障害が起こりやすくなります。

反射性尿失禁の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、症状および各種検査を総合し、反射性尿失禁の原因を確定します。

一般的には問診、尿の成分や感染症の有無を調べる尿検査、膀胱内の残尿量を調べる腹部超音波検査、尿が出始めてから終わるまでの量の変化を調べる尿流量検査、膀胱の収縮パターンを見る膀胱内圧測定のほか、尿道括約筋のパターンを表す尿道括約筋・筋電図測定、尿流量測定と膀胱内圧測定を同時に行うプレッシャーフロー・スタディ、あるいは尿失禁負荷テスト(ストレステスト)、尿失禁定量テスト(パッドテスト)などを行って、反射性尿失禁の原因を探ります。

泌尿器科の医師による治療では、排尿訓練、自己導尿法、骨盤底筋体操、薬物療法、外科的治療、電気刺激療法などを行います。

排尿訓練は、何度も早めに排尿する訓練を行います。自己導尿法は、清潔なカテーテルを自分で膀胱内に挿入し、尿を排出させるものです。

骨盤底筋体操は、膀胱周囲の尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める体操で骨盤底筋を鍛えることで、症状が軽い反射性尿失禁を防ぐものです。

薬物療法は、膀胱の収縮を阻止し、副交感神経に働く抗コリン剤(ポラキス、BUP−4)、または膀胱壁の筋肉である排尿筋を弛緩(しかん)させるカルシウム拮抗(きっこう)剤(アダラート、ヘルベッサー、ペルジピン)を用います。膀胱尿管逆流症を起こしている場合は、抗コリン剤により膀胱内圧を下げ、カテーテルで残尿を排出する自己導尿法を行います。

外科的治療は、原因となる脊髄損傷がある時に機能を回復させる手術を行うことで、失禁を起こさないようにします。神経の疾患はなかなか治療の難しいことが多く、尿道括約筋の機能が低下している場合には、尿道の周囲にコラーゲンを注入する治療や、尿道括約筋を圧迫するように腹部の組織や人工線維で尿道を支えるスリング手術、日本ではあまり行われていない人工括約筋埋め込み術を行うこともあります。

電気刺激療法は、膀胱の周囲に電極を取り付けて、20~30分ほど電気パルスを送るものです。電気刺激によって必要な筋肉を収縮させ、骨盤底筋を鍛える効果があります。

🇸🇳脳炎

脳炎とは、ウイルスなどが原因となって、脳に炎症を来す疾患です。時には髄膜炎を伴い、髄膜脳炎の型をとることもあります。

原因となるウイルスには、日本脳炎ウイルス、コクサッキーウイルス、ロシアダニ脳炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、狂犬病ウイルスなどさまざまなものがあり、同定不能のケースも少なくありません。ウイルスのほか、ツツガムシや原虫、寄生虫なども原因となります。

脳炎の中でよく知られているものとしては、蚊によって伝染する日本脳炎が挙げられます。重症になる脳炎としては、単純ヘルペス脳炎が挙げられます。予防接種により、特に日本脳炎、はしか脳炎は減っていますが、最近はインフルエンザ脳炎、ヘルペス脳炎や原因不明の脳炎がよくみられます。

症状は、原因となるウイルスや細菌などによって、感染してから発症までの期間に差があります。1週間から1カ月、時には数カ月の潜伏期間の後、症状が現れることも。

症状の軽い場合は、頭痛、発熱、吐き気、嘔吐(おうと)などがみられ、症状が進むと、意識障害やけいれん、ウトウト眠ってばかりいる嗜眠(しみん)、訳のわからない言動、精神障害、知能低下、言語障害、項部硬直、運動まひなど、さまざま神経症状を現してきます。

経過や予後は、原因によっていろいろですが、単純ヘルペスウイルスによる脳炎の場合、予後がよくありません。口唇ヘルペスと性器ヘルペス(陰部ヘルペス)は、どちらも脳炎を起こしうるウイルスです。ふだんは、神経の根元に潜んでいますが、時に神経を介して脳に達し、脳炎を起こすことがあります。ヘルペス感染が疑われたら、抗ウイルス剤の投与と、副腎(ふくじん)皮質ホルモンの投与が必要です。

性器ヘルペス(陰部ヘルペス)では、出産に際して、産道や皮膚粘膜から新生児に感染し、ヘルペス脳炎を起こすことがあります。防止するためには、帝王切開で出産することも必要となりますので、婦人科の医師に前もって相談しておきましょう。

そのほかの原因による脳炎も、確実な治療法はなく、対症療法が中心になります。従って、予防が大切。体力が弱っている時には、風邪を始めいろいろの感染症にもかかりやすいわけですから、ふだんから疲れすぎないように、健康管理に気を付けることが予防の第一歩です。過労と睡眠不足を避けましょう。

🇸🇳膿胸

胸膜の感染症により、胸膜内に膿性の液体がたまった状態

膿胸(のうきょう)とは、胸膜が炎症を起こして、胸膜内にたまった液体が化膿菌を含み、膿性となった状態。

肺炎や肺膿瘍(のうよう)が胸膜に広がり、細菌が胸膜内に侵入して発症することが多く、胸腔(きょうくう)内手術後に続いて起こることもあります。寒け、高熱、胸痛、せき、背部痛などを伴い、胸膜内のうみが肺内に漏れると、膿性たんが吐き出されます。胸痛は、深呼吸やせきで増悪するのが特徴。うみが多量にたまってくると、息切れ、呼吸困難、胸部圧迫感なども起こります。重症の場合は、血圧低下や敗血症を伴い、ショック状態となります。

症状の期間によって、3カ月未満の急性膿胸と、3カ月以上の慢性膿胸に分けられます。

膿胸の原因のうち、最も多いのは肺炎で、肺炎の発症者の1〜2パーセントに認められます。肺炎の原因菌は肺炎球菌が多く、特に黄色ブドウ球菌性肺炎では引き起こしやすくなります。ほかにはクレブシエラ、グラム陰性桿菌(かんきん)が、膿胸の原因菌となります。

原因が肺結核の場合は結核性膿胸であり、年余に渡ってうみがたまり、慢性膿胸と呼ばれる病態を示すことがあります。慢性膿胸では、無症状のこともあります。

膿胸は高齢で寝たきりの人に発症しやすく、口腔内の細菌が肺内に流れ込みやすいのがその理由です。まれに、膿胸から悪性Bリンパ腫(しゅ)が発症します。

膿胸の検査と診断と治療

深呼吸やせきで増悪する胸痛を自覚し、発熱もあれば、早めに内科を受診します。高齢で寝たきりの人が胸痛や発熱を訴えた場合は、家族が病院に連れていったほうがよいでしょう。

医師による診断では、胸部X線検査で胸水がたまっている像が認められ、胸膜内に針を刺して採取した胸水が膿性であれば、膿胸と確定します。胸水は必ず細菌検査をし、結核菌も培養して調べます。細菌性膿胸でも、原因菌を検出できない場合もあります。血液検査では、白血球増加、CRP高値、赤沈促進などの炎症所見の高進が認められます。

また、胸部CT検査は膿状の液体がどのくらい、どこにたまっているのか判断するのに有用です。結核性膿胸の場合は慢性の経過をとり、多くは結核性胸膜炎の既住があって、胸水も膿性でなく褐色を示すことがあります。また、結核菌を証明できないことも多くあります。

膿胸の治療では、原因となる細菌に感受性のある抗生物質の全身投与と、チューブによって排液する胸腔ドレナージが行われます。

抗生物質は、広域ペニシリンや第2世代セフェム系の薬剤が点滴で投与されます。しばしば、アミノグリコシド系薬剤も併用されます。胸腔ドレナージでは、膿状の胸水の詰まりをなくすため、なるべく太いチューブ留置し、持続的に排液します。チューブから直接抗生物質を注入したり、生理食塩水で胸腔内を洗浄したりもします。

これらの治療により、多くは2〜3週間で治癒します。

難治性の慢性膿胸では、内科的治療のみでは治癒させることが困難であり、多く場合は外科的治療が必要になります。うみを排除し、膿胸ができて厚くなったた胸膜をはがす胸膜剥皮(はくひ)術や、膿胸の病巣を縮小、閉鎖して肺の膨張を図る胸郭形成術が行われます。

🇸🇱脳血管性認知症

脳の血管障害で起こる認知症

脳血管性認知症とは、脳の血管に血栓という血の固まりが詰まった脳梗塞(こうそく)や、脳の血管が破れて出血した脳出血など、脳の血管に異常が起きた結果、認知症になるものを指します。簡単にいうと、脳血管疾患の後遺症。

かつての日本では、認知症の中で最も多い疾患でした。1970年代、脳血管性認知症がおよそ60パーセントを占め、アルツハイマー型認知症の2倍程度でした。その後、脳血管性認知症の有病率が下がる一方で、アルツハイマー型認知症が増加し、現在ではアルツハイマー型認知症が50~60パーセント、脳血管性認知症が約30パーセントと逆転しています。

脳血管性認知症の主な症状は、日常生活に支障を来すような記憶障害と、その他の認知機能障害である言葉、動作、物事を計画的に行う能力などの障害で、他の認知症を来す疾患と大きな違いはありません。記憶などの認知機能の障害は、アルツハイマー型認知症より軽度のことが多いようです。アルツハイマー型認知症が女性に多いのに対して、男性に多くみられます。

脳血管性認知症の症状には、いくつかの特徴があります。まず第一に、突然の脳血管障害をきっかけに、急激に認知症が発症する場合と、小さな脳梗塞を繰り返して起こしているうちに、徐々に認知障害が現れる場合とがあることです。

後者の脳梗塞の多発によるものが、70~80パーセントと発症原因の大部分を占めます。脳血管性認知症は「多発梗塞性認知症」と呼ばれることもありますが、この命名は脳梗塞、特に小さい脳梗塞が多くできると認知症が出現することに、由来しています。

そして、脳血管障害を再発することで、階段状に悪化していくことが多くみられます。

脳梗塞で脳の太い血管や細い血管が血栓で詰まると、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなって、一部の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまうために、脳の働きが悪くなって認知症が生じます。

より正確にいうと、脳梗塞は血管の詰まり方で、脳血栓と脳塞栓(そくせん)の二つに分けられます。まず、脳血栓は脳の血管が動脈硬化によって詰まって、血流が途絶えてしまうもので、動脈硬化の進む中高年以降に多くなります。一方、脳塞栓は体のほかの場所から流れてきた血栓によって、脳の血管が突然詰まってしまうもので、脳血管の動脈硬化の有無にかかわらず、かなり広い年齢層で起こり得ます。

脳梗塞以外にも、脳の血管が破れて起こる脳出血の後遺症として、認知症になることもあります。また、脳の海馬(かいば)や視床(ししょう)といった記憶に関係した特定の部位の血管が損なわれて、認知症が起こることもあります。損なわれた脳の部位、その程度や範囲によって、症状が異なります。

第二の特徴は、脳血管障害を発症した経験があったり、高血圧、糖尿病、心疾患、動脈硬化症、高脂血症など脳血管障害を起こしやすい危険因子を持っている人に、よく起こることです。危険因子のほとんどは、生活習慣病といわれるものに相当します。

症状としては、末期を除けば、すべての認知機能が一様に、顕著に低下するわけではありません。記憶力の低下ははっきりしていても、計算力はある程度残っているとか、時間や場所はわかるとか、対応は全く正常であるという場合が少なくありません。

初期から歩行障害、手足のまひ、ろれつが回りにくいなどの言語障害、パーキンソン症状、転びやすい、頻尿・尿失禁などの排尿障害、嚥下(えんげ)障害、その場にそぐわない泣きや笑いを示す感情失禁などがみられることも、しばしばあります。

アルツハイマー型認知症と比べて、人格は比較的よく保たれていることが多く、病気を自覚する病識も比較的保たれており、初期の段階では周囲の人には気付かれないことが多いものです。しかしながら、脳血管障害を起こす度に片まひや言語障害を来したりして、段階的に認知機能の程度が進んでいきます。

精神症状には、不眠、抑うつ、自発性の低下、意欲の減退、興奮、夜になると意識レベルが低下して別人のような言動をする夜間せん妄がみられます。

問題行動として、徘徊(はいかい)、行方不明、盗害妄想、幻視、人物誤認による異常行動、易怒、暴力行為、弄便(ろうべん)などの不潔行為、異食などが起こることがあります。

検査と診断と治療

脳血管性認知症の検査と診断法は、アルツハイマー型認知症とほぼ同じです。両者の区別は必ずしも簡単ではありませんが、よく利用されるのが脳の画像による診断方法です。

脳のCT検査やMRI検査によって、脳内の血管障害の有無、大きさ、損なわれた部位および脳の委縮の程度を知ることができます。

また、脳の血管を調べるMRA検査や脳血管造影検査、脳の血流を調べる脳血流シンチグラフィーによって、脳血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)の有無を知ることができます。脳梗塞にはなっていなくても、脳血管の狭窄や閉塞によって脳への血流が低下し、認知症を起こしている場合もあります。

さらに、エコー検査によって、脳の動脈硬化の程度を知ることができます。この検査は、首の左右にあって脳に血液を運ぶ2本の頸(けい)動脈の動脈硬化の程度を、超音波のはね返り具合で測定するもので、苦痛を受けずに短時間でできます。

残念ながら、脳血管性認知症の記憶障害や、その他の認知機能障害を改善させる確実な方法は、現在のところありません。近年、認知機能改善薬としてドネペジル(商品名:アリセプト)が開発され、効果が期待されていますが、認知機能障害の進行を遅らせることはできても、完全には治りません。

脳血管性認知症では、脳血管障害を再発することで悪化していくケースが多いため、再発予防が特に重要となります。再発予防のための薬剤が使われるとともに、脳血管障害の危険因子である高血圧、糖尿病、心疾患などを適切にコントロールするために、血圧、血糖、コレステロールや血液の凝固しやすさを測定し、正常な値にする薬剤が使われます。

自発性の低下、意欲の減退、発語減少、興奮といった症状に対して、脳循環代謝改善剤、脳代謝賦活(ふかつ)剤が有効な場合もあります。抑うつに対して抗うつ剤、不安や焦燥に対して抗不安薬、精神症状や問題行動に対して向(こう)精神薬が使用されることもあります。

リハビリテーションやレクリエーションといった非薬物療法が、脳血管性認知症の症状や生活の質の改善に有効な場合もあります。

🇸🇱脳腫瘍

●原発性腫瘍と転移性腫瘍に大別

脳腫瘍(しゅよう)とは、脳や脳を覆う髄膜、血管など、頭蓋(ずがい、とうがい)内のさまざまな組織にできる腫瘍の総称です。

初めから脳そのものにできる原発性腫瘍と、他の臓器のがんなどが転移してきた転移性腫瘍があります。原発性腫瘍には、神経膠腫(こうしゅ)、下垂体腺腫(せんしゅ)、聴神経腫瘍、髄膜腫などの種類があります。

脳腫瘍を発症すると、最初は「頭が重苦しい」、「何となく痛い」といった鈍い頭痛が起きます。頭蓋内で痛みを感じる組織が圧迫されることによって起こるのですが、頭蓋内では圧力が広範囲に伝わるため、腫瘍のある個所と痛みを感じる個所とが異なることが、多々あります。また、神経の走る個所の関係から、前頭部や額の痛みとして感じることもあります。

この頭痛は、早朝に起こることが多く、腫瘍が大きくなるのに伴って、直線的に次第に強まっていき、弱まることはほとんどありません。せきやくしゃみをした時に起こりやすいという特徴もあります。

また、吐き気がないにもかかわらず突然、吐くこともあります。ただし、頭痛や嘔吐(おうと)などを伴わないケースも少なからずあり、手足のまひやけいれん、物が二重に見えたり、しゃべりにくくなったりするなどの変調を伴うことがあります。

もし、少しでもいつもと様子が違うようであれば、神経内科や脳神経内科、脳外科、脳神経外科を受診するようにしましょう。医療機関では、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴診断)などによる断層画像や髄液の検査などで、基本的に診断します。

脳腫瘍のほとんどは良性ですが、良性であっても脳を圧迫するため、命にかかわることがあります。神経膠腫の一部と転移性腫瘍は悪性で、増殖が速い種類。

良性でも悪性でも普通、腫瘍を取り除く手術が行われます。ガンマナイフという特殊な放射線治療が行われる場合もあります。悪性腫瘍で除去できないものに対しては、放射線治療や化学療法が行われます。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...