2022/08/14

👣足趾多趾症

足の指の数が6本以上となる先天性疾患

足趾多趾(そくしたし)症とは、足趾、つまり足の指の数が6本以上となる先天性疾患。完全に先天性のもので、後天的な発生はありません。

第5趾(小指)の外側に過剰な足指が発生することが多く、第1趾(親指)の外側などほかの足指にみられることもあります。ほぼ完全な形の過剰な足指が存在する場合から、痕跡(こんせき)的なものや、紐(ひも)状の皮膚でつながった浮遊状のものもあります。隣接した足指と皮膚性に癒合して合趾(合指)を伴うことも、多くみられます。

多くの場合は、特定の原因は不明ですが、足の発生にかかわる遺伝子の変異が関係する可能性があり、染色体異常が原因のことがあります。妊娠中の喫煙などの環境因子との複合作用も、原因として考えられています。

胎児期に足指が分離形成される段階で、1本の足指が2本以上に分かれて過剰な足指が形成されますが、染色体異常に伴う足趾多趾症や、さまざまな身体的異常を引き起こす先天異常症候群に伴う足趾多趾症は、体のほかの部分の先天異常を合併する場合があります。

生後すぐ、あるいは胎児期の超音波検査で、足指の数の過剰は認められます。足の先天性疾患としては比較的多く、2000人に1人の頻度でみられます。

左右の足に、足指の数の過剰が同時に発生する場合、片方の足だけに、足指の数の過剰が発生する場合とさまざまで、 左右差がある場合もあります。

症状の程度も、軽い場合と重い場合があります。過剰な足指の基部が末節骨に存在し、かつ骨成分を含まないものでは、関節や骨の変形が少なく、機能障害はほとんど存在しません。過剰な足指の基部が基節骨や中節骨に存在し、かつ骨や関節がほかの指と共有されているものでは、機能障害が生じ、足指の正常な屈曲、伸展に支障を来します。

生後すぐ、足趾多趾症は産科で気付かれることが多いため、足指以外に内臓疾患の合併がないか、小児科でも診てもらうことが勧められます。また、整形外科などでも診てもらい、美容的、機能的な観点から手術を行うべきかどうか相談することが勧められます。

足趾多趾症の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、視診で容易に判断できます。骨の状態をみるためには、X線(レントゲン)検査を行います。

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、浮遊状の過剰な足指である場合、糸で結紮(けっさつ)して壊死(えし)に陥らせて切除します。

それができない場合、過剰な足指を外科的に切除します。一般的に、過剰な足指の基部が末節骨に存在し、関節や骨の変形が少なく機能障害の少ない場合は、生後6カ月以降が手術時期の目安となり、過剰な足指の基部が基節骨や中節骨に存在し、機能障害の改善が重要な意味を持つ場合は、1歳以降が手術時期の目安となります。

過剰な足指が小さく、機能障害の少ない場合の手術では、切除を行うのみで十分です。機能障害の改善が重要な場合の手術では、過剰な足指を切除した後、残した足指の向きを金属ピンや靭帯(じんたい)縫合などを用いて矯正したり、関節形成を行います。骨の変形を矯正するため、骨切り術を行うこともあります。

合趾を伴う場合は、隣接した足指との分離を同時に行います。分離する際には、足指の側面の皮膚が欠損するために、足の内くるぶし付近の皮膚を採取し植皮を行います。

手術後は治療内容により前後しますが、約4週間のギプス固定を行います。その後も、テーピングなどを行う場合もあります。機能的な問題があれば、リハビリテーションを行います。

靭帯縫合や関節形成を行った場合、成長とともに変形が出現する場合があるため、外来にて手術後も定期的にチェックを行います。出現した変形を矯正するために、再度手術を行う場合もあります。

👣足趾短縮症

足の甲の部分に5本存在する中足骨が先天的に短縮する疾患

足趾(そくし)短縮症とは、先天性足部疾患の一つで、足の甲の部分に5本存在する中足骨(ちゅうそくこつ)が先天的に短縮する原因不明の疾患。先天性足趾短縮症、足趾骨短縮症、中足骨短縮症などとも呼ばれます。

比較的まれな疾患で、女児に多く認められます。先天的に短縮する骨は足の甲の部分の中にあって外観ではわからない中足骨ですが、実際には足指(足趾)が短縮して、引っ込んでいるように見えます。

成長するに従って、中足骨に生じる成長障害が顕著となるために、ほとんどは小学校高学年や中学生のころに自覚します。

両側性にみられることが多く、特に足指の第4指に多くみられます。第4指以外の足指に生じることもあり、また1つの足指のみならず複数の足指に生じることもあります。

一般に、短縮が軽度であれば、機能的な障害はほとんどなく、歩行自体が障害されることも、スポーツ活動に支障を来すことも、痛みが生じることもありません。

短縮が顕著であれば、隣接する足指の外反変形や内反変形を引き起こし、隣接する足指が短くなった足指の透き間に倒れ込むような現象がみられます。時には、隣接する足指の中足骨骨頭に一致して、足裏に有痛性のたこができることもあります。

足趾短縮症は、美容上の問題で発症者を悩ませる深刻な疾患といえます。特に、思春期を過ぎた多感な時期の男女において、水泳授業や海水浴などで素足になることの多い季節になると、ついつい人目が気になり行動が消極的になってしまい、有意義な日常生活を送ることに支障を来すという場合は、整形外科、ないし足の外科を受診することが勧められます。

足趾短縮症の検査と診断と治療

整形外科、ないし足の外科の医師による診断では、視診により足指の短縮が明らかで、時に隣接する足指の変形が認められるため、容易に判断できます。

X線(レントゲン)検査を行うと、短縮した足指に相当する中足骨が短縮していること、それによって足指の付け根に位置する中足趾節関節(MTP関節、母趾球)がほかの足指に比べて近位に位置していることを認め、時に隣接する足指が軽度に変形していることを認めます。

整形外科、ないし足の外科の医師による治療では、発症者や家族の希望、学業や仕事の都合を参考にして手術時期を決定し、中足骨を延長する手術を行うことが第1選択となります。

実際に手術している年齢は、5歳前後から30歳前後とかなりの幅があります。

早い時期に手術を行った場合、まだ足が小さいため高度な手術操作が要求される一方、骨の再生のスピードが速いという利点があります。逆に、骨の成長が終了した成人で手術を行った場合、足が大きく手術は比較的容易である一方、骨の再生のスピードがやや緩慢で治療期間が長くなりがちという問題が生じます。

中足骨を延長する手術には、骨移植法(一期的延長法)と骨延長法(仮骨延長法)の2つがあります。

骨移植法は、短縮した中足骨を骨切りし、一期的に骨切り部を延長した後に開いた透き間に、腰の部分などから取った骨を移植する方法です。一期的に延長するため、神経血管障害が生じる恐れがあるので、延長可能な距離が10ミリまでと制限されます。

骨延長法は、5〜6センチ程度の長さの創外固定器というものを用いて、短縮した中足骨をゆっくりと延長させてゆく方法です。骨本来の再生機能を利用して、骨切り部をゆっくりと延長させてゆくことによって、延長された透き間に少しずつ新たな骨(仮骨)が形成されてゆきます。骨移植法と比較すると、創外固定器の装着期間がやや長い面はありますが、別の部分から骨を取る必要がないという長所のため、近年では広く選択されるようになっています。

🇵🇷足舟状骨骨折

足部の内側縦アーチの頂点に位置する舟状骨に生じる骨折

足舟状骨(そくしゅうじょうこつ)骨折とは、足部の内側縦アーチ(土踏まず)の頂点に位置する舟状骨に生じる骨折。

足部の舟状骨は、船底のような湾曲をしているため、船のような格好の骨ということで舟状骨といいます。足部の内側縦アーチの頂点に位置し、また距骨(きょこつ)との間で距舟関節、距骨と踵骨(しょうこつ)との間で距踵舟関節、内側楔状骨(きつじょうこつ)と中間楔状骨と外側楔状骨との間で楔舟関節を形成しており、体重を支えたり、足のけり出しの際などに重要な骨です。

足舟状骨骨折は、受傷した部位により骨体部骨折、背側近位関節縁骨折、結節部骨折の3種類に分けられます。

骨体部骨折は、直接もしくは間接的に舟状骨に外力が加わって生じる骨折です。発生頻度としては非常にまれですが、発症した時は重症であり、ほかの2つの骨折より痛みが残存しやすいという特徴があります。

背側近位関節縁骨折は、足の裏を内反させた形で受傷しやすく、舟状骨を距舟靭帯(じんたい)に引っ張られて生じる剥離(はくり)骨折です。足舟状骨骨折の中では、最も多く生じています。

背側近位関節縁骨折と結節部骨折はともに、足関節を捻挫(ねんざ)した時に合併しやすいという特徴があります。

足舟状骨骨折を起こすと、舟状骨部の圧痛があり、明らかなはれがみられます。背側近位関節縁骨折では、足関節の内反により痛みが生じるため、歩行によって痛みが生じる場合もあります。結節部骨折では、足関節の内側、内くるぶしの後方から下方を通っている後脛骨筋の収縮、伸張により痛みが発生します。

舟状骨は内側縦アーチを形成する重要な骨であるため、受傷後の治癒が遅れると内側縦アーチの低下がみられる場合があるため、速やかに整形外科などを受診することが勧められます。

足舟状骨骨折の検査と診断と治療

>整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による診断では、問診で骨折の受傷状況を聞き、舟状骨背側に圧痛が局在していれば背側近位関節縁骨折、舟状骨内側に圧痛があれば結節部骨折を疑います。

足関節の捻挫に合併している場合は、捻挫損傷部だけにとらわれて、足舟状骨骨折を見逃さないよう注意します。また、X線(レントゲン)検査を行い、足舟状骨を3方向から撮影します。場合により、CT(コンピュータ断層撮影)検査も利用します。

整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による治療では、3種類の骨折にかかわらず、一般的には保存療法を行います。8週間程度の安静と、足関節のギプス固定によって、骨癒合を図ります。

骨体部骨折で、骨の位置が強くずれる転位があるものや、関節部ではないのに関節のように動くようになる偽関節があるものでは、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を行います。

固定による安静期間の間に、筋力の低下や骨委縮が起こるので、徐々にリハビリを開始します。

骨癒合が得られた後は、内側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になってる足底板は、内側縦アーチにかかる負荷を小さくすることができます。

🇵🇷先天性胆道閉鎖症

新生児の肝臓と腸をつなぐ胆道の内腔が詰まり、胆汁を腸に出すことができない疾患

先天性胆道閉鎖症とは、肝臓と腸をつなぐ胆道(胆管)という管の内腔(ないくう)が炎症のために詰まり、肝臓で作られた胆汁を腸に出すことができない疾患。

新生児期から発症する疾患で、先天的発生異常説、サイトメガロウイルスやレオウイルス3型などによるウイルス感染説、免疫異常説などいろいろの説があるものの、現在のところ、まだ明らかな原因は解明されていません。

母親の胎内で一度作られた胆道が、原因不明の炎症のために詰まるものが多いのではないかとされています。出生9000人から1万人に約1人の頻度で発症し、男の子の約2倍と女の子に多く発症しています。

肝臓で作られた黄色い胆汁は本来ならば、肝臓の外にある肝外胆道(胆管)である胆道、胆嚢(たんのう)、総胆管を通って十二指腸から腸管の中に流れ出ていき、食物中の脂肪の吸収を助けるのですが、先天性胆道閉鎖症では胆汁が腸管に流れなくなります。

胆汁の流れが停滞しても肝臓は胆汁を作り続けるので、行き場のなくなった胆汁成分は肝臓にたまることになります。そして、肝臓から血液の中にあふれ出て、血液中のビリルビン(胆汁色素)が過剰に増えて、皮膚や白目の部分が黄色く見える黄疸(おうだん)を起こします。

また、胆汁が腸管に流れないので便は黄色みが薄くなって灰白色便、ないし淡黄色便、薄緑色便となる一方、胆汁の分解産物が流れる尿は黄色みが濃くなって濃褐色になります。

さらに、肝臓にたまった胆汁は肝臓の組織を破壊し、進行すると肝臓は線維化して硬くなり、胆汁性肝硬変といわれる状態に至ります。

肝臓は本来ならば、再生能力の非常に高い臓器なのですが、いったん肝硬変になると線維化の産物である結合組織に再生を遮られるため、元の健康な肝臓に戻ることが困難になります。肝硬変へ進むと門脈圧高進症が起こり、これに伴って食道静脈瘤(りゅう)、胃静脈瘤、脾腫(ひしゅ)、腹水など、二次的な症状が現れます。腹水がたまると横隔膜を圧迫したり、肺内の血行障害が起こって呼吸障害が生じることもあります。

胆汁の排出障害が強いと食物中の脂肪吸収が障害され、脂溶性ビタミンの吸収も悪くなってビタミンK欠乏症を起こすほか、肝機能障害から血液凝固因子が作れなくなり、出血傾向が強くなって消化管出血や脳出血などを起こすこともあります。

新生児の黄疸と灰白色便が長引く場合は、すぐに小児科を受診することが勧められます。先天性胆道閉鎖症は、出生後8週間以内に手術することが大切で、8週間を過ぎると肝臓の線維化が進み、手術後の胆汁排出効果が悪くなります。

先天性胆道閉鎖症の検査と診断と治療

小児科、消化器外科の医師による診断では、血液検査、尿検査、便検査、十二指腸液検査、肝胆道シンチグラム、腹部超音波検査などを必要に応じて組み合わせて行います。

十二指腸液検査は、十二指腸にチューブを入れて十二指腸内の液を採取し、胆汁の有無を調べるものです、肝胆道シンチグラムは、胆汁中に排出される放射性活性物質を用いて、胆汁の流出状況を調べるものです。

小児科、消化器外科の医師による治療では、まずは肝臓で作られた胆汁が腸管に流れるようにするため、肝臓からの胆汁の出口付近と腸管を縫い合せる手術を行います。肝臓の線維化が進まないうちであれば、手術を行うことで約7割から8割で黄疸が消え、改善が認められます。

手術後は、胆汁の流出をよくする利胆剤、細菌感染を予防する抗生剤などを服用します。退院後も、利胆剤に加えてビタミン剤を服用します。

手術後も胆汁排出が認められない場合、黄疸が消失しない場合、手術後に黄疸が再発した場合、胆管炎や門脈圧高進症などを合併した場合には、最終的に肝移植を行います。

🇵🇷先天性腟欠損症

先天的に女性の腟の一部または全部が欠損した状態

先天性腟(ちつ)欠損症とは、先天的に女性の腟の一部、または全部が欠損した状態。

この先天腟欠損症の女性では、先天的な原因により腟や子宮の異常がさまざまな程度に起こります。染色体は正常女性型で、卵巣はほとんど正常にあり、女性ホルモンも正常に出ています。外陰部も正常で、女性としての二次性徴も正常です。

母親の子宮の中にいる胎児の時には、卵巣、腟・子宮・卵管、外陰部は別々に発生してきて、本来はこれらがうまくつながります。このうち、腟・子宮・卵管はミュラー管という組織が分化して形作られますが、たまたま分化が行われずに発生不全が起きると、子宮はわずかに痕跡(こんせき)を残す程度にしか発育しなかったり、腟も長さが2~3センチと短いか、全くない状態になります。これが腟欠損症です。

はっきりした原因はまだわかっていませんが、血管に異常が起こってミュラー管へ血液が流れなくなり、正常な発生ができなくなると推測されています。

先天性腟欠損症は、医学的には上部腟欠損、下部腟欠損、全腟欠損に分類されます。頻度は4000~5000人に1人とされ、そのうち95パーセントは月経を起こし得る機能性子宮を持ちません。

全腟欠損で機能性子宮を持たない場合をロキタンスキー症候群と呼び、先天性腟欠損症の中で最も頻度が高いものです。月経機能を失っている状態で、月経血の貯留による症状はなく、無月経がほぼ唯一の症状となります。卵巣からの排卵はありますが、体内で死滅して吸収され、体外に排出されるということはありません。

一部の腟欠損で機能性子宮を持つ場合には、思春期以後、月経に伴って子宮や卵管への月経血の貯留を起こすため、月経血をみないまま周期的な腹痛が出現する月経モリミナという症状が現れます。

また、機能性子宮の有無にかかわらず、普通の性行為はできません。まれに、骨の異常があることもあります。

先天性腟欠損症に気付いたら、婦人科医、ないし産婦人科医を受診してください。

先天性腟欠損症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓(じんぞう)と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、性行為ができるように人工的に膣を造る造腟手術を行います。子宮に異常を伴う場合には妊娠が不可能な場合もあり、造腟手術により性行為を可能にして精神的不具感をいやすことが治療の主眼となります。手術は、思春期以降の性的関係を持つ時期を目安に行われます。

造腟手術には数多くの術式があり、今なおさまざまな工夫が試みられています。主な術式は、フランク法、マッキンドー法、ダビドフ法、ルーゲ法の4つです。

フランク法は、腟前庭(ぜんてい)をヘガール持針器などで圧伸して腟腔(ちつくう)を形成した後、その腟腔を拡張する方法。マッキンドー法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、皮膚移植により腟壁を形成する方法。ダビドフ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、骨盤腹膜を利用して腟壁を形成する方法。ルーゲ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、開腹してS状結腸を切り離し、腟壁として利用する方法。

以上4つの方法が従来行われてきましたが、近年では腹腔鏡下手術が行われることも増えてきました。体にかかる負担を軽減し、骨盤腹膜やS状結腸を使った手術が可能となっています。

このような手術の後には、膣腔の状態を維持する必要があります。定期的な性交渉やプロテーゼ(腟ダイレーター)により、状態を保たなければいけません。プロテーゼ(腟ダイレーター)とは、筒状の拡張器具のことを指し、皮膚を伸展させて腟腔を形成する目的で使用されます。

🇩🇴新生児肺炎

新生児期に発症する先天的、または後天的な肺の感染症

新生児肺炎とは、新生児期に主に細菌やウイルスなどの病原体が肺に入り、酸素と炭酸ガスの交換を行う肺胞や肺間質など、肺の奥の領域に炎症が起きる感染症。

新生児のおよそ2パーセントが、肺炎にかかるといわれています。母親の子宮内での感染による先天的な肺炎と、生後の感染に基づく後天的な肺炎とに大きく区別できます。

母親の子宮内での感染による場合は、梅毒、風疹(ふうしん)、サイトメガロウイルス、トキソプラズマなどの原因になる細菌やウイルスが母親の血液の中を流れ、胎盤を経由して胎児の肺に侵入し肺炎を引き起こすほか、破水してから出産までに時間がかかった時や、破水がなくてもお産が長引いた時には、羊水に細菌が入り、胎児が子宮内でこの羊水を吸引して肺炎を引き起こします。

また、出産時に腟(ちつ)に存在するB群溶血性連鎖球菌、大腸菌、クラミジア、ヘルペスウイルス、カンジダなどの細菌やウイルス、真菌に接触したり、吸い込んだりすることによっても肺炎を引き起こします。

先天的な肺炎の場合、出生直後から数時間以内、あるいは数日以内に発症します。

新生児は、仮死状態で生まれることもあります。生まれた時には異常がなくても、間もなくチアノーゼ、浅く速い呼吸、うめき声、元気がなく授乳力が弱いなどの全身症状が目立ちます。発熱することは少なく、せきもありません。

胃液の中に多数の白血球があったり、へその緒の炎症を伴うことがしばしばあります。

生後の感染に基づく場合は、生後3〜4日過ぎると母親など周囲の人たちから飛沫(ひまつ)感染したり、乳や吐物を気道内に吸い込んで発症することがあります。

次第に元気がなくなり、顔色が悪く、授乳力も弱く、呼吸困難を示してきます。腹が膨れて、吐くこともあります。

また、肺炎が進んで、二重になっている肋膜(ろくまく)の間に膿(うみ)がたまって膿胸(のうきょう))を起こしたり、空気がたまっって気胸を起こしたり、肺胞が破れてくっ付き合い、風船のよう膨れ上がる肺気腫(しゅ)を起こしやすいのが特徴です。

新生児では、肺炎に共通するせきや発熱という症状なしに、急に呼吸困難が現れることがあるので、早急に小児科を受診しなければなりません。

新生児肺炎の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、聴診器を胸に当てて聞くと、プツプツという水泡がはじけるような音がしたり、呼吸音が聞こえなくなったり、気管支を通る空気の音が聞こえたりします。肺炎の初期や間質性肺炎では、これらの特徴がみられないこともあります。

聴診のほかに、胸部X線検査と血液検査を行って、肺炎の炎症を確認します。肺に炎症が起こっていると、胸部X線検査で白っぽい影が認められ、血液検査で白血球の増加、CRP(体内に炎症が起きたり組織の一部が壊れたりした時に現れる蛋白〔たんぱく)〕質の一種)の上昇、赤血球の沈降速度(赤沈)の高進が認められます。

さらに、たんの検査で原因となっている細菌やウイルス、真菌を特定します。必要に応じて、CT(コンピュータ断層撮影)検査、胸水検査、呼吸機能検査、嚥下(えんげ)検査、細菌培養検査を行います。

小児科の医師による治療では、呼吸困難に対しての酸素補給、体の水分と栄養分を補給するための点滴による輸液、原因となっている病原体に対する抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤の使用を中心に行います。

また、輸血やガンマグロブリンの注射、強心剤の投与を行うこともあります。膿胸や気胸を起こしている場合は、チューブを入れて膿や空気を抜くなど、合併症に応じた処置を行います。

🇩🇴新生児ヘルペス

新生児が単純ヘルペスウイルスに感染して、生後2週間以内に発症する疾患

新生児ヘルペスとは、新生児が単純ヘルペスウイルスに感染して、生まれてから2週間以内に発症する疾患。新生児単純ヘルペスウイルス感染症とも呼ばれます。

新生児ヘルペスの感染ルートは、胎内感染、産道感染、出生後の感染の3つが考えられています。

胎内感染は胎児感染とも呼ばれ、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、子宮の中にいる胎児も垂直感染するもの。発生頻度は、あまり多くはありません。

産道感染は、母親が単純ヘルペスウイルスに感染した場合に、新生児が生まれる時に通る産道で垂直感染するもの。この感染ルートによる発生頻度が、一番多くなっています。母親が単純ヘルペスウイルスに初感染だった場合には、新生児への感染率もさらに高くなります。

出生後の感染は、新生児が生まれた後に水平感染するもの。単純ヘルペスウイルスに感染して口唇ヘルペスなどを持つ母親や父親、医療従事者、お見舞いにきてくれた人から、キスなどを通じて感染します。

新生児ヘルペスを発症した新生児の症状は、単純ヘルペスウイルスが増殖する場所により、全身型、中枢神経型、皮膚型(表在型)の3つに分類されます。

全身型の新生児ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスが血液を介して全身の臓器に広がるもので、新生児ヘルペスの半分以上を占めます。出生後2~7日で発症することが多く、授乳力の低下、微熱、活動性の低下などの症状がみられます。無呼吸や、皮膚が黄色になる黄疸(おうだん)がみられることもあります。

この全身型の場合、必ずしもヘルペスの特徴である水疱(すいほう)がみられるわけではありません。しかも、予後が悪く、治療で抗ウイルス剤が使用可能になった現在でも、約40パーセントの新生児が死亡しています。生存した場合も、高い確率で重度の後遺症を残します。

中枢神経型の新生児ヘルペスは、全身型に比べ発症が遅く、活動性の低下や微熱、けいれんなどの症状が現れます。全身型と同様に、必ずしも水疱がみられるわけではありません。この中枢神経型では、新生児ヘルペス脳症などの後遺症を残すことがあります。

皮膚型(表在型)の新生児ヘルペスは、皮膚や口、目などに紅斑(こうはん)を伴う水疱がみられるのが特徴で、予後は良好です。この皮膚型は、新生児ヘルペスの2割程度を占めます。

単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、大人のヘルペスの場合、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。新生児ヘルペスの場合、2型の感染が8割程度、1型の感染が2割程度を占めます。2型の感染は新生児ヘルペス髄膜炎、1型の感染は新生児ヘルペス脳炎を起こすことが多いとされています。

新生児が母乳やミルクを飲む量が少なくなったり、元気がなくなったり、微熱が出たりという症状が出た際は、小児科、産婦人科を受診することが必要です。通常の細菌感染と間違いやすいため、注意が必要です。

新生児ヘルペスの検査と診断と治療

小児科、産婦人科の医師による診断では、臨床症状から新生児ヘルペスが疑われる時には、速やかに治療を開始することが一般的です。病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純ヘルペスウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。

小児科、産婦人科の医師による治療では、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤を注射し、水疱には軟こうを塗布します。栄養補給、呼吸補助、けいれんのコントロールなどの対症療法も、併せて行います。

また、妊娠中の母親が単純ヘルペスウイルスに感染したことが事前に判明した場合には、妊娠の時期によって適切な治療を行います。妊娠初期では、胎児に影響が出る可能性があるので抗ウイルス剤は使いませんが、妊娠中期くらいになれば、抗ウイルス剤を服用して治療します。

出産予定の3週間以内に単純ヘルペスウイルスに感染している場合には、分娩時の新生児への母子感染のリスクを回避するために、帝王切開による出産を選択する場合もあります。

🟥「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルス、国内でも確認

 海外で拡大している「H3」型インフルエンザの新たな変異ウイルスが国内でも確認されたことが、国立健康危機管理研究機構の解析でわかった。専門家は「免疫を持っている人が少なく、感染が広がりやすい可能性がある」として注意を呼び掛けている。  季節性インフルエンザとして流行する「H3」...