2022/08/11

🇲🇴拡張期高血圧

60歳以下にみられ、下の拡張期血圧が90mmHg以上と高い状態

拡張期高血圧とは、上と下に分かれている血圧のうち、下の拡張期血圧が90mmHg(ミリエイチジー、ミリ水銀柱)以上と高い状態。

血管壁に及ぼす血液の圧力であるところの血圧は上と下に分かれており、上は収縮期血圧(最大血圧、最高血圧)といい、下は拡張期血圧(最小血圧、最低血圧)といいます。正常血圧は、収縮期血圧が130mmHg未満、かつ拡張期血圧が85mmHg未満とされています。収縮期血圧が130〜139mmHg、かつ拡張期血圧が85〜89mmHgは、正常高値血圧とされています。

高血圧は、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上とされており、収縮期血圧と拡張期血圧の両方、あるいはどちらかの血圧が一定以上高い状態を指します。

両方の血圧が基準値以上に高い状態は、収縮期拡張期高血圧といいます。下の拡張期血圧は90mmHg未満と正常なのに、上の収縮期血圧が140mmHg以上と高い状態は、収縮期高血圧といい、60歳以上の高齢者に多くみられます。一方、上の収縮期血圧は140mmHg未満と正常なのに、下の拡張期血圧が90mmHg以上と高い状態が、拡張期高血圧に相当し、60歳以下の若年層にみられます。

そもそも拡張期血圧は、心臓が体全体に血液を送り出していない状態、つまり心臓に負荷がかからずに膨らんで、拡張している状態で、血液を動脈に送る準備をしている段階です。血液は心臓に集まっていることから、血管壁に最も血液の圧力が加わっていない時です。

この時に血圧が高いというのは、常に血管の内壁が強い圧力を受けていることを意味し、異常な状態だといえます。

この拡張期高血圧は、血管の中でも終わりのほうの細い血管である末梢(まっしょう)の血管が硬くなってきていて血管抵抗が増加しているものの、太い血管の弾力性がまだ保たれている状態で起こることが多く認められます。

まだ太い血管は軟らかくても末梢の細い血管が硬くなる原因は、肥満、運動不足、大量の飲酒、喫煙、ストレス、睡眠不足などの生活習慣だと見なされていて、拡張期高血圧は、60歳までの比較的若い世代に多くみられます。

拡張期高血圧を生じた場合、時間のとともに上の収縮期血圧も上昇していく傾向があります。このことから、拡張期高血圧は、動脈硬化の前触れとも見なされます。

動脈硬化が進むと、血管の柔軟性が低下するため、上の収縮期血圧は上昇し、下の拡張期血圧は低下します。そのため、収縮期血圧と拡張期血圧の差である脈圧が、拡大してきます。この脈圧は、加齢に伴って大きくなる傾向にあり、脈圧が大きいと心臓病や脳卒中の可能性が高まるとされます。

拡張期高血圧を予防ためには、症状がないからといってそのままにしておかず、血圧を時々でもよいので測るということが大切です。最近は、簡便な自動血圧測定器が市販されていますから、家庭でも血圧測定が可能になっています。自分で血圧測定する場合は、測定精度の面から上腕にカフを巻いて測定できる血圧計が勧められます。自分で測定した血圧は、診察室で測定した血圧より低めになる傾向があります。収縮期血圧が135mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上は、高血圧と考えるべきです。

健康診断などで高血圧の指摘を受けたり、自分で測定した血圧が高血圧の範囲に入るなら、内科や循環器科の医師の診察を受け、アドバイスを受けることです。

なお、何らかの原因で高血圧になっている二次性高血圧症でも、拡張期高血圧が目立つ場合もありますので、この際には原因となっている疾患を調べてもらう必要があります。

拡張期高血圧の検査と診断と治療

内科、循環器科の医師による診断では、正確な血圧測定のためには、水銀血圧計を用いて聴診法で測定します。最低5分間、座位安静にして足を床に置き、腕を心臓の高さに保って測定します。

拡張期高血圧と診断されれば、生活習慣のチェック、高脂血症や糖尿病などのほかの心血管危険因子の合併確認、二次性高血圧の精密検査、高血圧の影響を強く受ける心臓、脳、腎臓(じんぞう)、目などの臓器の障害の程度を評価するための検査を行います。

内科や循環器科の医師による治療では、生活習慣改善と薬物療法の2本立てとなります。まず薬に頼らない生活習慣の改善が重要で、これだけで治療効果の上がらない場合に初めて降圧薬を使います。二次性高血圧の場合は、高血圧の原因となる疾患を治すことが主体になります。

生活習慣改善では、(1)食塩摂取の制限や肥満の解消など食事療法、(2)ストレスの軽減や適度の運動など日常生活の改善、(3)禁煙や深酒の禁止など、嗜好(しこう)品の摂取の改善などを行います。

以上の療法を1カ月以上行ってもなお血圧値が高い場合に、降圧薬が処方されます。高い血圧を下げるための降圧薬の進歩は目覚ましく、今日ではいろいろの種類のものが用いられ、血圧のコントロールは多くの場合、可能となっています。拡張期血圧、収縮期血圧のどちらかだけを下げる降圧薬そのものはないため、拡張期血圧をコントロールするということは、収縮期血圧のコントロールをするということになります。

しかし、降圧薬を内服しているからといって、生活習慣改善を軽んじることはできません。高血圧症治療はあくまでも食事療法と日常生活の改善などが中心であり、その効果を高めるために行われるのが薬物療法です。

🇭🇰角膜炎

黒目の表面を覆う角膜に、炎症が起こる状態の総称

角膜炎とは、目の角膜に炎症が起こる疾患。細菌性角膜炎、流行性角結膜炎などによって角膜に炎症を来した状態を総称して、角膜炎といいます。

角膜とは、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら眼の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。 そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌やかび、ウイルスなどの侵入を防いでいます。しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌などが侵入し、感染を起こします。

角膜炎の原因としては、細菌、かび、ウイルス、アメーバなどによる感染症が最も多いのですが、外傷、角膜異物、重症のドライアイ、紫外線・放射線、種々の眼科手術、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、三叉神経や顔面神経のまひ、先天的な奇形、ビタミンB2複合体の欠乏などで生じることもあります。

角膜炎の症状は、炎症の原因、位置、大きさなどによって異なりますが、一般的には激しい目の痛み、目の充血、視力低下、異物感、流涙、目のかすみ、まぶしさなど。角膜には三叉神経が走っているために、炎症が起きると激しい痛み、異物感が生じます。そして、炎症が進行すると角膜が濁って視力が低下していきます。ひどくなると、角膜に穴が開いて失明する危険性も伴います。角膜が一度濁ると元に戻らないため、早期に治療することが大切です。

角膜炎は炎症を起こしている位置により、表層性、深層性、アレルギー性などいくつもの種類にわけられます。

角膜炎の検査と診断と治療

傷を受けた後の角膜は急速に悪化しますので、できるだけ早く治療すべきです。 「そのうちに治るだろう」と安易に考えて放って置くと、角膜潰瘍(かいよう)という失明に至る疾患に進行してしまいます。

眼科の専門医による角膜炎の診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して、角膜炎の診断を行います。一般的に、病変部は混濁するとともに、病変周囲の角膜組織には浮腫(ふしゅ)が生じています。感染性の角膜炎の可能性がある場合は、組織を採取して調べる生検を実施します。

感染性の角膜炎に対しては、適切な治療を迅速かつ集中的に行う必要があります。治療の原則は、原因となる病原体を同定し、感受性を示す抗菌剤を必要かつ十分に投与することです。ただし、病原体の同定や薬剤感受性試験結果が出るまでには一定の日時を要するため、病歴や細隙灯顕微鏡所見などから原因菌を想定して、治療を開始する必要があります。通常は点眼薬や眼軟こうによる治療が主体となりますが、病状によっては抗菌剤の結膜下注射、点滴、内服などを併用することもあります。

角膜炎の原因が非感染症の場合は、ステロイド剤の点眼や角膜保護治療剤、抗生剤などが使用されます。原因がビタミンB2複合体の欠乏の場合は、ビタミンB2の内服、点眼が行われます。

症状が軽い場合は、短期間で治って予後も良好です。 治療が遅れた場合は、病変が角膜中央部に及んでいると、たとえ病変が治癒しても瘢痕(はんこん)性の角膜混濁を残し、視力障害が残る可能性があります。重篤な視力障害が残った場合には、角膜移植などの手術治療が必要となることがあります。

角膜炎の治療中は、風、ゴミ、光などの刺激から目を守ることが重要です。

🇭🇰角膜潰瘍

黒目の表面を覆う角膜に、潰瘍が起きる眼疾

角膜潰瘍(かいよう)とは、黒目の表面を覆う透明な薄い膜である角膜に、潰瘍が起きる疾患。角膜の表面の上皮だけでなく、その奥の実質にも濁ったり、薄くなったりといった影響が出ます。

主たる原因は、外傷によって角膜に傷がついたり、コンタクトレンズの誤用で角膜の抵抗力が弱まっている際の、細菌、真菌(かび)、ヘルペスウイルス、アカントアメーバなどの感染です。中で最も多いのが細菌の感染で、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、緑膿(りょくのう)菌などが感染します。アカウントアメーバーとは、汚染された水の中にみられる原生動物。

そのほか、自分の角膜を濁らせたり溶かしたりするような異常な自己免疫反応によって生じる場合、酸やアルカリが目に入って起こる場合、糖尿病や神経系の腫瘍(しゅよう)などで角膜の知覚神経が障害されて起こる場合、ビタミンAの欠乏または蛋白(たんぱく)栄養の不良に続いて起こる場合もあります。

異常な自己免疫反応によって生じる場合は必ず角膜潰瘍になりますが、それ以外の場合は重症例が角膜潰瘍になります。

症状としては、目やに、涙がいつも流れ出ている流涙、異物感、ずきずきする疼痛(とうつう)、まぶしさを覚えます。まぶたの裏側から白目の表面を覆っている薄い膜である結膜も、充血します。瞳(ひとみ)にかかる部分に潰瘍ができると、白く濁り、かなり視力が低下します。涙もたくさん出ます。

細菌や真菌の感染による場合は、目やにがかなり多量に出ます。時に痛みを伴わないことがありますが、この時は角膜の知覚神経が障害されており、かえって治りにくいのが特徴です。場合によっては、角膜に孔(あな)が開いてしまう角膜穿孔(せんこう)を生じることもあり、失明に至るケースもまれにあります。

角膜潰瘍の検査と診断と治療

角膜潰瘍は速やかな治療を要する緊急の疾患ですので、目に少しでも傷を受けた時などはすぐに眼科を受診します。

医師による診断では、潰瘍の状態を観察しやすくするため、潰瘍に一時的に色をつけるフルオレセインという色素が含まれた点眼薬が使用し、角膜の表面の上皮の欠損、その奥の実質への影響を調べます。細菌などの感染が疑われた場合は、角膜の悪い部分を少し削って、そこに細菌や真菌、ヘルペスウイルスなどがいないかどうか検査します。角膜の知覚の低下をみる検査や、血液検査で、糖尿病や自己免疫疾患がないかを確認することもあります。

治療法は、角膜潰瘍の原因によって異なります。細菌などの感染による角膜潰瘍の場合は、その原因となっている微生物に対する薬剤を点眼、眼軟こう、点滴、内服、結膜下注射などの方法で投与します。結膜下注射では、白目の部分の最表面の結膜とその下の強膜の間に薬剤が入るようにします。

細菌などの感染によらない角膜潰瘍の場合は、抗炎症薬を投与したり、角膜の上皮の治癒を促進するために眼軟こうを入れて眼帯をしたり、治療用のソフトコンタクトレンズを入れたりします。

以上の治療法で治らない場合や、角膜穿孔を起こした場合は、角膜移植を行う必要があります。また、うまく治った場合でも、角膜の中央に強い混濁が残って視力が不良の際には、やはり角膜移植を行います。

🇭🇰角膜乾燥症

涙の減少によって目が渇き、障害が生じる疾患

角膜乾燥症とは、涙液、すなわち涙の減少によって目が乾き、表面に障害を生じる疾患。乾性角結膜炎、涙液減少症、ドライアイとも呼ばれます。

テレビ、パソコンなどに取り囲まれて、目が酷使されてしまう現代社会では、「目が疲れやすい」、「何となく目に不快感がある」という人が、確実に増えています。視覚を担う目に不快感や違和感が生じれば、仕事や勉強を始めとした日常生活で、大変な不便を感じてしまいます。

このような疲れ目などの原因として、注目を集めているのが、目が乾く角膜乾燥症です。

あなたの目の不快感も、目を使いすぎたせいばかりでなく、実は角膜乾燥症が原因かもしれません。角膜乾燥症は自分では気が付きにくく、「何となく目が疲れる」といった症状で病院や診療所に行き、医師から指摘される人が多いのです。

涙が減少すると涙の役割が低下し、黒目の表面を覆う角膜と、上下のまぶたの裏側と眼球の表面から黒目の周囲までを覆う結膜が、乾きのために傷付きます。重症になると、角膜、結膜の表面に無数の傷が付きます。左右差はもちろんありますが、通常は両眼性です。

日本では角膜乾燥症の疾患を持つ人が多く、潜在患者は800万人いるともいわれています。放置しておくと視力低下や眼痛のもとになるので、早めに眼科の専門医に診察してもらうのが、お勧めです。

専門医による角膜乾燥症の検査では、シルマー試験紙という目盛りの付いた細い紙を下まぶたに挟んで、涙の染みる量を測定するシルマーテストを行い、涙の分泌低下を調べます。このほか、蛍光色素試験で角膜の傷の状態、ローズベンガル試験で結膜の傷の状態を調べます。

目は、なぜ乾いてしまうのか

涙腺(るいせん)から分泌される涙は、泣く時以外にも少しずつ出されており、目の表面の保護や、栄養分・酸素の供給、ゴミ・細菌の侵入防止といった働きをしています。

この涙が乾いてくると、眼球の前面を覆う透明な膜である角膜、結膜の上に、涙が蒸発して乾いた穴のような部分(ドライスポット)が開いてしまいます。通常であれば、そこをすぐ涙が覆い、やがて穴はふさがっていくのですが、ある一定量以上に涙が減り続けると穴は残ったままとなり、最も傷付きやすい角膜、結膜が露出して障害が生じるのが、角膜乾燥症なのです。

涙の質が低下したり、涙の量が少なくなる場合は、シェーグレン症候群などの涙が減少する疾患、あるいは加齢、夜間作業、大きなストレス、降圧剤や精神安定剤などの服用の影響が、角膜乾燥症の原因になります。

涙が蒸発しやすかったり、まばたきが少ない場合は、エアコンなどの影響で部屋が乾燥している環境、コンタクトレンズの装着、アレルギー性結膜炎の罹患(りかん)、パソコンやテレビなどの見すぎ、目の酷使などが、角膜乾燥症の原因になります。

 ちなみに、私たちの目全体に涙をゆき渡らせてくれるのが、まばたきなのですが、パソコンなどを凝視すると、まばたきの回数は通常の1/4にもなります。

 下の項目で、長期に渡って当てはまるものが5つ以上あれば、要注意。

1.目が疲れやすい  2.目やにが多く出る 3.目がゴロゴロする 4.目が乾いた感じがする 5.重たい感じがする

 6.何となく目に不快感がある 7.目が痛い 8.何もしていないのに涙が出る 9.視界がかすむ 10.何となく目がかゆい

 11.光がまぶしく感じる 12.なぜか目が赤い 13.涙が出ない 14.悲しい時でも涙が出ない

目を乾燥させないための対処法

角膜乾燥症(ドライアイ)によって、目が疲れたりするだけでなく、肩が凝ったり、頭痛を引き起こしたりと、体に変調を来します。集中力も当然低下し、仕事や勉強の能率は落ちます。

角膜乾燥症を予防したり、進行させないための基本は、目を乾燥させないことです。そのためのケアの一部を紹介します。「乾いているな」と感じる方は、お試しを。

目薬を上手に使う

目を乾燥させないためには、やはり目薬が手ごろ。この目薬にもいろいろな種類がありますが、最もいいのは眼科で処方してもらう目薬です。市販されている目薬を使う場合には、防腐剤が入っていないものを選ぶよう注意しましょう。

目薬は通常、開封した後に非常に細菌感染を起こしやすい構造になっていて、カビが増殖しやすいために、防腐剤が入っていることが多いのです。目薬を使用した時に「目に染みる」と感じるのは、防腐剤のせいです。

角膜乾燥症の場合には、目の表面に傷が付いていることが多く、また防腐剤を洗い流すだけの涙が足りないために、悪影響を及ぼす恐れもあります。よって、防腐剤が入っていないかどうかを確認して購入し、開封後は早めに使い切るようにしましょう。

病院、診療所での治療においても目薬が有効で、角膜乾燥症用の防腐剤を抜いた目薬や人工涙液などを使用します。目の乾燥のひどい人に対しては、涙の排水口で、下まぶたの鼻側の端にある涙点を小さなシリコンプラグや手術でふさぐ方法もあるので、眼科の専門医に相談しましょう。

何よりリラックスを

涙腺は、リラックスした時に優位になる副交感神経によってコントロールされています。従って、くつろぐことで涙がより多く出ます。

逆に、緊張していては目が乾きます。車で出掛ける時などは、余裕のあるドライビングをしたいもの。運転中は無意識に緊張が高まり、まばたきの回数も減少し、さらに目が乾きます。風が目に直接当たるのも、避けましょう。

冷暖房の効いている部屋では、エアコンの風が直接当たらないようにしましょう。目が乾きやすい人は、加湿器を使ったり、ぬれタオルを干すなどして保湿に注意すればよいでしょう。

できればコンタクトレンズの使用を避ける

角膜乾燥症の初期の場合、コンタクトレンズを使うこともできますが、基本的には勧められません。本来、目には常に新鮮な涙が供給されていなければならないのに、コンタクトで角膜にフタをした状態では、まばたきによる涙の交換率がハードで約20パーセント、ソフトでは2~3パーセントにも低下してしまう、と見なされています。

コンタクトレンズ使用者は、防腐剤抜きの人工涙液タイプの目薬を使うように注意しましょう。保湿成分のヒアルロン酸入りの目薬も出ています。また、目を温めることでも角膜乾燥症が改善します。

角膜乾燥症(ドライアイ)用眼鏡を使用する

顔と眼鏡の透き間を、プラスチックのカバーで覆ったものや、水を含ませるスポンジが内側についたものもあります。「たかがカバー?」と侮るなかれ、スキーのゴーグルのようなものをつけると涙が蒸発しないのでよいとされている通り、かなりの効果があります。ゴミや花粉も防ぐことができます。外出用のほか、パソコン用としてもよいでしょう。

たばこの煙を避ける

たばこの煙も角膜乾燥症の大敵。吸っている人がいた場合は、その煙が自分の目に入らないように気を付けましょう。目は煙の粒子を洗い流そうとしますが、角膜乾燥症の人には相当の負担となります。自分が吸っている人は、この際、禁煙してみてはいかがですか。

パソコン作業には工夫を

パソコンの作業では、1時間したら10分間の休憩が必要で、作業中はまばたきを意識的に増やしましょう。正常では、まばたきは1分間に20回前後です。パソコンのモニターの位置を低くして、目線を下向きにするだけでも、涙の蒸発と目の乾燥が防げます。

私たち人間は、夜になると涙の出る量が少なくなり、朝にはカラカラ状態になっています。頭や体は起きていても、「目が開けられない!」という事態もあり得ます。このような時、無理をして開けると角膜、結膜に傷が付きます。目薬をさすなどするようにしましょう。

🇹🇼角膜ジストロフィー

角膜混濁が徐々に両眼性に生じてくる遺伝性の疾患の総称

角膜ジストロフィーとは、黒目の表面を覆う透明な薄い膜である角膜内に、本来は存在しない脂肪や石灰などの成分が沈着して混濁が両眼性に生じてくる遺伝性の疾患。家族の間に起こることが多く、家族性角膜変性とも呼ばれます。

角膜の表面の上皮だけでなく、その奥の実質にも濁ったり、薄くなったりといった影響が出ます。さまざまなタイプが知られており、角膜上皮、実質、内皮のそれぞれに変性症があります。

角膜にみられる混濁の形から顆粒(かりゅう)状角膜ジストロフィー、斑(はん)状角膜ジストロフィー、格子状角膜ジストロフィー、膠様滴(こうようてき)状角膜ジストロフィーなどに分類されているほか、日本人ではまれで欧米に多いフックス角膜内皮ジストロフィーもあります。

疾患の原因として、代謝の異常が関与していることがわかっており、多くのタイプのジストロフィーでは原因となる遺伝子が特定されています。遺伝形式は常染色体劣性遺伝のものが多く、顆粒状角膜ジストロフィーや格子状角膜ジストロフィーの一部など優性遺伝するものもあります。

混濁が軽いうちは、光がまぶしい、時々ぼやけて見えるなどの症状のことが多く、混濁が進行すると視力低下の原因となります。ただし、若年から壮年にかけて視力が低下するものや、老年になってもほとんど自覚症状のないものまで、発症の時期や程度はさまざまです。

最も頻度が高い顆粒状角膜ジストロフィーは、角膜の混濁が部分的であるため、軽度であれば全く無症状ですが、年齢とともに視力の低下やまぶしさを訴えるようになります。格子状角膜ジストロフィーは、顆粒状角膜ジストロフィーよりも視力低下が強く、また角膜の上皮の接着が不良なため、異物感や疼痛(とうつう)を生じる発作を繰り返す再発性上皮びらんを起こすこともあります。

斑状角膜ジストロフィーとフックス角膜内皮ジストロフィーは、年齢とともに強い視力障害を起こしてきます。膠様滴状角膜ジストロフィーは、かなり若いころから、アミロイドという物質が角膜の表面近くに沈着して表面がでこぼこになるため、視力障害やまぶしさが強いのが特徴で、再発性角膜びらんも起こします。

角膜ジストロフィーと一口にいっても、さまざまなタイプが含まれていますので、まず眼科の医師の診察を受けて、その性質や程度を判断してもらうことが大切です。

角膜ジストロフィーの検査と診断と治療

眼科の医師による診断としては、一部の専門病院では、血液から白血球を採取し、そこに含まれているDNAを解析し、原因遺伝子を検索することがありますが、まだ一般的な検査とはなっていません。遺伝子診断は保険適応外であり、多くの場合では行われません。ほとんどは、問診(家族歴)や、体の疾患、そして診察所見で診断が可能です。

原因の遺伝子は最近わかりましたが、まだそれによる原因治療は開発されていません。眼科の医師による治療としては、一般に薬物で治療できることはなく、角膜の表層部分までの混濁であれば、メスを使って混濁を除去するか、エキシマレーザーを使って紫外線を角膜に当てることにより、混濁を除去します。

従来からのメスを使って行う手術よりも、エキシマレーザーを使う手術は精密に行えるため、良好な結果が期待できます。このエキシマレーザーは、近視矯正手術でも使われているものです。

角膜の深部まで混濁が起こっている場合には、角膜移植手術が行われます。この手術では、濁った角膜を円形にくり抜いて除去し、アイバンクに登録された透明な角膜を移植し、特殊なナイロン糸で縫い付けます。 角膜以外に目の疾患がなく、拒絶反応の少ない角膜ジストロフィーであれば、移植後に1.0以上の視力が得られることも珍しくはありません。

エキシマレーザーや角膜移植の成績は一般に良好ですが、原因が内因性であるため、このような治療を行っても再発してくる可能性があり、それが現在の課題となっています。タイプによっては再発率が高いものがあり、繰り返し角膜移植を行うことになる場合もあります。

🇹🇼角膜実質炎

角膜の中間層の実質が炎症を起こした時の総称で、先天性と後天性の別

角膜実質炎とは、角膜の内部の実質が炎症を起こした時の総称。先天性のものと後天性のものがあります。

角膜は、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、表面から角膜上皮、ボーマン膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮という5つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。

三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ約0・5ミリながら目の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。角膜の中間層の角膜実質は、その厚みの90パーセントほどを占めます。

先天性のものには、先天梅毒による角膜実質炎があり、5歳から20歳で発症し、角膜が白く濁り、虹彩(こうさい)炎や歯の異常、難聴を伴います。発症の時期にずれはあるものの両目に起こり、最終的には角膜の軽い濁りと軽度から中等度の視力障害が残ります。

先天性のものには、結核による角膜実質炎もあり、片目に起こることが多く、虹彩炎とともに角膜の濁りが限局的にみられます。濁りができるのは瞳孔(どうこう)の近くで、しかも炎症の消失後も強く残るので、視力はかなり落ちます。症状としては、涙が多く流れたり、光を異常にまぶしく感じたり、痛みが出現し、徐々に進行する視力低下が一般的です。

後天性のものには、細菌、ウイルス、特にヘルペスウイルスの感染による角膜実質炎が多くみられます。症状としては、涙が多く流れたり、光を異常にまぶしく感じたり、痛みが出現し、視力も低下します。白目の部分の結膜が充血し、角膜は混濁して周囲から血管が侵入してきます。

角膜実質炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて角膜を丹念に調べます。症状からほぼ類推することができますが、特徴的な所見を示さない場合は、角膜の悪い部位をこすり取ったり、涙を採取したりして、原因を確定する血清学的検査を行います。

先天梅毒による場合、梅毒反応検査が陽性になり、角膜実質炎のほかに歯の異常と難聴があれば、ほぼ確定できます。結核が疑われる場合、その検査をした上で角膜実質炎との関連を調べます。

眼科の医師による治療では、原因によってそれぞれ異なった処置を行います。目を休ませて、体の休養をとることも重要です。

原因が先天梅毒や結核の場合は、それぞれの治療を行います。同時に、ステロイド剤の点眼も行います。

原因が細菌、ウイルスの感染による場合は、抗生物質、抗ウイルス剤などの点眼を行います。症状が強い場合には、結膜下注射や全身投与を行います。ステロイド剤の点眼を併用することもあります。角膜全体が混濁して視力障害が著しい時には、角膜移植を行います。

🇹🇼角膜真菌症

目の角膜に、カビなどの真菌が感染して生じる疾患

角膜真菌症とは、黒目の表面を覆う透明な薄い膜である角膜に、カビなどの真菌が感染して生じる疾患。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。

この真菌が角膜に感染する原因としては、コンタクトレンズの不適切な使用や、異物の混入、目を植物の葉や木の小枝などで突くなどの状況が挙げられます。

コンタクトレンズに関しては、ケアを怠っていたり、装着時の手が汚れていたり、長時間の連続使用などにより、カビなどの真菌が発生し角膜が傷付けられて発症します。異物の混入に関しては、空気中に舞っているゴミやホコリなどが目の中に飛び込んできて、真菌に感染することもあります。

目を突くことに関しては、草の葉や木の小枝、稲や麦の穂などで、角膜を突いたとしても、傷が小さく真菌感染が起こらなければ、角膜の表面は修復能が高いため2〜3日で完全に治ります。しかし、角膜にできた傷が大きければ真菌に感染することになります。

また、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)や抗生物質の点眼剤を長期にわたって使用することが原因で、角膜真菌症にかかる場合もあります。

角膜真菌症の症状としては、まず目の中にゴロゴロとした異物感や痛みを感じ、涙が多く流れます。白目部分が赤く充血して、目やにが大量に出ます。視力が低下したり、視界がぼやけたりします。

症状がひどくなると、角膜の真菌が感染した部分が灰白色に濁って、盛り上がりのある潰瘍(かいよう)ができ、肉眼でも確認することができるようになります。これを放置すると、視力障害の危険があります。

角膜に細菌が感染して生じる細菌性角膜炎と違って、症状が現れるのに日数がかかるのが角膜真菌症の特徴で、いったん症状が確立するとなかなか治りにくくなります。細菌性角膜炎と同様に、通常は片眼性です。

とりわけ植物の葉や木の小枝で角膜を突いた時は、要注意です。単なる異物の混入であると軽視せず、眼科を受診することが勧められます。

コンタクトレンズが感染源として疑われた場合は、そのコンタクトレンズをレンズケースの保存液に浸したまま持っていけば、検査設備の整った医療機関なら、そこから原因となった真菌を見付けることができることがあります。

角膜真菌症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察します。一般的に、病変部は混濁するとともに、病変周囲の角膜組織には浮腫(ふしゅ)が生じています。

角膜真菌症の可能性がある場合は、角膜の悪くなっている部分をこすり取って、顕微鏡で調べたり、培養したりして、真菌が感染していることを確認します。同時に、病原体となっている真菌の種類を同定する検査と、どのような抗真菌剤が有効かを調べる薬剤感受性試験を行います。

眼科の医師による治療では、原因となっている真菌に感受性を示す抗真菌剤を必要、かつ十分に投与することを原則とします。ただし、真菌の同定や薬剤感受性試験の結果が出るまでには一定の日時を要するため、病歴や細隙灯顕微鏡所見などから原因となる真菌を想定して、治療を開始する必要があります。

通常は、有効な抗真菌剤を配合した点眼薬や眼軟こうによる治療が主体となりますが、病状によっては、白目の表面を覆っている眼球結膜下への抗真菌剤の注射、点滴、内服などを併用することもあります。この場合は、多くは入院治療が必要となります。細菌性角膜炎の場合に比べて、治療に時間がかかります。

治療が遅れた場合は、病変が角膜中央部に及んでいると、たとえ病変が治癒しても瘢痕(はんこん)性の角膜混濁を残し、視力障害が残る可能性があります。重篤な視力障害が残った場合には、角膜移植などの手術治療が必要となることがあります。

角膜真菌症の治療中は、風、ゴミ、ホコリ、光などの刺激から目を守ることが重要です。

角膜真菌症の予防としては、コンタクトレンズを使用している人はレンズのケアをきちんと行い、使用注意を守ることが必要です。また、それほどの自覚症状がないのに,むやみに目薬を2~3週間以上使用しないことも大切です。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...