2022/08/13

🇸🇮骨系統疾患

骨、軟骨など骨格形成に関与する組織の障害により、骨格の異常を来す疾患の総称

骨(こつ)系統疾患とは、骨、軟骨、靭帯(じんたい)など骨格形成に関与する組織の成長、発達、分化の障害により、骨格の形成、維持に異常を来す疾患の総称。

軟骨無形成症、骨形成不全症、骨軟骨異形成症、点状軟骨異形成症、先天性脊椎(せきつい)骨端異形成症、多発性骨端異形成症、骨の先天奇形である異骨症、大理石病などいろいろな疾患が骨系統疾患に含まれます。

遺伝する疾患も多く、最近では、原因となる遺伝子が見付かったものもありますが、まだ原因のわからない疾患もたくさんあります。

2010年の骨系統疾患国際命名法会議で改訂された国際分類では、456疾患が記載されています。国際分類に記載される疾患は、疾患単位として確立されているものだけなので、実際の疾患数は1000近いと考えられます。

個々の疾患の頻度は低いものの、骨系統疾患全体としての一般集団における頻度はかなり高く、1000人に1人以上いるのではないかと考えられています。

症状は疾患によってさまざまですが、低身長、骨格や関節の変形、関節の機能不全や神経の障害による運動機能異常、骨折のしやすさなど。

特に低身長は最も多く、小児科や整形外科を受診する切っ掛けになる症状です。低身長は、四肢と体幹の比から四肢短縮型、体幹短縮型、均衡型の3つのタイプに分類されています。

疾患によっては、皮膚、爪(つめ)、毛髪、神経、眼、歯などの合併症を伴うことが多くなっています。

骨系統疾患の代表である軟骨無形成症は、遺伝子の突然変異によって起こる先天性の骨の疾患で、国から難病に認定されています。

手足が短いために背が大きくならない四肢短縮型小人症の一つに数えられ、その中で最も頻度が高く、発症者は1万人から2万5000人に1人といわれています。

代表的症状としては、軟骨の形成が不十分なために、外見的に低身長であることが挙げられます。手や足の長い管状の骨である長管骨において、その成長軟骨の発達が悪いために、成人男子の平均身長が130cm、女性で124cmにしかなりません。

外見的には、頭囲が大きく鼻の部分が低いという共通の特徴があります。また、背骨の湾曲が大きく、尻(しり)の部分が出るというような姿勢になります。指も短く、手の指を伸展すると中指と薬指、または中指と人差し指との間に透き間ができる三尖手(さんせんしゅ)も生じます。

そのほか、腰痛や関節痛などの障害、睡眠時無呼吸や中耳炎などを含む呼吸器関連の合併症、水頭症を始めとする脳神経に関する合併症、腰椎の狭窄(きょうさく)による歩行困難や排泄(はいせつ)障害なども起こります。

新生児、乳幼児においては、筋力が弱い場合が多いために健常者に比べて約半年から1年、首の座りや歩行などの遅れが生じています。小さいうちは関節が軟らかく筋力が弱いため、全体的にグニャグニャした感じでしっかり座ることができません。

この軟骨無形成症によって、直接に知能的な問題が生じるということはありません。ただし、合併症の中耳炎により耳の聞こえが悪くなって、言語能力が遅れる場合があります。鼻の周辺やあごの部分が狭いために睡眠時無呼吸症になりやすく、注意力が散漫になったり、知的な遅れが生じる場合もあります。

青年期以降には、ほとんどに関節痛や腰痛が生じ、時には腰椎の手術が必要となることがあります。あごの骨の発達が悪く、歯並びに影響する場合もあります。

原因は長い間不明とされていましたが、近年、第4染色体に存在する線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)という軟骨を形成する遺伝子の異常であることがわかりました。FGFR3は成長軟骨細胞の細胞膜にあり、主に骨が縦に伸びようとする作用を抑制することから、四肢短縮のアンバランスな体形になります。

遺伝様式は常染色体優性遺伝で、この軟骨無形成症を持つ人とそれ以外の人との間では2分の1の確率で、この軟骨無形成症を持つ人同士の場合は4分の3の確率で、子供に遺伝すると見なされています。しかし、約80パーセント以上は健常な両親から生まれており、FGFR3の突然変異が原因となっています。

骨系統疾患の個々の疾患の頻度は低いものですので、整形外科などの専門医にかかり、適切な診断と治療を受ける必要があります。

骨系統疾患の検査と診断と治療

骨系統疾患の大部分は、目下のところ、有効な診断法と治療法がない難病です。疾患そのものを治してしまう治療法はありませんが、いくつかの疾患では対症療法といって症状を和らげる治療法が実用化されてきています。また、骨や関節以外の症状を示すこともあるので、合併症などに対して管理を行います。

骨系統疾患の代表である軟骨無形成症の場合、整形外科の医師による診断は、特徴的な身体所見やレントゲン検査でほとんど確定できます。胎児の段階で見付かることも、まれではありません。胎児が確定診断をするのに小さすぎたり、非典型的な場合には、FGFR3遺伝子を調べることで確認できます。

疾患の原因は明らかになってきましたが、原因となるFGFR3遺伝子を対象とした根本的な治療は、まだ行われる段階には至っておりません。現在行われている治療は、それぞれの年齢段階に応じた問題に対処するための、対症的なものが主流となっています。

低身長に対する治療の方法としては、下肢の骨延長術や成長ホルモン治療などの方法があります。

骨延長術は、手術で骨切りをして骨折状態を作った上で創外固定器で連結し、骨を作ろうとする自然治癒力を利用して骨を伸ばしていく方法です。成長ホルモン治療は、成長ホルモンを毎日、数年間、自宅で注射する方法です。

一方、重篤な合併症が生じていない場合には、この疾患を受容し、生活の質の向上(QOL)を考えていこうという立場の医師もいます。

🇸🇮骨腫瘍

骨に生じた異常な細胞の増殖物で、良性が多く、悪性はまれ

骨腫瘍(こつしゅよう)とは、骨に生じた異常な細胞の増殖物のこと。

良性(非がん性)のものと悪性(がん性)のものがあります。良性骨腫瘍は比較的多くみられますが、悪性骨腫瘍はまれです。

また、骨腫瘍には、原発性のものと転移性のものがあります。原発性骨腫瘍は最初から骨に生じた良性または悪性腫瘍で、転移性骨腫瘍は悪性腫瘍で、乳腺(せん)や前立腺などの他の臓器に生じたがんが骨に転移したものです。

小児期にみられる悪性骨腫瘍の大半は、原発性です。これに対して、成人にみられる悪性骨腫瘍の多くは、転移性です。

原発性で悪性でもある原発性悪性骨腫瘍には、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫などさまざまな種類があります。

骨肉腫は、腫瘍細胞自体が骨を作る原発性悪性骨腫瘍です。原発性悪性骨腫瘍の中では骨肉腫にかかる人が最も多く、日本では人口100万人に対して約2人、全国で年間200人前後の人が新たにかかると推定されています。年齢では10歳代が最も多く、女性に比べて男性に多い傾向があります。発生部位は膝(しつ)関節周囲の大腿骨遠位部(だいたいこつえんいぶ)と脛骨近位部(けいこつきんいぶ)、上腕骨近位部などに多くみられます。

軟骨肉腫は、骨肉腫に次いで頻度の高い原発性悪性骨腫瘍です。30歳以上の中高年に多く発生します。良性骨腫瘍である骨軟骨腫や内軟骨腫などから二次的に生じることもあります。発生部位は大腿骨や上腕骨などの四肢近位部や、骨盤、肋骨(ろっこつ)などの体幹の骨によく発生します。骨肉腫ほどは転移を起こさず、多くはゆっくり大きくなります。

ユーイング肉腫は、原発性悪性骨腫瘍の中では3番目に多く、10歳前から20歳代に多くみられます。手足の根元近くの骨や骨盤、肋骨など体幹の骨に発生することが多く、発熱など全身の症状を伴うこともあります。悪性度が高く、進行は急速です。

原発性悪性骨腫瘍としては、そのほかにも悪性線維性組織球腫、線維肉腫、血管肉腫、脊索(せきさく)腫、アダマンチノーマなどがあります。

骨腫瘍で最もよくみられる症状は、骨の痛みです。その痛みは激しく、明らかなしこりもできることがあります。腫瘍、特に悪性腫瘍があると骨がもろくなり、わずかな力で、あるいは何も力がかからなくても骨折することがあります。

骨腫瘍、特に原発性悪性骨腫瘍が疑われる場合には、ぜひ、整形外科の専門医を受診してください。それぞれの疾患で症状、治療方法、予後が大きく異なるため、治療に当たっては、正確な診断に基づいて適切な治療方法を選択することが大切だからです。

医師による診断では、関節や、腕、脚の痛みが持続する場合に、X線撮影を行います。しかし、X線画像では、細胞の異常な増殖はわかりますが、それが良性であるのか悪性であるのかはわかりません。CT検査やMRI検査を行うと、腫瘍の正確な位置や大きさがわかり、その性質に関する情報も得ることができます。しかし、CT検査やMRI検査だけで診断を確定できることは、まれです。

腫瘍の組織のサンプルを採取して顕微鏡下で調べる検査である生検は、確定診断に必要なものです。多くの場合、腫瘍に針を刺してその一部を吸引して、細胞を調べる吸引生検を行います。ただし、針が非常に細いため、採取した細胞のすぐ隣にがん細胞があっても、正常な細胞だけが採取されてしまい、がんが見逃されることがあります。

診断に必要な検体を確実に採取するため、時には外科的な手術による生検が必要になることがあります。

骨肉腫の治療は、手術と抗がん剤などを使用する化学療法が中心ですが、時に放射線療法が加わることもあります。手術が不可能な場合には、化学療法、放射線療法が行われます。近年、化学療法や手術方法の進歩により、予後は劇的に改善されています。

軟骨肉腫の治療は、骨肉腫ほどは転移を起こさず、ゆっくり大きくなることが多いため、手術が主体となります。

ユーイング肉腫の治療は、まずは強力な化学療法を行って遠隔転移を防ぐようにした後に、手術で腫瘍を切除します。切除が不可能な場合には、放射線治療などを行います。

🇲🇪骨髄異形成症候群(MDS)

骨髄にある造血幹細胞に異常が起こり、貧血などの症状が現れる疾患

骨髄異形成症候群(MDS:myelodysplastic syndrome)とは、骨髄にある血液細胞の源に当たる造血幹細胞に異常が起こって、細胞の増殖、成熟がうまく進まず、途中で次々と死んでいくために、赤血球減少による貧血や、白血球減少、血小板減少などの症状が現れる疾患。

一般に成人から高齢者に多くみられますが、近年では男性の高齢者に増えています。日本全国の患者数は9000人と推定され、特に70歳代がピークになっています。

経過が長く急性白血病に変わっていくものがあるため、難治性で予後が悪いのが特徴です。いろいろな治療が無効なため、不応性貧血とも呼ばれており、日本では難病指定を受けています。

発症すると、息切れや動悸(どうき)、全身倦怠(けんたい)感といった貧血の症状が出てきますが、症状がゆっくりと進行するために、貧血を自覚することがあまりありません。

多くの場合、検診などで貧血と診断されたり、白血球減少による肺炎などの感染症や、血小板減少による抜歯後の止血困難などの出血症状を切っ掛けに、骨髄異形成症候群であることが判明します。

骨髄では異形成の名の通り、正常にみられない形をした細胞が認められたり、白血病細胞が少数ながらも認められることもあります。また、白血病細胞の比率が次第に増加して、急性白血病に移行していくものもあります。白血病細胞の比率と形の異常で、1)不応性貧血、2)環状鉄芽球を有する不応性貧血、3)5~20パーセントに白血病細胞のある不応性貧血、4)慢性骨髄単球性白血病、5)極めて白血病に近い不応性貧血の5型に分けられています。

骨髄異形成症候群の治療法としては、発症者の年齢が若くて、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する骨髄提供者があれば、骨髄移植が行われます。骨髄移植は治癒の可能性が最も高い治療法の一つですが、肉体的に負担が掛かるため高齢者には実施できません。

最近では、免疫抑制療法も効果があることがわかっており、抗リンパ球グロブリン(ATG)の内服で60パーセント、シクロスポリン(CSA)の内服で80パーセントの発症者が改善するようになってきました。

ほかに行われる治療法としては、エリスロポエチン、顆粒(かりゅう)球増加因子を用いるサイトカイン療法、蛋白(たんぱく)同化ホルモンによる造血刺激療法、ビタミンDやビタミンKによる分化誘導療法、化学療法などが行われています。これらの治療法に伴って、輸血や抗生物質、血小板輸血などの対症療法も多く行われています。

🇲🇪骨髄炎

骨に細菌が付き、化膿性炎症を発現

骨髄炎(骨膜炎)とは、骨に細菌が付いて、化膿(かのう)性炎症を起こす疾患。

大人にも起こりますが、一般には、成長の盛んな幼少年期の、特に男児に多くみられます。かつては敗血症を招いて死亡するケースも多かったのですが、近年は抗生物質のお陰で、死亡例は非常に少なくなっています。しかしながら、慢性化することが多く、そうなると再発を繰り返し、なかなか治りにくくなります。

急性骨髄炎を起こす原因菌はいろいろな種類がありますが、最も多いのはブドウ球菌。細菌の侵入経路は、扁桃(へんとう)、鼻咽腔(いんくう)、皮膚などの化膿巣から、血液の流れに乗って骨に達し、発症します。

全身のどの骨にも起こります。特に、大腿(だいたい)骨の上端や下端、脛(けい)骨の上端によく起こります。また、骨が皮膚を破って外に出た開放性骨折を起こした際も、細菌が骨に直接くっついて炎症を起こすことがあります。

症状として、全身の発熱、感染した部位の強い痛み、はれ、皮膚が赤くなる発赤などの著しい炎症症状が起こります。しかし、急性骨髄炎の症状は初めからそろっているものではありません。

急性骨髄炎の発見が遅れたり、治療が不十分であると、いったん治ったようにみえても、再発を繰り返し、慢性骨髄炎となることが少なくありません。最初から、慢性の経過をたどるものも少なくありません。

慢性骨髄炎の症状としては、急性の場合のような強い症状はありませんが、局所は赤くはれて熱を持ち、押すと痛みます。合併症としては、膿瘍(のうよう)が破れた後の穴がふさがらなかったり、四肢の長さが違ってきたり、骨が曲がってきたりすることもあります。

骨髄炎の検査と診断と治療

幼少年で急性骨髄炎の症状がある時は、急いで医師の診察を受け、早期発見、早期治療に努めることが何よりも大切です。

医師のほうでは、局所の症状や血液検査などから、総合的に判断します。しかし、急性骨髄炎の症状は初めからそろっているものではないため、当初は風邪や肺炎などと誤診されることもあります。X線写真は初期のうちははっきりしませんが、疾患が進んでくると骨の委縮、吸収、骨の壊死(えし)などが認められ、その周りに骨膜から新しい骨ができてくるのがわかるようになります。

治療においては、全身、局所の安静が大切なため入院をして、強力な抗生物質の投与を行います。膿瘍を作っている際は、切開手術をして排膿します。また、早期に積極的に骨に穴を開けて、膿(うみ)を外に出してやる手術も行い、壊死した骨が確認されれば、それを取り除く手術も行います。

早期に発見されれば、抗生物質の投与だけですむこともありますが、発見が遅れたり、炎症の程度が強い時は骨髄炎の範囲が広がり、骨が破壊、吸収されて骨折を起こすこともあります。この場合は、入院期間が何カ月も必要なことになります。

慢性骨髄炎の治療では、抗生物質を十分に投与することが必要です。度々、再発を繰り返すものは、手術的に病巣を取り除く以外にはありません。

🇲🇪骨髄腫(しゅ)

血液中の特殊細胞が骨髄で増殖し、全身の骨を破壊

骨髄腫(しゅ)とは、形質細胞という血液の中のリンパ球に似た特殊な細胞が腫瘍(しゅよう)化して、骨髄の中で増殖し、全身の骨を破壊する悪性の疾患。

原因は、よくわかっていません。発症頻度は低く、まれな疾患に属します。年齢層は、70〜80歳代の人に多く発症します。

発症は多くの症例では、いつから始まったか明確ではなく、ゆっくりと進行します。何の症状もないまま、定期検診を受けたところ、血液と尿の蛋白(たんぱく)異常を指摘され、それがきっかけで疾患が見付かるケースも少なくありません。

骨髄腫の自覚症状は、胸、背中、腰などの痛み、体重減少など。骨はほとんど全身の骨が侵されますが、脊椎(せきつい)、肋骨(ろっこつ)、胸骨などから現れるケースが多いようです。普通、長い経過をたどって悪化していきます。骨折して受診し、疾患が発見されるケースもあります。

骨髄腫の検査と診断と治療

血液中の蛋白の数値が高く、分析すると免疫グロブリンといわれる蛋白質の一種が、異常に高い数値を示していることから診断されます。骨髄を調べると、この免疫グロブリンを分泌する形質細胞が多数認められます。骨のX線検査では、打ち抜き像といわれる輪郭の明確な所見があり、骨が薄く、もろくなっています。

治療としては、化学療法でコントロールすることを主体とします。よく用いられるのは、メルファランとインターフェロン。近年では、強力な化学療法と自家造血幹細胞移植を組み合わせて、異常な形質細胞を絶滅させる方法が研究されています。

🇷🇸鶏眼

刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態

鶏眼(けいがん)とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態。魚(うお)の目とも呼ばれます。

皮膚表面の角質層は、円錐(えんすい)状に下に向かって厚くなっています。その中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。

鶏眼と同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、たこもあります。こちらは厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているもので、手で触ると硬く感じるものの、痛みは生じません。たこが慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。

また、鶏眼と同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、小型の足底疣贅(そくていゆうぜい)もあります。こちらは皮下の奥のほうにでき、歩く時に痛みを伴うため、鶏眼と区別が付かないことが多いものの、ヒトパピローマウイルスが原因で生じる本質的に別の疾患であり、放置しておくとほかの部位に移ります。

>鶏眼のできやすい場所は、足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。

原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、足指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、鶏眼になります。

大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり足指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。

鶏眼のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、鶏眼ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。

開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐ靱帯(じんたい)が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。

ハンマー足指やその他の足指の変形も、鶏眼の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。

巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間に鶏眼ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側に鶏眼ができる人は放っておくと、小指が変形し手術の必要性が生じます。

女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、鶏眼ができやすくなるからです。反対に、鶏眼が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。

鶏眼の検査と診断と治療

鶏眼の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、鶏眼の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。

また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで、鶏眼の芯の先を少し血が出る程度に削り取ります。これを何回か繰り返します。

保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。

患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。

手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。

なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。

🇷🇸頸肩腕症候群

首、肩、腕の痛みや凝りを起こす疾患の総称

頸肩腕(けいけんわん)症候群とは、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれなどを来すいくつかの疾患の総称。最近では、この頸肩腕症候群からさらに詳しくするために、胸郭出口症候群や腕の神経絞扼(こうやく)症候群などの疾患名が独立して、名付けられるようにもなってきました。

頸肩腕症候群の原因については、さまざまなことが考えられます。筋肉の過労や姿勢の異常でも起こりますが、頸椎(けいつい)のクッション役を果たしている椎間板が薄くなる椎間板変性症、椎体に骨のとげができる変形性頸椎症、椎体の後ろを縦に走っている靭帯(じんたい)に骨化が起こる後縦(こうじゅう)靭帯骨化症といった中年すぎの疾患などでも起きます。むち打ち症の後遺症や、内臓疾患、精神的なストレスでも起きます。

このように原因はさまざまですが、いずれも骨、筋肉、血管、神経の何らかの異常が原因です。普通、首筋や肩が凝って、腕がしびれるような場合は、この頸肩腕症候群によることが多いといえます。

筋肉の過労で起きるケースは、一定の筋肉ばかりに負担がかかるパソコン作業者などでみられます。腕を上げる筋肉は頸椎についているものが多いので、腕を宙に浮かしてする仕事に従事する人は、これらの筋肉の凝りや痛みを起こしがちです。姿勢の異常、例えば前かがみの悪い姿勢では、頭の重心が前に出るので、この頭を支えるために首や肩の筋肉が疲れ、これが痛みに変わることもあります。

また、頚肩腕症候群の症状もさまざまあり、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれ、脱力感、冷感のほか、背部の痛み、肩甲骨の凝りやこわばり、めまいや頭痛を伴う場合もあります。

頸肩腕症候群の検査と診断と治療

頸肩腕症候群の治療法としては、まず安静にすることが求められます。特に、筋肉の過労からくる場合は、2、3日安静にすることで治ることもあります。次に、適度な運動やストレッチをして筋肉を使うことで、筋肉を疲労しにくくさせます。このことで、次に頸肩腕症候群になる可能性が低くなるといわれています。

症状が軽く、安静と運動でよくなるようであれば、特に病院に行く必要はないかと思われます。痛みや凝りを取り除くための身近な治療薬としては、湿布などもあります。

そのほか、パソコンの長時間の使用や、同じ姿勢を続けるなどの日常生活を見直し、作業の途中に適当な休息時間を挟む、体操をして筋肉の凝りをほぐすことをふだんから心掛けます。また、過労や睡眠不足とあいまって、精神的なストレスが首、肩、腕の凝りを招くこともありますので、できるだけ睡眠をよくとり、過労にならないように心掛け、努めて精神を平静に保つようにします。

しかし、頸肩腕症候群の症状が頑固な場合には、病院で受診して原因をはっきりさせることが大切です。ひどい症状を何度も体験していたり、肩凝りの症状のほかにめまいやしびれがひどい場合は整形外科や神経内科、頭痛がひどい場合には脳神経外科などを受診するとよいでしょう。病院では、原因となる疾患を明らかにした上で、その治療を最優先します。鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤を使用することもあります。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...