2022/08/13

🇨🇿血管性紫斑病

手や足のいわゆる四肢末梢に紫斑ができる疾患で、4~7歳の小児に好発

血管性紫斑(しはん)病とは、手や足のいわゆる四肢末梢(まっしょう)に、軽く盛り上がった紫斑ができる疾患。アレルギー性紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病とも呼ばれます。

この血管性紫斑病は上気道感染後に発症することが多く、ウイルスや細菌に対するアレルギーが原因だといわれていますが、はっきりしたことはまだ解明されていません。血管性紫斑病の障害部位にIgAなどの特異的な免疫物質が沈着しているのが特徴であり、それが皮膚のほか、腸管、関節、腎臓(じんぞう)、時に精巣や脳などに障害を起こします。また、服用中の薬や食べ物との関連性も研究されています。

それほど多くみられる疾患ではなく、発症者は年間10万人当たり10~20人といわれているものの、4~7歳の小児に好発し、女児より男児の発症が若干多い傾向にあります。多くは冬に発症し、人から人への感染はありません。今の段階では予防策がないというのが現状です。

皮膚の紫斑は手足の左右両側対称に、とりわけ関節付近に出現します。体や顔に出る場合もあります。初めはかゆみを伴ったじんましんのような発疹(はっしん)で始まり、次第に紫色に変色していきます。じんましんなどの紅斑は上から押すと赤みが消えるのに対して、紫斑は色が消えません。

紫斑ができるのは、血管が炎症を起こしているからです。紫斑は血管から出てしまった血液が皮膚の奥で滞留した状態なので、上から押しても色が消えることはありません。血小板減少性紫斑病とは異なり、わずかに隆起しているのも特徴で、「触れることができる紫斑」と呼ばれています。紫斑の形は点状のものから不整形のものなどさまざまで、新しいものと古いものが混在します。

通常、毛細血管になる前に存在する細静脈を中心に血管が炎症を起こしますが、放置したままにしておくと、大動脈の血管壁が薄くなり、そこから大量に血液成分が漏れ、強いむくみが出現することもあります。

腹痛も半数ほどの発症者に認められます。腸管内の血管透過性の高進によるむくみや、腸管内の血管の炎症が原因で、しばしば血便や便潜血も認められます。

腹痛は嘔吐(おうと)を伴う激しいものであることも少なくなく、紫斑が起こる前に腹痛が起きたケースなどでは、虫垂炎や腸重積、腸閉塞(へいそく)などの内臓疾患が疑われることもあります。腹痛がひどく、日常生活を行えないレベルのものであれば、入院して治療を受けることが必要になります。

関節炎、関節痛もおよそ3分の2の発症者にみられます。足の関節、手の関節に起こることが多く、股(また)や肩の関節には普通起こりません。関節炎を起こすと、その部分ははれ、痛みのため動かすのも苦痛になります。痛みで歩くことができなくなることもしばしば起こり、日常生活が困難になった場合にも、入院して治療を受けることが必要になります。

局所的な大きなむくみも、顔、体、手足、陰嚢(いんのう)などに痛みを伴って現れますが、発赤はみられません。

さらに、尿の異常が半数の発症者に認められ、血尿、蛋白(たんぱく)尿が現れます。紫斑病性腎炎を合併する率が高いため、定期的に尿検査をする必要が生じます。腎炎の多くは軽症ですが、中には急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしたり、慢性の腎不全に陥るケースもあります。

血管性紫斑病の検査と診断と治療

血管性紫斑病を発症した時に受診する診療科としては、小児の場合はやはり小児科が適しています。小児科医にとって、この疾患はポピュラーなものであり、症状を見れば容易に判断が付きます。

紫斑病性腎炎が出現し、蛋白尿が悪化した場合には、小児腎臓医に相談するのがよいでしょう。専門の機器、専門の治療方法を有した病院の専門の医師に診てもらうことは、小児が成人した後の将来を見据えた治療につながります。

成人が行く診療科としては、皮膚科、内科のほか、皮膚泌尿器科も適しています。皮膚泌尿器科とは、本来別々であった皮膚科と泌尿器科が一緒になったもので、性感染症などが両科にまたがることから標榜されるようになったようです。血管性紫斑病は皮膚症状のほかに、泌尿器科の分野である腎炎の症状もしばしば伴うので、長期に渡って経過を観察しなければならないことも考慮して、皮膚泌尿器科で診てもらうのもよいかもしれません。

血管性紫斑病を根本的に治療する薬剤や方法は、現状ではありません。急性期は安静を保つことが大切で、症状に見合った対症療法が中心となります。

紫斑は動きの激しい部分にできやすいので、軽い運動制限をすることもあります。腹痛が強い場合は、入院治療をすることが多くなります。腹痛の急性期には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤が有効で、消化管からの吸収は期待できないため、静脈内に投与し、症状の改善を図ります。

また、関節炎、関節痛で歩行困難を来した場合も、入院治療が必要となります。関節の炎症や痛みには、経皮鎮痛消炎剤や、作用の穏やかな解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンを投与し、症状の改善を図ります。

合併した紫斑病性腎炎で血尿が出たり、蛋白尿が出たりということは珍しくなく、多くは治療しなくても、徐々にその症状も消失していきます。ただ、急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしている重症の場合は、ステロイドパルス治療などを行います。また、急激に症状が悪化しなくても、数カ月~数年経ってから慢性の腎不全を起こすこともあるので、定期的な検査が必要となってきます。血管性紫斑病は腎臓の機能の経過を見るという点でも、完治までに時間のかかる疾患だといえます。

血管性紫斑病の薬物治療を長期に渡って行うことになった場合、小児慢性特定疾患という医療費の補助を受けることもできます。補助を受けられる診断基準などを地域の保健所に問い合わせてみるとよいでしょう。

🇨🇿月経痛

●女性の誰にでもある月経痛

 「月経痛」は、程度の差こそあっても、ほとんどの女性が悩まされるものです。月経が始まる2〜4日前から月経中にかけて起こる下腹痛、腰痛、頭痛、下痢などの症状を総じて、月経痛と呼びます。多くの人の場合、月経が始まった1〜2日目が痛みのピーク。

 月経とは、卵巣から出るホルモンの働きにより、子宮の内側にある子宮内膜がはがれ落ちて起こる出血のこと。毎月、一定の周期で行われ、卵子が受精しなかったために、不要になった子宮内膜がはがれ、子宮口から血液とともに排出されます。

 この月経時には、プロスタグランディンというホルモンが子宮内膜で作り出され、子宮の筋肉を収縮させて、子宮内にたまった月経血の排出を促す働きをします。本来、プロスタグランディンとは、出産に際して大量に分泌されて陣痛を起こすものであり、子宮はたとえ妊娠していなくても、出産用のホルモンの分泌により、毎回、陣痛のような収縮を行っているのです。

 月経に際して、このプロスタグランディンの分泌量が多いと、子宮の収縮が強くなり、月経痛がひどくなります。不規則な生活やストレスによって、ホルモンのバランスが乱れたり、骨盤内の血液循環が悪くなると、症状が重くなるケースもあります。

 また、夏より冬のほうが、月経痛が激しくなります。月経痛は子宮の収縮によって起こるもので、子宮は筋肉でできています。寒い冬は筋肉が縮こまり、体がスムーズに動くのに時間がかかるのと同じような原理で、子宮の動きも収縮がスムーズにゆかず、痛みを強く感じるのです。加えて、冬は毛細血管まで血液が届くのが遅くなり、体が冷えると痛みが起こりやすくなります。

 女性が一度出産すると、子宮の入り口が広がって、月経血がスムーズに出やすくなるため、月経痛が軽くなる人がほとんどです。妊娠、出産経験のない若い女性は子宮口が狭く、血液がスムーズに流れないと下腹痛、腰痛などの月経痛が生じます。20代後半からの痛みは、子宮内膜から出るプロスタグランディンが体質的に多いことが挙げられます。

●月経痛から考えられる病気

 月経が始まると、下腹痛や腰痛を伴う人は多いもので、中には、頭痛や吐き気を伴う人もいます。これらの症状が寝込むほどに重く、家事や仕事ができなくなるなど、日常生活に支障がある場合を、「月経困難症」といいます。

 月経困難症には、特に原因となる病気がない「機能性の月経痛」のケースと、骨盤腔内に隠れている病気が原因となる「器質性の月経痛」のケースとがあります。同じ月経困難症でも、器質性の月経痛には注意が必要です。引き起こす病気としては、子宮筋腫(きんしゅ)、骨盤内の炎症、子宮内膜症、卵巣嚢腫(のうしゅ)などが考えられます。

現在、毎月、耐えられないほどの月経痛に悩んでいる人は、子宮の収縮からくる機能性の月経痛なのか、器質性の月経痛なのか、婦人科医に相談してください。以前の月経時と比較して、痛みが強くなったり、出産後に症状が重くなったという人も、婦人科を受診して、検査を受けましょう。

 医師の側では、原因となる病気が見付かれば、その治療を行います。特に原因となる病気がなければ、鎮痛剤、漢方薬、ピルなど、体質や副作用を考慮した上で、受診者に適した内服薬を処方します。

 「毎回の月経痛はつらいけど、薬を飲むと体によくないのでは?」などと、薬を飲むことに抵抗があり、ためらってしまう人も、少なくないようです。しかし、用法と用量を守って正しく飲めば、心配ありません。

 むしろ「また、あのつらい症状に悩まされる」という恐怖心や、ストレスで痛みが増すこともありますから、あまり我慢しないほうがいいでしょう。症状を和らげるための鎮痛剤や漢方の服用で、痛みを緩和するのは、問題ありません。ピルなどで排卵を抑えることにより、痛みがとれる場合もあります。

 薬を服用する際は、痛みが軽いうちに飲むのがコツです。自分の月経痛が起こるパターンがわかっている人なら、痛みが出る前に飲んでもいいでしょう。

 市販の薬が効かない時や、薬を飲む量が次第に増している時は、婦人科を受診したほうがよいでしょう。

●月経痛を乗り切る方法と予防法

 月経痛とは、女性としての機能がちゃんと働いている証として、上手に付き合いたいものです。

 月経中は心も体もブルー。ふだんより、睡眠をたっぷりとりましょう。月経痛が激しい時には、楽な姿勢で睡眠をとるのが一番です。横向きに寝て、お腹にクッションを抱えるようにすると楽になる、という人が多いようです。  

 とにかく、月経中は無理をせずに、リラックス。血行を妨げるようなキツイ服装はやめましょう。薄着や冷たいものの取りすぎも、禁物です。月経時の基礎体温は低温期で、体が冷えて血行が悪くなっているところに、さらに体を冷やせば、痛みを強く感じやすくなるからです。

 温かい下着を身に着けたり、冬なら使い捨てカイロなどで、おなかや腰を温めると、楽になります。足浴で下半身を温めるのも、痛みを和らげる良案です。

 残念ながら、月経痛を軽くする食品はありません。ふだんから、バランスのよい食事を取るように心掛け、血液となる食べ物を意識して取るのもよいでしょう

 血行をよくするビタミンE、月経血を抑える働きをするマンガン、貧血に効く鉄分にビタミンCをプラスして、鉄分の吸収率を高めましょう。

ビタミンEを多く含む食品

アーモンド、ごま、かぼちゃ、サフランなど

マンガンを多く含む食品

アーモンド、ほうれん草、アサリなど

鉄分を多く含む食品

干しえび、海苔、昆布、ひじき、レバー、卵黄、にんにく、ごまなど

ビタミンCを多く含む食品

緑黄色野菜、果物、緑茶など

 また、便秘や排便痛といった症状がある人は、食物繊維を取りましょう。辛いものやアルコールは、痛みが強くなることもあるので、控えめに。

 ストレスをためないことも大切。入浴、アロマ、好きな音楽を聴くなど、自分に適したリラックス方法を見付けましょう。適度な運動やストレッチを行って、気分転換をはかるのもよいでしょう。骨盤の血液の流れをよくするので、痛みも和らぎます。

🇱🇮月状骨軟化症

手首を構成する骨の一つである月状骨が壊死する疾患

月状(げつじょう)骨軟化症とは、手首を構成する8個の骨の一つである骨に、血流障害による壊死が起こる疾患。キーンベック病とも呼ばれます。

1910年、キーンベックによって初めて報告されました。月状骨は、手首(手関節)を構成する8個の小石のような骨(手根骨)のほぼ中央に位置します。つまり、周囲がほぼ軟骨に囲まれていて血行が乏しいために、血流障害に陥って壊死を起こしやすく、つぶれて偏平化します。体の中で、このような血流障害による壊死を起こしやすい部位は、ほかに大腿(だいたい)骨頭が挙げられます。

月状骨軟化症はバドミントン、テニスなどの手首をよく使うスポーツで発症することが多く、捻挫(ねんざ)や打撲などの軽微な外傷を切っ掛けに発症することもあります。職業的には工員、大工、農漁業など手をよく使う20、30歳代の男性に多く発症します。明らかな外傷や職歴のない女性、高齢者に発症することもあります。

何らかの原因で月状骨への血行が絶たれて発症すると考えられていますが、根本的な原因は不明です。

一説には、手首の使いすぎ、軽微な外傷の繰り返しなどが月状骨に損傷を起こし、血行障害に陥った骨では修復能力が乏しいため、次第に偏平化を引き起こすと考えられています。また、肘(ひじ)と手の間に位置する前腕に2本ある骨、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の長さのバランスの違いにより、手関節内の月状骨にかかる圧力が強くなる場合に、発症しやすいと考えられています。

主な症状は、手首を動かしたり力を入れた時の痛みや、はれ、握力の低下、手首の動きの制限。壊死が進行すると、痛みのために手関節の変形性関節症の状態になり、日常生活で多大な不自由を生じるようになります。

10歳代前半で発症した場合などは自然治癒も期待できますが、成人では完全な治癒は期待しにくく、壊死が進みます。しかし、手首の使いすぎを抑えるとともに、痛みが落ち着いてくることもあります。

整形外科の医師による診断では、X線検査で月状骨に輝度変化が生じていたり、硬化像、偏平化が認められれば確定できます。MRI検査をすれば、より詳しい状況がわかります。

治療法は、症状、年齢などによって変わります。初期や痛みが強い時には、ギプス、装具などで固定を行い、しばらく安静にします。治らない時には、進行度などに応じていろいろな手術が行われます。月状骨にかかる力を減らして痛みを緩和するために橈骨短縮骨切り術や、部分手関節固定術が行われたり、手首のそばから血管や、血管をつけた骨を月状骨内に移植する方法なども行われます。

末期では、壊死した月状骨を隣の舟状骨、三角骨とともに切除する近位手根列切除術などが行われます。変形性関節症が生じた場合は、手首が動かないように固める全手関節固定術などが行われます。

🇱🇮血精液症

男性の精液の中に、血液が混じる疾患の総称

血精液(けつせいえき)症とは、男性の精液の中に血液が混じる疾患の総称。

精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢(せいのう)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。精液が射精によって尿道から出てくる場合には、最初は主に前立腺からの成分で、それから精嚢の成分が出てきます。

血精液症の大多数は、原因がはっきりしません。前立腺肥大症の初期や、後部尿道炎、前立腺炎など付近の炎症や充血によることもあり、精嚢から出血することもあります。前立腺や精嚢腺の奇形、血管の異常によることもあります。 他の原因としては、外傷、結核を含めた感染症、クラミジアや淋病(りんびょう)などの性感染症、血液疾患、寄生虫、40歳以上では前立腺がん、血液凝固を抑える薬の服用などが考えられます。

ほとんどは射精痛などの自覚症状はなく、出てきた精液の中に血液が混じっていることで、偶然に気付くことがよくあります。 新鮮な血液が混じる場合はピンク色や真っ赤になり、古い血液が混じる場合は茶褐色になります。赤黒い小さな点々が混じることもあります。

出血量は微量なので、精液内に炎症を示す細胞がない限り精子に悪影響はなく、妊娠がしにくくなったり、母胎内での胎児の発育に対する影響はありません。

後部尿道炎、前立腺炎が原因の場合には、 排尿時の痛み、射精時の痛み、 頻尿、尿道の不快感、発熱などの自覚症状が出ます。

血精液症の検査と診断と治療

様子をみて、精液の中に血液が混入する状態が続くようならば、泌尿器科を受診します。

医師による診断では、直腸診、精管や精巣上体の触診、尿や精液を採取しての細菌や結核菌の顕微鏡観察、血液検査で原因を探ります。超音波やCT、MRI検査などで前立腺、精嚢腺の形態も検査します。不妊症になっている場合は、造影検査をすることもあります。

結核は前立腺などにできると、こぶのようになるので、直腸診などによって発見できます。精液のどの部分に血液が混入しているかが確認できれば、出血部位をある程度想定することは可能です。前立腺や精嚢、尿道の腫瘍(しゅよう)も調べ、高齢者では前立腺がんなどの悪性腫瘍との関連も調べます。悪性腫瘍が血精液症の原因になっている例はまれなものの、可能性はあります。

一連の検査で尿や精液に異常のないことが確認できれば、特に治療する必要もありません。大部分は2、3週間で自然治癒します。

炎症が確認された場合には、止血剤の投与、抗菌剤の投与などが行われます。短期間の抗菌剤の投与は、精子自体の遺伝情報に影響を及ぼすことはありません。前立腺炎の治療には、主に原因の菌に対する抗生剤が使用され、治療期間は約4~12週間となります。治療期間が半年や1年と長くかかることもあります。

血精液症は一度治っても、また再発することがあります。長く続く場合には、精液内にみられる細菌を再確認する必要があります。

軽症の場合は、日常の生活で特に気を付けることはありません。2週間くらい射精を控えてみてもいいですが、それほどこだわる必要はありません。

🇱🇮結節腫

手の甲などの関節にできる良性腫瘍で、若い女性に多く発生

結節腫(しゅ)とは、手の甲などの関節にゼリー状の液体がたまり、円い結節状に膨れる疾患。ガングリオンと呼ばれることもあります。

男性より女性のほうが発症率が高く、若い女性によく発生します。症状としては、手の甲、手のひら、手首、足首、足底、ひざなどの皮下の関節包、腱鞘(けんしょう)に付着して、こぶ状の腫瘍(しゅよう)ができます。痛みはないことが多く、腫瘍の中にはゼリー状の内容物が入っています。腫瘍の大きさは、米粒大から小豆大までさまざま。

腫瘍の内容物は脂肪や線維質などで、皮膚を通して腫瘍に触れると、ゼリー状の内容物が入っているとは思えないほどカチカチに硬いことが多くなっています。

原因は不明ですが、良性の腫瘍であり悪性になることはありません。悪性ではないので放置してもかまわないものの、手首などにできると人目について目立つことがあります。肥大した腫瘍が神経や腱を圧迫して、痛みが出ることもあります。

結節腫の検査と診断と治療

結節腫(ガングリオン)によるこぶ状の腫瘍が自然に小さくなることは、かなりまれなことです。腫瘍が目立ったり、痛みが出た場合は、整形外科の専門医を受診します。

医師による治療には、注射で腫瘍中のゼリー状の内容物を抜く方法と、手術で腫瘍そのものを摘出する方法とがあります。

手術が嫌いな人には、太めの針の注射器でゼリー状の内容物を穿刺(せんし)吸引すれば、しぼみます。ただし、この方法だけではいずれまた、はれてきます。 注射器による穿刺吸引を繰り返すと、感覚障害や運動障害を残すこともあります。

再発を繰り返す場合には、手術による腫瘍の摘出が必要です。しかし、手術においても、腫瘍が関節や腱に付着し、その根元が深かったり、小さな腫瘍がたくさん付属していることがあるため、切除して摘出するのはそう簡単ではありません。熟練した医師によって丁寧に行われないと、再発しやすいものです。

肥大した腫瘍が神経や腱を圧迫して痛みがある時も、手術で摘出することが望まれます。

🇨🇭結節性紅斑

皮膚の下に硬いしこりのある紅斑ができる炎症性の疾患

結節性紅斑(こうはん)とは、皮膚の下に硬いしこりのある紅斑ができる炎症性の疾患。病理学的には、皮下脂肪組織を中心とする炎症です。

若い成人、特に女性が最も発症しやすく、数カ月から数年に渡って繰り返し再発します。細菌、ウイルス、真菌などの感染アレルギーが、主な原因と考えられています。そのほか、サルファ系抗菌薬や経口避妊薬などの薬剤によるもの、内臓の悪性腫瘍(しゅよう)、ベーチェット病、結核、サルコイドーシス、クローン病などに伴うものがあります。

円形ないし不規則形の紅斑が主にむこうずねに現れ、徐々に赤色から青みがかった茶色へと変化するところは、はれ物やあざに似ています。圧痛を伴い、時には何もしなくても痛みます。重症の場合は、紅斑が太ももや腕にまで広がることがあります。通常、数日から数週間で、紅斑、圧痛、しこりは消えます。繰り返して発症しますが、それ以上悪化することはありません。症状が出る時には、発熱や関節痛、全身の倦怠(けんたい)感を伴うこともあります。

結節性紅斑の検査と診断と治療

類似の症状を示す疾患が多数あるので、皮膚科専門医を受診し、皮膚生検により確定診断を受けることが勧められます。

医師は、皮膚を数ミリ切り取って調べる検査である皮膚生検を行い、皮下脂肪組織を中心とする炎症であることを確認します。病理組織学的な特徴から、バザン硬結性紅斑、結節性多発動脈炎、スウィート病、深在性エリテマトーデス、ウェーバー・クリスチャン病などと区別します。血液検査では白血球の増加、赤沈やCRPなどの炎症反応の高進がみられます。

治療では、ベッドで安静にしていることが最も重要です。薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤やヨウ化カリウムの錠剤の内服が一般的ですが、重症例では副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の内服も行われます。原因となる薬剤がある場合は、その使用を中止します。感染症など基礎疾患がある場合は、その治療を行います。

🇨🇭結節性多発動脈炎

全身の中小動脈に炎症が起こる疾患

結節性多発動脈炎とは、全身の中小動脈の動脈壁に炎症が起こる疾患。中小動脈に血管炎が起こる本症と、細小動脈から静脈に血管炎が起こる顕微鏡的多発血管炎とを併せて、結節性動脈周囲炎とも呼ばれます。

膠原(こうげん)病の中でも非常にまれで重い疾患といえ、全身の諸臓器に分布する中小動脈に血管炎が生じるため、多様な症状を示します。ほかの膠原病が女性に多くみられるのと異なり、やや男性に多く、通常中年から壮年に発症します。日本では、国の特定疾患(難病)に指定されています。

原因は不明です。B型肝炎ウイルスやヘアリーセル白血病、大気汚染などの関与が、示唆されています。初発症状としては、高熱が出て、関節痛、筋肉痛が起こり、体重減少、全身の消耗がみられます。

侵される血管の部位によって、引き起こされる障害は異なります。皮膚の場合は、結節性紅斑(こうはん)や紫斑、潰瘍(かいよう)、時に指先に壊疽(えそ)が起こることがあります。心臓の場合は、狭心症や心筋梗塞(こうそく)が起こります。腎(じん)臓の場合は、高血圧、腎不全が起こります。腸管の場合は、激しい腹痛、嘔吐(おうと)、下血などがみられます。神経の場合は、末梢(まっしょう)神経障害が起こります。筋肉の場合は、筋肉痛の原因となります。目の場合は、黒内障といって突然失明することがまれにあります。

結節性多発動脈炎の検査と診断と治療

結節性多発動脈炎はまれな疾患ながら、生命や臓器不全の危険性があるので、専門医の意見を聞いて入院治療を受けることが重要です。早期診断、早期治療が望まれますので、膠原病内科、腎臓内科などを受診します。

血液検査によって、血管の炎症の程度を調べます。皮膚や筋肉などの生検、血管造影、障害が起こっている臓器を調べる検査なども、診断のために重要です。区別すべき疾患は、顕微鏡的多発血管炎など他の血管炎および膠原病です。

治療には、高用量の副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)と免疫抑制剤が用いられます。重篤な臓器病変が生じたら、それに応じた治療も行われます。腎臓が侵されやすく、腎不全では人工透析が行われます。心筋梗塞では、冠動脈形成術も行われます。

🟥COP30、合意文書採択し閉幕 脱化石燃料の工程表は見送り

 ブラジル北部ベレンで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)は22日、温室効果ガス排出削減の加速を促す新たな対策などを盛り込んだ合意文書を採択し、閉幕した。争点となっていた「化石燃料からの脱却」の実現に向けたロードマップ(工程表)策定に関する直接的な記述...