2022/08/15

🇼🇸低カリウム血症

血液中のカリウム濃度が低下した状態で、さまざまな原因で発生

低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が3・5mEq/l以下に低下した状態。通常、血液中のカリウム濃度は3・5~5・0mEq/lという狭い範囲内で維持されています。

カリウムは細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要で、体内のカリウムの98パーセントが細胞の内部にあり、残りのわずか2パーセントが血液中など細胞の外部に存在しています。しかし、血液中のカリウムは細胞の働きを調節する上でとても重要で、濃度の値が乱れると全身に障害を生じます。

濃度の低下を引き起こす過度のカリウムの喪失は普通、嘔吐(おうと)、下痢、慢性的な下剤の使用、または結腸ポリープが原因です。まれに、極度の高温多湿の状態で多量の汗をかくことによっても、多量のカリウムが体から失われます。

拒食症や大量飲酒などで長期間に渡って偏った食生活をした場合にも、低カリウム血症が起こります。カリウムはさまざまな食物に含まれているので、バランスの取れた食事をしている人に低カリウム血症が起こることはまれといえますが、加工食品が多くなってきたことやストレスなどにより、起こる可能性が高くなってきているようです。

カリウムが尿に出てしまう理由は、いくつかあります。最も一般的なのは、腎臓(じんぞう)に働き掛けて過度のナトリウム、水、カリウムを排出させる利尿薬の使用です。アルドステロンは腎臓に働き掛けて多量のカリウムを排出させるホルモンですが、クッシング症候群になると、副腎がこのホルモンを過度に分泌します。

また、大量の甘草(かんぞう)が含まれる漢方薬を服用する人や、特定のかみタバコを使用する人の場合も、カリウムの排出量が増えます。リドル症候群、バーター症候群、ファンコニ症候群の発症者には、カリウムを保持する腎臓の能力が阻害されるというまれな障害がみられます。

インスリン、ぜんそく治療薬のアルブテロール、テルブタリン、テオフィリンといった特定の薬剤は、細胞内へカリウムが入る動きを促進し、その結果、低カリウム血症を引き起こすことがあります。しかし、これらの薬剤の使用だけが原因で低カリウム血症になることはまれです。

血液中のカリウム濃度が軽く低下している程度では、普通は症状は生じません。激しく低下すると、脱力感や筋力低下など骨格筋の症状、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、便秘など消化管の症状、そして多尿、多飲など腎臓の症状が主体ですが、極めて激しく低下すると、四肢まひ、呼吸筋まひ、不整脈、腸閉塞(へいそく)などに至ります。心臓の薬のジゴキシンを服用している場合は、軽度の低カリウム血症でも危険です。

原因によって、治療法はさまざまです。カリウムの摂取を増やしても改善しないことも多いので、内科の専門医を受診して精密検査を受けることが勧められます。

低カリウム血症の検査と診断と治療

内科の医師による低カリウム血症の診断は、血液中のカリウム濃度を測定するだけで可能ですが、その原因を明らかにしなければ治療ができません。まず、食べ物、薬、点滴などによって体に入るカリウムと、尿中などに出るカリウムのバランスを調べるために、血液中、尿中の電解質濃度、動脈血ガス分析などの検査を行います。

消化管からのカリウム喪失が疑われる時は、内視鏡などによる消化管の検査が行われ、腎臓からのカリウム喪失が予想されれば、腎機能検査や副腎皮質ホルモンの検査などが行われます。また、全身の症状を調べるために、心電図や腹部のX線検査なども行われます。

内科の医師による治療の原則は、原因になっている状態を改善することです。対症療法として、カリウムの補充も行われます。軽症の場合は、まずカリウムを多く含む野菜や果物を取る食事が勧められ、経口カリウム製剤の内服も加えられます。カリウムは消化管を刺激することがあるため、経口カリウム製剤は1回に多量に摂取するよりも、1日数回に分けて、食事と一緒に少量ずつ摂取するようにします。ワックスを染み込ませたり、塩化カリウムをマイクロカプセルに入れるなど、特別なタイプを使用すれば、消化管への刺激は大幅に少なくなります。

重い低カリウム血症や経口摂取が不可能な場合には、点滴によるカリウムの補充が行われます。この際には、急激な血中カリウム値の上昇も逆に危険なので、時間をかけて慎重に補充されます。

利尿薬を服用している人の大半は、経口カリウム製剤を摂取する必要はありません。ただし、医師は定期的に血液中のカリウム濃度を測定して、必要に応じて利尿薬の使い方を調整します。スピロノラクトン、トリアムテレン、アミロライドなどのカリウム保持性利尿薬を加える治療法もありますが、腎臓が正常に機能している場合に限られます。カリウム保持性利尿薬は、副腎皮質ホルモンのうちのアルドステロンの作用を阻害する薬で、副腎疾患や甘草が原因の低カリウム血症には特に有効です。

🇹🇻低血圧症

低血圧のためにいろいろな症状が現れてくる状態

低血圧症とは、血圧の値が低いためにいろいろな症状が現れてくる状態。低血圧の基準は、最大血圧が100ミリ未満を指します。

急性の低血圧が起きた時は、その原因になる重大な疾患があると見なして、すぐ検査や治療をすることが大切です。

低血圧症の中には原因不明のものがあり、これを本態性低血圧症と呼びます。本態性低血圧症が一般的にいわれている低血圧の代表で、体質的因子が大きく関与していると考えられます。

原因の明らかなものは、二次性低血圧症、ないし症候性低血圧症と呼びます。ほかの疾患が存在するために、二次的に低血圧を起こしたケースです。二次性低血圧症は、急性のものと慢性のものに分類されます。急性のものの原因には、心筋梗塞(こうそく)、心不全、急性出血、やけどなどがあります。慢性に属するものの原因には、がん、栄養失調、甲状腺(せん)機能低下症、アルドステロン症などが知られています。

また、低血圧症の中には、起立性低血圧症といい、立ち上がった途端に全身の血液が下半身にたまり、血圧が低下する疾患があります。起立性低血圧症は、血圧を調節する自律神経の働きがアンバランスになったために起こるもので、交感神経系の障害が主な原因とされています。このうち、原因の明らかなものは脳や脊髄(せきずい)の疾患で起こるものが多く、中には自律神経に作用する降圧剤などの薬物によって生じるものもあります。

本態性低血圧症の人が特に訴える症状は、だるい、疲れやすいです。どちらかというと、日常生活で無理が利かないタイプといえます。また、神経質な面が災いすると、これらの症状にこだわり、ささいなことを気にしすぎたりします。とりわけ精神的ストレスが加わったりすると、症状が強く出たりしがち。

ほかに低血圧の人に多い症状には、頭痛、肩凝り、目の疲れ、めまい、耳鳴り、不眠、動悸(どうき)、息切れ、胸痛、吐き気、食欲不振、便秘、腹の張り、胃のもたれがあります。

特に起立性低血圧症の場合、めまいは立ちくらみとして現れやすく、ひどい時には突然、目の前がぼやけたり、真っ暗になったりします。一瞬気が遠くなる感じがしたり、失神したりすることもあります。さらに、足がふらついたり、地面に足が着かないでフワフワした感じ、血の気が引く感じがしたりすることもあります。しかし、症状が起こっても、横になって休めば、簡単に回復します。

また、低血圧の人の傾向として、朝の目覚めが悪く、集中力や作業能力が低下します。このため、会社などに遅刻をしたり、午前中の仕事がはかどらなかったりします。入浴も好きではなく、熱い風呂には気分が悪くて入れないことが多いものです。

低血圧症の検査と診断と治療

低血圧の人は、気候の変わり目や、夏になって暑くなると、症状が出やすいものです。そのような場合は、早めに薬物による治療を受けるようにします。

血圧を上げる薬物は一般に、朝に服用するとよく、夕方以降は控えるのが賢明です。そのほか、自覚症状の強い低血圧症に対しては、症状を軽くする意味で、精神安定剤や自律神経調整剤が使用されることもあります。

生活上で大切なことは、自分に見合った生活のルールを規則正しく守ることです。特に、過労、睡眠不足は大敵。また、立ちくらみの激しい場合は、急に起き上がったりせずに、できるだけゆっくりと体を動かして立ち上がることです。偏食を避け、バランスの取れた食生活を心掛けます。

🇹🇻低血糖

糖尿病の薬が効きすぎるなどにより、血液に含まれる糖が少なくなりすぎて特有の症状が現れる状態

低血糖とは、糖尿病の薬が効きすぎるなどにより、血液に含まれる糖(ブドウ糖)が少なくなりすぎて特有の症状が現れる状態。糖尿病を薬で治療している人に高い頻度でみられます。

血液に含まれる糖は、生きるために欠かせないエネルギー源。糖尿病でない人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されています。しかし、糖尿病ではこの糖の量を一定に維持することができません。食事から取り入れた糖を体や脳のエネルギーとして消費するという需要と供給のバランスが崩れ、血液中の糖が増えすぎると高血糖、逆に薬が効きすぎるなどして血液中の糖が少なくなりすぎると低血糖になります。

一般に、血糖値が70mg/dL以下になると、人の体は血糖値を上げようとします。また、血糖値が50mg/dL未満になると、脳などの中枢神経が糖不足、すなわちエネルギー不足の状態になります。その時に現れる特有の症状を低血糖症状といいます。

人によっては、血糖値が70mg/dL以下にならない場合でも、治療などによって血糖値を下げるインスリンの過剰な状態になった時に血糖値が急激に大きく下がることで、低血糖症状が現れることがあります。逆に、血糖値が70mg/dL以下になった場合でも、低血糖症状が現れない人もいます。

低血糖になる原因は、いくつか考えられます。食事の量や炭水化物の不足、糖尿病の薬を服用した後の食事時間の遅れ、運動の量や時間が多い時の運動中や運動後、空腹での運動、インスリン注射や経口血糖降下剤の量の多すぎ、飲酒、入浴など。

低血糖の時には、その値に応じて、体にさまざまな低血糖症状が現れます。集中できなかったり、いつもしていることに時間がかかってしまう場合は、低血糖の可能性もあります。

睡眠中に低血糖が起きていても、気付かない場合が多々あります。日中に起きる低血糖と症状や原因が異なり、寝る前の運動や食事、入浴などのちょっとした行動が原因になることもあります。さらに、夜間低血糖を起こすと、その反動で翌朝、高血糖になることがあり、その高血糖が尾を引くと一日の血糖コントロールに悪影響を及ぼすことも少なくありません。

血糖値が約70mg/dL以下になると、交感神経症状が現れ、異常な空腹感、発汗、手の震え、動悸(どうき)などの症状が出てきます。さらに血糖値が下がり50mg/dL程度になると、中枢神経症状が現れます。

ただし、ふだんから低血糖がよく起こる人や、低血糖症状の自覚が少ない人は、空腹感、発汗などの交感神経症状が現れないまま、無自覚性低血糖になることがあります。無自覚性低血糖の状況になると、血糖値を測ると60mg/dL程度まで低下していることに気付いたり、血糖値が50mg/dLより低くなって、突然さらに重い中枢神経症状が現れ、意識障害を示すことがあります。

そして、血糖値が30mg/dLよりも低くなると、重症低血糖に陥って意識レベルが低下し、昏睡(こんすい)など意識のない危険な状態になってしまうことがあります。これは大変深刻な状態で、死に至ることもあります。

低血糖になった時は、できるだけ早い段階で速やかに対応をしなければなりません。意識があり経口摂取が可能な時は、砂糖15グラムから20グラムを飲みます。糖分を含む缶ジュース、缶コーヒーでも構いません。10分から15分で回復しない時は、再度同量を摂取します。

α-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(商品名:グルコバイ等)、ボグリボース(商品名:ベイスン等)、ミグリトール(商品名:セイブル)など、消化管の二糖類をブドウ糖に分解する消化酵素の働きを抑えることで血糖の急激な上昇を抑える糖尿病の薬を飲んでいて低血糖を起こした時には、砂糖を飲んでもすぐに吸収されないため、回復に時間がかかることがあります。

そのため、低血糖時にはブドウ糖、またはブドウ糖を多く含む清涼飲料水を飲むようにします。

深刻な低血糖で意識障害を来した時には、自身でブドウ糖を飲み込むのが難しいことがあり、家族や周囲の協力が必要になります。その場合は、無理にブドウ糖を飲ませると、誤嚥(ごえん)や窒息の原因になります。周囲の人は、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして、口唇と歯肉の間に塗り付けます。

医療機関の指導を受けた上で、周囲の人が血糖値を上げるためのグルカゴンという注射を行うこともあります。肝臓のグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を放出する作用があるグルカゴン注射で回復した後は、軽く経口摂取しておくことが必要です。なお、アルコールの飲みすぎで低血糖になった時は、肝臓内のグリコーゲンが枯渇しており、グルカゴン注射は効きません。

救急処置でも回復しない時は、すぐに救急車を呼び、医療機関へ搬送しましょう。

意識がはっきりしない状態にまでなった低血糖は、一時的に血糖値が改善してもその後にまた血糖値が下がり、同じ症状が現れる可能性が高くなります。低血糖が続く場合も、必ず医療機関で診察を受けましょう。

低血糖の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科などの医師による診断では、低血糖症状があってもなくても、血糖値が70mg/dLより低い場合、血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状がある場合に、低血糖と判断します。意識障害で重症低血糖の患者が搬送されてきた場合には直ちに緊急の処置を行いますが、それでも可能であれば血液検査を行い、血糖値を確認します。

内科、内分泌代謝内科などの医師による治療では、意識が保持され経口摂取が可能な場合には、ブドウ糖10〜20グラムを経口摂取します。低血糖昏睡を起こし経口摂取が不可能な場合には、まず50%のブドウ糖液 20〜40 mlを静注し、その後5%のブドウ糖を点滴し、血糖値を100~200 mg/dlに保ちます。特にスルホニル尿素薬(SU薬)を内服している場合には、ブドウ糖液の静注で血糖が上昇したからといって安心せず、数時間後に再発することがあるため、入院の上で十分な管理を行います。

低血糖に関しては、予防に優る治療はありません。食事を規則正しく摂取する、食前の過激な運動は避ける、運動前に補食するなどの注意が必要です。

また、自身が糖尿病治療のために使用している薬が、低血糖を起こしやすいか否かを把握することも、必要です。一般に低血糖を起こしやすい薬は、スルホニル尿素薬(SU薬)とインスリンです。ほかのアカルボース、ボグリボース、ミグリトールなどの薬でも起こることがあります。インスリン注射は、正しい手技を身に着けておくことが重要です。

軽い低血糖症状が現れた時は、できるだけ早い段階で速やかに対処して、重症低血糖を防ぎます。無自覚低血糖を起こすようなケースでは、こまめに血糖を自己測定し、血糖が下がっていれば症状がなくても早めに対処することが必要です。

低血糖を起こした時、いつ、どこにいてもすぐに対処できるように、ペットシュガーやブドウ糖ゼリーなどを常時携帯しておきます。特に運動療法で外出するような時は忘れずに持っていきます。

もしもの時に備えて、糖尿病患者であることを示す糖尿病手帳や、携帯用の糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)を常に携行しておけば、昏睡で医療機関に搬送された時でもすぐに適切な処置が受けられます。

🇹🇻低血糖発作

血糖値が生理的な変動範囲を超えて低下することにより、意識障害などの症状を示す状態

低血糖発作とは、人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値が生理的に正常な変動範囲を超えて低下することにより、意識障害などのさまざまな症状を示す状態。

対応が遅れると、死に至ることもある危険な状態です。血液に含まれる糖(ブドウ糖)が少なくなりすぎる低血糖の原因により、空腹時低血糖、反応性低血糖、薬剤性低血糖に分けられます。

空腹では本来は低血糖発作は起こりませんが、ホルモンの異常分泌などにより低血糖を引き起こしてしまうものが、空腹時低血糖です。

また、胃がんの手術などで胃を切除した人に起こるのが、反応性低血糖です。

薬剤性低血糖は、糖尿病患者に起こります。糖尿病患者で、食事の量や炭水化物の不足、糖尿病の薬を服用した後の食事時間の遅れ、運動の量や時間が多い時の運動中や運動後、空腹での運動、インスリン注射や経口血糖降下剤の量の多すぎ、アルコールの多量摂取、入浴などが原因で、低血糖発作が引き起こされます。

人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されていますので、血糖値が約70mg/dL以下になると低血糖の状態となり、交感神経症状が現れ、集中力の低下、脱力感、異常な空腹感、発汗、手の震え、動悸(どうき)などの症状が出てきます。さらに血糖値が下がり50mg/dL程度になると、意識や呼吸の調節をしている中枢神経症状が現れます。

ただし、ふだんから低血糖がよく起こる人や、低血糖症状の自覚が少ない人は、空腹感、発汗などの交感神経症状が現れないまま、無自覚性低血糖になることがあります。無自覚性低血糖の状況になると、血糖値を測ると60mg/dL程度まで低下していることに気付いたり、血糖値が50mg/dLより低くなって、突然さらに重い中枢神経症状が現れ、意識障害を示すことがあります。

そして、血糖値が30mg/dLよりも低くなると、低血糖発作を起こす重症低血糖に陥って意識レベルが低下し、昏睡(こんすい)など意識のない危険な状態になってしまうことがあります。これは大変深刻な状態で、死に至ることもあります。

低血糖になった時は、できるだけ早い段階で速やかに対応をしなければなりません。意識があり経口摂取が可能な時は、砂糖15グラムから20グラムを飲みます。糖分を含む缶ジュース、缶コーヒーでも構いません。10分から15分で回復しない時は、再度同量を摂取します。

α-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(商品名:グルコバイ等)、ボグリボース(商品名:ベイスン等)、ミグリトール(商品名:セイブル)など、消化管の二糖類をブドウ糖に分解する消化酵素の働きを抑えることで血糖の急激な上昇を抑える糖尿病の薬を飲んでいて低血糖を起こした時には、砂糖を飲んでもすぐに吸収されないため、回復に時間がかかることがあります。

そのため、低血糖時にはブドウ糖、またはブドウ糖を多く含む清涼飲料水を飲むようにします。

深刻な低血糖で意識障害を来した時には、自身でブドウ糖を飲み込むのが難しいことがあり、家族や周囲の協力が必要になります。その場合は、無理にブドウ糖を飲ませると、誤嚥(ごえん)や窒息の原因になります。周囲の人は、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして、口唇と歯肉の間に塗り付けます。

医療機関の指導を受けた上で、周囲の人が血糖値を上げるためのグルカゴンという注射を行うこともあります。肝臓のグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を放出する作用があるグルカゴン注射で回復した後は、軽く経口摂取しておくことが必要です。なお、一時的に血糖値を下げる作用があるアルコールの飲みすぎで低血糖になった時は、肝臓内のグリコーゲンが枯渇しており、グルカゴン注射は効きません。

救急処置でも回復しない時は、すぐに救急車を呼び、医療機関へ搬送しましょう。

意識がはっきりしない状態にまでなった低血糖は、一時的に血糖値が改善してもその後にまた血糖値が下がり、同じ症状が現れる可能性が高くなります。低血糖が続く場合も、必ず医療機関で診察を受けましょう。

低血糖発作の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科などの医師による診断では、低血糖症状があってもなくても、血糖値が70mg/dLより低い場合、血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状がある場合に、低血糖と判断します。低血糖発作を起こす重症低血糖に陥って意識レベルが低下した患者が搬送されてきた場合には、直ちに緊急の処置を行いますが、それでも可能であれば血液検査を行い、血糖値を確認します。

内科、内分泌代謝内科などの医師による治療では、意識が保持され経口摂取が可能な場合には、ブドウ糖10〜20グラムを経口摂取します。低血糖昏睡を起こし経口摂取が不可能な場合には、まず50%のブドウ糖液 20〜40 mlを静注し、その後5%のブドウ糖を点滴し、血糖値を100~200 mg/dlに保ちます。特にスルホニル尿素薬(SU薬)を内服している場合には、ブドウ糖液の静注で血糖が上昇したからといって安心せず、数時間後に再発することがあるため、入院の上で十分な管理を行います。

低血糖に関しては、予防に優る治療はありません。食事を規則正しく摂取する、食前の過激な運動は避ける、運動前に補食するなどの注意が必要です。

また、自身が糖尿病治療のために使用している薬が、低血糖を起こしやすいか否かを把握することも、必要です。一般に低血糖を起こしやすい薬は、スルホニル尿素薬(SU薬)とインスリンです。ほかのアカルボース、ボグリボース、ミグリトールなどの薬でも起こることがあります。インスリン注射は、正しい手技を身に着けておくことが重要です。

軽い低血糖症状が現れた時は、できるだけ早い段階で速やかに対処して、重症低血糖を防ぎます。無自覚低血糖を起こすようなケースでは、こまめに血糖を自己測定し、血糖が下がっていれば症状がなくても早めに対処することが必要です。

低血糖を起こした時、いつ、どこにいてもすぐに対処できるように、ペットシュガーやブドウ糖ゼリーなどを常時携帯しておきます。特に運動療法で外出するような時は忘れずに持っていきます。

もしもの時に備えて、糖尿病患者であることを示す糖尿病手帳や、携帯用の糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)を常に携行しておけば、昏睡で医療機関に搬送された時でもすぐに適切な処置が受けられます。

🇳🇷低酸症

胃で分泌される胃液中の胃酸が少ない状態

低酸症とは、食べ物を消化するために胃で分泌される胃液中の塩酸、すなわち胃酸が少ない状態。胃酸減少症、減酸症とも呼ばれます。

胃液の中に、胃酸がほとんどないか、全くない状態は、無酸症(胃酸欠如症)といいます。

胃液は、強酸性で、pHは通常1〜1・5程度。塩酸、すなわち胃酸、および酸性条件下で活性化する蛋白(たんぱく)分解酵素のペプシンが含まれており、これによって蛋白質を分解して、小腸での吸収を助けています。同じく酵素のリパーゼは、主に脂肪を分解しています。

胃液はまた、感染症の原因になる細菌やウイルスを殺菌したり、一部の有害物質を分解したりすることで、生体防御システムとしての役割も担っています。例えば、コレラ菌は胃酸によってほとんどが死滅してしまうため、大量の菌を摂取しない限り感染は起こりませんが、胃酸の分泌量が少ない低酸症の人、胃酸の分泌がほとんどないか、全くない無酸症の人などでは少量のコレラ菌でも発症します。

低酸症は、胃液総酸度が30以下、塩酸含量0・1パーセント以下、pH1・59以上が相当します。

この低酸症を示す疾患の代表的なものは、慢性胃炎の中の委縮性胃炎。これは多くの日本人にみられますが、高齢になるに従い胃粘膜に委縮性変化が生じ、胃酸を分泌する壁細胞という細胞の数が減ってくるために、まず低酸症の状態となり、これが高度になると無酸症になると考えられています。

そのほかに、ビタミンB12や葉酸の欠乏によって生じる悪性貧血や、進行した胃がんなどで、胃粘膜に委縮性変化が生じた場合に、低酸症がみられます。手術によって胃を切除した時にも、低酸症が当然起こります。

胃酸が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起き、食後の胃のもたれ、膨満感、胸焼け、食欲不振、軽い下痢など、さまざまな症状が現れます。

胃のもたれ、胸焼けなどの低酸症で現れる症状は、慢性胃炎、十二指腸潰瘍(かいよう)、食道がん、胃がんなどでもみられる症状であるため、異変に気付いたら内科、胃腸科、消化器科を受診して検査を受け、原因を確かめることが先決です。

低酸症の検査と診断と治療

内科、胃腸科、消化器科の医師による診断では、ガストリン、またはヒスタミンを注射し、チューブから胃液を採取する胃液検査で、胃酸分泌能を測ります。また、血中ペプシノーゲン値、特にペプシノーゲンのⅠ/Ⅱ比は、胃粘膜の委縮度と相関しているので、これを測ることによって胃酸分泌能を推測できます。

慢性胃炎や胃がんの診断には、X線検査や内視鏡が必要となります。

内科、胃腸科、消化器科の医師による治療では、検査によって他の疾患が除外され、単に低酸症で塩酸、すなわち胃酸の分泌量が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起きている場合は、塩酸リモナーデなどの消化剤を服用します。

慢性胃炎による胃の粘膜の委縮も、胃腺(いせん)の委縮も、元に戻すことはできません。安静を心掛ける、ストレスを避ける、消化のよい食事を取る、コーヒーや香辛料などの刺激物の摂取を避けるなど、日常生活の中で注意をしていきます。

悪性貧血の治療は、基本的に鉄欠乏性貧血と同じで、不足しているビタミンB12か葉酸を補給すれば治ります。

🇳🇷低酸素症

低圧低酸素状態に置かれた時に発症

低酸素症とは、低圧低酸素状態に置かれた時に発生する病的症状。組織低酸素症、高山病、高度障害とも呼ばれます。

高い所では気圧が下がるため空気が薄くなり、それに応じて含まれる酸素の量も減ります。体がそのような環境への急激な変化に順応できずに、極端な酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れます。

一般的には、3000メートル以上の高山に登った際に発症するといわれていますが、標高2500メートルぐらいから発症する可能性があり、日本国内でも報告例があります。海外のトレッキングコースには4000メートルを超えるものもあるので、国内での経験が豊富な人でも、十分な注意が必要となります。

また、低酸素症は登山に伴うものばかりではありません。チベットや南米には、標高3000~4000メートルの高地に乗り物で行ける観光地があり、そこを訪れる人にも発症の可能性があります。

低酸素症の症状が出現する標高や、その高さに慣れるまでの時間には個人差があり、同じ人でもその時の体調によって異なります。

低圧低酸素状態において6~12時間で発症し、一般的には4~5日後には自然消失します。主な症状としては、頭痛、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、疲労、脱力、めまい、ふらつき、睡眠障害などです。

ほかにも、すぐに眠ってしまう、日時や場所がわからなくなるなどの精神状態の変化、真っすぐ歩けない、立っていられないなどの運動失調、顔や手足のむくみが挙げられます。

低酸素症の重症型として注意しなければならないものに、高地肺水腫(すいしゅ)と高地脳浮腫(ふしゅ)があります。

高地肺水腫は、肺がむくみ、水分が浸み出した状態で、呼吸がたいへん苦しくなります。呼吸とともにガラガラする音がしたり、せきや血痰(けったん)がみられたりします。肺を通して体に取り込める酸素の量がとても少なくなり、命の危険があります。

高地脳浮腫は、脳がむくんだ状態で、足元がふらつきバランスを崩して転ぶ、意識を失うなどの症状が出現し、こちらも死に至る危険があります。

2006年7月に発表された外務省診療所の調査によると、1996年からの10年間で、ネパール、ペルー、タンザニアの日本大使館が把握している日本人の低酸素症発症者の内、少なくとも26人が死亡しています。死亡者の平均年齢は50歳。

低酸素症の治療法と予防法

最も基本的で効果的な低酸素症(高山病)への対処法は、高度を下げることです。楽になる所まで下ることが大切です。症状が軽い場合は、それ以上高度を上げずにとどまるだけで体が慣れてくることがあります。普通は1~2日で回復し、パラセタモールかアスピリンを服用すれば、頭痛は治ります。

とどまっていても症状が続いたり、次第に具合が悪くなる場合は、直ちに高度を下げるべきです。500メートル下がるだけでも、症状は軽くなります。

重症の場合は、できるだけ速やかにに低地に搬送し、集中的治療が必要です。低地域へすぐに搬送できない場合は、酸素吸入やガモフバッグ(携帯型加圧バッグ)、内服薬による治療を考慮しなくてはなりませんが、そのためには事前の準備が必要です。

ガモフバッグは、携帯用の軽量布製大型バッグまたはテントで、手動のポンプによって中の気圧を上げることができます。重症者を中に入れ、きっちりと口をふさぎ、ポンプを使って内部の気圧を上げて2~3時間過ごさせます。登山の際には酸素吸入が使えない場合が多いのですが、ガモフバッグには同様の効果があります。ただし、それらで完全に治せるわけではなく、若干時間稼ぎができる程度と考えるべきで、下山に勝る治療法はありません。

低酸素症の予防法は、以下のとおりです。標高3000メートル以上では、眠る場所の高度を前日に比べて300メートル以上上げないこと。高度を1000メートル上げるごとに、1日休息日をとること。自分が背負う荷物を重くしすぎないこと。ゆっくり登ること。

眠る場所の高さが大切な理由は、睡眠中は起きている時に比べて呼吸回数が減り、体の中の酸素状態が悪化しやすいからです。いきなり高度を上げると、悪化の程度も大きくなります。また、アルコールや睡眠薬、安定剤などは睡眠中の呼吸状態を悪化させることにつながるので、高い所では控えておくほうが安全。

高所に滞在していると次第に低酸素の状態に慣れてきますが、慣れる速さは人によって違いますし、標高によっても違います。毎日自分の体調をチェックし、必要に応じて休息日を入れることが大切です。

高所の低圧低酸素環境で運動すると、平地での運動に比べて心拍数が増加しやすく、心臓への負担が大きくなります。肺に問題がある場合は、他の人より体に取り込む酸素量が少ないため、体調を崩しやすくなります。

従って、心臓や肺に疾患のある人は、体への負担を考慮し、あらかじめ主治医に相談しておいたほうがよいでしょう。荷物を重くしないこと、ゆっくり登ることは、健康な人にとっても大事です。

高所の冷えた空気は乾燥しており、その中で汗をかくような運動をする場合は、体の中の水分を失いやすく、脱水症に対する注意が必要です。体調維持のため、軽い、高炭水化物の食事を取るとともに、十分な水分を取るよう心掛けてください。また、乾燥した冷たい空気はのどを痛めやすく、風邪をひくことにもつながりますので、マスクを用意しておくとよいでしょう。

低酸素症の予防と症状の緩和のために、アセタゾールアミド、デキサメタゾンの服用を勧める医師もいます。しかし、これらの薬で危険な症状が隠されてしまうこともあるとして、使用には異論もあります。

🇳🇷低脂血症

血液中の脂質成分の濃度が正常値よりも低い値を示す疾患

低脂血症とは、血液に含まれる脂質の濃度が通常低いとされている濃度よりも、さらに低い値を示す疾患。

高脂血症と同じく、脂質代謝異常が原因の脂質異常症の一つです。

血液の中には、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)のほか、リン脂質、遊離脂肪酸といった脂質成分が含まれています。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料となり、中性脂肪はエネルギーの貯蔵庫などとなり、体の機能を保持するために大切な働きを持っています。これらの脂質は肝臓で作られたり、食事から体に摂取され、血液中の脂質成分の量は保たれ調整されています。

脂質成分の中の1つが正常値以下ならば、低脂血症となります。一般に、総コレステロール130mg/dl未満、中性脂肪(トリグリセライド)40mg/dl未満、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)50mg/dl未満、HDLコレステロール(善玉コレステロール)35 mg/dl未満を低脂血症の基準としています。

低脂血症のほとんどが、栄養状態の悪化、甲状腺(せん)疾患や肝臓の疾患、悪性疾患による続発性(二次性)の脂質異常症に相当します。中でもよくみられるのが、低HDLコレステロール血症(低コレステロール血症)で、慢性肝炎、肝硬変、甲状腺機能高進症、糖尿病などの疾患によることが多い傾向にあります。

まれに、低βリポ蛋白(たんぱく)血症、無βリポ蛋白(たんぱく)血症、カイロミクロン停滞病(アンダーソン病)といった原因となる疾患のない遺伝性の低脂血症もあります。

よくみられる低HDLコレステロール血症では、動脈硬化を防ぐ働きを持つHDLコレステロールの低い状態が継続します。原因として、疾患のほか、高糖質(炭水化物)食、多価不飽和脂肪酸食、喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣も考えられています。

HDLコレステロールは、血管や組織に蓄積した余剰なコレステロールを引き抜いて運び、肝臓に戻すというコレステロール逆転送系の中心的役割を担っています。

低HDLコレステロール血症により、HDLコレステロールの低い状態が継続すると、血液の清浄化機能が低下することにより、血液の中に含まれる脂質成分であるLDLコレステロールが増加し、LDLは血管壁に取り込まれて蓄積し、やがて動脈硬化を起こします。

動脈硬化が徐々に進行すると、心肺機能が低下することにより、心筋梗塞(こうそく)など生命にかかわる疾患へ進展することがあります。また、脳梗塞に進展することもあり、深刻な後遺症が残ることもあります。

低HDLコレステロール血症は多くの場合、初期の段階では体の自覚症状は全くないので、血液検査で初めてわかることがほとんどです。無症状であっても、動脈硬化を予防する正しい治療が必要なので、自己判断せずに医療機関に相談して下さい。内科、ないし内分泌・代謝科が、担当の診療科です。

低脂血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値は、これらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。

低HDLコレステロール血症(低コレステロール血症)、低トリグリセライド血症(低中性脂肪血症)が認められた場合は、栄養障害、吸収不良性疾患、肝硬変、甲状腺機能高進症などの原因となる疾患を診断するための検査も行います。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低脂血症を引き起こす原因となる疾患がある場合には、その疾患の治療を優先します。

原因となる疾患のない遺伝性の低脂血症の場合は、症状によっては脂溶性ビタミン剤を補充したり、脂肪食を制限したり、必須脂肪酸を補充したりします。

低HDLコレステロール血症の場合は、食餌(しょくじ)療法と運動療法を行います。

食餌療法では、野菜や果物を豊富に摂取し、蛋白質は青魚や大豆製品などから摂取するといった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。症状が軽い場合は、HDLコレステロールの数値を正常にすることができます。

運動療法では、積極的に運動を行います。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行うことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、睡眠不足など生活習慣全般を改善することでも、HDLコレステロールの減少を抑えて症状の進行を止めることが可能になります。

半年ほど経過しても数値が改善されず、高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)を伴う場合は、薬物療法を併用します。

高LDLコレステロール血症が優位な場合は、スタチン薬、レジン薬、ニコチン酸誘導体を使用します。高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)が優位な場合は、フィブラート系薬剤、ニコチン酸誘導体を使用します。

一方、糖尿病に伴う低HDLコレステロール血症では、肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働かなくなった状態であるインスリン抵抗性の是正や、必要に応じたインスリン投与で改善することもあります。

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