2022/08/13

🇧🇬軽度認知障害

認知症になる前の段階で、健康な状態と認知症の中間にある状態

軽度認知障害とは、認知症になる前の段階で、健康な状態と認知症の中間にある状態。つまり、認知症ではないものの、全く健康でもない状態です。

老化に伴う物忘れよりは記憶障害が進んでいますが、それ以外の認知機能障害は現れておらず、日常生活にも支障を来していません。

認知症になる前の段階といっても、軽度認知障害の人が将来、必ず認知症になるとは限りません。そのまま治療を受けなくても、半数は認知症にならないといわれています。逆にいえば、何もしなければ、半数の人は認知症になるわけであり、将来、認知症を発症する可能性のある予備軍といえます。

発症する可能性のある認知症は、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく変性性認知症で、最も多いアルツハイマー型認知症のほか、レビー小体型認知症、前頭・側頭型認知症が相当します。

65歳以上の高齢者で、アルツハイマー型認知症などさまざまな認知症の人は約462万人おり、これに対して軽度認知障害の人は約400万人いると推計されています。

軽度認知障害の診断は、現状では医療機関への受診が必要なため、「最近物忘れがひどくなった」という状態では受診しない人が多くを占めます。

しかし、最近の研究では、軽度認知障害の人が適切な治療を受ければ、認知症の発症を防いだり、発症を遅らせたりできることがわかってきています。早期診断で軽度認知障害が発見されれば、一生、認知症にならなくてもすむかもしれないので、早めに精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師に相談することが勧められます。

軽度認知障害の検査と診断と治療

精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師による診断では、まず記憶テストや問診などを行います。ここで軽度認知障害と診断されれば、脳血流シンチを使用して脳の血流を測定し、アルツハイマー型認知症などさまざまな認知症かどうかを判断します。

脳血流シンチは2002年ごろから使われ始めた精密診断機器で、注射によって体内に放射性同位元素を微量注入し、その後の脳の血流の様子をシンチカメラで撮影するものです。アルツハイマー型認知症では典型的な脳の血流低下がみられますので、ここで判断することができます。

精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師による治療では、場合により、脳の代謝をよくする薬や、アルツハイマー型認知症の治療薬であるドネペジル(製品名:アリセプト)を使用します。

軽度認知障害の段階でドネペジルを使用すれば、アルツハイマー型認知症の進行の抑制期間を長引かせる可能性が高くなります。

軽度認知障害から認知症への進行を防いだり、遅らせるためには、趣味を楽しんだり、人と話したりして、脳を活性化することが有効です。また、食生活の改善や運動不足の解消など、ライフスタイルを見直すことも大切です。

🇧🇬頸部脊柱管狭窄症

頸部の脊柱管が狭くなり、中の脊髄や神経根が圧迫される疾患

頸部脊柱管狭窄(けいぶせきちゅうかんきょうさく)症とは、頸椎(けいつい)を上下に貫いている頸部脊柱管が狭くなり、脳から続く脊髄などが圧迫を受け、腕のしびれなどの症状がみられる疾患。頭部脊柱管狭窄症とも呼ばれます。

頸部脊柱管狭窄症は、加齢に伴って起きるため高齢者に多いのが特徴です。頸椎の老化や酷使、炎症、外傷などのために頸椎のクッションの役割を果たしている椎間板が傷んだり、頸椎の骨自体が変形したり、脊柱管の周りにある靱帯(じんたい)が肥厚したりするために脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から枝分かれしていく神経根が圧迫を受けます。また、生まれ付き脊柱管が狭い人の場合、加齢に伴う圧迫が容易に起こるため、30~40歳代で発症することもあります。

症状は、四肢のしびれや痛み、筋力低下などで、脊髄が圧迫されることによるまひが強い場合は、はしがうまく使えないなどの指先での細かい動作の障害、階段の上り下りが不安定などの歩行障害が顕著になります。 悪化すると、排尿障害、排便障害、知覚障害を起こす可能性があります。

症状に心当たりがある場合は、正確な状態を把握をするために整形外科の専門医を受診し、検査をしてもらうことが大切です。

医師による診断では、頸椎の動きや状態、歩き方などを見ます。また、X線、CT、MRIなどの画像による検査で、狭窄している部位の特定などを行います。

軽いしびれなど症状が軽い場合は、安静、薬剤の投与、神経ブロック注射、コルセットの装着、首の牽引(けんいん)療法などにより、症状の改善を図ります。

四肢のまひのため日常生活に障害がある場合、神経のまひ症状が重篤で排尿・排便困難を伴う場合は、手術を行って脊髄、神経根を圧迫している原因を取り除き、症状の軽快や進行予防を図ります。脊柱管狭窄を生じている頸椎はすでに変形しているわけで、これを元の健常な状態に戻すいかなる方法もありません。

手術後は脊髄、神経根のはれを抑えるため、短期間、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を点滴します。一般的には、手術後約3週間で、頸椎装具を装着して歩行が可能になり、頸椎装具は約3カ月間装着します。状態がよければ、手術後できるだけ早くリハビリなどで機能訓練を行います。

後遺症として、脊柱管の狭窄による脊髄や神経根の圧迫がひどく、一部回復できなくなっているような場合は、しびれ、まひが残ります。そのほか、手術により持病の悪化、高齢者の場合は認知症(痴呆〔ちほう〕症)の出現や増悪、肺炎や膀胱(ぼうこう)炎などの併発、床擦れなどが生じる場合もあります。

🇭🇺頸部内頸動脈狭窄症

頸動脈から分枝する内頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が細くなる疾患

頸部内頸動脈狭窄(けいぶないけいどうみゃくきょうさく)症とは、心臓から脳に向かう左右2本の頸動脈から分枝する内頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が細くなる疾患。内頸動脈狭窄症とも呼ばれます。

左右に1本ずつある太い頸動脈は、あごの下の高さで、大脳に血液を送る内頸動脈と、顔面や頭皮に血液を送る外頸動脈に分かれます。この分岐する部分では、狭窄が好発します。

この狭窄の原因としては、動脈硬化が最も多く、狭窄によって血液が流れる道が細くなって血液の流れが妨げられると、遠位部の脳への血流が不足するために症状が生じることがあります。主な症状は、左右どちらかの半身の運動障害や知覚障害、言語障害、顔面下半分のまひで、立ちくらみ、揺れるようなめまいなどを覚えることもあります。

また、狭窄部で血液の流れが乱れることによって血の塊である血栓が形成されると、血栓がはがれて遠位部の脳に飛び、細い血管に詰まって閉塞(へいそく)させたりして、症状が生じることがあります。

症状は障害の部位や程度によりさまざまで、一過性視力障害、一過性脳虚血発作など一時的な症状を起こして回復する場合と、脳梗塞(こうそく)を起こす場合があります。脳梗塞を来すと、その部位に応じた運動まひ、知覚障害、言語障害、視機能障害、高次機能障害などを示し、重症の場合には寝たきりや植物状態、さらには生命の危険を生ずることがあります。

近年、食事摂取の欧米化で、日本人の血清コレステロール値は米国人と同じレベルに増加しています。この結果、比較的大きい血管の動脈硬化による疾患が増加しつつあり、その中でも内頸動脈は最も影響を受けやすく、動脈硬化が進行した場合、狭窄や閉塞を来すこともあります。

頸部内頸動脈狭窄症の急性期には、症状の進行や脳梗塞の再発が多いため、症状に気付いた場合にはすぐに神経内科、ないし脳神経外科を受診することが重要です。最近では、脳ドックや他の疾患の検査などの際に、症状が出る前に頸部内頸動脈狭窄症が発見されることも多くなっています。

頸部内頸動脈狭窄症の検査と診断と治療

神経内科、脳神経外科の医師による診断では、首に超音波を当てて診断する頸部血管ドップラー検査、CTやMRIによる血管の検査で容易に確定されます。近年では、狭くなった部位の診断やその程度のほか、動脈硬化の性質、血流の早さなどの質的診断も行え、よい治療方法が選択できるようになりました。

治療上必要な場合は、内頸動脈を直接レントゲンで撮影する血管撮影が行われます。また、血液が到達する脳の状態を調べるため、脳のMRIや核医学による脳血流検査なども行われます。さらに、心臓などほかの血管に、同じような疾患がないか調べることも重要です。

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神経内科、脳神経外科の医師による治療では、禁煙、運動療法、食事療法などに加え、高血圧、高脂血症、糖尿病に対する薬による内科的治療が基本となります。これに加えて脳梗塞を予防するために、軽度から中等度の頸部内頸動脈狭窄症では、血液の流れをよくする抗血小板療法の薬が追加されます。

内頸動脈の狭窄が強くなった場合には、その程度により手術、ないし血管内治療が追加されます。内頸動脈狭窄のみが発見されて、脳の症状がなく内頸動脈の狭さが60パーセント以上の場合は、脳神経外科医により手術で内頸動脈の病変を摘出することが脳梗塞を予防するためによいとされています。一方、脳の症状がある場合の手術の基準は70パーセントの狭さに上昇し、手術により脳梗塞が拡大することを防止します。

この脳神経外科医による手術法は、長年に渡って世界中で行われ、多くの結果が蓄積された結果、現在の基準が確立されました。

血管内治療は新しい治療法で、太ももの付け根から血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これを内頸動脈の狭窄した部位に誘導します。ここでカテーテルの先についたバルーンと呼ばれる風船を広げ、網目状に血管の中で拡張し、内頸動脈の内側を適切な太さに保つステントと呼ばれる形状記憶合金で作られた機器を留置してきます。

この治療法は歴史が浅いため、病変を直接取り除く手術のリスクが高いと思われる場合や高齢者の場合などに行われています。

🇧🇬けいれん性便秘

腸の運動が活発になりすぎることで、腸がけいれん状態に陥って起こる便秘

けいれん性便秘とは、大腸が便を押し出す蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋の伸び縮みが活発になりすぎ、腸がけいれん状態に陥っていることから起こる便秘。特に男性に多い便秘です。

便秘は通常、排便回数が少なくて、3日に1回未満、週2回未満しか、便の出ない状態です。

便が硬くなって出にくかったり、息まないと便が出なかったり、残便感があったり、便意を感じなかったり、便が少なかったりなど多様な症状も含みます。便の水分が異常に少なかったり、うさぎの糞(ふん)のように固い塊状なら便秘です。

排便があっても、便の量が少なく、うさぎの糞のように固い塊状の便、あるいは細い便となるのが、けいれん性便秘の特徴です。

けいれん性便秘は、精神的なストレスや、感情の高まり、生活習慣の乱れ、睡眠不足が原因となって、自律神経のアンバランス、特に副交感神経が緊張しすぎることにより便秘が起こるものです。大腸の蠕動運動が活発になりすぎて、下行結腸にけいれんを起こした部位が生じ、その部位が狭くなって、便の正常な通過が妨げられます。

けいれんを起こした部位の上部は腸の圧力が高くなるため、腹が張った感じがして、不快感や痛みを覚えます。

排便後には少しは気持ちがよくなりますが、十分に出切った感じがなく、すっきりしないなど、残便感を生じる人が多いようです。

便秘の後に、腸の狭くなった部位より上のほうで水分の量が増えるため、水様の下痢を伴うこともあり、便秘と下痢を交互に繰り返す場合もあります。頭痛、めまい、不眠、動悸(どうき)などの自律神経症状を伴う場合もあります。

けいれん性便秘をほうっておくことで、腹部の不快感や腹痛を伴って便秘や下痢が長く続く過敏性腸症候群という、さらに重く、日常生活にも支障を来す便秘になる場合もあります。

けいれん性便秘は男性に多い種類の便秘なのですが、近年では女性でもかかるケースが増えています。女性も社会に出て、精神的なストレスを感じる機会が多くなった反動といえるかもしれません。

ストレスを感じているような自覚がなかったとしても、けいれん性便秘に当てはまる症状が出ている場合は、肛門(こうもん)科、消化器科、婦人科、あるいは心療内科を受診することが勧められます。

けいれん性便秘の検査と診断と治療

肛門科、消化器科、婦人科、心療内科の医師による診断では、問診による病歴の聞き取りと腹部の触診が重要です。腹部の触診では、腹部腫瘍(しゅよう)の有無、腹筋の筋力をチェックしますが、けいれん性便秘では、特に左下腹部に圧痛を認めることが多く、時に圧痛のあるS状結腸を触知することがあります。

直腸の指診では、肛門部病変、肛門と直腸の狭窄(きゅうさく)あるいは腫瘍、直腸内の便の有無、便の潜血反応を調べますが、けいれん性便秘では、直腸内に便を触れません。

通常の検査として、検便、検血、腹部X線(レントゲン)検査を行い、便秘が持続していたり腹痛がある場合には、肛門から腸の中に軟らかい造影剤を注入してX線撮影をする注腸造影、あるいは大腸内視鏡検査を行い、大腸の働きが活発化していることを確かめます。

腹部腫瘍、イレウス(腸閉塞〔へいそく〕)などが疑われる場合には、腹部超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。

さらに、問診で、要因となる自律神経症状や精神神経症状の有無、精神的ストレスの関与を確認します。性格・心理テストを行って、診断の決め手とすることもあります。

肛門科、消化器科、婦人科、心療内科の医師による治療では、生活指導、食事指導、薬物療法、心身医学的治療が基本になります。精神的なストレス、不規則な生活、睡眠不足、慢性疲労の蓄積、睡眠不足など、けいれん性便秘を悪化させる要因が日常生活の中にあれば改善を試みます。

症状を悪化させる大量のアルコール、香辛料などの摂取は控え、便秘または下痢どちらのタイプにも有効な食物繊維は積極的に摂取することを勧めます。

薬物療法が必要な場合は、便の状態を調整する薬剤(ポリカルボフィルカルシウム)、腸管運動機能調節剤、漢方薬などをまず投与します。便秘に対して緩下剤、腹痛に対して鎮けい剤、下痢に対して整腸剤や乳酸菌、セロトニン受容体拮抗(きっこう)剤、止痢剤を投与することもあります。

緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤や、水分を吸収して便が膨張する膨張性下剤を主体として使用します。センナ系、漢方などの速効性の刺激性下剤は、できるだけ常用しないように心掛けます。刺激性下剤を常用すると、次第に腸が下剤の刺激に慣れて効果が鈍くなり、ますます便秘が悪化することがあるためです。

自律神経失調症が認められる場合は自律神経調整剤、精神症状の強い場合は抗不安剤や抗うつ剤、睡眠剤などの併用を考慮します。心身医学的治療としては、精神療法、自律訓練法、認知行動療法などを行います。

🇭🇺ケーラー病

足の中央部にある舟状骨が変形して、痛みが生じる第一ケーラー病

ケーラー病とは、足の骨が変形して、痛みを生じる疾患。第一ケーラー病と第二ケーラーとがあり、ともに成長期の子供の成長軟骨に障害が起き、痛みを伴う疾患である骨端(こつたん)症、いわゆる成長痛の一つです。

第一ケーラー病は、足の中央部にある舟状骨が変形して、痛みを生じる疾患。幼児、小児期にみられ、特に4歳から7歳くらいの男児に多くみられます。

1908年に、ドイツのケーラーによって初めて報告されました。持続的な負荷がかかるなど何らかの原因で、舟状骨への血行障害が生じると、骨自体の組織が壊死(えし)するために変形して、偏平化します。両足に発生する例が約3分の1にみられ、症状に左右差があることも多くみられます。急性に発症することはまれで、慢性に経過することが多い傾向にあります。

土踏まずに痛みが生じ、はれることもあります。そのため、足の外側に体重を掛けて歩くために歩き方がおかしい、歩きたがらないといった症状を示します。しかし、足の形は正常で、関節の動きは障害されませんが、足首の内返しによって痛みを訴えることもあります。

多くの例では、1~2年後に自然経過で元の通りに戻ります。舟状骨が足の骨の中でも重要な役割を持っているため、歩行障害を生じることもあります。

成長期の子供に足の痛みの訴えがある場合は、小児整形外科を受診し適切な治療や経過観察を受けるべきです。

医師による診断では、X線写真を撮ると舟状骨の偏平化が見られます。リウマチ性疾患、捻挫(ねんざ)、骨髄炎との鑑別が必要ですが、X線像から区別は容易です。

治療では、軽度の場合、中足部にパッドを着けた厚い中敷きを作って靴に入れ、舟状骨、土踏まずへの体重負荷を減らして痛みを軽くし、他の疾患がないか時々X線写真で確認します。室内では自由に歩行して差し支えありませんが、激しい運動や、長距離の歩行などは控えめにします。

一般に予後は良好で、数カ月から数年で痛みもX線写真上の変化も消え、後遺症は残りません。万一、痛みが残った場合には別の疾患を考える必要があります。

痛みが強い場合、歩行用ギプスで3~6週間安静を保ちます。その後は軽度の場合と同様、靴の中敷きを用います。

思春期ころに多くみられ、足指の付け根部分の骨が壊死する第二ケーラー病

第二ケーラー病は、足の中足骨(ちゅうそくこつ)の骨頭部の組織が血液の循環障害により壊死し、痛みが起こる疾患。フライバーグ病とも呼ばれます。

骨端症の多くは男子に現れますが、第二ケーラー病に関しては女子に多くみられます。好発年齢は12~18歳の思春期ころで、女子は男子より3~4倍ほど多くなっています。

足の第2中足骨に最も多く起こる傾向があり、次いで第3中足骨に多く起こります。第2中足骨に多く起こるのは、中足骨の中で最も長いため、靴を履くことによって長軸上のストレスがかかりやすいためと思われます。足の両側に起こる例が、10パーセント程度にみられます。

症状の最初は、運動をすると足の前の部分の不快な感じがあり、体重が掛かると痛みが出ます。数年間、無症状の時期があり、運動を機に痛みが再発します。中足骨の骨頭部がある足指の第2指(中指)や第3指(薬指)の付け根を押すと痛みがあり、はれが出ることもあります。進行すると、歩く際の踏み返しの時に足指の付け根の関節に痛みがあるため、その部位への荷重を避けた歩き方になります。関節の可動域制限もあります。

外傷に続発することもありますが、発症の原因にはいろいろな説があり、確定したものはありません。靴幅の狭いシューズを長期間使用することで、持続的な負荷がかかって中足骨の骨頭部への血行が一時的に障害されて生じるともいわれています。

足の部分の骨端症の中では、第二ケーラー病だけが早期診断、早期治療が重要な疾患であり、足の痛みがある場合は、整形外科を受診し適切な治療や経過観察を受けるべきです。早期より徹底した治療が行われないと関節変形を来し、痛みが残りやすいので注意が必要です。

医師による診断では、X線写真で中足骨の骨頭の部分が不規則な形をして、つぶれたり、壊れたりしている像が見られます。鑑別が重要な疾患には、中足骨疲労骨折、リウマチ性関節炎がります。

軽度の場合の治療では、足を安静に保つために、過激な運動を避けます。また、靴の中敷きに、土踏まずを高くしたアーチサポートを数年に渡って使用し、血行が再開して骨頭が修復されるまで、異常のある骨に体重がかからないようにします。一般には、2年ほどの経過でX線上の変形は治ってきます。

初期の痛みが強い場合には、3~4週間ギプスを巻いて荷重を避けた後、軽度の場合と同様の中敷きを使用します。踵(かかと)の高い靴の使用、ランニング、長時間の歩行などは厳禁です。

自然によくなる程度が少ないため、放置して関節に障害を残した例や、治療開始が遅れた例で変形が残って痛みがあれば、手術することもあります。手術には、壊死部の骨頭を切除する方法や、骨頭の付け根の部分を楔(くさび)状に切除して、骨頭を背側に回転して固定する方法などがあります。

🇭🇺劇症肝炎

急性肝不全症状を呈する疾患

劇症肝炎とは、急性肝炎の経過中、8週間以内に、精神神経症状である肝性脳症を始めとして、黄疸(おうだん)、出血傾向などの急性肝不全症状が出現する疾患です。

急性肝炎の発病10日以内に肝性脳症が出現する急性型と、11日以後に出現する亜急性型とがあり、経過は急性型のほうが良好です。その肝性脳症は、肝臓の機能の低下に伴う老廃物の蓄積により出現します。

劇症肝炎は死亡率が高く、運よく回復しても肝硬変になることが多く、非常に恐ろしい疾患。肝細胞は増殖する能力に富んでいるために、ほとんどの急性肝炎では肝細胞が壊されても自然に元の状態に戻りますが、劇症肝炎では破壊が広く及ぶために肝細胞の増殖が遅れ、適切な治療が行われないと高頻度に死に至るのです。

日本では、推定で年間約1000人、急性肝炎の発病者の1~2パーセントが劇症化すると見なされています。新生児から高齢者までのあらゆる年齢層で、男女を問わず発症します。

主な原因は肝炎ウイルスの感染で、薬物アレルギーと自己免疫性肝炎によるものもみられます。近年、もともと肝臓病以外の病気のために薬物治療を受けていた人が劇症肝炎になるケースが、増える傾向にあります。

日本では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40パーセントを占めています。これには、B型肝炎ウイルスの保菌者が発症する場合と、他の保菌者から感染して発症する場合とがあります。

A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染も頻度はわずかながら、劇症肝炎になる場合があります。E型肝炎の劇症化率は1~2パーセントですが、妊婦が発症すると、死亡率は10~20パーセントにも達すると報告されています。

B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、原因が確定できないもので、全体の約30パーセントを占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因と確定されるものは、いずれも10パーセント以下を占めるにすぎません。

肝性昏睡が劇症肝炎の特徴的な症状

黄疸が出てから1週間以上たっても強い倦怠(けんたい)感、食欲不振、吐き気、頑固な頭痛、不眠などの症状がある場合には、劇症化の恐れがあります。発熱、筋肉痛、関節痛、腰痛などの全身症状や、肝性口臭と呼ばれる甘酸っぱい口臭のあるものは、注意が必要です。

黄疸が次第に強くなり、やがて精神異常が現れ、昏睡(こんすい)に陥りますが、この状態を肝性昏睡といいます。

肝性昏睡はかなり特徴的な症状で、劇症肝炎の重篤度の指標となります。初めは睡眠のリズムが逆転し、夜は眠れなくて、昼間に眠たがります。また、性格が変わったように投げやりになる、抑うつ状態になるなどの症状があります。

この時期には、肝性昏睡と判定できないことが多いのですが、次第に日付や場所を間違う、簡単な計算ができない、金銭をばらまく、大事なものを捨てるなどの異常な行動を示します。

間もなく、羽ばたき振戦(しんせん)と呼ばれる、鳥の羽ばたきに似た手の粗大な震えが現れ、外界の刺激に応じられなくなり、眠ったような嗜眠(しみん)状態となり、ついには意識が完全に消失します。

そのほか、細菌の感染や腎(じん)臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器に高頻度に障害が次第に起こるため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔(こうくう)内や注射針で刺した部位からの出血など、いろいろな症状が次々と現れることになります。

人工肝補助療法や肝移植による治療

劇症肝炎は致命率が極めて高いので、発現が疑われたら、できる限り早期に適切な処置をすることが必要となります。

治療においては、B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、ラミブジンやインターフェロンと呼ばれる抗ウイルス療法が最も有効です。また、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因の場合は、副腎皮質ステロイドを大量に点滴するパルス療法が実施されます。これらの治療を肝性脳症が現れる前から行うことにより、劇症肝炎への進行を抑えることができることもあります。

劇症肝炎となった場合には、原因のいかんにかかわらず、肝臓の働きを補うための人工肝補助療法が行われて、血液凝固因子など体に必要な物質を補充し、アンモニアなど体内にたまった中毒性物質を取り除きます。

この人工肝補助療法には、血液から血球以外の成分である血漿(けっしょう)を取り除き、これを健康な人の血漿と交換する血漿交換と、腎臓が悪い人で行われている血液透析を応用した血液濾過(ろか)透析があります。通常は両方が併用されます。

また、全身の臓器障害に対しても、適時に治療が行われて、肝臓の機能が低下している期間を乗り切れると、肝臓が再生してくるので救命されることが可能です。通常は、すべてに後遺症を残すことなく治癒します。

各種の治療によっても肝臓の機能が回復しない場合は、肝移植が行われることになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合がありますが、日本では後者の生体部分肝移植が広く行われています。従来、生体部分肝移植は主に小児を対象に行われていましたが、近年は成人でも積極的に行われるようになりました。

肝移植により救命された後は、移植された肝臓が他人のものであるので、体から拒絶反応によって排除されないように、免疫抑制薬を一生涯服用する必要があります。

🇭🇺下駄履き骨折

足の小指の根元、甲の部分に位置する第5中足骨の基部に起こる骨折

下駄履き骨折とは、足の第5趾(し)(小指)の根元、足の甲の部分に位置する長い骨である第5中足骨(ちゅうそくこつ)の足首に近い基部に起こる骨折。第5中足骨基部骨折とも呼ばれます。

丸くアーチ状になっていて、最も足の外側にあるために地面からの力を直接受けやすい第5中足骨基部は、よく骨折を起こす部分です。骨折しても歩けることも多く、足首をひねった捻挫(ねんざ)と同じ形で受傷するので捻挫と思われがちですが、痛みのある部分や、はれのある部分が違いますので、よく観察すると区別が付きます。

下駄履き骨折による症状は、足の甲の外側や小指の付け根の強い痛み、はれ、押すと痛む圧痛、歩行障害です。一般的には、痛みがほぼなくなるには約1カ月、はれがなくなるには2~3カ月を要します。

一方、足首(足関節)の捻挫で、いわゆる靭帯(じんたい)が伸びた状態であれば数日から1、2週で痛みがなくなりますが、靭帯断裂になると1カ月以上かかることもあります。

下駄履き骨折は、かつて高下駄(げた)を履いている時に足をひねるとよく生じていました。現在は下駄を履く機会があまりありませんので、なくなったかというとそうではありません。下駄は履かなくても、裸足やサンダル履きの時、普通の靴を履いている時にも足をひねると発生することがあります。特に、厚底靴やハイヒールを履いている時は要注意です。

しかし、骨折に至っても、周辺に靭帯や腱(けん)が残存していて骨片の動きが少ないため、ある程度以上ずれることはあまりありません。比較的よく治り、ギプス装着を必要としないこともあります。骨癒合しないことがあっても、動きがほとんどないため、関節部ではないのに関節のようになる偽関節になっても、異常可動性などの症状を来すことはほとんどないとされます。

足首をひねった際には、軽い捻挫だろうと判断して我流で治療せず、早めに整形外科の医師を受診することが勧められます。

下駄履き骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、第5趾の根元、第五中足骨の基部に明らかな圧痛を認め、内反ストレス(内返し)を加えると激痛を生じます。レントゲン検査の前後像と斜位像の2方向撮影で、確定診断されます。

しかし、ずれ(転位)のないケースでは、受傷した足部の状態を再現したストレスレントゲン撮影を行わないと、骨折が発見できないことがあります。従って、自覚症状と診察所見で下駄履き骨折(第5中足骨基部骨折)が疑われる場合は、必ずストレスレントゲン撮影を行うことが大切です。

整形外科の医師による治療では、骨折部のずれが少ないか亀裂(きれつ)骨折であるため、手術の対象となる場合はまれです。骨折の状態によって、ギプス療法や長靴型の短下肢装具などの装具療法を行い、骨折部を固定して骨の癒合を経過観察します。ギプス装着の期間は1~4週間と状態によって異なり、また、取り外しができる足部だけの簡単なギプスシーネなどで固定することもあります。

ずれがなく痛みやはれが少ない場合は、湿布と弾力包帯だけを使用することもあります。厳重に固定をしなくても、骨折部の骨膜や靭帯の連続性が保たれているため、骨折部のずれが大きくなることはほとんどありません。ギプスやギプスシーネを装着しない場合の注意事項は、痛みの出る動作を極力しないことです。

一般的には、痛みがほぼなくなるには約1カ月、はれがなくなるには2~3カ月、おおよその日常動作で痛みがなくなるには2~3カ月を要します。スポーツができるようになるには5~6カ月、違和感がなくなるには6カ月以上を要します。

骨折部のずれが著明なケースでは、手術の対象とし、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を行うことがあります。

骨の癒合や症状の状況に応じて、リハビリを開始します。リハビリの内容は、ジェットバスのようなバイブラバスや電気治療、本人が行う筋力増強訓練、ストレッチングなどです。

関節の動きをよくするためには、足関節の屈伸、足指の屈伸が有効です。筋力をつけるには、歩くことのほか、つま先立ちやかかと立ちも効果があります。血行をよくするには、風呂にこまめに入ってマッサージをするのがよく、風呂に入った際に関節を動かし、つま先立ちなどをすると効果的です。

治療後にスポーツを行う人には、第5中足骨の外側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になっている足底板は、外側縦アーチにかかるストレスを小さくすることができます。足全体で体重を支えることを目的として、親指側にも足底板を追加することもあります。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...