2022/08/13

🇲🇹期外収縮

心臓が本来の拍動のリズムを外れて、不規則に収縮する不整脈

期外収縮とは、異常な電気刺激によって心臓が本来の拍動のリズムを外れて、不規則に収縮する不整脈の一つ。

不整脈は、一定間隔で行われている心臓の拍動のリズムに、何らかの原因によって乱れが生じる疾患の総称。この不整脈は、脈が正常よりも速くなり、1分間当たりの心拍数が100回を大きく上回る症状をみせる頻脈性不整脈、脈が正常よりも遅くなり、1分間当たりの心拍数が60回未満まで下回る症状をみせる徐脈性不整脈、そして、普段規則正しく打っている脈が不規則なリズムになる期外収縮の3つに分類されます。

期外収縮は、不整脈の中で一番多く起こります。健康な人でもみられ、年齢を重ねていくにつれてみられる頻度も高くなっていきます。

脈が不規則になり、「トン、トン、トン」と規則正しく打っている脈の中に時々「トトン」と早く打つ脈が現れたり、急に心臓の1拍動が欠け、1秒飛んで2秒後に拍動するといったリズムの乱れを伴います。心室性期外収縮と、より良性の心房(上室)性期外収縮に分かれますが、いずれの場合も心臓がドキンとしたり、心臓が一時止まったように感じたりします。

心臓は全身に血液を送り出すために、規則正しいリズムで収縮と拡張を繰り返しています。心臓の右心房にある洞結節(どうけっせつ)という部位で電気刺激が発生し、電気刺激は房室結節を通って心室へと伝えられます。期外収縮は洞結節以外の部位で電気刺激が発生し、心臓に伝えられるものです。心房で電気刺激が発生した場合が心房(上室)性期外収縮、心室で電気刺激が発生した場合が心室性期外収縮に相当します。

通常の洞結節から発生する電気刺激よりも、早いタイミングで心臓に伝えられるため、脈をとった時に「早いタイミングで打つ」、「リズムが不規則になる」、「脈拍として触れることができず、脈が一拍飛ぶ」ように感じます。

期外収縮は起きても無症状であることが多いのですが、胸の違和感や痛み、喉(のど)の詰まった感じなどの症状が出ることもあります。連続して起こると、血圧の低下や動悸(どうき)、めまいなどが生じることもあります。

心室性期外収縮であれば、命の危険にかかわる心臓の疾患から起きている可能性もあります。突然死の原因にもなる心筋梗塞(こうそく)や、心機能の低下を来すこともある心筋症、心臓に負担がかかる弁膜症などです。

心房(上室)性期外収縮であれば、発生する数も少なく、無症状であれば、ひとまず心配はありません。ただし、症状が連続して起こる場合には、心房細動などの危険な不整脈へと移行することがあるので注意が必要です。通常は洞結節から規則正しく1分間当たり60~100回の電気刺激の発生がみられますが、心房細動では1分間当たり400~600回も心房が不規則に動きます。心房内の血液の流れは悪くなり、意識の消失や心機能の低下、血栓を生じて脳梗塞を招くこともあります。

健康診断などの検査で期外収縮を指摘されたり、自分で脈をとった時に脈が飛ぶなどして期外収縮だと感じたりした場合は、1日に起こる回数や頻度などを確認してみるといいでしょう。頻繁に起こるような場合は、医療機関で検査を受けて確認してみるといいでしょう。

期外収縮の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による診断では、心電図検査が基本となります。一般的に通常の検査は限られた時間の中で情報を集めますが、詳しく検査する場合はホルター心電計を利用します。これは胸に電極をつけて24時間にわたる心電図を記録する携帯式の小型の装置で、運動中や食事中、就寝中などでの期外収縮の出現頻度と出現形態を確認できます。

また、基礎心疾患の有無や運動前後での期外収縮の出現頻度をみる目的で、心臓超音波検査や運動負荷心電図を行います。

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科の医師による治療では、健常な人でも自分の年齢数くらいは期外収縮が現れてもおかしくないので、単発の期外収縮で無症状であれば、日常生活に制限を設けません。

症状が強い時には、まず抗不安薬を投与します。それでも症状がある場合には、抗不整脈薬を使うことになります。薬物治療を行う場合には、副作用のリスクを考慮して、十分に検討した上で慎重に行います。

運動をすると期外収縮が頻発する場合には、期外収縮の連続による頻脈(頻拍)や持続性の頻脈が生じる可能性があるので、運動を控えるよう制限を設けます。逆に、運動によって期外収縮がなくなる場合には、運動制限を設ける必要はありません。

期外収縮自体の予後は、良好です。しかし、心室性期外収縮が引き金になって致死的な頻脈が生じることがあります。このような場合は治療が必要で、鼠径(そけい)部などから挿入した細いカテーテルにより、心臓の期外収縮の原因組織を高周波電流で焼灼(しょうしゃく)する経皮的カテーテル心筋焼灼術を行うことがあります。

一般的な期外収縮の予防には、規則正しい生活とバランスのとれた食事を心掛け、ストレスの低減、睡眠不足を避けることなどが大切です。喫煙や過度の飲酒も控えます。

🇬🇷気管支炎

気管支炎とは、太い気道である気管から枝分かれした、左右の気管支に起こる炎症です。通常、細菌やウイルスの感染によって起こりますが、気道から吸い込んだガスや粒子の刺激によっても起こります。

気管支炎には、風邪症候群などによる急性気管支炎、原因不明の痰(たん)と咳(せき)が長期間に渡って続く慢性気管支炎などがあります。

急性気管支炎

急性気管支炎は、急性の炎症が気管支粘膜に起こる疾患で、アデノウイルス、インフルエンザウイルスといったウイルス、百日咳菌、肺炎球菌といった細菌などの感染や、刺激の強い化学ガスの吸入といったことが原因で起こります。

最も多いのは、風邪や風邪症候群、インフルエンザの原因となるウイルスの二次的な感染によって起こるもので、この場合には、炎症は気管支だけにとどまらず、喉頭(こうとう)、気管にも及びます。ほぼ連続的に気管に起こる炎症は、急性気管炎と呼びます。

主な症状は、咳です。炎症の起こり初めは、痰を伴わない空咳ですが、やがて少量の痰を伴うようになります。ウイルス性気管支炎での痰は無色か白色で粘っこいものですが、黄色または黄緑色の膿性(のうせい)の痰に変化すると、細菌感染を合併したサインとなります。

冷気や乾燥した空気、ほこりなどを吸い込むと、その刺激で急に咳き込みます。また、強い咳が続くと、胸部や腹部の筋肉が痛くなることがあります。

重症になると、発熱し、全身倦怠(けんたい)感、白血球の増加、呼吸困難、チアノーゼなどがみられます。

慢性気管支炎

慢性気管支炎は、「持続性あるいは反復性の痰を伴う咳が少なくとも連続して2年以上、毎年3カ月以上続くものをいう」 と定義されています。ただし、肺結核、肺化膿(かのう)症、気管支喘息(ぜんそく)、気管支拡張症等の肺疾患や心疾患を伴うものは除外します。

はっきりとした原因は不明ですが、男性に多くみられ、たばこの煙、汚染した空気、ほこり、刺激性の化学物質が呼吸と一緒に入ってくると、その刺激がもとで粘液分泌が増加したり、繊毛が減少することが、発病に関係していると考えられています。

また、老化によっても体の防御機構としての働きが弱まって、増えてしまった粘性のある痰が、喉に押し出されにくくなり、咳で痰を出すようになります。このため、気管や気管支は弱くなり、粘膜は咳き込んだ時にすぐに傷付いてしまい、炎症が深くなっていきます。

症状は、頑固な咳と痰ですが、痰は朝に目立ち、量が多いのが特徴です。冬季に悪化することが多く、夏季には軽快します。普通、熱は出ません。

痰が切れにくくなると喉に絡まり、気管支喘息のような「ゼーゼー」という喘鳴を伴うこともあります。病気の進行そのものは緩慢で、適切な治療を行えば問題はありませんが、長期間に渡って放置すると心臓に負担がかかり、特に老人は心不全を起こすことがあります。

気管支炎の治療

急性気管支炎の治療では、呼吸器疾患の治療薬を症状に合わせて服用します。去痰剤による痰の除去、鎮咳剤による咳の沈静化が行われ、細菌感染の場合は抗生物質が使用されます。

一度、快方に向かい始めたら、確実な治療を行えば大体1週間以内に軽快します。栄養のある食事を心掛けて安静にし、喫煙者はたばこを控えることが大切。冷たくて湿った環境は、なるべく避けるべきです。

慢性気管支炎の治療では、ネブライザー吸入療法や、体位(性)ドレナージによる気道の浄化が行われます。ネブライザーの吸入薬剤としては、喀痰(かくたん)溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤等が用いられます。体位ドレナージは、足のほうを高くしたり、頭のほうを低くしたりして、痰が喉頭のほうへ流出しやすい姿勢をとるもので、バイブレーターなどで背中に振動を与えると、より効果的です。

原因の除去のため、大気汚染からの転地、職場汚染からの転職、たばこの禁煙が勧められます。

🇬🇷気管支拡張症

■気管支が部分的に拡張した疾患

乳幼児期に発病し、慢性化する場合は、各種のウイルス性肺炎、麻疹(ましん)、百日咳(ぜき)などの後遺症として起こります。

青年期以降では、肺結核、肺炎、肺化膿(かのう)症、蓄膿(ちくのう)症などの後遺症として起こってきますが、実際には、直接の原因の分からないものが一番多いようです。前者を続発性気管支拡張症、後者を特発性気管支拡張症と呼びます。

まれに、原発性線毛機能(運動)不全症候群など、先天的に気管支が拡張している例もあります。この先天性のものにカルタゲナー症候群といって、気管支拡張症、心臓などの臓器の位置が左右逆である内臓逆位症、蓄膿症(慢性副鼻腔炎)の3症状を持つ病気があります。カルタゲナー症候群では、家族内に発病者が出やすいこと、両親に血族結婚が多いこと、そのほかの先天異常を合併しやすいことなどから、遺伝的要素が濃厚です。

■激しい咳と濃い多量の痰

気管支拡張症の症状として、激しい咳(せき)と濃い多量の痰が慢性的に続きます。痰は黄色から緑色のことが多く、起床後、運動後に大量に出ます。中には、気管支の炎症により血痰、喀血(かっけつ)が起こることも。また、拡張した気管支には痰がたまりやすいために、細菌の感染を併発して発熱することもよくあります。進行すると、全身衰弱、呼吸困難も出てきます。

気管支拡張症が急性悪化し、発熱したり、呼吸困難を起こす原因としては、インフルエンザ菌、肺炎球菌、嫌気性菌の感染が最も多いと見なされます。感染症を起こした時は、入院治療をするようにしましょう。

また、予防法が特にありませんので、咳や痰などの呼吸器症状が出てきたところで、早めに医師に診てもらうようにしましょう。

■感染症が起きたら入院治療

医師による診断を決定するためには、CT検査が行われます。かつては、気管支内に造影剤を注入し、気管支造影法が行われていましたが、最近ではほとんど行われていません。

感染症状が強い時には、適切な治療を施すために、痰の細菌学的な検査も行われます。

いったん拡張した気管支を元に戻すことはできません。気管支拡張症で最も重要な治療法は、痰の体位(性)ドレナージです。気管支拡張症のある部位を高くした体位を起床後、就寝前など1日数回、20~60分間とり、咳をしたり、背中にバイブレーターで振動を与えたりして、痰の喀出を図ります。この際、気道に湿気や薬液を供給する噴霧器であるネブライザーで、去痰薬や喀痰溶解薬を吸入させると、痰がさらに出やすくなります。

また、気管支拡張薬も必要に応じて投薬されます。気管支の炎症を抑えるためは、抗生物質の一種であるエリスロマイシンの少量長期投与も行われます。

喀血が続き、なかなか止まらない場合には、止血薬の内服、点滴注射、気管支ファイバースコープによる出血部位への血液凝固薬の注入が行われます。出血量があまりに多い場合には、輸血が行われることもあります。

内科的治療が成功しない場合には、外科的な処置が必要となります。気管支の拡張部位が一つの肺葉(はいよう)に限られている場合にも、外科的な手術が検討されます。

🇬🇷気管支狭窄

気管支の一部の内腔が恒久的に細くなった状態

気管支狭窄(きょうさく)とは、気管支の一部の内腔(ないくう)が通常に比べ細くなった状態。

ぜんそく発作の際にも気管支は細くなりますが、これは気管支を取り巻く平滑筋が一時的に収縮するため生じます。これに対し気管支狭窄は恒久的な狭窄で、気管支の粘膜や気管支壁に傷ができた跡が硬く縮んだり、気管支の周囲に腫瘍(しゅよう)などが増殖して、外から圧迫されるようになるために起こります。肺結核によって長年に渡って気管支粘膜が傷付けられたり、肺がんなどによって引き起こされることがあります。

狭窄の程度にもよりますが、太い気管支に狭窄が起こると、空気の通り道が狭くなるために息苦しくなったり、呼吸困難が現れるようになります。

この気管支狭窄が起こって、休息時あるいは運動時に、肺が適切なガス交換の機能を果たせなくなった場合には、呼吸不全がみられます。

慢性的な呼吸不全になると、呼吸が正常に保てず、酸素不足の状態になります。こうなると全身の機能低下を防ぐために、酸素吸入などの措置が必要となることもあります。

気管支狭窄の検査と診断と治療

医師による診断では、レントゲン検査やその他の画像検査が行われますが、血管造影や内視鏡などの特殊な検査方法も必要なことがあります。また、原因となっている疾患の診断には、他の検査が必要になります。

治療としては、気道の狭窄を取り除き、呼吸不全の発現を防ぐために、手術やレーザー照射が行われます。近年では、ステントという金属を入れて、気管支の内側から広げる方法も行われています。

気管支狭窄が原因となってその奥に分泌液がたまり、感染を起こして肺炎になった場合は、抗生物質や粘膜溶解剤を投与して、感染と炎症を抑えます。

何よりも気管支狭窄の原因となっている疾患の治療が必要です。

🇮🇹気管支ぜんそく

●気管支ぜんそくとは

気管支ぜんそくとは、原因物質であるアレルゲンや個人の生活環境から生じる刺激物質などによって、気道が過敏に反応して内腔が狭くなった結果、突然、咳(せき)が出て、ゼーゼー、ヒューヒューといった音を伴う呼吸となり、息苦しくなる病気です。しかも、繰り返すことが特徴です。

この病気の怖い点は、重症の発作を起こすと死亡するケースもあることです。年間の死亡者は、6000人前後を数えています。年齢別に見ると、男女とも15~29歳の若年層で増加の傾向を示しています。さらに、死亡例を気管支ぜんそくの重症度別に見た時、軽症、中等症の気管支ぜんそくでの増加が、小児、成人ともに指摘されています。

小児の気管支ぜんそくが増加していることも、注目されています。また、以前は乳幼児の気管支喘息は比較的まれでしたが、最近では著しく増加しています。増加の原因として、さまざまな説がありますが、明確な答えが出ていないのが現状です。

●気管支ぜんそくの症状

成人でも小児でも、生まれ付きアレルギー反応を起こしやすいアトピー素因がある人では、突然、出現する呼吸困難、息苦しさ、息を吐く時にゼーゼー、ヒューヒューといった音がする喘鳴(ぜんめい)、夜間、早朝で出現しやすい咳が繰り返し起こり、軽い場合は特別な治療もせずに治まってしまうことがあります。

春先とか秋口になると毎年、喘鳴や咳が見られ、1~2カ月続くという人もいれば、1年中発作が続く人もいるなど、繰り返すパターンは人によって異なります。

気管支ぜんそくは多くの場合、アレルギー性の病気ですから、さまざまな病気を合併していることがあります。アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹(じんましん)などが、代表的な病気。

よく見られるものとして、運動誘発性ぜんそくがあります。運動をした直後に、ぜんそく発作を起こすタイプと、運動後6時間以上経って発作を起こすタイプがあります。特に、後者の診断には注意が必要です。

●気管支ぜんそくの予防法

気管支ぜんそくの予防については、発病しないための一次予防と、すでにかかっている人の発作を防ぐ二次予防に大別できます。

発病に関係する因子と一次予防

気管支喘息の発病には、三つの因子がかかわっていると考えられます。

かかりやすくする因子:環境アレルゲンに反応しやすいアトピー体質があります。また、小児では女児より男児に多く見られます。成人では、男女に差がなくなります。

原因となる因子:ちり、ダニ、ペット、カビなどの室内アレルゲンや、花粉などの屋外アレルゲンがあります。特に小児では、室内のちり、ダニなどが多い環境で生活すると発病しやすいので、室内環境を整えなければなりません。また、職業によっては、頻繁に接する物質が発病の原因になることがあります。さらに、アスピリンなどの消炎鎮痛剤や着色料などの食品添加物が、原因になることもあります。

発病の可能性を高める因子:たばこの煙や花火の煙、線香の煙なども、気道粘膜を刺激します。光化学スモッグなどの大気汚染も、悪影響を及ぼしているのではないかと考えられています。また、新建材や接着剤などから放出される化学物質なども、悪影響があります。

その他、乳幼児期のウイルス呼吸器感染症や出生時体重、母乳栄養や出生後の食事、寄生虫感染などの関与も、無視できません。

遺伝子が関与する因子については予防できませんが、生活環境の整備は大切です。これを一次予防といいます。具体的には、下記のようなことが考えられます。

〇室内のちり、ダニをできる限り除去する

〇妊娠中の人や小児に受動喫煙させない

〇職場での感作(アレルギーの素地を作ること)を避けるための衛生対策を講じる

〇妊娠中の栄養状態を良好に保ち、早産や出生児の低体重の原因を回避する

症状の悪化に関係する因子と二次予防

すでに気管支ぜんそくを発病してしまっている人にとっては、薬によるコントロールとともに、発病の原因となった物質などを回避することが、何よりも重要となります。これを二次予防といいます。

室内のちり、ダニの除去に努め、発病の原因となった物質や悪化させた因子を避けるようにして生活しましょう。

ただし、例えば運動誘発性ぜんそくが起こったとしても、小児における運動は心身の発育に不可欠ですので、医師の指導に従って運動種目を選択し、時には予防のための薬を使用して、適切な運動をしましょう。

また、悪化させた因子をすべて回避することは困難ですので、掛かり付けの医師や看護師、学校の先生などとよく相談して、望ましい環境を整えていきたいものです。

🇮🇹気胸

肺に穴が開き、肺がつぶれてしまう疾患

気胸とは、肺から空気が漏れて胸腔(きょうくう)にたまり、肺の一部または全体がつぶれる疾患。時に、肺の大部分または全部がつぶれると、突然激しい呼吸困難が起こります。

正常な状態では、胸腔内の圧力は肺の内部よりも低くなっています。肺胞が破れるなどで肺に穴が開き、空気が胸腔に入ると、胸腔内の圧力が肺の内部よりも高くなり、肺が空気に押されてつぶれ、小さくなるため、気胸になります。

気胸は、原発性自然気胸、続発性自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸、月経随伴性気胸に分類されます。

原発性自然気胸は、交通事故やナイフで刺されたというような明らかな理由もなく、発生するものをいいます。普通、肺の表面のややもろくなった部分である肺胞内嚢胞(のうほう)が破裂するために起こり、40歳以下の背が高く、やせて胸の薄い男性に最もよくみられます。

この原発性自然気胸の大部分は、運動中には起こりません。ダイビング中や高い高度を飛行中に起こることがあり、肺の内部の圧力が変化するのが原因です。ほとんどの人は一時的に空気が漏れますが、すぐに閉じて完治します。漏れた空気は、血液に溶け込んで次第に消失します。問題なのは、穴がふさがらず、空気が漏れ続ける時です。また、しばしば再発を起こすことも問題です。

続発性自然気胸は、肺にある広範囲の疾患が原因となって起こるものをいいます。原因疾患の分布から高齢者に多くみられます。この気胸で最も多いのは、肺気腫(きしゅ)のある高齢者で肺胞内嚢胞が破裂して起こるものです。そのほか、嚢胞性線維症、ランゲルハンス細胞肉芽腫症、サルコイドーシス、肺膿瘍(しゅよう)、肺結核、カリニ肺炎などの肺疾患がある場合にも起こります。肺に原因疾患があるため、続発性自然気胸の症状および経過は一般的に良くありません。原発性自然気胸と同じく、しばしば再発を起こします。

外傷性気胸は、交通事故などで折れた肋骨(ろっこつ)が肺を傷付けたり、胸部が強く圧迫されたり、刃物などで胸を刺されたりすることで起こるものをいいます。

医原性気胸は、病院で針を刺すような、胸腔内に空気が入りやすい治療や検査を受けたことが原因となって起こるものをいいます。人工呼吸器も、肺に気圧外傷を与え気胸を起こす場合があります。これは、重症の急性呼吸促迫症候群の患者に最もよくみられます。

月経随伴性気胸は、生理の前後に発症するものをいいます。この変わった気胸の原因は、子宮内膜症が横隔膜に広がり、生理の時に横隔膜に穴が開くことにより胸腔に空気が入るため、あるいは肺に子宮内膜症があり生理に際して穴が開くためと考えられています。気胸は女性には比較的少ないので、女性が気胸を起こした時は、月経随伴性気胸の可能性を考えておかなくてはなりません。治療は、外科療法かホルモン療法を行います。

気胸の主な症状は、胸痛、呼吸困難、せきです。多くの場合、鋭い胸の痛みや息切れ、時には乾いた空せきが突然始まります。気胸を起こした肺はしぼみ切っており、機能不全状態になっているため酸素の供給量が著しく低下し、息切れを感じやすくなるのです。また、気胸で開いた穴から胸腔に空気が流れ込み、気圧が高まって肺を圧迫するため、痛みを感じやすくなるのです。肩、首、腹部に痛みを感じることもあります。

胸腔に流れ込む空気の量が多くなると、緊張性気胸となります。緊張性気胸では、突然発症し、進行性の胸痛と呼吸困難が生じ、血圧が低下します。疾患のある側の肺は空気で置き換えられて完全につぶれており、気胸の起こっていない肺も次第につぶされていきます。大量の空気が心臓を圧迫して、心停止させてしまうこともあり、非常に危険です。

一方、ゆっくり進行する気胸では、急激に進行する気胸よりも症状が軽い傾向にあります。まれに、症状がないのに胸部レントゲン検査で発見されることがあります。

緊張性気胸や非常に広範囲の気胸を除き、症状は体が肺のつぶれた状態に順応するにつれて大抵治まり、胸腔から空気が再吸収されるのに伴って、肺はゆっくりと再びふくらみます。

気胸の検査と診断と治療

胸部X線写真で肺の紋様がない領域が胸腔内に確認されれば、気胸と診断されます。健康な長身、やせ型の青年男子で急に胸痛や息切れを訴える時は、原発性自然気胸を疑います。ほとんどの症例では、胸部レントゲン写真で診断がつきます。判断に迷う時は、息を吐いた時と吸った時の写真を比較します。

軽度の気胸の場合は、特別な治療をしなくても安静にしていれば、自然に治癒します。軽い原発性自然気胸では、重い呼吸障害は起こらず、たまった空気は数日間で吸収されます。外来で時々、胸部X線検査を行って経過観察をします。

より広範囲の気胸では、空気が完全に吸収されるのに2〜4週間かかりますが、入院して胸腔ドレナージを行えば、より早く空気を除去できます。胸腔ドレナージでは、胸壁を切開して挿入したチューブで、たまっている空気や新たに漏れた空気を外に排出します。チューブからの空気漏れがなくなったら、チューブを抜去し、肺のふくらみが良好なら退院です。

自然治癒を見込めないほど気胸の範囲が大きい場合、胸腔ドレナージを行って空気の漏れが止まらない場合、気胸が再発した場合、左右両側の肺が気胸の場合などでは、全身麻酔による胸腔鏡下手術で肺嚢胞の切除が行われます。従来の開胸手術においては、初回の気胸について手術をすることはありませんでしたが、胸腔鏡下手術は入院期間も1週間程度ですむため、初回から手術して今後起こりうる病変まで切除してしまうこともあります。

しかし、胸腔鏡下手術には、切除した周囲の組織が気胸を起こしやすくなるというデメリットがあります。そのため、セルロース製のメッシュシートを被せるカバーリング法が、新たに注目を浴びています。セルロース製のメッシュシートは、肺組織に吸収されて厚みを増すため、気胸の再発防止に効果を発揮します。

再発率は内科的に治療した場合、初回の気胸が起こってまた再発するのが約50パーセント、2回起こるとまた再発するのが80パーセント以上と考えられています。内科的治療と比べると外科治療の成績は格段によく、再発率は数パーセント以下です。

続発性自然気胸の場合は、肺に原因疾患があるため、手術は危険な場合があります。手術が行えない際は、胸腔から空気を抜き取ったチューブを通して薬を入れて、肺を周囲と癒着させ気胸を起こさないようにします。この薬を使って気胸を起こした組織をやけどさせた状態にしてふさぐという治療法は、手術と比較して効果が不確実です。

外傷性気胸や緊張性気胸の場合は、迅速な治療が求められます。緊張性気胸では、血圧が低下しショックを起こすので、直ちに治療をしないと数分間で死に至ります。大きな注射器をつけた針を胸部内に挿入し、すぐに空気を抜き取ります。その後、継続的に空気を抜くために別のチューブを挿入します。

🇮🇹奇形精子症

精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態

奇形精子症とは、射精された精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。精子奇形症とも呼ばれます。

運動能力を持つ男性の精子は、精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体(副睾丸)において成熟し、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺(ぜんりつせん)で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。

男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、奇形精子症に相当します。

精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。

奇形精子症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。

2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛(べんもう)を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。

奇形精子症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤(りゅう)、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。

奇形精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。

クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。

泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。

パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である奇形精子症では自然妊娠が見込めないためです。

通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。

射精された精液中に奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...