2022/08/14

🇩🇴新生児ヘルペス脳炎

新生児が単純ヘルペスウイルスに感染して脳炎症状を現す疾患

新生児ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペス)あるいは単純ヘルペスウイルス2型(性器ヘルペス)の初感染時に発症し、脳炎症状を現す疾患。

新生児ヘルペス脳炎の感染ルートは、胎内感染、産道感染、出生後の感染の3つが考えられています。

胎内感染は胎児感染とも呼ばれ、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、子宮の中にいる胎児も垂直感染するもの。発生頻度は、あまり多くはありません。

産道感染は、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、新生児が生まれる時に通る産道で垂直感染するもの。この感染ルートによる発生頻度が、一番多くなっています。母親が単純ヘルペスウイルスに初感染だった場合には、新生児への感染率もさらに高くなります。

出生後の感染は、新生児が生まれた後に水平感染するもの。単純ヘルペスウイルスに感染して口唇ヘルペスなどを持つ母親や父親、医療従事者、お見舞いにきてくれた人から、キスなどを通じて感染します。

新生児ヘルペス脳炎を発症した新生児の症状は、単純ヘルペスウイルスが増殖する場所により、全身型、中枢神経型の2つに分類されます。

全身型の新生児ヘルペス脳炎は、単純ヘルペスウイルスが血液を介して全身の臓器に広がるもの。出生後2~7日で発症することが多く、授乳力の低下、微熱、活動性の低下などの症状がみられます。無呼吸や、皮膚が黄色になる黄疸(おうだん)がみられることもあります。必ずしもヘルペスの特徴である水疱(すいほう)が皮膚や口、目などにみられるわけではありません。

予後が悪く、治療で抗ウイルス剤が使用可能になった現在でも、約10パーセントの新生児が死亡しています。生存した場合も、高い確率で重度の後遺症を残します。

中枢神経型の新生児ヘルペス脳炎は、単純ヘルペスウイルスが血液を介して脳関門を通過し、脳内に到達するもの。全身型に比べて遅く、出生後11日ほどで発症し、授乳力の低下、活動性の低下や微熱、けいれんなどの症状が現れます。全身型と同様に、必ずしも水疱がみられるわけではありません。

この中枢神経型でも、運動まひや知的障害、てんかんなどの後遺症を残すことがあります。

新生児ヘルペス脳炎においては、単純ヘルペスウイルス1型の感染が単純ヘルペスウイルス2型の感染より2倍多いとされています。

新生児が母乳やミルクを飲む量が少なくなったり、元気がなくなったり、微熱が出たりという症状が出た際は、小児科、産婦人科を受診することが必要です。

新生児ヘルペス脳炎の検査と診断と治療

小児科、産婦人科の医師による診断では、臨床症状から新生児ヘルペス脳炎が疑われる時には、速やかに治療を開始することが一般的です。

血液検査、髄液検査、頭部CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うこともあります。血液検査では、肝機能異常、LDH(乳酸脱水素酵素)増加を高頻度に認めます。髄液検査では、ウイルス分離法ないしPCR法という遺伝子検査で採取した髄液を調べると、単純ヘルペスウイルスのDNAが検出されます。頭部CT検査などの画像診断では、局在性脳炎のみならず、しばしば全脳炎の様相を確認します。

小児科、産婦人科の医師による治療では、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤を長期間にわたって点滴注射し、水疱には軟こうを塗布します。栄養補給、呼吸補助、けいれんのコントロールなどの対症療法も、併せて行います。

また、妊娠中の母親が単純ヘルペスウイルスに感染したことが事前に判明した場合には、妊娠の時期によって適切な治療を行います。妊娠初期では、胎児に影響が出る可能性があるので抗ウイルス剤は使いませんが、妊娠中期くらいになれば、抗ウイルス剤を服用して治療します。

出産予定の3週間以内に単純ヘルペスウイルスに感染している場合には、分娩時の新生児への母子感染のリスクを回避するために、帝王切開による出産を選択する場合もあります。

🇬🇶新生児メレナ

消化管から出血し、血便や吐血を生じる新生児の疾患

新生児メレナとは、主に生後1日から数日に消化管から出血し、血便が出たり血を吐いたりする疾患。

この新生児メレナは従来から、血液を凝固させるために必要なビタミンKの欠乏による出血性疾患と見なされ、現在は予防のために出生当日と退院時、1カ月健診時にビタミンK2シロップを飲ませていますが、消化管からの出血にはさまざまな原因があります。

まず、仮性メレナと真性メレナの2つに分けられます。仮性メレナは、新生児が出産の際に母胎血を飲み込んだり、授乳の際に母親の乳首周辺からの出血を飲み込んで、黒色の血便を排出したり、血液を吐いたりするもの。

一方、真性メレナは、新生児の消化管自体からの出血によるもので、さらに特発性メレナと症候性メレナの2つに分けられます。

特発性メレナは、血液凝固の仕組みが障害されたもので、それ以外に原因となる疾患の発見されないもの。生まれたばかりの新生児では、生理的に凝固因子が減少した状態にあり、腸内細菌の働きが発育して凝固因子の一つであるビタミンKを作れるようになるには数日を要し、母乳に含まれるビタミンKの量も少ないので、凝固因子の減少の程度が強く起こったりすると発症します。

症候性メレナは、胃、腸管などの消化管にはっきりした疾患があって、その部分症状として血便をみるもの。消化管の疾患としては、食道炎、出血性胃炎、胃潰瘍(かいよう)、胃穿孔(せんこう)、十二指腸潰瘍、腸重積症、壊死(えし)性腸炎、細菌性腸炎、ミルクアレルギーなどがあります。

特発性メレナの多くは、生後1〜5日の間に症状が現れます。授乳とは無関係に嘔吐(おうと)が起こり、吐物には、胃液のために黒褐色に変色した血液が混じっています。便も黒いタール様です。

出血が大量の場合には、吐物や便に新鮮な血液が混じり、皮膚の色が貧血のため青白くなることもあります。へそからの出血や、皮下出血を認めることもあります。

生後3週間以降に発症すると、頭骸(とうがい)内出血を引き起こす可能性が高まり、重症だと後遺症が残ることもあります。母乳栄養児で生後2〜3カ月して頭蓋内出血を引き起こす場合は、乳児ビタミンK欠乏症といいます。

新生児メレナの検査と診断と治療

医師による診断では、仮性メレナと真性メレナを区別するアプト試験、貧血や血小板減少の有無を調べる血液検査、肝機能異常の有無を調べる検査、出血傾向の有無を調べる検査、細菌性腸炎の有無を調べる便培養、X線検査、内視鏡などにより総合的に判断し、重症度の評価を行います。

仮性メレナの場合は、治療の必要はありません。特発性メレナでは、減少した凝固因子がビタミンKの作用によって肝臓で合成されるので、治療にはビタミンKが使われます。出血の程度が強く、緊急の止血を要する時は、新鮮凍結血漿(けっしょう)輸血を行います。

そのほか、血小板輸血、胃洗浄や、制酸剤、胃粘膜保護剤、潰瘍の薬であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤の投与などが行われ、24時間以内に循環血液量の60パーセント以上の出血が続く時には外科的手術が行われます。

🇷🇸新生児溶血性黄疸

新生児の赤血球が急激に破壊され、早発黄疸や貧血などの症状が現れる疾患

新生児溶血性黄疸(おうだん)とは、さまざまな原因により新生児の赤血球が急激に破壊され、生後24時間以内に出現する早発黄疸や貧血などの症状が現れる疾患。

血液型不適合妊娠や母体の疾患によるもの、新生児の赤血球の先天異常によるもの、薬剤や感染によるものの大きく3つに、新生児溶血性黄疸は分けられます。

この中では、血液型不適合妊娠に伴う新生児溶血性黄疸が最も多くみられ、母親と新生児の間のABO式血液型不適合、およびRh式血液型不適合が代表的です。

ABO式血液型不適合は、O型の母親がA型もしくはB型の子供を妊娠した場合に起こるものです。このABO式血液型不適合は全出生の約2パーセントに認められ、ABO式血液型不適合溶血性黄疸の発症頻度は3000人に1人です。

Rh式血液型不適合は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を妊娠した場合に起こるものです。Rh式血液型不適合は、ABO式血液型不適合に比べて重症化することが多くなっています。

どちらの場合も、新生児の血液型抗原が母親に欠如している場合、その血液型抗原に感作されて、これに対する抗体が母親の血液中にできます。この抗体は、流産や出産時の胎盤剥離(はくり)の際に、少量の胎児赤血球が母体の血液に入ってできることが多いため、普通、初回の妊娠では起こりません。

2回目以降の妊娠中には、母親の血液中の抗体が胎盤を通過して胎児の血液中に入ると、抗原抗体反応が起こり、胎児の赤血球が破壊(溶血)される際に、その中のヘモグロビン(血色素)から作られる大量のビリルビン(胆汁色素)ができてしまうことがあります。ビリルビンが胎児の体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなる黄疸を来します。

ABO式血液型不適合溶血性黄疸は、初回の妊娠から起こり、第1子から発症する可能性もあります。一方、Rh式血液型不適合溶血性黄疸は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を産み、次回の妊娠で胎児がRh陽性である場合に問題になります。日本人のRh陰性の頻度は、約0・5パーセントとされ、200人に1人です。

なお、輸血歴のある女性が輸血血液に感作され、妊娠出産時に特殊な血液型不適合を示す可能性もあります。

赤血球の破壊(溶血)は、胎児や新生児に貧血をもたらすほか、出生後の新生児に重症黄疸をもたらします。

妊娠中は、大量にできたビリルビンが胎盤を通じて母体へ排出されるため、胎児の黄疸は軽くてすみます。ところが、破壊(溶血)が強い場合は、貧血によって胎児水腫(すいしゅ)となり、胎内で死亡することもあります。

新生児溶血性黄疸の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、ABO式、Rh式血液型など母子間の血液型不適合の有無を調べます。母子間に血液型不適合があり、母体血液中に胎児の赤血球に感作された結果生じた抗体が認められた場合や、新生児の赤血球に胎盤を通して移行してきた母親由来の抗体が認められた場合に、診断が確定します。

小児科の医師による治療では、新生児の血液中のビリルビン値により、光線療法や、免疫グロブリンの点滴静注を行います。重症例では、交換輸血が必要です。

光線療法は、新生児を裸にして強い光を照射することで、ビリルビンをサイクロビリルビンに化学変化させる治療法です。サイクロビリルビンは尿によって排出されるため、体の中のビリルビンは速やかに減少します。強い光線による視神経の障害を避けるため、眼帯で遮光する必要がありますが、光線治療は長時間受けても副作用はみられず、有効な治療法です。

光線療法でビリルビン値が下がらない場合には、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。

免疫グロブリンの点滴静注は、第2子以降のRh式血液型不適合溶血性黄疸を予防するための治療で、第1子出産直後に、抗Rh抗体を含むγ(ガンマ)グロブリンを母体に点滴静注し、2回目以降の妊娠の際に胎児の血液中で抗原抗体反応が起こらないようにします。

🇷🇸口内炎

さまざまな原因により、口の中や舌の粘膜に炎症が起こった状態

口内炎とは、さまざまな原因により、口の中や舌の粘膜に起きる炎症の総称。

口の中に原因があって、比較的広い範囲の粘膜に炎症が起こる場合と、全身的な疾患の症状として口の中の粘膜に炎症が起こる場合があります。原因が不明なものも少なくありません。

一般に、口の中の傷は唾液の作用によって治りやすいといわれています。また、食物をかみ下す機械的刺激、冷たいアイスクリームや熱い茶やスープなどの温度刺激にも耐える頑丈な構造になっていながら、口の中に炎症が起こるということは、よほど重大な病変ではないかと思われがちですが、一部のがんや難病と呼ばれるベーチェット病、エイズ(後天性免疫不全症候群)の症状としてできた口内炎でもない限り、大部分の口内炎は心配のないものです。

口内炎を分類すると、症状の違いによって多くのものに分けられます。見た目からは、カタル性口内炎、アフタ性口内炎、潰瘍(かいよう)性口内炎などに分類され、痛みの有無からは、有痛性口内炎と無痛性口内炎に分類されます。

口の中の粘膜に炎症が生じると、普通は薄いピンク色の粘膜が赤くなって、カタル性口内炎、紅斑(こうはん)性口内炎という状態になります。発赤の形や大きさもまちまちで口腔(こうくう)粘膜全体に発生しますが、口唇や口角に多くみられます。

さらに炎症を放置すると、腫脹(しゅちょう)を起こしたり、粘膜の表面がただれたびらんを起こしてびらん性口内炎となります。時には、粘膜が深くえぐれた状態となって潰瘍性口内炎となります。粘膜にできた円形の浅い潰瘍をアフタといい、口腔内にアフタが多発した状態をアフタ性口内炎といいます。

ウイルスや細菌の感染が原因で起こる口内炎もあります。単純ヘルペスウイルスの感染が原因のヘルペス性口内炎や、カビ(真菌)の一種であるカンジダ菌の増殖が原因のカンジダ性口内炎などが相当します。

水疱(すいほう)ができることから始まる口内炎もあり、天疱瘡(てんぽうそう)やヘルペス性口内炎などが相当します。水疱が破れると、びらん、アフタ、潰瘍となります。

そのほかにも、梅毒、淋病(りんびょう)、クラミジアなどの性行為感染症による口内炎も知られています。特定の食べ物や薬物、金属が刺激となってアレルギー反応を起こすアレルギー性口内炎、長期間にわたる喫煙の習慣によって起こるニコチン性口内炎もあります。

有痛性口内炎には、症状として痛みを伴う口内炎が分類されます。多くの場合、口内炎には痛みが伴うのでほとんどが有痛性口内炎に属するといえます。無痛性口内炎には、痛みが起こらない口内炎が分類されます。ほとんどの口内炎は痛みを伴うため、まれにしか発生しない口内炎であるといえます。

口内炎の自覚症状としては、初めは口が荒れたり、極端に熱い物、冷たい物が染みて痛い程度ですが、進行すると接触痛が強くなり、食事がとれない、飲み込みにくい、しゃべりにくいなどの症状が出ます。

口内炎の検査と診断と治療

口腔外科、歯科口腔外科、耳鼻咽喉(いんこう)科、内科などの医師による診断では、無痛性口内炎であれば膠原(こうげん)の一つである全身性エリテマトーデスを疑い、免疫血清や血液、尿の検査を行います。有痛性口内炎であれば、ベーチェット病などの基礎疾患が原因のこともあり、アフタ性口内炎などとの区別が難しいため、基礎疾患の検査を行います。

口腔外科、歯科口腔外科、耳鼻咽喉科、内科などの医師による治療では、原因によって具体的な治療法が異なるものの、多くの口内炎に共通する原則的な手当ても行います。

局所的には、うがい薬や軟こうが用いられます。ウイルスや真菌感染のように原因がわかっている場合には、それぞれに効く抗ウイルス剤、抗真菌剤を使用します。全身的な基礎疾患によるものでは、それぞれに応じた薬を使用しますが、その場合でも口の中を清潔にすることが大切です。

アフタ性口内炎などの小範囲のものについては、ステロド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の入ったケナログ、アフタゾロンなどの口腔用軟こう、アフタタッチなどの付着性の錠剤による局所療法を主体に行います。抗アレルギー剤、ビタミン剤、鎮痛消炎剤、漢方薬などの内服治療を施すこともあります。

予防としては、体力の低下時に口内炎を発症しやすいので、疲労をためずに十分な睡眠をとること、栄養のバランスのとれた食事をとること、過度の飲酒を避け、精神的ストレスをためないことが重要です。

🇩🇲高尿酸血症

プリン体が分解されてできる尿酸が、血液中で正常値を超えて高くなった状態

高尿酸血症とは、血液中の尿酸が正常値を超えて高くなった状態。

尿酸は、体内でプリン体という蛋白(たんぱく)質が分解されてできる老廃物です。プリン体は、体の中のすべての細胞に入っている遺伝子を作っている核酸という物質の中に含まれています。 細胞が死ぬ時には、プリン体は分解されて尿酸ができます。

体の中でできる尿酸のうち、約80パーセントは腎臓(じんぞう)から尿の中に溶けた状態で排出されます。正常な人の場合、尿酸は1日に約700mg作られ、同量が尿の中に溶けたりして排出されているため、体内の尿酸は常に約1200mgの一定量に保たれています。

しかし、この腎臓での尿酸の排出がうまくいかずに排出量が少なかったり、体の中で尿酸が作られすぎて排出が間に合わなかったり、あるいはその両方が起こると血液中に尿酸が増えてきます。このように血液中の尿酸が正常値を超えて高くなった状態が、高尿酸血症です。

高尿酸血症の60パーセントは、尿酸排出低下型のタイプです。遺伝や肥満が関与しているといわれており、腎不全になっても尿酸の排出が低下します。

高尿酸血症の10パーセントは、尿酸産生過剰型のタイプです。プリン体を多く含む食品を過剰に摂取したり、激しい運動を行って細胞が破壊され、体内で合成されるプリン体が増加するのが、主な原因です。白血病や炎症性疾患でも細胞が破壊され、体内で合成されるプリン体が増加します。

高尿酸血症の30パーセントは、尿酸排出低下型と尿酸産生過剰型の混合型のタイプです。

高尿酸血症の患者数は約500万人以上、潜在患者数は1600万人いるといわれています。尿酸がどのくらい体内に蓄積されているかは、血液検査の項目にある血清尿酸値で確認することができます。血清尿酸値は、一般的にメタボ健診と呼ばれる特定健康診査・特定保健指導の検査項目にも入っています。

この高尿酸血症の状態がある程度長期化すると、体液中に含まれる尿酸が異常に増え、尿酸は尿酸塩という結晶の形になって関節や腎臓などに沈着するようになります。このように高尿酸血症を基礎として、尿酸塩が関節に沈着することによって急性の関節炎を起こす疾患が、痛風です。痛風にかかると、足の親指の付け根の関節などがはれて、激しく痛みます。何回も繰り返すと、関節や骨が変形してきます。痛風の患者数は、約90万人いるといわれています。

痛風は30〜50歳代の男性に多く、95%以上は男性で占められています。女性は男性に比べて極めて少なく、発症する場合はほとんどが閉経期以降です。女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、腎臓での尿酸の排出を促進する働きがありますが、閉経期以降はエストロゲンの分泌が低下するので、血液中に尿酸がたまる傾向になるためと考えられています。

一方、高尿酸血症を基礎として、尿酸塩が腎臓の髄質や尿細管、間質などに沈着することによって腎臓の機能を低下させる疾患が、痛風腎です。特に腎臓の髄質では尿が酸性に傾いており、尿酸はより結晶化しやすくなり、それらが腎臓組織に沈着して、こぶ状の物ができ、炎症を起こします。

痛風腎の初期には、静かに進行し自覚症状が現れにくいので、気付かれません。かなり進行すると、尿酸結石ができやすくなり、それが尿路に詰まって尿管を刺激したり傷付けたりすると、腹部や背中が激しく痛んだり、場合によっては血尿も出ることがあります。

また、痛風腎を発症すると、尿細管を取り囲む間質の線維化が進む慢性間質性腎炎を示して、腎臓の機能が低下し、慢性腎不全の原因となります。

そのほかにも、高尿酸血症を基礎として、動脈硬化、心筋梗塞(こうそく)、脂質異常症、糖尿病、肥満、高血圧などの疾患を引き起こすとされています。

高尿酸血症の検査と診断と治療

内科、整形外科、リウマチ科の医師による診断では、尿酸の血液中に溶解可能な最大濃度である7・0mg/dlを正常上限とし、これを超えるものを高尿酸血症と確定します。

内科、整形外科、リウマチ科の医師による治療では、食事療法、運動療法、薬物療法を行います。

食事療法では、尿酸値を下げることを目的に、食生活全体を見直し、改善します。肉類は食べ過ぎることにより、尿を酸性に傾け尿酸が溶けにくくなりますので、野菜を多く摂取しアルカリ性に持ってゆきます。

また、魚卵、内臓類、大豆などプリン体を多く含む食品や、アルコール類、特に体内でプリン体の合成を促すビールは控えます。腎臓の機能が低下していないようであれば、尿酸の排出を促すために、水分を多く摂取することも勧められます。

運動療法では、高尿酸血症では運動がきつすぎると筋肉が壊れ、かえって尿酸を上昇させてしまいますので、他の疾患に比べて弱めの運動を行います。弱めの運動を行うことによって、尿酸の排出が促進され尿酸値が低下します。運動例は、散歩や水中歩行などです。ただし、痛風発作が起こっている場合やアルコールを飲んだ後は、運動は禁止です。

薬物療法は、食事療法や運動療法で改善しない場合や、血液中の尿酸が8・0mg/dl以上の場合に行います。薬物には、尿酸の排出を促す尿酸排泄(はいせつ)促進薬、体内で過剰な尿酸の生成を抑制する尿酸生成抑制薬、酸性尿を改善する尿アルカリ化剤などがあります。

🇱🇨更年期障害

私たち人間の一生には、年齢や生理的現象に基づいて、以下のような名称がつけられています。

 新生児期:出生から生後28日まで

 乳児期:生後28日から生後1歳まで

 幼児期:満1歳~5歳(小学校入学)まで

 学童期:小・中学生

 思春期:12歳~18歳の第2次性徴の発現する時期

 成人期:18歳以上

 更年期とは女性に特有なもので「生殖期から非生殖期への移行期」とか、「閉経前期と閉経後期」とか、「成人期から老年期に移行する時期」といわれる時期です。年齢的には、日本人女性の閉経の平均年齢が51±4歳ですから、更年期は45~55歳くらいの間となります。更年期の発来の早い人、遅い人、障害の程度の軽い人、重い人などかなり個人差があります。 

●女性ホルモン分泌の話 

 更年期障害がどうして起こるのかを解説する前に、女性ホルモンの分泌について解説します。

 女性ホルモンには卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)があり、両者とも卵巣から分泌されています。エストロゲンの主な働きは、女性らしい声や身体を作り出すとともに、乳房、皮膚、子宮、骨などの発育を促します。また、黄体ホルモンは子宮に作用します。

 女性のサイクルにおいて、エストロゲンと黄体ホルモンの分泌は、ほぼ28日周期で繰り返されます。 

●では、なぜ更年期を迎えて障害が起こるのでしょうか?

 更年期障害の原因は、ホルモン分泌異常と環境や心理・精神的な変化の二つが複合して起こります。 

1.ホルモンの異常

 女性ホルモンを分泌する卵巣の働きは、閉経前後5年に減退し、閉経後数年たった55歳頃には停止します。その結果、卵巣から分泌される女性ホルモン(エストロゲン)が減少し、影響が全身の臓器や代謝に現れます。

 卵巣の働きが低下し、女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、身体は卵巣の機能を元に戻そうとするため、卵巣を刺激するホルモンを大量に分泌します。

 卵巣を刺激するホルモンを大量に分泌しようとすることが、脳の自律神経中枢に影響を与え、自律神経失調を起こし、さまざまな症状を起こすようになります。 

2.環境や心理的・精神的な変化

 更年期を迎える年齢は、人生の転換期となることが多いのです。親の介護、子どもの受験や独立、夫の多忙などに加え、体力や性機能低下の自覚、悪性腫瘍(しゅよう)や生活習慣病などの不安など、さまざまなストレスが加わり症状を悪化させます。 

●どんな症状が現れるのか? 

 更年期障害として心身両面にわたる多彩な症状(不定愁訴)が見られます。 

1.自律神経失調症状 

 血管運動神経系障害の症状

 ほてり、冷え症、熱感、発汗、寝汗、動悸、頭痛

 運動器系障害の症状

 腰痛、肩こり、関節痛

 胃腸系障害の症状

 悪心、おう吐、腹痛、便秘、下痢、腹部膨満、食欲低下

 泌尿器系障害の症状

 頻尿 

2.精神神経系障害の症状

 イライラ、不安、不眠、記憶力減退、物忘れ、頭痛、頭重感、めまい、耳鳴り、抑うつ、気分減退、倦怠感、痺れ、知覚過敏、知覚鈍麻、蟻走感(アリが体をはうような感じ) 

3.性器系障害の症状

 腟・外陰部の萎縮、乾燥による性交障害

 これらの症状の出現頻度・程度は個人差がかなりあります。さらに、1日でも程度が異なります。これらの症状が見られたら、「そのうち治るだろう」と安易に構えずに、医療機関を訪ねて相談してください。 

●どのように診断するのでしょうか 

 更年期障害の診断は高血圧症、貧血、甲状腺機能異常、メニエール症候群、うつ病、糖尿病、子宮筋腫、子宮ガンなどの病気がないことを、診察や検査で確認したのちに診断されます。

 診断は、以下のような条件があれば、まず更年期障害としてよいでしょう。 

* 更年期に該当する年齢である

* 訴えが心身両面にわたり、多彩かつ複雑である

* 性器症状を除いて、症状に対応する病気がない

* 自律神経機能検査の結果が不安定である

* ホルモン療法が有効である  

●どのように治療するのでしょうか 

 更年期障害の治療方法には、ホルモン療法と非ホルモン療法があります。患者さんの症状により治療法が異なります。正確に症状を医師に伝えて治療方法を決めてもらってください。 

1.ホルモン療法

 更年期障害を抑えるエストロゲンと、エストロゲンの働きを抑える黄体ホルモンを用いた治療が行われます。ホルモン療法は、のぼせ、異常発汗、冷え症などを伴う“血管運動神経系障害”と肩こり、腰痛、関節痛を伴う“運動器系障害”に有効で、高齢者になると一層進むコレステロールの増加による動脈硬化や心臓の病気の発病、骨粗鬆症の予防にも有効です。

[更年期以降の活動能力] 

 女性は、一般に女性ホルモンの分泌が減少し始める前の、40歳代前半に心身の活力のピークを越え、閉経の頃から際立って低下していきます。しかし、ホルモン療法を受けた人は活動力もさほど衰えず、平均寿命も、やや長くなるというデータがあります。 

〔具体的な治療方法〕

 具体的には以下の四つのホルモン療法があります。 

* エストロゲンを定期的に服用する:この治療はすぐに効果が現れるのですが、エストロゲンのみを長期に服用すると、子宮ガンの発生する危険性があり長くは行われません。

* エストロゲンと黄体ホルモンを定期的に併用して服用する:この治療は更年期障害で最も広く行われている方法です。

* エストロゲンを持続して服用する一方、黄体ホルモンを定期的に服用する:この治療は重症な人に行われます。

* エストロゲンと黄体ホルモンを持続して服用する:この治療は高齢者になった人に行われます。 

 その他にエストロゲンと男性ホルモンの併用療法も行われることがあります。また、性器系障害の強い人には、局所ホルモン療法が有効な場合があります。

 更年期障害に対するホルモン療法は、子宮ガン・乳ガンにかかっている人、肝臓障害を持っている人、糖尿病で薬を使っている人、血栓のできやすい人は、元の病気を悪化させる恐れがあり行われません。

 ホルモン療法は有効ですが、薬の量、副作用など専門的な注意と管理が必要です。主治医とよく相談しながら治療を継続してください。 

2.非ホルモン療法

 非ホルモン療法には薬物療法とカウンセリング(心理療法)があります。

 薬物療法は頭痛、不安、イライラ、不眠、うつ状態、手足のしびれ、知覚感覚の鈍麻、蟻が身体をはうような感じ(蟻走感)などに見られる“精神神経系障害”に有効で、抗うつ剤や自律神経調節剤、また漢方薬も用いられることがあります。

 薬物に頼ることなく、カウンセリング(心理療法)を受け、生活に張りや目標を定め、自信を持つだけで、症状が軽快する人もいます。 

●更年期を迎えたら

 更年期および更年期以降になると、ホルモンの変化(エステロゲンの減少)によりさまざまな病気を起こしやすくなります。更年期出血、肥満、糖尿病、子宮ガン、卵巣ガン、乳ガン、老人性腟炎、コレステロールの増加による動脈硬化や心臓の病気、骨粗鬆症などの頻度が増します。

 適度な運動、バランスのとれた規則正しい食事、定期的に検診(住民検診や人間ドックなど)を受けるなど、健康管理にはこれまで以上に気をつけることが大切です。

[男性の更年期障害について]

 女性に特徴的な現象とされてきた更年期障害について、最近では、男性にも見られるという学説があります。

 男性諸氏の場合には、女性ほど症状が顕著ではありませんが、45歳すぎに性欲が急激に減退したり、うつ病状態が見られます。これらの症状は、男性の更年期障害によるといわれています。

 今後、男性の更年期障害の研究も進み、解明されることが期待されます。

 以上、更年期障害について解説しました。皆さんの健康を守るために少しでもお役に立てれば幸いです。わからない点や心配な点などがある場合は、お近くの掛かり付け医などの医療機関にご相談ください。

🇷🇸紅斑性狼瘡

膠原病の一つで、顔面などに生じる紅斑を主症状とする疾患

紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とは、顔面などに生じる紅斑(こうはん)を主症状とする疾患。エリテマトーデスとも呼ばれます。

膠原(こうげん)病の一つで、自己免疫性疾患のうち最も代表的なものです。

急性で全身が侵される全身性紅斑性狼瘡と、慢性で皮膚に限局して円形の紅斑が現れる円板状紅斑性狼瘡に大別され、この間に中間型、移行型があります。

全身性紅斑性狼瘡は全身に症状が現れる膠原病の一つ

全身性紅斑性狼瘡は、全身に症状が現れる疾患で、代表的な膠原病の一つ。全身性エリテマトーデスとも呼ばれます。

現在の日本では10万人に7〜8人の発症率で、発症しやすい年齢は20歳〜40歳、その90パーセントは女性です。

発症させる原因は、まだ解明されていません。体質、素因、免疫の異常、環境因子が関係して発症すると推定されています。免疫の異常は、自分の体の成分に対して反応する異常であるために、自己抗体が血液中にみられます。特に抗核抗体、中でもDNA(デオキシリボ核酸)に対する抗体が血液中に現れるのが、特徴です。

全身性紅斑性狼瘡を発症させる誘因には、海水浴やスキーなどで強い紫外線を浴びたり、薬剤、ウイルス感染、外傷、ストレス、さらには妊娠、出産などがあります。

全身性紅斑性狼瘡の最も特徴的な症状は、皮膚の露出部に赤い斑点である紅斑が現れることです。顔では鼻を中心に両側の頬(ほお)にかけて、蝶(ちょう)が羽を広げたような形の蝶型紅斑ができます。また、手のひら、つめの周囲、足の裏、胸にも紅斑がみられます。

紅斑は厚く盛り上がることもありますが、痛みやかゆみはありません。ただし、紅斑が治った跡に瘢痕(はんこん)が残ったり、色素沈着や色素脱失になることがあります。

髪の毛が抜けたり、つめが変形したり、日光に当たるとひどい日焼けをして火膨れができる光線過敏症などもみられます。寒冷刺激や精神的ストレスに反応して、手や足の指が真っ白になったり、青紫色になったりし、しびれ、冷感、痛みなどの症状を伴うレイノー現象も、よくみられます。

内臓に現れる症状では、腎(じん)臓がよく侵されます。これはループス腎炎と呼ばれ、むくみや蛋白(たんぱく)尿がみられますが、初期には症状として出にくいため要注意。心膜や胸膜に炎症が起こることもあり、胸痛、発熱を起こします。

脳や神経に障害が起こると、けいれん、まひがみられることもあります。関節痛もみられますが、関節リウマチのような関節の変形、運動機能の障害はありません。

全身性紅斑性狼瘡の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、免疫血清や血液の検査を行います。免疫血清検査では、全身性紅斑性狼瘡に高頻度にみられる血清中の抗核抗体を調べます。また、血液検査によって、貧血の程度や白血球減少、血小板減少の有無を調べます。

そのほか、尿や血液の検査によって、ループス腎炎やネフローゼ症候群、腎臓の機能障害が起こっていないかを調べます。また、侵された臓器の病状を知るために、必要に応じてX線検査、CT検査、MRI検査、心電図などの検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療においては、内臓の炎症にはステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与され、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓に障害が現れた場合には、免疫抑制剤が用いられたり、血漿(けっしょう)交換療法が行われることもあります。

ステロイド薬の使用により、予後はかなり改善しましたが、治療に用いられる薬はいずれも副作用があります。加えて、いつ、どれぐらいの期間をかけて投与量を減らすかが非常に難しいため、医師の指示を守って治療を続けることが大切。腎臓の機能低下が起こった場合には、血液透析が必要になります。

生活上の注意としては、全身性紅斑性狼瘡を発症させる誘因があると悪化するため、強い紫外線や感染症には細心の配慮が必要です。治療のためにステロイド薬を使うと感染症にかかりやすくなるため、清潔を心掛け、インフルエンザが流行している時期は人込みを避けるなど、注意します。

比較的若い女性がかかることが多いため、妊娠や出産の問題があった際には、医師に相談します。病状が安定していれば、妊娠、出産は十分に可能です。また、経済的な問題では、全身性紅斑性狼瘡は厚生労働省の特定疾患に認定されているので、医療費の助成を受けることができます。

円板状紅斑性狼瘡は皮膚限局型紅斑性狼瘡の一つ

円板状紅斑性狼瘡は、日光露出部である頭部、顔面、四肢などに、円板状の紅斑が好発する原因不明の皮膚疾患。円板状エリテマトーデス、慢性円板状エリテマトーデスとも呼ばれます。

膠原病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性紅斑性狼瘡と異なり、皮膚症状のみ出現する皮膚限局型紅斑性狼瘡の1つであり、慢性型のサブタイプに相当します。皮膚限局型紅斑性狼瘡には、急性型、亜急性型、中間型のサブタイプもあります。

円板状紅斑性狼瘡の症状は、類円形ないし不整形で、魚の鱗(うろこ)のようにはがれる鱗屑(りんせつ)を伴う円板状の紅斑が多発することを特徴とします。

円板状の紅斑は境目がはっきりしていて、頬、鼻、下唇、頭部など、日光が当たる部位にできます。皮膚面より少し盛り上がり、中心部は硬くなったり委縮していたりして、引きつったようになっています。口唇に症状が出る時はびらん、頭皮に症状が出る時は脱毛を伴うことがあります。また、かいたり刺激を与えたりすると、その部位に新たな円板状の紅斑が広がる傾向にあります。

この皮膚病変は、治癒過程で色素沈着ないし色素脱失、委縮を生じ、瘢痕を残します。ほかの症状として、発熱や倦怠(けんたい)感がみられることもあります。

全身性紅斑性狼瘡と異なり、全身の臓器障害はみられませんが、一部が全身性紅斑性狼瘡へ移行することがあります。全身性紅斑性狼瘡へ移行すると、円板状の紅斑が全身に広がり、内臓の炎症、腎臓の機能障害が起こります。

円板状紅斑性狼瘡は、35~45歳の女性が発症しやすいとされています。

現在のところ、円板状紅斑性狼瘡を発症する原因はわかっていません。しかし、紫外線や寒冷刺激、美容整形、妊娠・出産、タバコ、ウイルス感染、薬物などが関係していると考えられています。

全身性紅斑性狼瘡は、免疫システムが自己の細胞を攻撃する自己免疫が原因だとされていますが、円板状紅斑性狼瘡は自己免疫とは無関係と考えられています。皮膚が抗原刺激や物理的刺激を受けることで、白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種であるT細胞が増殖し、細胞間で情報を伝えるタンパク質であるサイトカインの生成が促進され、症状が現れると推測されています。遺伝との関係は、親族内や双子で発症する例が少ないことから、可能性は低いと考えられています。

円板状の紅斑ができて治りにくい場合、円板状紅斑性狼瘡の可能性があります。日光を避けて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診しましょう。治った後でも、まれに皮膚がんである有棘(ゆうきょく)細胞がんの発生母地となることがあるため、症状が軽くてもしっかり治療をすることが大切となります。

円板状紅斑性狼瘡の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診をした上で、皮膚生検といって皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、円板状紅斑性狼瘡と確定します。

血液検査を行うこともありますが、発症者の多くはほかの臓器に変化を伴わず正常です。しかし、一部の患者では、血液沈降速度(血沈)の高進、抗核抗体陽性、白血球減少がみられ、全身性紅斑性狼瘡に移行することがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、瘢痕が残った皮膚病変を治すことはできませんが、新しい円板状の紅斑が広がらずに限られた範囲にできている場合は、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。

また、内服薬ではヒドロキシクロロキンなどのマラリア治療薬が皮膚症状に有効であり、欧米では第1選択薬の1つです。以前の日本では副作用のために使用が禁止され保険適応がありませんでしたが、2015年に承認されました。ヒドロキシクロロキンの長期間の効果としては半数弱の人に有効であり、残りの半分強は、内服のステロイド薬などが必要になります。

免疫抑制剤の1つであるレクチゾールやミゾリビンの内服も有効なことがわかっていますが、貧血などの副作用が現れやすいため、慎重に使用する必要があります。

全身性紅斑性狼瘡を合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与し、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓の障害に対して、免疫抑制剤を用いたり、血漿交換療法を行うこともあります。

円板状紅斑性狼瘡の悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、サングラス、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。

寒冷による刺激も極力受けないほうがいいため、しっかりと防寒することが重要で、夏場は清潔な服を着る、通気性のよい天然素材の洋服を着るなどの対策も大切です。加えて、ストレスを避け、適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。

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