2022/08/13

🇦🇩偽痛風(軟骨石灰化症)

高齢者に多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患

偽(ぎ)痛風とは、多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患。軟骨石灰化症とも呼ばれます。

高齢者では、特に風邪などの切っ掛けもなく、急にあちこちの関節が痛み出すことを比較的よく経験します。血液検査でも関節リウマチや痛風の反応は異常がなく、医師が診断に苦しむことがあります。このような疾患の中に、偽痛風があります。

この偽痛風は、関節液中にピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶という結晶が沈殿することによって起こります。よく似た痛風は、血中の尿酸が増加して高尿酸血症となり、関節液内に尿酸ナトリウム結晶が生じることによって起こります。

ピロリン酸カルシウムの結晶ができる原因としては、軟骨変性が重要です。軟骨内の結晶は関節破壊により関節腔(くう)内へ脱落し、関節腔内では白血球、単球などがこの結晶をきれいに掃除しようとします。その時に、細胞からはさまざまな化学物質が放出されて、炎症はいよいよ強くなります。痛風発作でも同様に、白血球などが尿酸の結晶を掃除しようとして炎症が起こります。

偽痛風の発症年齢は、痛風に比べて60~80歳の高齢者での発症が多いと見なされています。痛みの起こりやすい部位は膝(ひざ)の関節が最も多く、次いで手、足、股(また)、肘(ひじ)の関節など比較的大きな関節で、男女差はありません。痛風が男性に圧倒的に多くみられ、痛みの部位も足首や足の親指の付け根に起こりやすいのと対照的。

偽痛風の発作は数日、ないしそれ以上持続し、1カ所から数箇所の関節炎が特徴です。痛風発作のように突然出現して自然に軽快しますが、痛風より痛みは軽度。急性発作時には、関節腫脹(しゅちょう)、局所発熱、痛みがあり、関節の動きが悪くなります。腕や足の関節に慢性の痛みやこわばりが長引くこともあり、関節リウマチと混同されることもあります。

偽痛風の検査と診断と治療

医師による診断では、膝関節痛などに多発性関節炎の所見がみられ、X線検査で軟骨石灰化症の存在が認められ、関節腔内に針を刺し関節液を吸引してその結晶を調べることにより、偽痛風と判断されます。偽痛風では、血液中の尿酸値は基準範囲内ですが、痛風でも発作時の尿酸値は正常のことが多くあります。

偽痛風のほかにも、多発性関節炎は慢性関節リウマチ、リウマチ性筋痛症、膠原(こうげん)病、乾癬(かんせん)性関節炎、サルコイド関節炎、悪性腫瘍(しゅよう)に伴う関節炎、再発性多発軟骨炎、感染症に伴う関節炎、変形性関節症などいろいろな疾患で起こり、診断が困難なことも多くあります。長期間の経過観察により診断が明らかになる場合が多いのですが、それでも診断ができないケースもあります。

治療法はほとんどが対症療法で、完治につながるような決定的な治療法はありません。炎症をコントロールすることで痛みを抑えるために、ステロイド剤や非ステロイド系抗炎症剤などが用いられます。治療により急性発作を止めて、次の発作を予防することが可能ですが、関節へのダメージを防ぐことはできません。

発作のない時には、通常の変形性関節症のような病像をとりますが、多くの発症者では膝の変形と慢性的な運動痛、動作の開始時の痛みで特徴とされる変形性関節症に移行します。

🇪🇸喫煙者口蓋

長期間の喫煙により口腔粘膜、とりわけ口蓋粘膜が厚く、硬くなる病変

喫煙者口蓋(こうがい)とは、喫煙により口腔(こうくう)粘膜、とりわけ上側の部分の口蓋粘膜が厚く、硬くなる病変。ニコチン性口内炎とも、口蓋ニコチン性白色角化症とも呼ばれます。

喫煙歴の長いヘビースモーカーにみられ、たばこの煙に含まれるニコチンなどの化学物質の蓄積や、たばこ喫煙時の熱刺激が原因となって起こります。

ニコチンのみが直接の原因かどうかは不明で、たばこの煙に含まれるどの化学物質が影響しているかということまでは、わかっていません。たばこの煙には、ニコチンのほか、タール、一酸化炭素、非常に発がん性の高いベンツピレンなど200種以上の有害な化学物質が含まれることは、わかっています。

長期間の喫煙により、口の中が熱く、乾燥したたばこの吸気にさらされ続け、口腔粘膜が刺激されることも、原因の一つとなります。

発症の初期では赤い発疹(はっしん)ができ、すぐに白色になります。口蓋粘膜は白色になって、厚く、硬くなり、時に表面がシワ状、あるいは敷石状になることもあります。やがて、口蓋粘膜に点在する小唾液腺(しょうだえきせん)が炎症により赤くはれるため、白色の口蓋粘膜に赤い点が散在しているように見えるようになります。

痛みなどの自覚症状はほとんどありませんが、時には熱い物、冷たい物が染みることもあります。重症になると、小唾液腺がふさがれ唾液が出にくくなることもあります。

たばこの悪影響はよく知られているところで、タール、ベンツビレンを始めとする発がん物質を含んでいるため、喫煙者口蓋においても口腔がんに発展することがあります。

喫煙者口蓋の検査と診断と治療

歯科口腔外科、内科の医師による診断では、臨床症状や喫煙歴などから判断は容易で、通常、組織検査は不要です。

歯科口腔外科、内科の医師による治療では、禁煙すること、もしくは喫煙本数を減らすことにより、数週間から数カ月で改善します。

喫煙者口蓋はがん化する恐れも指摘されており、口腔がん予防の意味からも禁煙の意義は大きくなります。

🇪🇸吃音症

頭の中で思い描いた言葉を円滑に発することができない疾患

吃音(きつおん)症とは、頭の中で思い描いた言葉を発する際に舌や口唇などがうまく動かず、言葉を円滑に発することができない疾患。吃音、どもりとも呼ばれます。

話し言葉の流暢(りゅうちょう)性とリズムの障害であり、コミュニケーション障害の一種に相当します。

この吃音症には、大きく分けて連声型吃音症(連発型吃音症、連続型吃音症)、伸発型吃音症、難発型吃音症(無声型吃音症、無音型吃音症)の3つがあります。

連声型吃音症は、ありがとうが「あ、あ、あ、ありがとう」のように、最初のある言葉を連続して発するもの。

伸発型吃音症は、ありがとうが「あーーーーりがとう」のように、語頭のある音を引き伸ばして発するもの。

難発型吃音症は、ありがとうが「あ…………(無音)」のように、最初のある言葉から続く言葉を発することができないもの 。

原因は特定されていませんが、素因的なものがあるともいわれ、それに加えて発達的な要因、環境的な要因、つまりコミュニケーションの環境や親の養育態度、さらに自律神経の失調などが複合的に関係しているのではないかと見なされています。

吃音症は一般的に、言葉の数が急に増え、話し言葉が活発になる2歳から5歳位の幼児期に始まります。特別な原因はないのにどもり始める場合がほとんどで、これらを発達性吃音症といい、吃音症の9割以上が相当します。

一方、成人になって言語を習得した後に、疾患によって失語症など言語に障害を生じ、その症状としてどもることがあります。また、心理的に大きなショックを受けた場合に、どもることがあります。これらを獲得性吃音症といいます。

発達性吃音症は、子供の5パーセント弱にみられます。とりわけ男子に多く、女子1人に対して男子は3~7人位の割合です。その原因は不明ですが、男子のほうが言葉の発達がやや遅めで、ストレスの影響を受けやすいからではないかなどといわれています。

吃音症には、1~4段階のどもりのレベルがあります。第1段階レベルの吃音は、本人がどもりだとあまり自覚していない時期。第2段階レベルの吃音は、本人が連声型の吃音を気にし始める時期で、次第に語頭の音を引き伸ばす伸発型の吃音が現れるようになります。

第3段階レベルの吃音は、自分が吃音だと強く自覚するようになる時期で、伸発型の吃音の時間が長くなり、最初の言葉から続く言葉を発することができない難発型の吃音になります。この時には、口元のけいれん、身振り、身悶(もだ)えなどの随伴運動が起こります。

第4段階レベルの吃音は、吃音のことを気にせずにはいられず、どもりそうな言葉や場面をできるだけ避けたり、話すこと自体や人付き合いを避けたりします。さらに、自分がどもりだと自覚した後でどもりを放っておくと、対人恐怖症や緊張症などの二次障害を引き起こす可能性があります。

主に、幼児期には連声型の吃音が多くみられ、成長するにつれ難発型の吃音が現れるようになります。難発型の吃音が現れるのは、連発型の吃音を隠そうとするゆえに無意識的に獲得した条件反射であると見なされます。

幼児期に吃音症を発症しても、小学校入学前後で平均50パーセント位の子供が自然に、あるいは軽い治療や指導でよくなります。大人になると、有病率は1パーセント弱になります。

吃音症状が激しく、自分の吃音に関して深刻に思い悩んでいるのは思春期から30歳代にかけての比較的若い世代が多く、40歳代、50歳代と年を重ねるにつれて、吃音症状が目立たなくなって吃音率も軽減してくるという傾向もあります。

これは生理的な自然治癒力によるものと考えるより、仕事や家庭を持つことによって、どうしても話さざるを得ない機会が増えてくることによって、話す量も増えてゆく結果、話すこと自体がリハビリの効果を生み、自然と慣れてくるためだと見なされます。そのため、ある程度年配でも、吃音症状が変わらないという人も見受けられます。

子供に吃音症の心配がある際は、言語聴覚士のいる医療機関を受診することが勧められます。基本的には、言語聴覚士が言語障害などを治療しますが、診断は吃音症の治療を手掛けている言語聴覚士がいる耳鼻咽喉(いんこう)科などの医師が行います。

また、神経内科などでも医師に吃音症の知識があり、吃音症の治療を行う言語聴覚士がいれば、診断可能な場合もあります。精神科や心療内科などでも、通院・在宅精神療法や投薬治療を受けず、初診料と再診料のみの診療報酬請求しか行わないならば、吃音症のみの診断名で基本的には受診可能です。

吃音症の治療

言語聴覚士による治療では、精神の緊張を取り除き、話すトレーニングを忍耐強く行います。一般的に完璧な吃音症に対する医学的な治療法はないといわれていますが、トレーニングで改善することは可能とされています。

その中で最も多く取り入れられているのが、発音トレーニング。息を大きく吸って、何度でもいいので、1語1語を少し長めに伸ばすような勢いで発音してゆきます。下腹部に力を入れ、普段の会話を意識しながら、すべての発音が難しければ最初の一言だけでかまわないので、慣れるように無理せず少しずつ発音してゆくことが肝心です。

そして、慣れてきたら少しずつ長めの単語を話すようにしてゆきます。この時点でも無理はせず、その様子を録音して定期的に改善されているかチェックします。

すぐに効果が出るのは難しいものの、忍耐強く少しずつ1日数分でもやることによって、改善されていくケースも多くみられます。

🇪🇸ぎっくり腰(急性腰痛症)

重い物を持ったりした時などに突然、起こる腰の激痛

ぎっくり腰とは、中腰で重い物を持ったり、腰をひねったりした弾みに、あるいは特別な切っ掛けもないのに、急激に激しい腰痛が起こり、そのために腰の運動が障害される疾患。ぎっくり腰とは通称で、医学用語では急性腰痛症と呼ばれます。

普通、腰痛以外には、ほかの異常はありません。20歳代、30歳代の若い層の人たちにもみられますが、40歳代、50歳代の中年すぎの人たちに多くみられます。

原因としては、単純な腰の筋肉の肉離れのほか、腰椎(ようつい)のねんざや椎間板ヘルニアなどのような脊椎(せきつい)に異常のある疾患、さらに、老人では脊椎の圧迫骨折などが考えられます。

腰痛が数日のうちに消えていく場合、あまり心配する必要はありません。だが、安静にしていられず治らないうちに仕事などを再開したことで再発して、そのまま慢性化してしまう事例も少なくありません。

ぎっくり腰の検査と診断と治療

とりあえず安静を保ち、できればじっと寝ていることが大切です。硬めの布団で一番楽な姿勢で休みますが、コルセットを着けるか、さらしを巻くのも有効です。強い痛みがあれば、貼付(ちょうふ)薬を張ったり、冷湿布を行います。

症状によっては、整形外科医に診てもらいます。時期によって、ホットパックなどの温熱療法や、腰の牽引(けんいん)療法が効果的です。ほかに、鎮痛剤の注射や内服療法などを行うこともあります。

予防策として、無理な姿勢で荷物を持ち上げたりしないように心掛けることや、極端に重い物はなるべく持たずにすむように、物の収納法などをふだんから工夫しておくことも有効です。また、ふだんから軽度の運動をして、腰回りから背中にかけての筋肉全体が弱らないようにしておくことも、それなりに有効です。

🇲🇨基底細胞がん

表皮の最下層の基底層から発生する皮膚がん

基底細胞がんとは、皮膚がんの一種で、表皮の最下層である基底層の細胞や、皮膚付属器である毛包などを構成する細胞から発生するがん。

基底細胞がんは、日本人の皮膚がんにおいて最も多いがんに相当し、皮膚がん全体の約24%を占めます。基底細胞がんと新たに診断される人数は、1年間に10万人当たり約4人。

多くは高齢者に発生し、7割以上が顔面、特に顔の中心寄りの鼻やまぶたなどに発生します。

放置すると局所で周囲の組織を破壊しながら進行することがあるものの、リンパ節や内臓へ転移をすることは非常にまれです。

初期症状として最も多いのは、黒色から黒褐色の軽く盛り上がった皮疹(ひしん)の発生で、ほとんどの人がほくろと勘違いします。その後、通常は数年かかってゆっくりと大きくなり、次第に硬い腫瘤(しゅりゅう)を形成します。

進行すると、腫瘤の中心部は陥没して潰瘍(かいよう)となり、かさぶたが繰り返しできたり、出血しやすい状態となることがあります。これが、「結節型」と呼ばれる日本人に多いタイプの基底細胞がんです。

まれに、「斑状(はんじょう)強皮症型」と呼ばれる、やや光沢のある薄い紅色や白色で傷跡(瘢痕〈はんこん〉)に似た状態のものや、「表在型」という境界が鮮明な紅斑で表面にかさぶたのようなポロポロと落ちる皮膚のついた状態のものなど、がんには見えないようなものもあります。

基底細胞がんは、その症状から主に「結節型」、「斑状強皮症型」、「表在型」、「浸潤型」、「微小結節型」の5つに分類されますが、実際には、これらの混合型が多くみられ、これらに当てはまらない型もあります。

通常、痛みやかゆみなどの症状はありません。

基底細胞がんの明らかな原因はわかっていませんが、発症の要因として、紫外線や外傷、やけどの跡(熱傷瘢痕)、放射線による慢性皮膚障害などが挙げられています。

今までなかったほくろや黒い染みが発生して次第に大きくなってきたなど、気になる部位が発生した際は自己判断したり、取り除こうとして指でいじったりせずに、皮膚科専門医を受診することが勧められます。早期の受診が、早期治療につながります。

基底細胞がんの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科などの医師による診断では、目で見て病変を調べる視診で、色、表面の性状を確認し、腫瘍の幅や高さを計測します。

指で触れて病変を調べる触診では、硬結や癒着、可動性の有無を腫瘍の周辺の皮膚から少しつまみ上げるようにして調べます。

日本人では大部分が色素を持つタイプの基底細胞がんであるため、同じように色素を持つ悪性黒色腫などの他の皮膚疾患と見分けることが必要となります。多くの場合は、特殊なルーペを用いたダーモスコピーという検査によって診断が可能です。それでも確定診断が難しい場合は、局所麻酔を行い、皮膚病変の一部を切り取って顕微鏡で調べる生検を行います。

その他必要に応じて、病変の広がりを調べるために、超音波、CT、MRI、X線などの画像検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科、皮膚腫瘍科などの医師による治療では、基底細胞がんの進行の程度や体の状態などから方法を検討しますが、手術による外科的切除が第一選択となります。初回の手術で病変が完全に切除できれば、根治する可能性は非常に高くなります。

腫瘍を確実に切除するためには、腫瘍の辺縁から正常皮膚を含めて大きく切除します。実際の切除範囲は、再発に関して低リスクの場合は腫瘍の辺縁から4ミリ程度、高リスクの場合には5〜10ミリ離して切除します。

また、腫瘍の下部組織も十分に含めた深さで切除します。高リスクの「斑状強皮症型」、「浸潤型」、「微小結節型」の場合、もしくは腫瘍が大きい場合には、より深いところまでの切除を必要とすることがあります。

高リスクの「斑状強皮症型」、「浸潤型」、「微小結節型」の場合は、手術中に切除した組織の切り口に対して病理診断を行い、腫瘍が残っていないか確認します。切り口に腫瘍が残っている場合は再発リスクが高くなるため、手術後早期に再切除します。再切除が難しい場合には、放射線を照射する放射線治療が考慮されます。

手術による皮膚の欠損が大きくなった場合には、植皮や皮弁などの再建手術を行います。

高齢者の場合、切除が困難な部位に発生した場合、合併症などで手術が難しい場合は、放射線治療を適用することがあります。しかし、切除する治療である手術に比べると、腫瘍が残ってしまったり、その結果として再発しやすかったりするため、手術が勧められない場合に実施されることが多くなっています。

また、薬物療法として、抗がん剤の1種であるフルオロウラシル入りのローションやクリーム、または、皮膚の免疫系を活性化し、強い炎症を起こすことでがん細胞を除去する効果があるイミキモド(ベセルナクリーム)を腫瘍に塗ることもあります。

フルオロウラシル入りのローションやクリームは、体幹や四肢に発生した「表在型」基底細胞がんに対して使用されることがあり、1日2回単純に塗布するか、1日1回塗布後にラップ類で密封します。

イミキモドは、手術が難しい「表在型」基底細胞がんの場合に使用されることがあり、1日1回、週3回、患部に直接塗布します。

薬物療法は、塗り薬の副作用で皮膚が荒れて、びらん、痛みが出ることがあります。

🇲🇨亀頭包皮炎

陰茎の亀頭部と包皮に炎症が生じる疾患

亀頭(きとう)包皮炎とは、男性の陰茎の先に当たる亀頭部と、陰茎を包んでいる皮膚に当たる包皮に炎症を生じる疾患。亀頭が包皮に包まれている包茎の場合に多く、細菌感染などで炎症が起こります。

小児の亀頭は、通常、包皮に包まれています。そのため亀頭と包皮の間にカスやアカがたまりやすいために、亀頭包皮炎を発症します。おむつをしている乳児には、しばしばみられます。

症状としては、亀頭と包皮が赤くはれて、うみが出たり、排尿の時に痛がります。おむつやパンツには、黄色いうみが付きます。

成人の場合も、主に亀頭と包皮の内側の間にアカがたまることによって、細菌などに感染し発症します。包茎があると発症しやすくなりますが、包茎がなくても発症します。セックス、オーラルセックスの際、気付かないうちに亀頭に傷ができてしまい、その傷が治る前に細菌が入って発症することもあります。女性からカンジダや淋菌(りんきん)などの細菌や、単純ヘルペスウイルスを移されて、発症することもあります。

これ以外にもいろいろな原因があり、尿や薬品などが原因で起こるアレルギー性のものもあります。

症状は、どんな細菌、ウイルスが入るかによって違うところもあり、どんな細菌、ウイルスでも同じに出る症状もあります。軽度のものは、亀頭と包皮のかゆみ、痛み、はれ、発赤、焼けるような感じが現れます。高度のものは、びらんを作り、うみを持つことがあり、排尿時に痛みを発します。時に出血することもあります。

カンジダに感染した場合は、亀頭部の付け根に当たる環状溝や包皮に、白っぽいカスが付着し、かゆくなるのが特徴です。淋菌に感染した場合は、黄色いうみ状の液が出るのが特徴です。ヘルペスに感染した場合は、痛みを伴う水疱(すいほう)ができて、破れます。アレルギー性のものでは、かゆみとむくみを伴い発赤します。

亀頭包皮炎の検査と診断と治療

亀頭や包皮に発赤、はれ、痛み、かゆみが現れたならば、小児科、あるいは泌尿器科の専門医を受診します。

小児の場合は、小児科医、泌尿器科医が診察すれば容易に診断できるので、特別な検査は不要です。成人の場合、いろいろな原因があり、症状だけでは診断できないことも多くなります。性器に皮膚疾患を示しているカンジダ症などの原因疾患について調べ、尿の検査を行うこともあります。ラテックス製コンドーム使用の有無を問診することもあります。治りにくいものでは、基礎疾患に尿道炎や糖尿病、免疫病、腫瘍(しゅよう)がないか組織検査を行うこともあります。

治療では、無理のない範囲で包皮をむいて、分泌物や退廃物を洗浄したり、うみを出して消毒したりした後で、抗生剤の軟こうを塗ります。びらんを作っているなど炎症が強い時には、抗生剤の内服が必要なこともあります。カンジダが原因となっている場合は抗真菌剤、淋菌が原因となっている場合は抗生物質、アレルギー性の場合は抗アレルギー剤を使って治します。

手で包皮をむいても亀頭が顔を出さないものを真性包茎と呼びますが、真性包茎で亀頭包皮炎を繰り返すと、皮膚自体が弱まり、皮膚が部分的に切れる包皮裂傷などの原因となります。この真性包茎で再発を繰り返す場合や、尿が出にくい場合、なかなか治癒に至らない難治性の場合、他の疾患の合併症などが生じた場合は、炎症が治まった時点での手術が考慮されます。手術には、包茎の環状切除または包皮形成術があります。

小児の場合、治癒した後は再発を防ぐため、入浴時には皮をむいて洗うようにします。また、汚れた手で性器を触らないように注意します。成人の場合も、再発を防ぐためには、できるだけ性器を清潔に保ち、細菌やウイルスが広がりにくいようにすることが欠かせません。

🇲🇨奇乳

生後間もない新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌される現象

奇乳(きにゅう)とは、生後2~3日ころから1週間ころの間に、新生児の胸が膨らむとともに、乳頭(乳首)から乳汁様の半透明から白色の液体が分泌される状態。魔乳、鬼乳とも呼ばれます。

妊娠中、母体では女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)が卵巣から多量に分泌され、これが乳腺(にゅうせん)を発達させるとともに、脳下垂体に作用して乳汁分泌を促すプロラクチンの分泌を抑制しています。ところが、出産とともに、卵胞ホルモンの分泌が急速に低下し、プロラクチンの分泌の抑制がなくなるために、プロラクチンの分泌が増加し、乳汁(母乳)の分泌が開始されます。

妊娠中、母体の卵胞ホルモンは胎盤を通じて胎児の血液にも移行していますが、出生後、臍帯(さいたい)が切断され、母体との関係が絶たれると、卵胞ホルモンが急激に減少して、その影響が急速に失われるため、母体と同様な機構でプロラクチンが少量分泌され、これが作用して乳腺が刺激され、新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌されるのです。乳汁様の液体の成分は、乳汁と同一です。

奇乳は生後2~3日ころから分泌され始めることが多く、搾ったりせずに放置すれば数日から1週間程度で出なくなります。中には、5~6週間にわたって分泌がある場合もあります。新生児の体質や、母体から移行していたホルモンの量で、期間は変わってきます。

成熟した新生児では、生まれた当初から左右の乳房が大きな場合がありますが、これも胎盤経由のホルモンと自分自身のホルモンによって乳腺が発達したものと考えられています。

この時期の乳腺の発達には男女差はなく、男の子の新生児でも乳房が膨らんだり、奇乳が見られたりすることがあります。

ヨ-ロッパでは昔、魔女信仰の影響から、新生児の乳頭から分泌される乳汁様の液体が魔女の薬の材料になるとされて「Witch’s milk(魔女のミルク)」と呼ばれていたことから、日本では奇乳、魔乳、鬼乳などと呼ばれるようになったようです。ヨーロパでは魔法使いの女が採りに来る前に早く搾ってしまわなくてはならないと信じられていたそうですが、近年では搾ったり、触ったりすると、かえって乳腺が刺激されていつまでも液体が出続けたり、細菌が入って感染を起こすことがあるため、搾ったり、触ったりしてはいけないものとされています。

>新生児の奇乳は自然に止まるのを待てばよく、特別な処置は必要ありません。乳汁とは少し違うような色の液体が出てくる場合は、乳腺などが傷付いている可能性がありますので、一度、産科、または小児科を受診し診察を受けてください。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...