2022/08/14

🇦🇷百日ぜき

百日ぜきとは、急性の呼吸器系の感染症で、百日ぜき菌の感染によって起こります。乳幼児の病気というイメージがありますが、最近の日本では、乳幼児の感染が年々減っているのに、大人の感染は増加傾向にあり、全体の4割近くを占めています。大人の感染者には、20~40代の人が多くみられます。

その病名が示すように、独特のせき発作が長期にわたって持続するのが、百日ぜきの特徴です。通常、感染後7~16日間の潜伏期間を経て、せきや鼻水などの普通の風邪症状で始まります。やがて、せきの回数が増えて程度も激しくなります。典型的なせき発作では、5~15回かそれ以上の回数の連続したせきが出て、その後に長くて高い音のする深い吸気があります。発作の後は、呼吸は正常に戻りますが、その後すぐに新たなせき発作が始まります。

多くの場合、熱はないのですが、途切れなく続く、短い連続的なせき込みによる嘔吐(おうと)やチアノーゼ、顔面の浮腫(ふしゅ)、結膜充血などが見られます。せき発作は夜間のほうが起こりやすいため、不眠の原因になることもあります。

この百日ぜきには予防接種(ワクチン)があり、近年では、百日ぜき、破傷風、ジフテリアの3種が一緒になった三種混合ワクチンとして接種されます。しかし、ワクチンの効果は一生続くわけではなく、次第に低下していくので、子供のころにワクチン接種を受けたのに、大人になってかかる人が出てくるわけです。

もっとも大人では、せきは長期間続くものの、典型的なせき発作は見られず、やがて回復します。しかし、せきだけなので、百日ぜきと分からないままにしていると、ワクチン未接種の乳幼児に移す可能性があり注意が必要です。

2歳未満の乳幼児の場合、最も症状が重くなります。病気は約6週間続き、軽いかぜのような症状の時期、重いせきの発作が起こる時期、そして徐々に回復する時期の3段階で進行します。

乳児では、息苦しさと呼吸の一時的な停止が起こり、皮膚が青くなることがあります。約4分の1は肺炎を発症し、呼吸困難に陥ります。百日ぜきの結果として、中耳炎もしばしば発症します。まれに、乳児の脳に影響を与えることもあります。脳の出血、腫(は)れ、炎症などにより、けいれん、錯乱、脳の損傷、精神遅滞などが生じます。

百日ぜきに対する治療では、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬が使われます。これらは、特に早期のうちに使うと有効です。周囲の人への感染を防ぎ、せきを早く治すためにも、しつこいせきがなかなか取れないようなら、早めの受診が勧められます。

🇦🇷鼻カタル

鼻カタルは、鼻粘膜が炎症のために赤く腫(は)れている状態です。単純性鼻炎とも呼びます。

局所的な原因としては、空気中の塵埃(じんあい)、刺激物質による長期にわたる刺激、軽い感染の持続、副鼻腔(ふくびくう)炎などが考えられます。全身的な原因としては、風邪のほか、糖尿病、肝臓病などの病気、アレルギー体質が考えられます。

症状としては、鼻詰まり、嗅覚(きゅうかく)障害、鼻漏(びろう)、前頭部の頭痛などがみられるほかに、鼻部の不快感、イライラ感、鼻出血なども生じることがあります。

鼻詰まりは、片側のみ、あるいは左右交代に起こります。眠る時に下にした側の鼻に、起こったりもします。鼻漏は粘性が多く、鼻がかみきれない場合もあります。また、鼻漏がのどに落ちる、すなわち後鼻漏(こうびろう)もよく起こります。

医師による鼻カタルの治療では、薬物療法が中心で、鼻にネブライザーなどで薬を入れたり、薬を内服したりします。局所に血管収縮薬を用いると、鼻の粘膜の腫れがひき、鼻詰まりは改善されます。

薬局で売っている血管収縮剤を含んだ点鼻薬は、特に鼻カタルの鼻詰まりには有効です。しかし、長期にわたり、持続的に連用すると、薬物性鼻炎や肥厚性鼻炎になる可能性があります。薬物性鼻炎になると、点鼻薬を使っても鼻詰まりがあまり治らなかったり、鼻詰まりがとれている時間が徐々に短くなります。乱用を慎み、一日一回以内、一週間続けたら一週間休むくらいにするべきです。

体を鍛えたり、生活を規則正しくしたり、室内の温度や湿度の調節、入浴などの生活上の工夫も必要です。

🇺🇾鼻過敏症

くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの症状が過剰に現れた状態

鼻過敏症とは、くしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻詰まり(鼻閉)の症状が過剰に現れた状態。

この鼻過敏症には、アレルギー性鼻炎と血管運動性鼻炎の2つがあります。2つの鼻過敏症は、その原因はそれぞれ異なるものの、ほぼ同じ症状を示します。

鼻の粘膜でアレルギー反応が起こるアレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜でアレルギー反応が起こるもので、発作反復性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つが主な症状。これらの症状は、体への異物の侵入を阻止し、排除しようとする防御のメカニズムの現れです。

鼻から吸い込まれた抗原(アレルゲン)が、鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして発症することから、空気中を浮遊している抗原が原因となります。代表的な抗原は、ハウスダスト(室内のほこり)や、風の媒介で受粉する風媒花の花粉などです。

ハウスダストは、1年中存在しているため、季節に関係なく症状を発現させる通年性抗原の一種です。ほかにダニなども、通年性抗原です。

花粉が抗原の場合は、例えばスギ、ヒノキは春、ブタクサは秋というように開花の時期に一致して症状が出現します。また、花粉は地域の植生や気象状況で飛散量が異なるため、花粉症が猛威を振るう年や地域に違いのみられることがあります。

外部から異物である抗原が侵入した時に、その抗原に対応する特定の抗体(IgE抗体)が体内に存在すると、抗原と抗体が結合し、抗原抗体反応が起こります。抗原抗体反応が起こると、肥満細胞や好塩基球などの細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が遊離され、その作用でアレルギー反応が起こります。

これらの化学伝達物質が鼻の粘膜の三叉(さんさ)神経を刺激したり、自律神経のバランスを崩して副交感神経の働きを優位にするために、くしゃみや、鼻水の過剰分泌、鼻のむずむず感などが起こります。鼻の粘膜の血管が拡張するために、鼻詰まりも起こります。

近年、鼻過敏症が増加していますが、その誘因には、体質や遺伝的素因としての内因と、環境や栄養などの外因とがあります。

アレルギー性鼻炎の人の家系調査によると、アレルギーの体質は遺伝するといわれています。また、抗原抗体反応に関係なく、鼻粘膜の過敏性や化学伝達物質の遊離、自律神経のバランスの崩れやすさも遺伝するといわれています。

鉄筋コンクリートやサッシ窓による気密性の高い住宅の出現、エアコンによる冷暖房の整備などで、室内環境がダニの繁殖に適したものとなり、ダニの数が増えています。また、植林が盛んになりスギ林が多くなるにつれてスギ花粉も増えています。このような抗原の増加も、アレルギー性鼻炎の増加の誘因の1つと考えられています。

自動車、特にディーゼル車の排気中の物質が、抗体の産生を促す方向に作用するともいわれています。さらに、排気ガスや塵埃(じんあい)などの大気汚染物質のほか、たばこの煙も、鼻過敏症の増加に関係しているといわれています。

そのほか、食生活の欧米化による高蛋白(たんぱく)・高栄養の食事が抗体の産生に結び付くともいわれ、ストレスの増加による自律神経のバランスの崩れも誘因と考えられています。

アレルギー性鼻炎の主な症状は、くしゃみ、鼻水、鼻詰まり、鼻のかゆみ。鼻詰まりが強く、くしゃみや鼻水を感じない場合や、くしゃみと鼻水が強く、鼻詰まりを感じない場合などがあります。結膜炎を合併することも多く、目のかゆみや充血、流涙がみられることもあります。

ハウスダストやダニを抗原とするアレルギー性鼻炎では、しばしば気管支喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎を併せ持っています。

鼻粘膜の自律神経の過敏反応によって起こる血管運動性鼻炎

一方、血管運動性鼻炎は、アレルギー反応の関与が証明できないため原因がはっきりしないものの、鼻粘膜の自律神経の過敏反応により、アレルギー性鼻炎とほぼ同じ、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの症状を示します。ただし、アレルギー性鼻炎とは異なり、鼻や目のかゆみは起こりません。

特定できないものの、鼻粘膜の無意識に作用する自律神経の働きが過敏になって発症すると考えられています。寒い時は体温を保持し、暑い時は体温を発散させ、血管を拡張・収縮させたり、胃酸を分泌させたりと環境や状態に体を合わせる役割を果たしている自律神経の働きを過敏にさせる要因には、急激な温度変化、寝不足や慢性的な疲れ、精神的なストレス、たばこの煙の吸入、化粧品などの香料の吸入、飲酒などがあります。

特に、温度変化によって引き起こされることが多く、暖かい場所から寒い場所へ移動した時や、熱い物を食べた時などに症状が現れやすく、空気が乾燥すると悪化するという特徴があります。

例えば、寒暖差の大きい冬の朝、暖かい布団から抜け出た直後から鼻の血管が拡張し、鼻粘膜の細胞から滲出(しんしゅつ)液がにじみ出て鼻粘膜がむくみ、水様性の鼻水が分泌される状態がしばらく続き、食事を終えて出勤、登校するころになると、周囲の温度に慣れて症状が治まってきます。しかし、暖かい家から空気の冷たい戸外へ出た時には、症状が再発します。

逆に、夜になり布団に入って暖まってくると、鼻詰まりなどの症状がしばらく続きます。鼻詰まりがひどくなると、鼻での呼吸が十分にできなくなり口で呼吸するようになるため、のどの痛みやいびき、不眠、注意力散漫などの症状が出ることもあります。

血管運動性鼻炎の症状は、冬に限ったものではなく、冷房の効いた夏場など年間を通じて起こり得ます。暑い戸外から冷房の効いた室内に入った時などに、鼻水が分泌されて不調になる症状が出ることも多々あります。

年間を通じてよくなったり悪くなったりを繰り返し、症状が数週間続く場合もあれば、すぐに治まることもあります。普段からあまり運動をしていない成人女性が、寒暖差アレルギーを発症しやすいといわれています。

鼻過敏症で、くしゃみや鼻水などの症状が長引く場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し、自分に合った治療やアドバイスを受けることが勧められます。

鼻過敏症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による鼻過敏症の診断では、まず、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つの症状が1年中起こるのか、あるいは春や冬の季節などに限定して起こるのかを調べます。それをもとに、アレルギー性鼻炎かどうか、もしそうならば原因となる抗原は何かを鼻汁検査、特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストを行って調べます。

鼻汁検査では、鼻水の中の好酸球という細胞の有無を調べます。抗原抗体反応が起こると、鼻水中の好酸球が増加するので、アレルギー性鼻炎の診断の助けになります。

特異的IgE抗体検査では、抗原抗体反応を起こす抗体(IgE抗体)が、血液中にどの程度含まれているか、採血して調べます。

皮膚テストでは、可能性のある抗原のエキスを皮膚に注射するか、皮膚につけた引っかき傷に滴下して反応を調べます。15分後に、皮膚が赤くはれる程度で判定します。

鼻粘膜誘発テストでは、可能性のある抗原エキスの染み込んだ小さな紙を鼻の粘膜に張り付け、反応を調べます。5分後にくしゃみ、鼻水、鼻詰まりがどの程度出現するかで判定します。

鼻汁検査、特異的IgE抗体検査または皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストの3つのうち2つ以上が陽性の場合に、アレルギー性鼻炎と確定します。アレルギー性鼻炎とほぼ同じ症状があるにもかかわらず、検査結果で陰性を示し、抗原を特定できない場合に、血管運動性鼻炎と確定します。

アレルギー性鼻炎の治療と予防

耳鼻咽喉科の医師によるアレルギー性鼻炎の治療では、まず抗原の除去、回避に努めます。ハウスダストやダニが抗原であれば、室内の清掃をこまめに行い、布団や枕(まくら)に防ダニカバーを付け、空気清浄器を使用するのも有効です。花粉が抗原であれば、飛散期の外出をできるだけ控え、マスクや眼鏡で花粉との接触を避け、帰宅したら洗眼、うがいをし鼻をかんで回避することに努めます。

次に、減感作療法(特異的免疫療法)という体質改善の治療や、抗アレルギー薬で症状を抑える治療を行います。

減感作療法は、抗原に体を慣れさせ、抗原に接しても症状を起こしにくくする治療です。現在のところ、長期にわたって症状の出現を抑えることが可能な唯一の方法であり、週に1回くらいの割合で抗原希釈液を注射し、徐々に濃度を濃くしていく治療を2~3年続けます。治療終了後にも、症状の改善が持続します。

最近、長期にわたる通院の負担を軽減するのを目的として、急速減感作療法がいくつかの医療機関で行われています。副作用の出現も危ぶまれるために入院して行う場合もありますが、従来の減感作療法と同じか、それ以上の効果があるといわれています。

薬物療法では、ヒスタミンなどの化学伝達物質の作用を抑える抗ヒスタミン薬や、化学伝達物質の遊離を抑えるいわゆる抗アレルギー薬、副腎皮質ホルモン薬、自律神経薬などを、症状やそのほかの状況に応じて使用します。

症状を抑える薬を使用すると、その時は改善しても、再発することが多く、完全に治ることが難しいため、長期間の経過観察も行います。

花粉を抗原とするアレルギー性鼻炎では、花粉が飛散する前から薬物を予防的に投与し、症状の発現を遅らせて、花粉飛散期の症状を軽くする初期療法を行うこともあります。

血管運動性鼻炎の治療と予防

耳鼻咽喉科の医師による血管運動性鼻炎の治療では、アレルギー反応の関与が証明できないので、症状を抑える対症療法を主体に行います。

薬物療法では、抗ヒスタミン薬や漢方薬などの内服薬、副腎皮質ホルモンや抗ヒスタミン剤が含まれる点鼻薬を主に使います。しかし、長期間の経過観察が必要です。症状を抑える薬を使用すると、その時は改善しても、再発することが多く、完全に治ることが難しいからです。

薬物療法に効果を示さない場合は、手術療法を行うこともあります。鼻詰まりに対しては、鼻粘膜の一部を固める電気凝固術やレーザー手術、凍結手術、鼻粘膜の一部を切り取る鼻粘膜切除術などがあります。また、鼻水に対しては、自律神経の副交感神経を遮断する後鼻神経切断術が行われることもあります。

血管運動性鼻炎に関しては、睡眠不足にならない、精神的ストレスをためない、たばこの煙を吸わない、アルコールを飲みすぎない、規則正しい生活とバランスの取れた食事を心掛ける、適度な運動をして体力を付けるなどの点に注意し、症状を悪化させない努力も大事です。

また、体を温めることが効果的です。朝起きたら家の中で軽く体を動かすなど、血行をよくして体を温めると、症状が治まることもあります。服を一枚多く着て体温を調整すると、症状が治まることもあります。

🇺🇾鼻ポリープ

炎症が原因で、鼻腔粘膜が増殖してポリープができる疾患

鼻ポリープとは、鼻の奥の副鼻腔(ふくびくう)などに起こった炎症が原因で、鼻腔粘膜が異常増殖してポリープができる疾患。鼻茸(たけ)とも呼ばれます。

軽症のものを含めると、発症者数は推定100万人以上と考えられています。

鼻風邪や、花粉症などのアレルギー性鼻炎にかかり、膿(うみ)のような黄色い鼻水が出て、鼻詰まりが長期間治り切らない急性副鼻腔炎から、さらに副鼻腔が繰り返し炎症を起こしてなかなか治らない慢性副鼻腔炎、一般的にいう蓄膿(ちくのう)症の時に、鼻腔粘膜が茸(きのこ)状に水膨れになった鼻ポリープがしばしばできます。

鼻ポリープができると、まず左右の鼻腔に交代性の鼻詰まりが起こります。次第に両方の鼻腔に鼻詰まりが起こり、膿性の鼻水が長期にわたって出続けます。

また、嗅覚(きゅうかく)が鈍感になるのも鼻ポリープの特徴で、においを感じる細胞が影響を受けることが多いため、しょうゆやコーヒーなどのにおいを感じにくくなります。

鼻ポリープは一般的に両側の鼻腔に複数でき、大きいものだと直径5センチ以上にもなるため、鼻の穴から出てきたり、ひどくなると鼻で息が全くできなくなったり、鼻が変形したりします。頭痛、記憶力減退、耳管狭窄(きょうさく)などの症状が起こることもあります。

風邪や鼻炎に長期間かかったり、アレルギー性鼻炎を放っておいたりした後に発症することが多く認められますが、すべての人が発症するわけでなく、体質や環境要因が加わって悪化することが一般的です。

特に、アレルギー体質の人は花粉症や成人型気管支ぜんそくと関連して、副鼻腔炎を起こし、鼻ポリープを起こしやすいといわれています。

長く症状が続いた場合は、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。一般的に両側の鼻腔にできる鼻ポリープが片側のみにできている場合は、まれに悪性腫瘍(しゅよう)のこともあります。

鼻ポリープの検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼻鏡を用いて鼻の入り口から鼻腔内を調べます。視診で多くの場合、容易に判断ができます。

周囲の粘膜と区別できなかったり、慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎を合併していたり、鼻中隔(びちゅうかく)湾曲症があって奥の鼻ポリープを見逃したりする恐れがある場合は、軟性ファイバースコープ、顔面X線(レントゲン)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査などを行って詳しく調べます。CT検査を行うと、鼻ポリープと症状が似ている上顎(じょうがく)がんと見分けることもできます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)剤を噴霧すると、約半数のケースで鼻ポリープが小さくなります。

副腎皮質ホルモン剤の局所治療を1カ月続けても、鼻ポリープが小さくなる様子がみられない場合は、鼻ポリープを切除する手術を行います。

手術では、局所麻酔をして鼻ポリープの茎部を含めて摘出して、副鼻腔を開放し、空気の通り道を作ります。慢性副鼻腔炎を合併している場合には、顕微鏡や内視鏡を用いた副鼻腔手術を同時に行います。

鼻ポリープは深い関連性がある慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、成人型気管支ぜんそくが治り切らない限り、再発する可能性があります。鼻ポリープの治療と平行して、慢性副鼻腔炎などの治療を行っていくことが、再発の防止になります。

🇺🇾乳房パジェット病

乳房パジェット病とは、乳頭や乳輪にただれるような湿疹(しっしん)ができる乳がんの特殊なタイプ。乳房ページェット病とも呼ばれます。

乳がん全体の1~2パーセントを占めるといわれています。発症年齢は乳がんよりやや高く、50歳代の女性に最も多くみられ、男性もかかります。

症状としては、乳頭やその周囲の乳輪に紅褐色の湿疹が出て、かゆみやヒリヒリとした痛みを伴う場合もあります。また、乳頭からの分泌物や出血もみられる場合もあります。通常の乳がんのようにしこりを触れることはないので、急性湿疹やたむしなどの皮膚病と間違えられやすく、乳がんの一種とは思われないこともあり注意が必要です。

進行すると、表皮が破れてただれ、円状に乳頭や乳輪を超えて拡大したり、乳頭が消失してしまうこともあります。

しかし、高齢者に多く長期に放置したとしても進行する速度が遅いので、乳腺(にゅうせん)内のがん細胞が表皮内に浸潤することはまれであるとされています。早期に治療すれば予後は良好ながんで、転移が確認されなければ心配はないといわれています。

医師の側は、乳腺内にしこりがみられず、顕微鏡で乳頭分泌物やかさぶたなどの細胞を見る細胞診で、パジェット細胞という特徴的な泡沫(ほうまつ)状の細胞が認められた場合、乳房パジェット病と確定します。

治療は、早期の乳がんと同じ治療法が適応され、病変部だけを切除して乳房を温存するケースと、乳房全体を切除するケースとがあります。検査の段階で病変が乳腺レベルにとどまっている場合は、美容的な観点を考慮して、放射線治療を併用しての乳房温存療法が選択される可能性が高くなりますが、進行程度や広がり具合によっては、乳房全体を切除するケースや乳頭を切除しなければならないケースもあります。

手術の予後は良好で、よほど進行しないと転移はしません。

🇵🇾乳房発育不全

女性の乳房の発育が十分ではない状態

乳房発育不全とは、女性の乳房の発育が十分ではない状態を指す症状。小乳房症とも呼ばれます。

乳房の大きさや発育度合いは個人差による部分が大きく、具体的な定義は難しいのですが、思春期に入っても乳房の発育が顕著に認められない状態を乳房発育不全と見なします。

両側の乳房の発育が悪い場合もありますが、片側の乳房のみ発育が悪い場合もあります。

原因不明の場合が最も多く、生まれ付き乳腺(にゅうせん)が未発達であったり、思春期に卵巣などの重要な内分泌臓器が十分に機能しないことが原因であることもあります。

思春期に入っても乳房が発育しないことで、乳房発育不全が疑われます。

両側、あるいは片側の乳房発育不全の症状が明らかで、美容的な問題により乳房を作って悩みを解消したいと望むのであれば、乳腺外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、形成手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

ただし、女性としての体が完成する20歳前後に形成手術を行うことが勧められます。

乳房発育不全の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳房X線撮影検査)などを行います。乳房発育不全の具体的な定義が難しいため、診断にも難しい面があります。

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による治療では、人工乳腺(豊胸バッグ)を使った乳房形成手術(豊胸手術)を行います。乳房発育不全への形成手術の適用の場合は、原則的に形態のみの修復となり、 外見的な症状は改善されます。

乳房形成手術(豊胸手術)は、胸がしぼむことなく、人工乳腺(豊胸バッグ)を挿入した時点とほぼ同じ乳房の大きさを半永久的に維持できるのがメリットですが、大掛かりな手術が必要になるため、どうしても後遺症や合併症のリスクが高まります。

🇵🇾乳房肥大症

思春期に入る前や思春期を迎える当たり、乳房が大きくなる疾患

乳房肥大症とは、乳房が大きくなる疾患。

主な乳房肥大症には、思春期になる前の女児に起こる小児乳房肥大症と、思春期の女性と男性に起こる思春期乳房肥大症があります。

乳幼児期の女児の乳房が大きくなる小児乳房肥大症

小児乳房肥大症は、乳幼児期の女児の乳房がはれたり、乳房にしこりができるもの。早発乳房、乳房早期発育症、思春期前乳房隆起とも呼ばれます。

発生頻度は人口10万人当たり40人程度で、珍しいものではありません。2歳以下の発症が、60〜85パーセントを占めます。

乳腺(にゅうせん)と乳房が軽度に大きくなり、異常に大きくなることはありません。両側性のものがほとんどですが、片側だけの場合もあります。

通常、症状は進行せず、多くの場合2年から3年で自然に縮小し、消失します。中には、軽度のはれやしこりが5年以上持続するものがあるものの、病的な意味はなく、特別な治療も必要ありません。

小児乳房肥大症の原因は明らかでありませんが、下垂体ホルモンや卵巣ホルモンの分泌の一過性の高進や、これらのホルモンに対する乳腺の感受性の一過性の高進などが原因の一つと考えられています。

乳房の大きさが増したり、恥毛や腋毛(わきげ)が生えてきたり、初潮の発来が早すぎたり、身長の伸び方が急激すぎたりする場合は、小児乳房肥大症以外の疾患の可能性を疑う必要があります。

疑われるのは、思春期早発症などのホルモン分泌異常による性早熟や、副腎(ふくじん)などの内分泌疾患で、このような場合は経過をみて小児科、小児内分泌科を受診し、検査を受けて区別する必要があります。

思春期において乳房に過度の成長を生じる思春期乳房肥大症

思春期乳房(乳腺)肥大症は、女性の乳房が成長してくる思春期において、乳房に過度の成長を生じる珍しい疾患。乳房肥大症の一種です。

原因は、卵巣から分泌されている女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)などに対する乳腺の過敏反応です。

具体的な症状は、両方の乳房の過度の肥大、あるいは片方の乳房のみの過度の肥大で、発症するのは、初めて月経を経験する初潮の1年前後です。

肥大の程度は、人によってさまざまですが、短期間で急成長するのが特徴で、重症の場合は、乳房の重さが片方で10キログラムを超えることもあります。極度の重症の場合は、30キログラムにも過度に肥大化し、陰核の肥大を伴うこともあります。

この急成長は、身体的な不快感を引き起こします。その主な症状は、乳房の皮膚の赤みやかゆみで、時に乳房全般の痛みを生じます。乳房の重さのせいで、ブラジャーのストラップが肩にへこみをつくり、その慢性的な刺激によって消えない傷跡を残すこともあります。

そのほかにも、頭痛や頸(けい)痛、上背痛、腰痛、指のまひや痛みを併発します。

異常に気付いたら、婦人科、乳腺外科、外科、形成外科を受診することが勧められます。また。乳房が過度に肥大することで、特に思春期で大きな悩み、心の負担になるような場合は、美容外科や美容皮膚科などを受診し、美容的な乳房の外科手術などを受けることも勧められます。

また、女性に限らず、思春期を迎えた男性もホルモンの影響など女性化によって、思春期乳房(乳腺)肥大症を発症し、乳房が肥大することがあります。

本来、男性の乳房は女性の乳房のように発育しませんが、乳房に膨らみや、しこりが現れたり、自発痛や圧痛を感じることがあります。これを思春期乳房肥大症、あるいは女性化乳房症とも呼びます。

この思春期乳房肥大症は、両側もしくは片側の乳腺が一時的に増殖して、乳頭部や乳輪の下に腫瘍(しゅよう)のようなものが現れる症状をいいます。

これは、思春期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性のもので、思春期の13~14歳に起こり、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れるのが原因となって、乳腺が異常に増殖して乳房が肥大します。普通は、ほうっておけば自然によくなります。

男性の思春期乳房肥大症の多くは問題のないものですが、原因がはっきりしないものもあり、乳がんなどのほかの疾患と区別するためには、外科、乳腺外科を受診することが勧められます。また、女性のように乳房が大きくなることで、特に思春期で大きな悩み、心の負担になるような場合は、美容外科や美容皮膚科などを受診し、美容的な乳房の外科手術などを受けることも勧められます。

乳房肥大症の検査と診断と治療

小児乳房肥大症の検査と診断と治療

小児科、小児内分泌科の医師による診断では、視診、触診、超音波(エコー)検査で、乳腺の存在を確認します。血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。

小児科、小児内分泌科の医師による治療では、特定の原因がない場合は、経過を観察します。一般に、特に治療を行わなくても、数カ月から3年以内に自然に縮小し、消失します。

思春期早発症、内分泌疾患によると考えられるものについては、そちらの治療を行います。

思春期乳房肥大症の検査と診断と治療

乳腺外科、外科、形成外科、婦人科などの医師による診断では、視診、触診と、乳がんと鑑別するための超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳房X線検査)を行います。また、 血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。

乳腺外科、外科、形成外科、婦人科などの医師による治療では、女性の思春期乳房肥大症の場合、根本的に治療する方法がないため、希望する際は整復乳房形成術とも呼ばれる乳房縮小手術を行い、余分な脂肪組織、肥大した乳腺組織、また皮膚を取り除きます。

手術後、乳房はガーゼのような包帯で覆い、手術後のはれから排出される余分な水分を排液するためのドレーンチューブを乳房に留置することもあります。通常、特別な軟らかいブラジャーを着用できるようになるまでには1週間ほどかかり、数週間は着用する必要があります。また、はれが完全にひくまでに数カ月かかります。

男性の思春期乳房肥大症の場合、原則的には経過観察のみで薬物療法などの治療は必要ありません。痛みがひどい時は、状況によって非ステロイド系の消炎鎮痛剤を使い、痛みを和らげます。

女性のように乳房が大きくなることで悩んでいる際は、女性の場合と同じく、乳房縮小手術を行い、肥大した乳腺の組織をほぼ全部、または一部切除します。

手術後、乳腺を切除した部分に空洞ができるため、血液がたまって血腫ができた場合は、ドレーンチューブを留置します。細菌が感染した場合は、抗生物質を投与したり、乳腺を切除した部分を洗浄したりしながら経過をみていきます。乳頭部や乳輪の血流障害や皮膚の壊死が起こった場合は、皮膚がゆっくり覆うのを待つ必要があります。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...