2022/08/11

🇮🇳かっけ(脚気)

ビタミンB1の不足から心臓が弱まり、下肢がむくむ疾患

かっけ(脚気)とは、ビタミンB1欠乏症の一つで、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって心不全と末梢(まっしょう)神経障害を来す疾患。心不全によって下肢のむくみが、末梢神経障害によって上下肢のしびれが起きます。

ビタミンB1は、糖質の代謝に重要なビタミンです。白米を主食として副食の少ない食事を長期間続けた際や、重労働、妊娠、授乳、甲状腺(せん)機能高進症などでビタミンB1の消費が一時的に増大した際に、糖質の分解産物であるピルビン酸や乳酸が蓄積されて、かっけが起こります。

かっけの症状としては、初めは体がだるい、手足がしびれる、動悸(どうき)がする、息切れがする、手足にしびれ感がある、下肢がむくむなどが主なものです。進行すると、足を動かす力がなくなったり、膝(ひざ)の下をたたくと足が跳ね上がる膝蓋腱(しつがいけん)反射が出なくなり、視力も衰えてきます。

かつては、かっけ衝心(しょうしん)といって、突然胸が苦しくなり、心臓まひで死亡することもありましたが、現在ではこのような重症例はほとんどありません。

しかし、三食とも即席ラーメンを食べるといったような極端に偏った食生活によるかっけなどが、最近は若い人に増えてきています。インスタント食品やスナック菓子には脂質とともに糖質も多く含まれているのですが、この糖質の消費に必要なビタミンB1の摂取量が足りていないのです。また、過度なダイエットや欠食、外食によって、女子大学生の血中総ビタミンB1の値が非常に低いことも報告されています。

さらに、糖尿病の発症者と、高齢の入院患者にも、かっけが増えてきているといいます。糖尿病の場合は、血液中の糖質に対するビタミンB1の相対的な不足が原因となり、高齢の入院患者の場合は、高カロリー(糖質)の輸液に対してやはりビタミンB1の不足が原因となります。食事の代わりに酒を飲むといったアルコール依存症の人も、ビタミンB1欠乏症になる確率が高いと見なされています。

かっけの検査と診断と治療

かっけの検査では、ハンマーなどで膝の下を軽くたたく、膝蓋腱反射を利用した方法が広く知られています。足がピクンと動けば正常な反応で、何も反応がなければかっけの可能性がありますが、診断を確定する検査ではありません。

かっけの治療では、ビタミンB1サプリメントを投与します。なお、かっけの症状は回復したようにみえても、数年後に再発することがあるので注意が必要です。

ビタミンB1はいろいろな食べ物の中に含まれているので、偏食さえしなければ、欠乏症を起こすことはほとんどありません。過度のダイエット、朝食や昼食を抜く、外食で食事をすませる、インスタント食品に偏るなどの食生活では、ビタミンB1の不足を招き、かっけになりやすくなります。

ただし、ビタミンB1が不足していても、他の栄養素のバランスがいい場合は、すぐにかっけにはなりません。食生活に偏りがあって、疲労感や倦怠(けんたい)感が続いている場合は、潜在的ビタミンB1欠乏症と考えて、食生活を改善する必要があります。

お勧めなのは玄米食。玄米にはビタミンB1が多く含まれているからで、玄米を精米した白米ではほぼ全部のビタミン類が取り除かれています。玄米のほかにビタミンB1を多く含む食品には、豚肉、うなぎ、枝豆、えんどう豆、大豆(だいず)、ごま、ピーナッツなどがあります。これらをうまく組み合わせて、ビタミンB1を摂取していきましょう。

🇮🇳褐色細胞腫

副腎髄質の腫瘍によりアドレナリンなどが大量に分泌されて、高血圧を起こす疾患

褐色細胞腫(しゅ)とは、副腎(ふくじん)の髄質にできた腫瘍(しゅよう)によって、自律神経に働くアドレナリンやノルアドレナリンが大量に分泌されて、高血圧を起こす疾患。若い人が、ひどい高血圧を起こすのは、この疾患が原因のことがあります。

腫瘍は主として副腎髄質の細胞から発生しますが、時には、ほかの交感神経系のクロム親和性細胞からも発生します。脊髄(せきずい)に沿ったクロム親和性細胞は、重クロム酸カリウムを含む液で固定すると、褐色に染まる細胞をいいます。

腫瘍の大部分は良性で、時に悪性の場合もあります。多くは明らかな原因もなく腫瘍が発生しますが、遺伝的に褐色細胞腫なりやすい家系もあります。

褐色細胞腫の症状としては、高血圧と糖尿病が起こります。高血圧は、発作的に起こる場合と持続的に血圧が高い場合とがあります。

発作的に起こる場合は、急に不安感、緊張感が起こり、強い動悸(どうき)やズキンズキンとした頭痛を感じ、脈が速くなり、手足が震え、瞳(ひとみ)が大きくなります。手足が冷たくなり、時には耳鳴り、吐き気、嘔吐(おうと)がみられます。

また、しばしば尿糖が出ます。発作は数分から1〜2時間、時には数日続くこともあります。まれに、心不全や出血の危険性が高まることもあります。

このようなはっきりした発作がなく、いつも血圧が高く、また糖尿病になっている場合もあります。

発作的な血圧上昇、動悸、頭痛などがしばしば起こる場合は、内科、ないし内分泌代謝内科の専門医を受診してください。

褐色細胞腫の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、血液および尿の中のアドレナリン、ノルアドレナリンを測定すると増加しているのがわかります。腫瘍を探すために、腹部CTスキャン、MRI、血管造影などの画像診断を行います。家族歴などから、遺伝的要因が関係した褐色細胞腫が疑われた場合は、遺伝子の検査が望まれる場合があります。

治療は、手術によって腫瘍を取り除くことです。高血圧によって、体のいろいろな器官が悪くならないうちに手術をすれば、完全に治ります。手術ができない場合には、血圧を下げる作用のある交感神経遮断薬(α〔アルファ〕受容体遮断薬)を使用します。

🇵🇰滑膜骨軟骨腫症

関節包の滑膜の一部が軟骨を作って、関節内へはがれ落ちる疾患

滑膜骨軟骨腫(かつまくこつなんこつしゅ)症とは、関節を包む関節包の内側にある滑膜に腫瘍(しゅよう)性変化が起こって、軟骨や骨に変化し、これが関節内に遊離する疾患。骨軟骨腫症とも呼ばれます。

良性腫瘍ですが、関節を侵します。原因は不明です。通常、関節内に米粒大の多数の遊離体がみられ、そのあるものは滑膜とつながっていたり、滑膜の中に埋まっていたりして、完全に遊離していないものもあります。

遊離体の多くは軟骨中に骨の成分も含んだものですが、軟骨だけのこともあり、この場合は滑膜軟骨腫症、あるいは軟骨腫症と呼ばれます。

膝(しつ)関節に多くみられるほか、肘(ひじ)、足および股(こ)関節にみられることもあります。

滑膜骨軟骨腫症の主な症状は、関節の痛みと動きの制限です。遊離した軟骨や骨の小片は、関節内のくぼみに落ち込んだり、引っ掛かったりして、関節の正常な動きを妨げます。関節を動かす時に、痛みや引っ掛かりを感じ、関節が伸ばせない、曲げられないなどの症状がみられます。

時には、遊離体が関節内をあちらこちらと、ネズミのように動き回るのを感じることもあります。また、膝関節では、その刺激によって水がたまってくることもあります。

滑膜骨軟骨腫症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、問診をしたり、関節の動きを調べるほか、一般にはX線検査が行われます。遊離体が骨を含んでいる場合には、X線写真に映し出されますが、遊離体が軟骨部分だけのような場合には、普通のX線検査では発見できません。このような場合には、空気や造影剤などを関節内に注入した上で、X線撮影が行われます。

治療は、手術によって関節内の遊離体を取り除くとともに、滑膜を切除するのが基本。手術といっても、多くは関節鏡による治療なので、発症者の身体的負担は少なくてすみ、回復も早まります。遊離体の数が多い場合は、関節を切開して取り除く手術が必要になります。

🇵🇰カテコラミン誘発性多型性心室頻拍

致死性不整脈を引き起こす可能性がある不整脈

カテコラミン誘発性多型性心室頻拍とは、狭心症や心筋梗塞(こうそく)、心筋症といった心臓の器質的な病変がない場合でも、心室頻拍や心室細動といった致死性不整脈へと直接つながる可能性を有する頻脈性の不整脈。CPVT(Catecholaminergic Polymorphic Ventricular Tachycardia)とも呼ばれます。

小児期の失神や突然死の原因疾患として、近年注目されている不整脈ですが、発生頻度は極めてまれであり、心臓における電気的刺激の伝達にかかわる遺伝子異常によって引き起こされます。

現在までに心臓のリアノジン受容体RyR2の遺伝子異常と、カルセクエストリン2(Calsequestrin 2)というカルシウム結合蛋白(たんぱく)の遺伝子異常により引き起こされることが明らかになっており、前者は常染色体優性遺伝を示し、後者は常染色体劣性遺伝を示します。これらの遺伝子異常により、心筋細胞内の筋小胞体に存在するリアノジン受容体(RyR)からの異常なカルシウムイオンの放出が起こることが知られています。

運動や感情の高まり(カテコラミン刺激)に伴って、脳内で放出される神経伝達物質であるカテコラミン(カテコールアミン)が、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍の誘因となります。

カテコラミンは体で興奮系の作用を示す神経伝達物質で、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンが含まれます。ドーパミンは中枢の神経伝達物質として快の感情、学習、意欲、運動、ホルモンの調節などの働きを持ちます。アドレナリンは恐怖のホルモンとして、ノルアドレナリンは怒りのホルモンとして、交感神経系の作動に働きます。

心筋細胞内の筋小胞体に存在するリアノジン受容体からカルシウムイオンが漏れ出て、これに運動や感情の高まりに伴って脳内で放出されたアドレナリンなどのカテコラミンが加わることによって、心筋細胞内のカルシウムイオンがさらに増加します。これにより心筋細胞の反応が過剰に強く引き起こされ、電気的興奮が異常に高まる結果、心室頻拍や心室細動といった重篤な致死性不整脈を発生させます。

現れる症状は、動悸(どうき)や、めまい、失神です。失神は、二方向性心室頻拍、多形性心室頻拍、多形性心室期外収縮、多源性心室頻拍などが誘発され、心室細動に移行することにより起こります。心停止が初めて現れる症状である場合もしばしば見受けられ、突然死につながることもあります。

カテコラミン誘発性多型性心室頻拍は、幼少時に発症することが最も多く、平均初発年齢は7歳から9歳。時として診断が遅れることがあり、青年期以降または中年期以降に診断される場合もあります。

約30%の発症者に、失神および突然死の家族歴を認めます。薬剤治療を行わなかった場合、予後はきわめて不良で、40歳までの死亡率が30~50%と高いことが報告されています。薬剤治療を行っても、10年で15%から40%は死亡するとされています。

カテコラミン誘発性多型性心室頻拍の検査と診断と治療

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、運動をしたり、感情が高まって興奮したりする交感神経緊張時に失神を起こすことが多いため、これまでの失神の状況を問診します。また、カテコラミン誘発性多型性心室頻拍と診断されている血縁者がいないか、もくして突然死した血縁者がいないかなどを詳しく問診します。

安静時心電図は役に経たないため、基礎心疾患の有無や、運動前後あるいは身体的ストレス、感情的ストレスによる不整脈を評価する目的で、心臓超音波検査、運動負荷心電図検査、24時間にわたる心電図を記録するホルタ―心電図検査などを行います。

β(ベータ)アドレナリン受容体刺激薬を点滴して不整脈を評価する薬物負荷検査、リアノジン受容体RyR2の遺伝子変異の有無を解析する遺伝子検査を行うこともあります。

小児循環器科、循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、体内におけるカテコラミンの影響を抑制することに重点を置き、交感神経のアドレナリン受容体であるβ受容体に対するカテコラミンの伝達を遮断するβ遮断薬(交感神経β受容体遮断薬)が第一選択となります。β遮断薬単独で効果が得られない場合は、カルシウム拮抗(きっこう)薬やナトリウム遮断薬を併用することがあります。

症状の状態に応じて、適切な範囲での運動制限または運動禁止も行います。

心停止を起こしたことがある場合や、薬剤によって不整脈が抑制されない場合は、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術を勧めることがあります。植え込み型除細動器は致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置ですが、突然死の予防効果は不完全です。

🇵🇰化膿性関節炎

関節内に細菌が到達して増殖し、関節の中が化膿する疾患

化膿(かのう)性関節炎とは、骨と骨とが連結している関節内に、細菌が到達して増殖し、関節の中が化膿する疾患。

膝(ひざ)関節、股(こ)関節、肩関節、足関節、肘(ひじ)の関節、手指の関節など、全身のどの関節にも起こる可能性があります。

関節まで達する深い傷を負ったために細菌が関節に入り込んだり、敗血症、扁桃(へんとう)炎、膀胱(ぼうこう)炎など、ほかの部位の感染巣から細菌が血管に入り、それが関節に流れ込んで、化膿性関節炎を起こします。

また、化膿性骨髄炎が関節に広がって、化膿性関節炎が起こることもあります。まれですが、関節にたまった水を抜くとか、関節に薬を注射するなどの医療行為の際の不潔な操作が原因となって、感染することもあります。

原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌が最も多く、連鎖球菌、肺炎球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などが多いとされています。

糖尿病、血液透析、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤・免疫抑制剤などの薬物の常用などで治療中の人は、感染に対する抵抗力が落ちているため、化膿性関節炎にかかりやすく、また治りにくくなる傾向があります。

症状としては、関節に急激な痛みとはれが起こり、熱感や赤みも見られます。発熱することも多く、寒けや震え、食欲不振、全身倦怠(けんたい)などの全身症状を伴うこともあります。化膿した関節は、動かすと痛みが強くなるので、ほとんど動かすことができません。

乳児の股関節に起こった場合は、深い部分にあり関節の状態がわかりにいので、強い痛みのためほとんど関節を動かさないとか、オムツ交換時にひどく泣くといった症状が手掛かりとなります。 この場合は、大腿(だいたい)骨上端部の化膿性骨髄炎が関節内に広がったものが大部分です。

関節をほとんど動かせない状態が続くと、関節の表面の軟骨が壊され、さらに骨まで破壊されるため、できるだけ早期に整形外科の医師の診断を受け、治療を行うことが重要です。治療が遅れた場合には、関節の痛みや変形、関節の動きなどに障害が残ることがあります。

化膿性関節炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、関節にたまった関節液を抜いて培養し、化膿菌の種類と効果のある抗生物質を調べます。関節液に含まれる細胞成分や蛋白(たんぱく)質、糖分なども調べます。また、全身症状を伴っている場合は、血液からの細菌培養を行うこともあります。

化膿を起こしている細菌が見付かれば診断がつきますが、細菌が証明できないことも多く、その場合は、血液検査やX線検査、MRI検査などが診断の手助けとなります。

血液検査では、白血球数の増加、赤血球沈降速度の高進、C反応性蛋白(CRP)の上昇など炎症性の変化が見られますが、弱毒菌の場合にはあまり明らかでないこともあります。 初期段階のX線検査では、関節の透き間が広がっている程度ですが、進行すると次第に骨の変化が出てきます。

整形外科の医師による治療では、まず入院して、関節をギプスで固定し、冷やします。さらに、化膿菌がわかれば、それに効く抗生物質を点滴で使用します。

化膿が起こって間もない時は、関節鏡で関節内を見ながら、できるだけ炎症のために傷んだ部分をを取り除き、チューブを挿入して抗生物質を含む洗浄液で、2週間ほど洗浄を続けます。

病状が進行している場合は、関節を切り開いて、中にたまっているうみを洗い流し、炎症のため傷んだ部分を切除します。さらに、チューブを挿入しての洗浄を行います。その後は、血液検査を行いながら、炎症が治まるまで、抗生物質の点滴や内服を続けます。

 関節の軟骨が破壊されて、骨まで炎症が広がっている時は、最悪の場合、関節を固める手術が必要となります。

炎症とギプス固定による安静のために、関節の動きが悪くなるので、炎症の状態を観察しながら、できるだけ早く、関節を動かす運動療法などのリハビリテーションを始めます。

🇦🇫化膿性腱鞘炎

指のけがなどにより細菌が侵入し、腱や腱鞘にも炎症が広がった病態

化膿(かのう)性腱鞘(けんしょう)炎とは、指のけがなどにより細菌が侵入し、腱や腱鞘にも炎症が広がった病態。

筋肉を骨に結び付けている腱の外囲を筒状に包む組織が腱鞘で、腱鞘の中には滑液という油のようなものがあって、ひも状の組織である腱がスムーズに動くようにしています。

例えば、転んで指をけがして傷口をしっかり消毒しなかった際に、傷口から黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌などの化膿菌が入り込むことがあります。続いて、傷口を中心に炎症が広がり、腱や腱鞘にも炎症が達すると化膿性腱鞘炎を発症します。

化膿性爪囲炎(ひょうそ)などの手指の感染巣を介して、細菌が侵入して化膿性腱鞘炎を発症する場合もあります。

けがの部位によってどの腱鞘でも起こる可能性がありますが、手の指に最も頻度が高くみられ、手首、ひじ、ひざ、足首に発症することもあります。

手の指が化膿性腱鞘炎になると、手の指から手のはれ、痛み、発赤がみられます。屈筋腱の化膿性腱鞘炎では、指の関節が軽度に曲がった状態になり、無理に指を伸ばそうとすれば、痛みが増強します。手の指の屈筋腱は、母指は1本ですが、他の指には深指(しんし)屈筋腱と浅指(せんし)屈筋腱の2本があります。また、手のひらを押さえるだけでも、痛みを伴います。

腱鞘炎は関節の使いすぎや、加齢、関節リウマチが原因となっても発症しますが、これらの腱鞘炎と違って、化膿性腱鞘炎は進行状態が比較的早いのが特徴です。

人差し指、中指、薬指の腱鞘は、指の根元までつながっていますから、一度これらの腱鞘に化膿が及ぶと、指の根元まで進んでしまうことがあります。親指と小指の腱鞘は、さらに手首まで伸びていますので、化膿が手首から前腕まで進むこともあります。指を曲げ伸ばした際に、ひじなどにまで圧迫感を感じるようになることもあります。

腱鞘の中では膿(うみ)が腱を囲んでいますから、腱の組織が死ぬ壊死(えし)に陥ったり、穴ができて壊死した腱を排出することもあります。

初期の段階の痛みを放っておくと、指関節炎、手関節炎を併発し、機能障害を悪化させることになります。悪化すると、悪寒、発熱などの全身症状も出現します。

化膿性腱鞘炎で指がはれて痛いという場合には、なるべく早く整形外科の医師を受診し、適切な処置をしてもらうことが大切です。

化膿性腱鞘炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、原因菌を検出することが決め手になるので、細菌培養を行います。また、黄色の膿は黄色ブドウ球菌、緑色の膿は緑膿菌など、膿の性状は原因菌を推測する上で参考になります。

整形外科の医師による治療は、飲み薬では効かないので、原因菌に応じた抗生物質の点滴によって行われ、手の安静を保ちます。集中的に行ったほうが効果が上がりますので、何日間か連続で点滴することになります。痛みが特に強い場合は、痛み止めを併用します。

あまりにも炎症がひどい場合、抗生物質の効果が疑わしい場合は、早期に手術することになります。化膿している部位の腱鞘を切開して、滑膜を切除し、たまっている膿を排出して腱の周囲を洗浄します。処置が遅れると炎症が広範囲に波及し、指の機能に障害を残す可能性があります。

手術を受けた後は、消毒、包帯をして安静にします。経過がよければ、2~3週間で治ります。

化膿性腱鞘炎にならないためには、けがをしたら必ず消毒をして、傷口を清潔に保つことを心掛けることです。

🇦🇫化膿性骨髄炎

骨に細菌が付き、化膿性炎症を発現する疾患

化膿(かのう)性骨髄炎とは、骨に細菌が付いて、化膿(かのう)性炎症を起こす疾患。

化膿性骨髄炎には、急性と慢性があります。急性化膿性骨髄炎は大人にも起こりますが、一般には、成長の盛んな幼少年期の、特に男児に多くみられます。かつては敗血症を招いて死亡するケースも多かったのですが、近年は抗生物質のお陰で、死亡例は非常に少なくなっています。しかしながら、慢性化することが多く、そうなると再発を繰り返し、なかなか治りにくくなります。

急性化膿性骨髄炎を起こす原因菌はいろいろな種類がありますが、最も多いのはブドウ球菌。細菌の侵入経路は、扁桃(へんとう)、鼻咽腔(いんくう)、皮膚などの化膿巣から、血液の流れに乗って骨に達し、発症します。化膿した部位の近くの骨に化膿が波及して、発症することもあります。

全身のどの骨にも起こります。特に、大腿(だいたい)骨の上端や下端、脛(けい)骨の上端によく起こります。また、骨が皮膚を破って外に出た開放性骨折を起こした際や、骨にまで達する外傷を起こした際にも、細菌が骨に直接くっついて炎症を起こすことがあります。

症状として、全身の発熱や悪寒(おかん)、感染した部位の強い痛み、はれ、皮膚が赤くなる発赤などの著しい炎症症状が起こります。しかし、急性化膿性骨髄炎の症状は初めからそろっているものではありません。

急性化膿性骨髄炎の発見が遅れたり、治療が不十分であると、いったん治ったようにみえても、再発を繰り返し、慢性化膿性骨髄炎となることが少なくありません。最初から、慢性の経過をたどるものも少なくありません。

慢性化膿性骨髄炎の症状としては、急性の場合のような強い症状はありませんが、局所は赤くはれて熱を持ち、押すと痛みます。合併症としては、膿瘍(のうよう)が破れた後の穴がふさがらなかったり、四肢の長さが違ってきたり、骨が曲がってきたりすることもあります。

幼少年で急性化膿性骨髄炎の症状がある時は、急いで整形外科、ないし外科の医師の診察を受け、早期発見、早期治療に努めることが何よりも大切です。

化膿性骨髄炎の検査と診断と治療

整形外科、外科の医師による診断では、局所の症状や血液検査などから、総合的に判断します。しかし、急性化膿性骨髄炎の症状は初めからそろっているものではないため、当初は風邪や肺炎などと誤診されることもあり、診断の確定には時間がかかります。

X線、MRIやCTなどの画像診断も行います。X線写真は初期のうちははっきりしませんが、疾患が進んでくると骨の委縮、吸収、骨の壊死(えし)などが認められ、その周りに骨膜から新しい骨ができてくるのがわかるようになります。

整形外科、外科の医師による治療では、全身、局所の安静が大切なため入院をして、原因菌に対して感受性のある抗生物質の投与を行います。膿瘍を作っている際は、切開手術をして排膿します。また、早期に積極的に骨に穴を開けて、膿(うみ)を外に出す手術も行い、壊死した骨が確認されれば、それを取り除く手術も行います。

早期に発見されれば、抗生物質の投与だけですむこともありますが、発見が遅れたり、炎症の程度が強い時は骨髄炎の範囲が広がり、骨が破壊、吸収されて骨折を起こすこともあります。この場合は、入院期間が何カ月も必要なことになります。

慢性化膿性骨髄炎の治療では、抗生物質を十分に投与することが必要です。度々、再発を繰り返すものは、手術的に病巣を取り除く以外にはありません。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...